水冷式エンジンと空冷式エンジン

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現在の主流である水冷式エンジン。かたや現在では、ほとんど姿を見ない空冷式エンジン。

今では水冷式が性能的にも優位だとされています。まずは簡単に各方式のメリット・デメリットをあげてみましょう。

 

空冷式のメリットとデメリット

空冷式のメリットは、メンテが簡単な上に構造がシンプル且つ頑丈で軽量に仕上げやすいです。但し、水冷式に比べると冷却効率が良くなく、エンジン騒音も大きめとなってしまうなどの点が上げられます。

 

水冷式のメリットとデメリット

水冷式のメリットはヒートコントロールがしやすく冷却効率も良い。エンジンを水で包んでいるため、エンジンから発生する騒音を水が減衰してくれるので、騒音面でも有利。又、8気筒エンジンなどの多気筒エンジンでも均一に冷却することが可能です。但し、空冷式エンジンに比べ部品点数が増え複雑な構造になり総じて重量が増えます。

以上、簡単に各方式のメリット・デメリットを説明しましたので、もうちょっと詳しく説明します。

 

空冷式とは

空冷式エンジンの冷却方法は字が示すとおり、エンジンを直接空気冷却する方式です。

シリンダーブロックやシリンダーヘッドの周りにフィンを配し、直接空気と触れる面積を稼ぎ、冷却効率を上げています。

フィンに当たる空気はクーリングファンによって起こされる風と、走行によって起こされる走行風によって冷却しており、更に発展形として、ホンダ1300が採用した二重一体式冷却方式(DDAC)がありました。ちなみにバイクなどはエンジンが剥き出しのため走行風を使って冷却していますが、車はクーリングファンで強制冷却もしています。

さて、DDACの冷却方式は従来のフィンによる冷却にシリンダー・シリンダーヘッドとフィンの間に空洞を設け、そこにエアダクトからフレッシュエアを取り込み、ファンでその空洞へ送りこみエンジンを冷却していました。これにより、内外から二重にエンジンを冷却していることになります。水冷式で言う水路に空気を通してると思えばいいでしょう。

この冷却した空気はインテークマニーホールドを暖め、混合気の気化を促進し、車内のヒーターへと辿ります。

なぜ一見優れたシステムのように見える空冷式が廃れたかというと、公害対策の為にありました。

公害物質でもあるHCですが、これを減らすには温水や温風で混合気を暖め気化を促進し完全燃焼をさせなければなりません。DACCのような温風で暖めるタイプのエンジンではこのような温度管理が難しく、混合気を余り薄く(ノッキング等が怖いのと、燃調が濃くては完全燃焼からは程遠く、当然燃費も悪い。)することができませんでした。その結果、水冷式エンジンよりもHC値が多くなってしまうので、空冷式が廃れてしまったのです。

 

 

水冷式とは

次に水冷式エンジンですが、水冷式エンジンの冷却方法は字が示すとおり、エンジンを水で冷却する方式です。

シリンダーブロックやシリンダーヘッドの周りにウォータジャケットと呼ばれる空洞を設け、そこに水を取り入れ熱交換をし、温水はラジエーターで放熱させたり、車内のヒーターとしても用います。水冷式は冷却効率も良いので燃焼室の温度を効果的に下げることもできるのでノッキングにも強いと言えます。

用水路の水門に相当するサーモスタットを採用するにあたって、常に最適な水温を作り出すことができ、ヒートコントロールもしやすく空冷式にあった公害問題もパスすることが可能になりました。

 

 

余談

ここからは余談になりますが、第二次世界大戦中、日本の軍用機は数例を除いて空冷式エンジンでした。それに対し諸外国は初期は空冷式だったものの、次第に液冷式(主に戦闘機等の作戦機)に変わっていきました。

私が思うに、軍用機の性能向上のためにはエンジン性能の向上も必要条件だったでしょうし、パワーアップを図るためには多気筒化にしたり、ターボの開発・装着も必要だったでしょう。

パワーアップを図るというのは、当然発熱量も多くなり、その熱をいかに処理するかも鍵だったと思います。

 

当時の日本は円周状にシリンダーを配置した空冷星型エンジンを多用していました。

これは、風を効率よく受け、しかも均等に冷却することが狙いだったように思えます。しかし空冷のまま更に多気筒化を図るとなると、星型エンジンを二つに重ねた所謂二重星型エンジンになり、後列のシリンダーに十分な冷却風があたらずに異常加熱してしまいます。実際に18気筒2重星型エンジンを開発する際もそのような問題があったと思います。

液冷式だと前にも書いたように、多気筒でも均一な冷却が可能で冷却効率も高く色んなエンジン配列(V型等)が出来、しかもV型エンジンを採用するにあたって前面投影面積を小さく出来、空気抵抗を減らし最高速度も出やすくなりました。

当然、日本でもそのことは分かっていたことだと思いますが、技術力はあっても生産ラインの貧弱さ(工業力)等の諸問題があって、実現が困難だったようです。しかも戦況が悪化してくると、資材・良質燃料の確保が難しい状況と、部品・補修部品の不足等を考えるとメンテが容易・且つ丈夫な空冷式を採用するしか方法がなかったと思います。

 

話に無理があるでしょうけど、これを今で置きかえれば良質燃料がないということは、カリカリにチューンしたエンジンがあるがハイオクが手に入らなくて、レギュラーを入れたがノッキングが発生するのでアクセルを踏めなくなると言うことでしょうか。これではパワーは出ませんよね。

話は元にもどしながら行きますが、燃焼室自体の温度が高いとノッキングやデトネーションの心配もあります。前にも書いた通り空冷式は冷却効率も悪く、燃焼室温度の上昇を押さえることが難しく、液冷式はそれらのコントロールが容易だったので、液冷式のほうがパワーアップに対しても、有利であることが証明されていると思います。

オクタン価が高い燃料はノッキング耐性もあるので、更なるパワーアップや加給器の装着も可能になるでしょう。

 

ここら辺の話からでもでも、水冷式の優位は目に見えていますね。

ただし車用エンジンとしてじゃなく、比較的小排気量のバイク用エンジンや農作業とか軽作業の動力源として使われるエンジンはシンプルな空冷が多いです。シンプルということは場所をとらない。場所をとらないということは部品数が少ない。部品数が少ないということは、値段も安価。要は適材適所って訳ですね。

 

以上が、水冷式エンジンと空冷式エンジンの話でした。


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