MOTO Impression
「The Circle」
1993.11.10 発売 (ESCB1456)
語り/とよきち
「The Circle」 〜さよならの意味〜
このアルバムのツアーを最後に佐野さんは長年活動を共にしてきた
ハートランドとさよならをするわけですが、アルバム製作時に
その事を考えていたかどうかはわかりません。
前作「Sweet16」と比べると地味でネガティブな印象を持つ人も
少なくないと思いますが、僕はこのアルバムでの表現の方が
本当の佐野さんに近い気がしてならないのです。
落ちついたメロディーの中に溶け込んだ美しい言葉の数々。
アルバムには統一感があり、
僕自身一番気に入ってるアルバムでもあります。
♪君が欲しい〜「欲望」なんてストレートな言葉も出てきますが、
これも佐野さんの気持ちがダイレクトに反映されてるせいでは
ないかな。それにしてもこんな言葉を使っても安っぽく感じさせない
のはさすがです。
「君をつれてゆく」「彼女の隣人」
アルバムの核になってるのはこの2曲かな。
佐野さんらしくないと言えばらしくない曲
(佐野さんらしいってどんな曲なんだぁ?)
情感たっぷりに歌われる素晴らしい曲
そしてそれを見事にサポートしているハートランドの演奏
「ハートランドでやれる事はすべてやりつくした」
そう語った佐野さんの言葉にも思わず頷いてしまう。
(もちろん解散を知ったときはショックだったけれど・・・)
このアルバムを聴いたのは僕が大学生の時。
いろんな事が重なった時期だった。
大事な友との別れ。大好きだった彼女との別れ。
人間ってのは不思議なもんで、なくしてしまってから
それがとても大切なものだったと気付くのよね。
「君がいなければ」
♪君がいなければ‘さよなら’の意味さえ知らずに
時は流れてただろう
本当に悲しい時は泣く事すらできず、ただ呆けてしまう。
そんな時、僕はこのフレーズを繰り返し、繰り返し聴いた。
‘さよなら’の意味が解かるまでずっと・・・
佐野さんはかつてこんな素敵な言葉も残してる。
「終わりは始まり」
その言葉通り佐野さんはツアー後、新しい航海に出る事になる。