1. ことの発端


 今年の5月のGWは黒部横断を計画していたが、出発の一週間前にパートナーの恩田さんが胃カメラを飲む羽目になりボツとなった。7月に渡米を控えているため、このGWはどうしても登っておきたく躍起になって北鎌などの計画をエサにパートナーを探してみたがどうにも見つからず、それなら単独で行くしかないということで、山渓の5月号に特集されていたオートルートにスキーを担いで行ってみることにした。

 Haute Route(オートルート)とは、立山/室堂からザラ峠を越え、五色ヶ原、スゴ乗越、薬師岳から黒部五郎岳を抜けて双六、槍が岳へとつなげる長大なルートである。ところどころにバックカントリースキーの要所を経由し、またルート全体もスキーを用いることによるメリットを最大限発揮させることができるということでこのような呼び名がついたらしい。

 全行程は足が揃っているパーティーなら4日+予備日2日、余裕を持ちたいのであれば5日+予備日2日だろうが、GWのこの時期に開業している小屋は限られているので後者であればテントを担ぐことになると思う。僕は単独でだったということもあり、また足にも自信はあったので前者4日+予備日2日で、余裕を持ちたかったので小屋泊まりの計画を立てた。

 本当なら槍ヶ岳のテッペンまでたどり着いて歓喜に酔いしれる予定であったのだが、天候の悪化と、それから北ノ俣岳直下で疲労凍死者を発見することとなり、神岡新道を下山することとなった。


<装備>
 スキー板は我が師匠の有持さんにだまされて買ったロシニョールの88cmのショートスキーであるフリートレックの初期型を使用。当然、シール、アイゼン、ピッケルを携行し、ブーツは歩き易さを考慮して兼用靴ではなく登攀用のプラスティックブーツ(コフラック:バーチカルの旧型)にした。しかし、ルート上で出会った人の多くはテレマークか山スキーに兼用靴であった。今度試してみたいとおもう。

 その他の道具は単独ということもあり軽量化が難しかったが、小屋泊まりにすることでかなり余裕が出来た。小屋泊まりであるが貧乏なため自炊をすることにし、予備食も含め6日分の食料と炊事道具を持参。季節を考え、白ガスコンロではなく、厳冬期用のEPIガスにした。万が一の時のためにカラビナ2枚とシュリンゲとビバーク用のツェルトとシュラフカバーを持参。またヘルメットも一応持ってきたが、これははっきりいって不要だった。その他、ハーネスもザイルもなにも持っていかなかった。一人なので西鎌尾根の状態が悪くても確保できないからだ。


<山小屋事情>
 ゴールデンウィーク中、この山域では五色ヶ原山荘、太郎平小屋、双六小屋、槍ヶ岳山荘が営業しているが、五色ヶ原ヒュッテ、スゴ乗越小屋、薬師岳山荘は閉まっている上、冬季小屋としても機能していないので注意が必要。黒部五郎小屋は営業していないが冬季小屋として使える。営業している小屋では食事も出してもらえるので、金に余裕があってさらに軽量化したい人は小屋食を含めて考えればかなり余裕が出来ると思う。槍ヶ岳山荘以南の槍沢沿いはどこの小屋も営業していたと思う。


<室堂までの足>
 いつもお世話になっている安い松本電鉄のさわやか信州号を使って扇沢に入った。横浜から乗れるので自分にとっては便利なのと、なんといっても電車に比べて格安であるからだ。それに5時前には扇沢に到着し、一番のトロリーバスに十分間に合うので都合が良い。GWには扇沢から黒部ダムへのトロリーバスも早い時間の臨時が出ている。アルペンルートは夏と同じく全線開通しているので、お金さえ払えば室堂まで運んでくれる。誠に便利である。アルペンルート以前は室堂なんてはるか深山の彼方であったわけだから、本当にありがたい。




2.室堂から薬師岳へ 〜白銀の別天地〜

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