キナバル国立公園へ
<キナバル公園から望むキナバル山>
本当は今日中にラバンラタのレストハウスまで上がり、二日間小屋近辺にいてピークハント+ロッククライミングピッチをのぼりたかったのだが、9/1の小屋が一杯で予約が取れなかったのと、時間がなくてロッククライミングのパーミッションの取得ができなかったので、結局この日はポーリン温泉という観光保養地に寄ってキナバル国立公園に入り、国立公園内のコテージに泊まることとなった。
ホテルで、まるっきり西洋風ブッフェ式の朝食をとり、荷物をまとめて8:00にロビーに降りると、ニヴェルはまだいなかった。チェックアウトだけ済ませ、ソファーで待っていと、5分くらいたってニヴェルが現れた。「I'm
sorry」と遅れたことについて本当に済まなそうに謝る。素直な奴である。「No
ploblem. Don't mind」といって肩をたたき、車に乗り込む。
今日はコタキナバルの街を離れ、キナバル山の麓へと移動する。直接国立公園に行って、ジャングルツアーとかに参加しても面白そうだけど、予定ではポーリン温泉という保養地に寄ることになっている。海外で温泉ってのも初体験だし、ちょっと興味もあったので楽しみだった。そういえば、ネパールヒマラヤ、アンナプルナの麓にも温泉が湧きだしているタトパニっていう村があったな、と思い出した。
車は舗装道を山に向かっていく。ボルネオ島はマレーシア国内でもマレー半島西部に比べると段違いに発展が遅れている感じ。むしろネパールとかと同じ様な印象で、コタキナバルの街中から離れるに従って現れる住居、建物は途上国のそれという印象だった。晴れていればキナバル山がどかーんと見えるはずだが、この季節は水蒸気が多く、あまり良い姿は眺められないというニヴェルの言葉どおり、キナバル山域にはネズミ色の雨雲がかかっていた。
ぐんぐんと標高を上げ、途中、道端に市場の様な店が建ち並んでいるところでトイレ休憩。トイレは当然水洗・・・であるわけがなかった。山小屋のトイレみたい。店の中を少し覗くと、果物、野菜、肉などの食料から日用雑貨とともに、どうみてもツーリスト目当ての土産物まで並んでいた。きっと、ツーリスト達はここで買い物をするのだろう。
車に乗り込むと、ニヴェルと果物の話になった。なんでも、あの臭いで有名なドリアンは「果物の王様(king
of fruit)」で、マンゴスチンが「果物の女王様(Queen of fruit)」なのだそうだ。で、ニヴェルは「是非ドリアンを食べてみて」としきりに薦めるのだが、なんとか逃れた。見た目もグロテスクだけど、臭いにつられてハエがたかっているのを見るとちょっと敬遠したくなる。
いい加減標高が高くなっていくも、熱帯雨林の島では高原気分はない。空気は濃く、風はあたたかく、植生もジャングルそのものって感じだった。尾根筋を行く部分では、ゆるやかな起伏とともにはるかに繋がるジャングル高原が、独特の感覚だった。
車で2時間ちょっと走るとキナバル国立公園のゲートにたどり着く。それを横目に通り過ぎ、ポーリン温泉まではそこから30分くらいで着いた。ポーリン温泉は主に地元の人たちが楽しむ場になっており、旅行者の数は少ない。ゲートやレセプションホールは、どこかのテーマパーク気分だったが、中に入ると温泉に足を浸しながら保養を楽しむ家族や、持ってきた食材でピクニックを広げる家族が一杯いた。
まず、温泉地帯を通り抜け、キャノピーウォークへ。キャノピーウォークとは、10数メートルから20メートルくらいに成長した巨木の間に渡した吊り橋で、鳥と同じ高さでジャングル内を観察できる、というもの。結構作りが簡素で足下がスケスケなので、高所恐怖症の人は悲鳴を上げていた。僕がロッククライミングをやることを知っているニヴェルは、「君は大丈夫だよね〜」なんて僕に話しかけながらスイスイ歩いていった。地上10数メートルの高さでジャングル探検できることにあまり感慨はなく、むしろ、土を踏みしめて歩く方が僕は好きじゃ!と思ったが、人工的な支柱のない吊り橋はまたミシミシ軋んで倒れそうというか、それでいてエコロジカルというかラブアースというか、オツなものであった。
キャノピーウォークから戻り、温泉に入る。温泉源では、高温のお湯がコンコンと湧き出ていて、硫黄の臭いがするあたり日本と同じであったが、無色透明で、しかも公園にある噴水みたいなコンクリート打ちの糟に溜めるので雰囲気は随分違う。入り方もかなり違っていて、水着着用だし、日本の家庭用風呂釜の半分くらいの浴槽に蛇口がついていて、自分でお湯を張って入る。入る前にはまず浴槽の掃除から始めるあたり、かなり日本とは風情が違うっちゅう感じ。ちなみにポーリン温泉には日本の家庭のお風呂のように個室風呂もある。僕はトライしなかったけど、かなり日本の温泉に近い気分を味わえるだろうと思う。
ポーリン温泉を出て、キナバル国立公園に引き返す。お昼ご飯は途中の国道沿いにあるレストランに入った。ここで初めて純マレーシア料理を食う。マレーシア料理はなんとなく日本の中華にちかい感じ(本場中国、Main
Land Chinaの中華料理のあの強烈な系統では決してなかった!)。
<食虫植物 ウツボカズラ>
キナバル国立公園のゲートは小規模の動物園かと思うほどこじんまりとしていて、これがキナバル山麓の広大な公園の入口かよ、おい!と言いたくなる感じ。少し坂を登ってゲートをくぐるとすぐ右側に事務所がある。ここで車を止め、「ちょっと待っててね」と言ってニヴェルが車を降りて事務所に入っていった。しばらくして出てくると車に乗り込み、今日の宿であるコテージに連れていってくれた。
このコテージ。外観はなかなかよさそうなんだけど、結構壁や窓に穴があいていたりして灯りをつけると熱帯の強烈な色合いの虫がワンサカ入ってきた。あわてて持参した蚊取り線香を焚くと少し虫がいなくなった。シャワーもお湯はあまり出ないし、チョロチョロだし、御世辞にも快適とは言えなかった・・。
まだ陽がある内に公園内を散策し、日が暮れてから公園内のレストランで夕食を取った。これもマレーシア料理コースだったけど、なんとなく中華っぽかった。ニヴェルが隣でガイド用の食事をしていた。僕の料理はとても一人で食べきれる量ではなかったので、チャーハンを黙々と食べるニヴェルに「一緒に食べてくれ」と助けを求め、一緒に食べた。レストランは大型のコテージ風でとても洒落ていた。シンガポーリアンの中学生達が修学旅行だかなんだかわからんけど、とにかく30人くらいの集団で来ていた。
食事を終え、明日は7:30にこのレストランで朝食を取ることを確認し、またあの虫の館に帰って寝た。蚊取り線香をガンガン焚いた。