地下駐車場で目覚める
昨夜は車の中で寝た。爆睡できてしまうのが若干悲しいが、目覚めてみると薄暗い駐車場の中でなんとなく目覚めは悪かった。
とりあえず朝一番のケーブルで降りてくるはずの雨宮組を迎えにいくため、ミディのケーブルの駅に向かう。昨日と同じで、登攀者がたむろしていた。4000mの高みに一気に運んでくれるケーブルの恩恵にあやかっているのは登攀者かもしれないな、と思ったりする。
ケーブルの駅前のカフェはなんと6:00前に明いた。ちょっと仰天。で、外が眺められる窓際に陣取り、焼きたてのパンとコーヒーで朝食をとる。ちょっとゴキゲンな時間だった。
そのうち雨宮さんと石崎さんとイチローが降りてきた。一目でこちらに気付き、ニコニコレストランに向かってきてくれた。
さて、三人はコスミク小屋で既に朝食を済ませているので、すぐにアパートへ向かう。おお〜、やっと我が家に入ることができた!と感動しつつも、ここでマッタリすると根が生えてしまいせっかくの晴天が台無しになるので、軽く装備の入れ替えをし、着替えをして今日はランデックス方面のショートルートに向かうことにする。ルートはランデックスの左側にあるクロシューズ針峰のプチクロシューズ東壁(Aiguilles
Crochues(2840m)Face est de la Petite Crochue (AD/130m/cracks))を選定。気持ちが萎えないうちに車に乗り込み、ロジェール方面にあるランデックスのケーブル乗り場に向かう。
ランデックスへ
<左側のスカイラインがランデックス東南稜>
ランデックスのケーブルの周りは広い駐車場になっており、無料で止められる。近くの雑貨屋で行動食になるようなものを買い足し、ケーブルに乗る。途中の駅で一回乗り換え、今度はフード付きのリフトにのって終点まで。天気がよく、景色が最高だった。
さて、正面はランデックス針峰群の壁とその下に広がるカールの絶景。しかしながら、予想以上に雪が多く、アイゼン無しの足下ではちと不安。ということで、アプローチの近いランデックスの東南稜(Aiguille de L'Index(2595m) Arete sud-est(AD/100m/cracks))に転進する。こちらはカール雪渓の末端をトラバースするように行くので、アイゼンがなくてもok。踏み跡も明瞭である。
取付きは一段高い傾斜のあるテラス状。先行パーティーが準備をしている。我々は原・石崎、雨宮・豊山・前田のオーダーで取りかかる。
1P目:石崎リード。出だしのフェースを左に回り込み、凹角へ。凹角に入ってすぐの被り気味の箇所がちょっと嫌らしいが、残地ハーケンはある。それを越えると級程度の岩登りで大きな岩に押さえらたところで終了。20〜25mくらいなのでザイルの長さ的にはもう1ピッチ延ばせるが、ここからは大きく右に回り込むので流れが悪くなると重う。終了点には一応ボルトが打ち込んであるが、先行パーティーがいるときは岩角などにシュリンゲを巻き付けて終了点とする。岩角は豊富。
<ピッチを切る石崎さん>
2P目:原リート。大きな岩を右に回り込んで若干傾斜の強いフェースを登る。フェースをのぼりきったところで終了。15m〜20mくらい。残置は皆無で、結局ランナウトだった。でも簡単。終了点にはボルトが少しあるが、ここはクラックが発達しているのでカムで切れる。僕はキャメロットの3番を使った。大きめのカムがあると確実かもしれない
。
3P目:石崎リード。稜線上を行く。プロテクションはカムで取る。エイリアンの小さいサイズのものが有用。ナッツも良いかもしれない。このピッチの途中で「今日の19:00のジュネーブ発の飛行機に乗ってかえらにゃならんのじゃ〜」と叫ぶイギリス人の爆走お兄ちゃんがいて、ナッツがうまく回収できず「ファック!ファック!」を連発していた。ネイティブの生ファックを聞いたのは初めてで新鮮だった。稜線がフラットになり、岩塔の手前でコール。
4P目:原リード。フラットな稜線から岩塔を上がる。見た目よりガバガバで、残置ハーケンもそこそこあり、余裕。上がりきったところがテラスになっており、テラスから一段上がったところに残置ボルトがあるのだが先行パーティーに占領されており、ここもカムで支点を作って切る。キャメロット#1、#0.75と黄色エイリアンを使った。クラックは豊富。
5P目:石崎リード。傾斜の緩いリッジからフェースに当たり、基部を右にトラバースして凹角状に入り、直上。とても気持ちのよいピッチ。このピッチが終了すると本当に針峰のてっぺん。
<ランデックス針峰。この垂壁をてっぺんから懸垂下降する>
ランデックスの頂上は少し横に長い。反対側のランデックスのコルに向かって進むと懸垂支点があり、ここから50m×1回とU〜U+級程度の歩きでランデックスのコルに出る。懸垂はリッジ沿いに降りる必要があり、下に向かって左側に曲げて行く必要がある。まっすぐ降りると若干はまる。コルからはV級程度の岩登りで反対側のリッジに這い上がる。きちんとした技量があればノーザイルでも行けるが、不安を感じたらアンザイレンしたほうが良いかもしれない。
下降はリッジ沿いを下る。ノーザイルで行けるが、途中浸みだしがあって悪い箇所があるので注意。雪渓に降り立つ直前はかなり立っており、慎重に降りるべき。また、雪渓の量によって下降は変わってくると思う。
雪渓に降り立ってからはノーアイゼンなので慎重に下り、ある程度傾斜が緩んだところからグリセードで下った。下りきってからは気持ちのよいプラトー歩きでリフトの終着駅へ。リフトは止まっており「あれ?」と思ったが、ある程度お客が集まると動きだした。
午後の時間
アパートに戻って交代でシャワーを浴びる。シャワーを浴びながら風呂場で洗濯をし、干す。乾燥しているので直ぐに乾く。順番待ちの間、アパートの目の前のカフェで遅い目の昼食とビールを飲む。ルートを登り終えた充足感とゆっくりとした時間はこの上なく贅沢だった。
夕刻になってまた組合に行って明日の情報を得る。また、ツーリストインフォメーションで天気予報を見て明日の晴天も確認。晴天が続くとはなんとラッキーなことか。
で、明日のルートに迷う。
早く帰る豊山、原はとりあえず4,000m峰に登りたい、ということでモンブラン・デュ・タキュル/ノーマルルートへ。二週間みっちり登れるほか三人は今日いけなかったクロシューズ針峰に向かうことになった。
明日はいよいよ4,000m峰初体験である。
「モンブラン/デュ/タキュル/ノーマルルート(2001/8/1)」へ
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