会津藩士の総数は時代によって違うが、おおむね約5,000人であった。旧会津藩士小川渉の『志ぐれ草紙』によれば、藩士の役職は身分(紐・襟制)によって定められていた(表5-1)。同書掲載の役職は、公用人等京都で設置された役職が含まれていないところから、文久2年以前のものだと思われる。なお、表中の「近習」は文官、「外様」は武官を指す。 |
身分 | 紐制 | 役職 | 俸禄 | ||
上士 |
御敷居内、 常上下 |
近習 | 御大老、御家老、若年寄 | 知行 | |
1 | 御敷居内、 常上下 |
近習 | 奉行、御用人、御側、大御目付 | 知行 | |
外様 | 番頭、猪苗代御城代、新番頭、御家老組組頭、大組物頭 | 知行 | |||
2 | 常上下 黒紐格上 |
近習 | 御小姓、若殿御小姓、御奏者番、御刀番、御大老付寄合組頭、御聞番、若殿御用役、御使番 | 知行 | |
外様 | 新番組添役、御旗奉行、物頭、御家老附旗奉行 | 知行 | |||
黒紐格下 | 近習 | 町奉行、御蔵入郡奉行、郡奉行、御式方用役、公事奉行、御普請奉行、武具奉行、学校司業、御目付、金山奉行、大納戸、御納戸、若殿御納戸、御次番、御祐筆、御前様御用役、御供番、若殿御供番 | 知行/ 切符 |
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外様 | 無役組、御家老附外様士、番頭附外様士 | 切符 | |||
3 | 紺紐 | 外様 | 猪苗代士 | 切符 | |
4 | 花色紐 | 近習 | 厩別当、御勘定頭、御近習番、会津両納戸、御側医師、若殿御側医師、御大老寄合組、御近習ニノ寄合、芸者、組外之士 | 切符 | |
外様 | 御家老附一ノ寄合、新番組士 | 切符 | |||
中士 | 5 | 茶紐 | 近習 | 御医師、御坊主頭、御賄頭、若殿御賄頭、女中付、御用所役人、御用部屋役人、御用部屋之者、御用人所吟味役、神料役人、御普請方吟味役、御勘定所改役、深川御屋敷守、江戸御金払、廻米役人、検地役人竿頭、御近習三ノ寄合 | 切符 |
外様 | 御家老附ニノ寄合、檜原御境守、御家老附三ノ寄合 | 切符 | |||
6 | 御通者 萌黄紐 |
近習 | 大賄役、兵器役人、御台所目付、御徒組頭、御徒目付、若殿御徒目付、貸方役人、御坊主組頭、若殿御坊主組頭、御月代番 | 切符 |
会津藩の役職 | (1)身分(紐色)別主要役職 | (2)俸禄と役職 |
1)-a御敷居内、常上下の役職(勝手次第あるいは紫紐)。政鷹(御用の間)に出勤。 | |
御大老 | 藩主が幼弱のときに補佐役として家老の上に置かれる。 |
御家老 | 5人(あるいは4人)。藩主の補佐役。国政の大小事の総理。大事は藩主の決裁を経て執行。小事は前例のあることは家老だけで決裁。 |
若年寄 | 2人。「加判の列」と称する家老職見習。家老・若年寄の書記局を「御用所」という。 |
1)-b御敷居内、常上下の役職(納戸紐)。政鷹(御用の間)に出勤。 | |
奉行 | 3人(あるいは2人)。米金の出納、人民の撫育、商道の拡張、取賄方すべて。出火の際の指揮。奉行の書記局を「御用部屋」という。 |
大御目付 | 2人。政鷹に座するが、可否には参加しない。家老以下の政事が理を失すると判断したとき、藩主に上言する。その他、士分以上の犯罪断文を本人に読み渡す。 |
2)常上下(黒紐格段上) | |
御小姓 | 20人(奥番、御膳番、平番)。君側の仕事。他人との交際禁止。往来は親族の服喪のみ。 |
御奏者番 | 9人(江戸定詰1人)。幕府へ献上物、諸家への進上物、姓名の披露、大小名の来邸取次、幕府の奉書・拝領物の受取。 |
御刀番 | 4人。藩主の刀の捧持職で、「御供頭」と称する。他行・供出を差配。配下に御手廻小頭、御手廻等。 |
御使番 | 9人(江戸定詰1人)。君命を奉じて使者に立つ。 |
3)黒紐 格段下 | |
町奉行 | 2人。配下に町役所勤、立入勤、神料役、寺社下役、公事方交易方常用、同心、同心小頭、定廻り |
御蔵入 郡奉行 |
2人。御預所の事を総管。配下に役所勤、吟味役、調役、公事方取立役、同心小頭、同心。 |
郡奉行 | 4人。会津、河沼、耶麻、大沼の四郡を差配。配下に役所勤、割元役、小役人、公事方、社倉方、堰方、検地竿頭、検地方、大川除方、同心小頭、同心。 |
公事奉行 | 3人。断獄訴訟を担当。配下に吟味役、調役下役、同心小頭、同心、間筋之者。 |
武具奉行 | 1人。武具役所勤、同心下役。 |
山奉行 | 2人。当用の材木、諸所の材木繁殖、漆木蕃茂、蝋を所轄。配下に同心小頭、同心、山改役。 |
御式方用役 | 1人(目付のうち1人が担当)。下役4、5人。諸家の分限、祭事法事の式、吉凶婚葬の式、婚葬金支給を所轄。 |
廻米奉行 | 2人。廻米を所轄。配下に荷頭、荷才領、上乗等、50〜60人。同心若干名。 |
金山奉行 | 2人。諸鉱山を統理。配下に金山役所勤、下役人、山師同心。 |
駒奉行 | 2人。牛馬を統理。配下の吟味小役人、村落に出張し、繁殖・貸与等を担当。 |
人参方奉行 | 2人。会津の特産品・朝鮮人参の播施・収穫・販売一切を統括。配下に人参方勤、同役人、監訂役同心。 |
御目付 | 藩主の目代で万事取締筋を総管。江戸勤番の往返には、到着の即日、家老同道で藩主に拝謁し、動静を上言。 |
御納戸 | 6人(江戸定詰2人)。藩主の衣服、大小刀、装束等を司る。織師、染師、柄巻、鞘師、鮫師、研師を支配。 |
御次番 | 4人。寝所の次に宿直。藩主旅行の際の旅館設営、笠・日和傘を奉する。 |
御祐筆 | 6人(江戸定詰2人)。一紙証文その他諸家への書簡を筆記。 |
御供番 | 60人。藩主外行の際、馬前に立って護衛。武術優秀者から選ぶ。 |