星に願いを −あの日の忘れ物・桂木真理子編−
[AM9:20 東屋雄一厩舎・外]
喜んでくれるかな。
喜んでくれるといいな。
私は、そう思いながら手の中を見た。
近所のスポーツ用品店で買った野球のバットを、私がラッピングしたもの。
彼は野球をやる人じゃないけど、これをきっかけにみんなで楽しむ嬉しさを覚えてくれれば……と思って選んだ。
……ね、あなた。ちゃんと彼に伝えてね。私の願い。
もう一度バットを両手で握って願いをかけてから、私は目の前の、美浦トレセン内、東屋雄一厩舎のドアに手を伸ばした。