「よろしく、お願いします……」
私はそう言って、調査のすべてを田倉さんに委ねることにした。
――その日の夜。
私は寮の自分の部屋で、ぼんやりと考え事をしていた。
私にも調査を手伝う気はあったのに、結局は田倉さんにすべてをまかせてしまった。
それは、僚の現実を見つめたくない気持ちがあったからではないのだろうか……。
自分にこんな弱さがあったとは、意外だった。
今朝はあれほど有馬のことで怒っていたのに、気付けばそれがどうでもよくなり、こんなに心を乱している。
僚……。
あなたは、本当に病気なの?
治療法を見つけなければ、本当に死んじゃうの?
私を置いて、どこかへ行ってしまうの……?
もし彼が死んだら、私はひとりで生きていけるだろうか……。
そんなことまで、考えてしまう。
……思っていたよりずっと、いやかなり、私は弱い人間だったらしい。
強がりのとげで自分の身を守っていたのが、今となってははっきりわかる。
気付かないところで僚に支えられながら生きていた私。
そして今、私は自力で立つ方法も力もないままに、その支えを失おうとしている――。
――そんなとき、不意に携帯が鳴った。
誰かしら……。
ディスプレイの着信表示を見ると、田倉さんだ。
何か、わかったのだろうか。
「はい……」
『あ、真奈ちゃんか!?』
田倉さんは、大慌てに慌てている様子だった。
「は、はい……どうなさったんですか?」
『大変なんだ! 片山くんが病院から消えたんだよ! 脱走したみたいなんだ!』
「脱走ですって!?」
――私に残っていたわずかな力が、音を立てて崩れていくのが感じられた。
「なんで、そんな……」
『わからない……。でも、すぐに見つけて連れ戻さないと! 体力を消耗しきる前に……』
そうだ――。
ムチャをして体力を消耗した患者は、1日も持たずに死ぬケースもある。それは何としてでも避けないと!
『真奈ちゃん! どこか、彼が行きそうなところに心当たりはないか!?』
「私も探します!」
――私はそれだけ叫んで、田倉さんに質問の返事をすることもなく携帯を切り、部屋を飛び出していた。
僚……。
極限まで追い詰められた僚が行きそうな場所……。
いったい、どこなの……!?
私は……。