俺は、真奈の部屋に引かれた電話の方を鳴らすことにした。
都合よく真奈が出るかどうかはわからないが、一味の目の前で携帯が鳴ったりするよりはずっと安全だ。
……。
呼び出し音5回めくらいで、相手が出た。
誰だ……?
『はい……』
真奈だ!
「真奈か!? 俺だ!」
『僚!?』
電話の向こうの真奈も驚いている。
俺の受け答えを聞いて、泰明が俺の携帯に耳を近づけた。やはり、気になってたまらないんだろう。
「大丈夫か! 今、どうなってる!?」
『どうもこうも……あなた、どうしてこっちの電話を鳴らしたの?』
「いや、やつらの前で携帯鳴ったりしたら、刺激することになっちまわないかって思って」
『よかったわ。……実はあの連中、この建物の周囲をセンサーで囲ったのよ。人間や物や電波や……とにかく何かが触ると大きなアラームが鳴るみたい。つまり、私たちが外へ逃げたり助けを求めたりできないようにしたの。しかも、鳴ったら即座に全員を殺すって……』
――俺は青くなった。
もし俺が部屋の電話じゃなくて携帯を鳴らしていたら、その時点でセンサーが作動して、取り返しのつかない事態になってたわけだ……。
『でも、こうやって線でつながった電話で話す分には問題ないみたいね。あの連中もそこまでは考慮してなかったのかしら』
「今時、そんなタイプの電話は骨董品だからな。うっかり忘れたって無理はない。……と、それよりお前、さっきの質問、答えてもらってないぞ。中の様子はどうなんだ?」
『大丈夫、落ち着いてるわ。静かに助けを待った方がいいと思って、みんなおとなしくしてるの』
女たちは助けを待つつもりか……。
だが、その「助け」が中に入れないんじゃどうしようもない。
やっぱりここは、俺たちが何とか知恵を出して女たちを救い出すしかない。
真奈がどう言ったとしても、俺は俺たちの意見を述べようと決めた。
「真奈。俺と泰明とで考えたことだ。……例え警官隊が助けに来ても、お前らが中にいる間は突入はできない。だから俺たちは俺たちで、何とかお前らの救出作戦を練ろうと思う」
『危ないわ! 余計な真似はしないでちょうだい!』
案の定、真奈はそう言った。だが、引き下がることはできない。
「真奈、よく聞け。俺や泰明は、ある程度は中の様子を知っている。お前はリアルタイムで知ることができる。しかもこの電話はつながってて、やつらはまだそれに気付いてない。チャンスなんだ。あとは頭を使えば、きっと何かいい方法が見つかるはずだ!」
……真奈はしばらく考えていた。
そして、やがて俺たちの気持ちをわかってくれた。
『……そうね。それは私たちにしかできないわ。了解よ』
「よし!」
希望が見えてきた。隣の泰明もほっとしている。
『じゃあ、私たちは何をすればいいかしら』
真奈は聞いてきた。
中にいる女たちにしかできないこと……何があるだろう。
俺は考えた。
A まずはセンサーをどうにかすることだ。スイッチの場所を探ってもらおう。
B あの連中のことを知りたい。正確な人数と今の居場所を調べてもらおう。
C 何とか連中のひとりから武器を奪って強行突破、なんてのは無理かな……。