Maintenance Note No.47
2001年8月1日〜4日 サーキット走行準備とその後の悲劇
富士スピードウェイでの走行会のため準備と,走行後の後整備をした
ところが,ガレージでR6を倒してタンクを凹ますという大失態を演じてしまった

 8月1日は楽しみにしているサーキット走行会だ。高速コースの富士スピードウェイを1時間走る予定。バイクはもちろんYZF-R6だ。そこで,走行会に備えてR6の整備だ。
 といっても特別なことはほとんどなく,いつも通りの整備と点検をするだけだ。考えられるのは,
・オイル交換
・タイヤ交換
・保安部品取り外し
・オイル漏れ,ボルトの緩み,ブレーキ,チェーンなどのチェック
・タイヤ空気圧,サスペンションの調整
といったところだろう。オイルは前回の交換から2500kmほどなので,換えるにはちょっとだけ早い。タイヤもまだ大丈夫。ライトやウインカーなどは,今回の走行会ではテーピングだけでOK。ボクのR6はポジションランプをウインカーに改造してあるから,フロントのウインカーボディは取り外し済みだ。
 空気圧はちょっと悩んだ。真夏は路面温度が非常に高くなるから、低めにしておいた方が走行中には適切な空気圧になるはず。ただ,それがどれくらいが良いのか分からない。伊豆スカなどを走るときは2.3kg/cm2なので,少しだけ低い2.2kg/cm2にセットした。あとはチェーンを清掃,給油して準備完了。
 走行会の当日はよく晴れて暑かった。その時の話をするのはこのコラムの趣旨ではないので割愛するが,初めてのサーキット,それも屈指の高速コースはとんでもないスピードが出て怖かったというのが正直なところ。無我夢中で走るうちに1時間が過ぎてしまった。
予想以上に熔けたタイヤ
 さて,無事に走行会を終えたので,改めてマシンをチェックする。まず驚いたのがタイヤだ。高い路面温度とスピード,そして1時間近く連続して走行したため,トレッド面がドロドロに熔けてしまった。表面が毛羽立つといったレベルではなく,文字どおりゴムが熔けて流れ出し,さらにそれがめくれ上がっている。想像以上にタイヤに大きな負担がかかっていたようだ。BT-010はハイグリップ系のタイヤなので,なおさら消耗が激しいのだろう。
 ブレーキはローターに焼きが入ったように黒く変色している。富士スピードウェイでは,240km/hから突っ込んでいく1コーナーをはじめとして,3つのシケイン状のコーナーとヘアピン手前で急減速するためブレーキを酷使する。ボクのレベルでは,R6のブレーキは全く音を上げることなく最後までよく働いてくれた。パッドは純正ではなく,セミメタルの「ウルトラアロイ70」(RKエキセル)だが,効きは十分だった。
 サーキットで全開に近い走行を続けたので,オイルを交換することにした。今回もオイルはSilkoleneの「Pro4 15W-50」だ(オイルの詳細はメンテナンスノートNo.39参照)。これまでのフィーリングはまずまず良いから継続して使う。それに,エンジン内部のオイルは2〜3回交換しないと全量入れ替わらない。毎回違うオイルを試すよりは,少なくとも2回は連続して同じオイルを入れた方がよいだろう。
洗車してチェーンに給油
走行前は洗車してチェーンに給油



ライトはカッティングシートで塞いだ
ライトはカッティングシートで塞いだ
ケロイド状のタイヤ
ケロイド状のタイヤ



見るも無残な姿に…
見るも無残な姿に…




タンクべっこりの悲劇
 オイル交換を終えてカウルを装着する際,思いもかけない悲劇が起こった。ガレージの中でメンテナンススタンドをかけようとした時,スイングアームからスタンドがガクッと外れてしまった。バランスを崩したR6は,向こう側へぐらりと傾く。慌ててシートカウルを抑えるが,傾き始めたバイクを押さえれるはずもなく倒れてしまった。横たわるR6を見ながら呆然とする。
 メンテナンススタンドを一人でかけると,こうした危険があるため,いつもはガレージ内の階段にぴったり横付けしているのだが,今回は作業中だったためガレージの真ん中にいたのが仇になった。階段とバイクの間に隙間がないため苦労して起こす。
 そこでショッキングな光景を目の当たりにする。なんと,タンク上面がベッコリと凹み,塗装も広い範囲で傷つき,剥げているではないか。倒れた際に,タンクが階段の横に当たったのが原因だ。ほかには全くと言ってよいほど被害はないのに(マフラーは少しだけ内側に曲がり、カーボンフェンダーの一部が割れた),よりによって一番高価なタンクが凹むとは。サーキット走行で転んだというなら諦めもつくが,ガレージの中で壊すなんて…。タンクが凹んでボクもへこむなんて洒落にもならん。
 がっくり肩を落としながら近所のYSPに向かう。純正タンクの5万6000円という価格にさらにショックを受けながらも,仕方なくパーツを注文した。とぼとぼと店を出て,R6のコックさんことコタローさんに電話する。「タンク凹ましちゃったので,レース用の予備タンクに使いません?」と聞いたら,逆に「うちにも予備があるから,見てもらって,よければ使ってください」というお話。これは見なきゃ損とばかりに,お言葉に甘えてタンクを見せてもらいに駆けつけた。いろいろあって,結局そのタンクは使わずに新品を取ることにしたのだが,こういう時に救いの手を差し伸べてくれる人がいることはうれしいものだ。
 それにしてもパーツ代は痛い…。これでマフラー交換はまた三歩くらい遠のいてしまった。