王城から、すぐというわけではないが大して遠くも無い。
馬を走らせれば数日と経たずに着いてしまう、そこにあるのは深い森。
陰鬱すぎる、森。
噂では、この森にはぽっかりと広く整備された土地があり、そこに一軒の館があるのだという。
「お宝が眠っている」
「化け物が住んでいる」
「中に入れば二度と出て来れない」
「運を使い果たせば出てはこれるが、呪われる」
「あらゆるものを奪われる」
「古の魔神の力を得られる」
挙げればきりが無い程の噂が取り巻くものの、確かなのは
「館が存在する」
その一つだけ。
何故そのような所に館があるのか。
何か理由があってわざわざそこに存在するものなのか。
理由など無くただの物好きがこしらえたものなのか。
知る者は居なかった。
確かめようとする者は時たま現れたが、結論を持って帰ってきた者は無かった。
それが一層噂を増やすことになってしまう皮肉な現実。
…………。
ある日のこと。
空はにわかに暗雲が立ち込めた。
たちまち鳴り響く雷鳴の轟音と降り注ぐ雷光・豪雨。
(神よ----いや、悪魔でもいい)
(誰か、私に…力を!!)
(愚かな者たちへの復讐の力を!!)
雷が一つ。
王城の方角に落ちた。
その日が、様々の始まりだった。
やがて雷雨は過ぎ去り、そして駒は動き出す。
赤く染まりゆく盤面の上を。