HOME参考文献著書紹介往復書簡

私の声質や録音状態に疑問を持たれる方、
平家琵琶の音楽性に馴染めない方からも、
感想をいただいています。

通常は、こういったものは公開しないのかもしれませんが、
皆さんに公平に判断していただきたいと思い、
転載のご許可をいただいた往復書簡を一例ご紹介します。
なお、当該メールの方は、最初から本名も住所も開示しておられましたが、
お名前等を伏せるため、文章はごく一部変えさせていただきました。
二次使用は固くお断りします。
 初版:2004年9月23日
最近歴史に興味を持ち、図書館を利用して本を読んでいます。
目で読むだけでなく、耳からも感じたいと思いテープやCDを
探しているときに、本屋でCD−BOOKを見つけました。

正直に言って低音が全然出ていなくて、期待はずれでした。
女性ですから低音が出ないのは仕方の無いこととは思います。
でも2千円近くも払った読者としては納得できません。
これでは詐欺に会ったようなものです。
とても心配です。 2004年9月21日(会社員・A)

平家琵琶の鈴木まどかです。
メールを拝読いたしました。
はじめての本に選んでいただいた御礼申し上げるとともに、
ご期待に添えなかったことを残念に思います。

ご指摘のとおり、私は低音部が響きにくい声質をしております。
また、音響機器の操作で重低音を強調する音楽が流行っている昨今、
生の声だけの「語り」が聴衆の耳に馴染まないことも否めません。
ですから、講談社からCDの提案をいただいたとき、少し悩みました。

しかし、幼い頃、師匠の師匠(おじいさん先生)にこういわれました。
「自分(館山甲午)は、記録作成等の措置を講ずべき無形文化財に
認定されたけれども、若い頃に録音したものが無い。
どの年齢でも大切な記録になるから、どんどん録音しなさい」 と。

平家琵琶の伝承では、声は持って生まれた声で良く、
小さな部屋で、詞(ことば)が聞き取れればよい、とされています。
師匠からも、声質・声量は巧拙とは無関係であり、
相伝(免許皆伝)としての技量は問題なしと太鼓判を押されました。
そこで、講談社とも協議を重ね、私のありのままの声、すなわち
平家琵琶本来の「語り」を記録するために、小さな空間でライブ録音しました。

なお、参考までに。
歌謡曲のCDは、商業用録音スタジオの機器で声質を操作して、
何度も録り直しをしたものから上手なところをつなぎ合わせて作成します。
同様に作成した日本の古典音楽CDは、税抜きで3000円が相場です。
(古いテープの復刻CDは2500円程度。)
当初、拙著は書籍価格税抜き1600円・CD【無し】で販売予定でした。

もし、まだ納得がいかないのであれば、
売買契約を結んだ書店か、お近くの消費生活センターにご相談ください。
出版を決定した講談社に意見を伝える方法、古本屋に売却する方法もあります。

それから、A様にお願いがございます。
いただいたメールとこのメールを、私のホームページに掲載させて頂けませんか?
消費者には、「意見を反映される権利」という権利があります。
消費者が述べた意見を、企業が汲み取って改善努力する、という意味です。

今後も、A様と似たような感想を持つ方が出てくると思います。
本を買う前に、ホームページを見てから検討する人もあると思います。
低音部が出ていないのなら買わない、と決める方の指標になりますし、
それでも買うよ、と仰る方もあるでしょう。
どうぞよろしくご検討くださいませ。

今後とも一層の精進をして参ります。
ご指導・ご鞭撻のほど、お願い申し上げます。

鈴木まどか  2004年9月21日
早速ご返信を頂き有難うございます。
返信がくるとは思っていませんでしたので、 メールを読みながら少々戸惑っています。
鈴木様個人に対してどうのこうの言うつもりで メールを送ったのではありません。
本を買ったのは東京駅構内で、 通勤途中に時々立ち寄り利用しています。
歴史小説が好きで平家物語などにも 興味が出てきたところでしたので、
書店の店頭でこの本を見つけ早 速買い、電車の中で聞きました。
感想はメールに書いたように とても聞きにくいものでした。 

しかし手放すつもりは有りません。
返信を読みながら思いま したが、平家琵琶を聞く状況も大切ではないかと。
この次の休 み、家族が寝静まった時に
鈴木様と向き合ったようなつもりで 、静かに聞いてみるつもりです。

大変失礼なメールを送り、申し訳ありませんでした。
鈴木様の益々のご活躍をお祈りしております。

メールを利用して頂くのはOKです。  2004年9月22日(会社員・A)

お返事ありがとうございました。

私は消費者窓口での勤務経験と、 消費者教育に関わっていた経験から、
頂いたご意見、特にお名前やご連絡先を明記してのご意見には、
可能な範囲で善処したいと考えております。
少し不思議に思われたかもしれませんが、
それが、昨日のうちに返信をさしあげた理由です。

日本の古典音楽は、現代の音楽とは違う趣のため、
耳に馴染まないことが多々あるのは事実です。
人それぞれの嗜好もありますから、
A様が静かなところで平家琵琶をお聞きになっても 感想は変わらないかもしれません。

でも「平家琵琶を聞く状況」を考えていただけたこと、
それを知らせてくださったことを、 とても嬉しく思っております。

鈴木まどか  2004年9月22日

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