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上歌が五七・五七七である理由



上歌(あげうた)は、和歌を詠唱するときの曲節(旋律形式)です。
現代人の常識として、和歌は
前半(上の句)が<五・七・五>、後半(下の句)が<七・七>です。

ところが、上歌の場合、ほとんどが
前半が<五・七>、後半が<五・七・七>で構成されており、
前半と後半の間に、「」という、付属的意味合いの曲節が存在します。
旋律も、前半は比較的高音域、後半が低音域で、語ります。

私は習い始めた頃から、これが不思議でたまりませんでした。
しかし私が今まで読んだ、先人や学識者の文章に、これを指摘したものはありません。
  あるとの情報をいただきました。調査中です。2005年6月27日
  中間報告:ひとつの論文を読みました。上歌の音域に着目し、
  音高の特徴からは、<五><七・五><七・七>と区切られると考察しています。
  私の述べたいのは、そういう音域の特性があるにもかかわらず、
  どうして「下」がそこに存在するのか、ということです。
  このテーマは、時間をかけて練る必要を感じています。2005年7月2日

前半の<七>の最後の音の語り方が、どことなく
歌会始の「ナントカノ――――――――――ォッ」の「ォッ」に似ているように思い、
雅楽に由来する旋律なのかな、という印象は持っておりました。

昨年、ある文章に出会いました。
出会うといっても、思い起こせば高校生のときに習っていたことです。
それは「万葉歌は五七調である」というものでした。
その文章をみた瞬間、私の疑問は解決したのです。

上歌の旋律は、おそらく雅楽に由来する。

特に漢詩を詠唱する「朗詠」「郢曲(えいきょく)」
和歌を詠唱する「催馬楽(さいばら)」と関連が深いと思われる。

ここでいう和歌とは、そもそも万葉歌など、五七調で作られたものである。

したがって、「平家物語」中の和歌が、
<五・七・五><七・七>で構成されていたとしても、
旋律上の特徴から、<五・七><五・七・七>と詠唱することになる。


口伝・秘伝を礎に、演奏・研究を積み重ねていくと、
今まで「知っていた」ことが、「実感」になる瞬間があります。
秘伝に基づくものは、相伝者にしか実感できないことですし、
Web上に軽々しく書くことも憚られますが、
口伝に基づくことについては、当サイトで発表することによって、
学術研究の参考になればと思っております。
ただし学術論文ではありませんので、引用は慎重にお願いします。

余談ですが、本居宣長の幅広い研究分野には「平家物語」と「万葉歌」もありました。
ひょっとしたら、宣長さんは、このことに気づいていたかもしれませんね。

Copyright:madoka 初版:2005年6月23日 現在改訂作業中です 2005年6月27日



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