HOME研究ノート雑感

学術目的のページを作っておきながら、遅筆なので、
予定しているテーマについて、雑感を記しておきます。




晴眼=好事家か?

「津軽藩の晴眼好事家系」という表記を見ることがあります。
晴眼(せいがん)とは「めあき」のことです。

明治維新までは、当道制度という福祉制度によって
平家琵琶を伝える盲人が保護されていたため、
晴眼者は相伝しても系譜に載ることはありませんでした。
また、茶人・歌人が教養として学んだ例もありますので、
風流人という意味での「好事家」は存在したと思います。
これが、晴眼=好事家という誤解を招いたのでしょう。

さて、徳川幕府は将軍家の法要に平家琵琶を摂り入れたので
全国の藩主が高位の盲人を抱えていました。
ところが、津軽藩(後に弘前藩)には該当する盲人がありません。
そこで、藩主の参勤交代に同伴した私の先祖が、藩主より、
平家琵琶を修得・相伝して弘前の盲人に伝えるよう任命されたのです。
つまり私の先祖は、風流や教養だけの理由で学んだのではなく、
徳川幕府の意向を守る、公の仕事として相伝していたのです。

Copyright:madoka  初版:2003年12月23日



「唄う」?「一曲」?

平曲をよくご存じない方は、しばしば「歌う」「唄う」「謡う」
と表現されます。決して間違いではありませんが、
「語る」と表現するのが最適です。

ちなみに、「祇園精舎」や「那須与一」などを数えるときは、
「一曲」や「一番」ではなく、「一句」「二句」と数えます。

Copyright:madoka  初版:2002年4月27日



「大秘曲」?「奥許し」?

平曲をよくご存じない方が作成するHPで見かける単語ですが、
私が今までに読んだ文書や記録には、そのような表現はありません。
平家詞曲の最後に修得を許されるのは「大秘事」、
大秘事を修得すると「相伝」となります。

「相伝」は免許皆伝と同じ意味で、もちろん、その旨を記した免状を頂きます。
秘事を語る時は琵琶で「秘曲の手」を弾くので、「秘曲」という言葉は存在します。

Copyright:madoka  初版:2002年4月27日



甲午師は語り方を変えたのか?

平家詞曲の相伝者は、旋律や調絃のしくみがわかりますので、
伝承を崩すことなく、語りに表情を持たせることが可能です。

たとえば、節回しの中には、緩急を使い分けて良いものや、
西洋の音階にすると一音くらい違えても良いものが、存在するのです。
詳細は相伝の課程において伝授されます。


私は甲午師が若い頃の演奏を聴いたことはありません。
でも、平家詞曲相伝者として、確信を持って言えることがあります。
「語りの表情が豊かになったことで、
わずかに違って聴こえることがあるかも知れませんが、
それこそが、真の伝承の結果です。
決して、伝承を変えたものではありません!」

Copyright:madoka  初版:2001年4月25日 改訂:2002年3月17日



耳無し芳一

盲人にまつわる数種類の怪談をもとに、小泉八雲が創作。
描写の中には「当道座(とうどうざ:盲人団体)」に関する部分、
平家琵琶らしき部分、薩摩琵琶(または盲僧琵琶)らしき部分
などが含まれています。

このお話を影絵で楽しみたい方は、リンク先の 影絵で語る民話の世界へ。

Copyright:madoka  初版:2001年4月25日



楽琵琶と平家琵琶

「琵琶の種類」のページにも記しましたが
楽琵琶(がくびわ:雅楽の琵琶)と平家琵琶は同じ構造です。
小さな楽琵琶を平家琵琶として用いることが多いようです。
「平家琵琶は楽琵琶と盲僧琵琶の折衷」とするのは俗説です。

Copyright:madoka  初版:2001年4月25日



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