「週末とはいえみんな早く帰りすぎだってば」とひとり研究室で身勝手な事を思う,憂鬱なフライデーナイト.(←ここ書いたときはまだ20時ちょうどだった)
学位取得まで寝る間も惜しんで打ち込まなきゃならんし,打ち込みたいのに,怠け心と雑念でさっきから仕事を抱えたままぶくぶくとプールの底に沈んでいくような気だるさ.
そこへこんな記事を見つけて怒りと悲しみでガラスのコップを砕き割りたい衝動に駆られてますよ.
電車男ファッションコーディネイトコンテスト!
「アキバ系男性を変身させる2005A/Wのファッションコーディネートをデザイン画で募集いたします。」
それはまだいい.しかし告知ポスターの
「あなたの隣の電車男を救え!」
「アキバ君をこんな風に変身させてください」
って文句は,ファッションに疎い者を小馬鹿にしているととられても仕方ないんじゃないのか?
で,そのコンテンスの結果発表が昨日付けのライブドアニュースで取り上げられていたわけだが,さらに僕の反感を増大させたのがこのくだり.
入賞作品は12月に総合法令出版株式会社より出版される書籍「電車男スタイリングバイブル〜ファッションオタクから愛を込めて」に掲載されます。読者のアキバ系男性は、応募されたデザイン画を見てそのまま買い物に出かけることで、気恥ずかしいショップ販売員の意見等を聞かずに、即、オシャレ男性に変身することが出来ます。また、当コンテストでは、女子学生の応募者のみを対象に「アキバ系男性でもこんな風に変身したなら付き合いたい」といったアンケートも同時に募集いたしました。
(アンケート結果発表は現在集計中ですので、後日発表いたします)
もう,呆れてものもいえなくなるほどの見下しっぷり.
そうやって服装コンプレックスを抱える人間をいたぶって,さらにはこの恩着せがましさ.
「絶対お前らのメシの種になんかに,ならねえからな!」
なにせ電車男ブームに便乗した「アキバ系にもファッションに金をかけさせよう」という消費の圧力からか,もはや伝説になりつつある脱オタサイト脱オタクファッションガイドまでもが書籍化.こちらの発売は10月26日.
僕はアニメとかゲームとかネット(MMORPGとか)にはまってるわけではないので「狭義の」オタクではないけれど,研究者として「大学で研究して食っていけるかどうか」というあたりまできてしまっているので,世間一般からみれば十分にオタクっぽいのだろう.なんと言っても気質もさることながら,その気質にぴったりのファッションセンスを持ち合わせているのだから.(余談だが製薬企業の研究所なんかは優秀な頭脳が最高のパフォーマンスを発揮できるように「いたれりつくせり」状態で,しかも就活で狭き門をくぐり抜けた洗練されたみすぼったらしくないエリート集団であり,大学の研究室とはまるで雰囲気が異なる,らしい)
アキバ系についての深い考察で他を圧倒する完成度を誇るシロクマ氏のサイト「汎用適応技術研究」は読み応えのあるテキスト.これを読むと,いかに自分がファッションというものに無興味であるかが痛いくらいに伝わってきた.無残なまでに自分のファッションにおける立ち位置が把握できるというものだ.
ファッションにコンプレックス抱きまくりの僕にはこう映る.
「やはりファッションすらこなせない人間は嘲笑の対象,差別も許されるというのがこの世の真実なのでしょうか.」と.
どうも近年のその雰囲気というのは,「自然な感情の発露」こそが人間として自然だし,正しい姿だ,と考える安易な風潮から来ているのではないか.
世の中は女性の消費を促すため,女性を「持ち上げる」ことに余念がない.そうなると女性の思考パターンであると思われることの多い「心地の良いもの=善,不快なもの=悪」を全面的に肯定したマーケティングがなされる.その雰囲気の中,女性が,そして男性が感情のままに行動することが推奨される世の中になってはいないか.今や大人もコドモも「そう思っちゃったんだからしょうがないじゃん」と,自分の感情にだけはえらく素直だ.そんな感情の全面肯定は理論的思考以前の動物的本能でしかないのでは?
クソッタレ,人間なんて動物以下だな.
追記:この記事には著者であるアパレルクリック社長の菊池さんが直々にコメントをくださり,それがきっかけで「非モテ」との間で大議論になりました.今となっては懐かしい思い出です.
|