守護者ケンタルモン!

 脚本:吉村元希 演出:早川啓二 作画監督:伊藤智子
★あらすじ
 さて、場面は光子郎とミミの動向へとうつります。
 密林生い茂る島へ不時着したミミとパルモンは、追い剥ぎのスカモン&チューモンに襲われ(?)ることになりました。ところが、ミミの鞄を奪おうとしたスカモンたちは急におとなしくなります。デジヴァイスが発したふしぎな光のおかげでした。
 彼らの案内で、ミミとパルモンは隣の島にいるらしい光子郎を探しにむかいます。

 当の光子郎はというと、探検のとちゅうで発見した遺跡を調べていました。そこには巨大な黒い歯車が刺さっており、調査をすればもどる方法やなぜ島が分かれたのかが分かると判断したからです。しかし、あまりに没頭しすぎてミミの怒りを買ってしまいました。
 その場を飛びだしたミミを待っていたのは、遺跡の迷路。あとを追っていったテントモンともども迷ってしまいました。光子郎は遺跡の解析を完了させ、地図にしたがってミミたちのナビゲートをはじめます。

 そこへ襲ってきたのは、黒い歯車にあやつられたケンタルモン! ふた組がどうにか合流して難をのがれるものの、今度はレオモンの襲撃が! 大ピンチを救ったのは、またしてもデジヴァイスでした。これこそ遺跡にしるされていた、闇をはらう伝説のデバイスだったのです。

 黒い歯車は、やけを起こしたミミの蹴りであっさり逆回転をはじめました。
 戻りはじめる島を見ながら、光子郎は考える前に実行してみることも大事だと悟るのでした。



★全体印象
 いよいよ10話代です。タイトルコールは天神有海さん(光子郎)で、背景の影絵はタイトル通り、ケンタルモン。
 9話で書いたとおり、同時進行エピソードのひとつなので、裏では太一とヤマトやほか三人の冒険が進んでいることになります。ただ、時間経過的にはかなりアバウトというか状況まかせになってるので、今回は墜落した直後くらいにいきなり朝になってたりしますが。

 前回を思いだしてみると、太一は氷の島へ流れ着いた直後くらいにユキダルモンの襲撃を受けてます。そのときはまだ夜中で、恐らくは夜どおしかけてヤマトのいる島へ渡ったことになるのでしょう。ヤマトも一度倒れてガブモンの看病を受け、かなり長い時間休んでるはずなので、ふたりが合流したのは朝から昼にかけてということになります。光子郎とミミが合流した時間帯も大差ないものと思われますがそれまでの間、彼ら2組がなにをしていたのかがスッポリ抜けていました。

 まあ、ミミ組は明るくなるのを待ってから行動を開始し、 光子郎組は休みながらもつぶさに現在位置を調査した(タフだな光子郎…)ものと推測できるんですが…そうすると、ミミのいた島には刺客が放たれていなかったことになります。スカモン&チューモンに襲われてますが、彼らはデビモンの配下ではありません。つまり、デビモンは全員がどこへ飛ばされたかを正確には把握してなかったことになります。ハッキリ確認したのは太一だけだったはず。でなければ太一がいきなり襲われ、ミミが夜通し無事だったことへの説明がつきません。
 レオモンが来ていたのは、配下におさめたケンタルモンと協力させる心算だったんでしょう。そうすれば2対1にできる可能性が高くなります。が、その目論見はひと足早く崩されることになったわけですが…。

 ともあれ、今回重要なのはミミと光子郎の衝突(というか、ミミの一方的激昂)です。
 光子郎にもちろん悪気はないのですが、悪気がないからといって過失がないということにはなりません。ましてやそれで知らぬ仲ではない女子を泣かせてしまったのですから、彼にとってはけっこうな衝撃だったと言ってもいいでしょう。あまりそういう風に見えないのは育ちのよさと、彼自身の性格によるところが大きいのかも。ですが、言葉には動揺をうかがい知ることができました。
 そんな光子郎に注意や忠告をしながらも、ミミへはフォローを入れるテントモンがうまく欠点を補い、また浮き彫りにしてくれています。

 で、6話を受けてまたしても汚物系デジモンに襲われ→好かれるミミですが、泣いたり怒ったり喜んだりと、表情のゆたかさはあいかわらず。太一とヤマトの場合に同じく、光子郎と好対照をなしています。自分の感情には絶対にウソをつけない彼女なので、孤立の多いこの回ではとくにワガママで短気な泣き虫に見えますが、その一方、光子郎のフォローに対しては素直に笑顔を見せていました。目の前の複雑な現実にみせる、ちゃぶ台をひっくり返すような豪快な行動もそろそろ本格的に表へ出てきてます。
 パルモンも同じように泣いたり笑ったり、ミミの気持ちを代弁したりしてくれてますね。

 ただこの回、かなり無茶な展開もかいま見えます。遺跡を解析し、マップを作るまではいいのですが、音声まで拾えて相互にやり取りまでできるというのはかなり無理があるような…(そもそもミミ側にはどっから声が聞こえているのだ)。光子郎のパソコンは今後もどんどん万能になり、いろんな役割をこなしていますけど、ここまで無茶な例はたぶん、あまりありません。
 それに、行き止まりの壁を光子郎たちに破らせ、力技で合流させるあたりも乱暴な展開。光子郎のことですから、あの場所は壁が薄く、経年劣化も加味すれば自力でも破れると判断したんでしょうが、おかげでここだけえらくパワフルな少年に見えちゃいます。まあ、パルモンもいたんでまるっきり自力というわけじゃないんですけど…。
 そんなわけでキャラ描写は問題ないものの、それ以外ではやや粗さが目立つ回です。うーん、残念。

 作画には伊藤智子さんが初登場してます。ただ、今回はそれほど特徴が出てません。ミミは可愛らしかったけれど。



★各キャラ&みどころ

・太一、空、ヤマト、タケル、丈
 今回はお休み。


・光子郎
 出て来たとたんに探求オーラをばりばり出しており、ちょっと近寄りがたい雰囲気まで感じさせます。
 24話でも単独行動をしているので、とにかく自分の目で現状を調べないことにはおさまらない性格だということが確認可能。しかも今回は、目の前の遺跡以外にこれといって手がかりになりそうなものがないと考えていたようなので、それで余計に没頭してしまったんでしょう。
 ただ、といってもすぐ隣に同じような島があるし、そこを調べてみようという手があるはず。そうしなかったのは、「やみくもに捜してもどうしようもない」と頭の中で結論づけて「よけいな」可能性を排除し、遺跡調査に専念しやすい状態に心理を構築したからかもしれません。

 こうした「頭の整理」はなんとなく、彼がふだんからやってた事という気がします。そうしようと思えばできるのにやらず、あくまでも自分の得意分野にとどまって心を落ち着かせ、同時にいま一番興味を惹かれている対象への好奇心を満足させる……つまり、逃避という言いかたができてしまうんですが。そして、それをなんとなく自覚していながら自分自身への効果の高さゆえ、なかなか脱することができない。
 もちろん、彼の集中力と探求心は最大の武器であり、長所です。重要なのはやはり、それとうまくつきあうための経験でしょうかね。

 ミミの蹴りは、こうしたもろもろをあっさりひっくり返してしまいました。
 この二人をくっつけたがる人が多いのもわかります。


・ミミ
 彼女の長所は、いい意味で頑なさがないことかもしれません。
 自分の主張というか、感じ方は持っていて、それを表明せずに我慢するようなケースは皆無。ですが、相手が示した反証や行動へ納得できるならすぐに考えをあらためることができます。まあ、悪い言いかたをすれば感情のままに動いているだけなんですが、彼女の個性的なところは、それがあらゆる存在を対象にしていること。相手に少しでも誠意や話せばわかりそうな余地を感じれば、分け隔てなく素直に接することができます。これは彼女にとってごく自然な感情のはずで、そして最後までその気持ちにウソをつきません。

 だからこそどんなデジモンにも好かれ、のちに彼女自身も彼らの声を聴き過酷な現実を確認して、自分はどういう気持ちで冒険をしてきたのか、そしてどんな気持ちで冒険を続けたいのかという、最終的な納得をする必要があったのでしょう。


・デジモンたち
 パルモンは光子郎がなかば持っていたと思われる本音を鋭く突いた場面と、翻っては彼の健闘をミミに伝える場面が印象的です。ミミに呼応して泣き出してしまうあたり、どこかで感情がつながってる部分があるのでしょう。
 テントモンはやはり、怒って単独行動をはじめたミミをフォローし、光子郎を弁護する場面ですね。
 どちらもパートナーらしさがとても良く出ていました。

 …ところで、光子郎とパルモンはともかくミミとテントモンはなかなかいいコンビだと思います。
 ボケとツッコミ両方をこなせるテントモンなら、同じく立ち位置をくるくる変えるミミにもある程度対応できましょう。これはつまり、ミミと光子郎の橋渡しもできるってことなんでしょうね。


・ケンタルモン
 メジャーな伝説種、ケンタウロスの名を持っているデジモンですが姿はモチーフとだいぶ違い、機械的な側面もありますね。目などはひとつしかありませんし、手からニョッキリ銃が生えてくるのでデジモンらしいデザインといえそうです。のちにサジタリモンやアサルトモンなど、同系のより強力な個体があらわれますが、彼のイメージを越えることはできていません。

 持ち味は高速移動だそうですが、落とし穴を瞬時に飛び越えたシーンと対レオモン戦のみ。敵だったときにこの能力を戦闘で使われてたらやばかったかもですが、2対1ということもあって比較的あっさり勝ててしまってます。とはいえ、2体ぶんの技をくらって気絶程度ですんでいたり(ダメージはある程度歯車が肩代わりしてくれるのかもしれませんが)、獣王拳をくらってもしばらくすると持ち直していたので、だてにたった一人で遺跡を護っていたわけではありませんね。
 レオモンとはどうやら知己の間柄。おたがい正義感が強そうなので、ファイル島にあっては盟友のような仲でしょうか。

 その立場からか終盤における出番はひじょうに遅く、活躍らしい活躍はありませんでした。出てくるだけマシですが。
 

・ スカモン&チューモン
 6話を受けてまたしてもミミに絡む汚物系デジモンのコンビです。成熟期ですが、ヌメモン同様不潔さ以外にこれといった能力がありません。しかしこのデジモンたちと戦うくらいだったら、まだしも強い相手とやりあったほうがマシってもんでしょう(^^;)

 ここで出番が終わりかと思いきや、チューモンのほうが終盤で登場して一世一代の見せ場を飾っており、当時はかなりびっくりしました。声はくまいもとこさんに山口勝平さんといやに豪華だったのですが、再登場時はちがう人が演じています。さすがに都合がつかなかったんでしょう。
 そのわりに、しっかり獲得したキャラソングではその両者が歌っていたり。結構ラッキーなふたり組です。


・ レオモン
 ケンタルモンを正気に戻したすぐ後くらいに現れました。…よく考えてみたらどうやって来たんでしょう。
 デビモンが刺客をよこしたすぐ後に差し向けられたと考えれば、やっぱり泳いで行ったんでしょうかね。レオモンならできそうだ。
 しかも夕方には始まりの街のほうにも出てくるので働き者です。さすがというべきか…。

 戦闘ではハンティングキャノンを食らってもほとんどダメージがなく、デジヴァイスの光を受けてもある程度耐えて逃げ出すくらいのことはできています。やはり一度支配からはなれているぶん、デビモンからより強力な支配を受けてしまってるんでしょう。その闇の力によって、肉体そのものもかなり強化されている感じです。このへんは13話でより詳しく確認できるはず。


・ 電灯とコンセント
 不条理シリーズその9。古代遺跡にこんなもんがあるというのも相当ヘンですが、突き刺さった黒い歯車もシュールです。



★名(迷)セリフ

「いや、この遺跡のなりたちを知ればきっとなにかの役に立つにちがいない!」(光子郎)

 …まともにセリフをしゃべった途端にこれだと、パルモンの指摘には反論しづらいなあ…。


「あんたに渡すくらいだったらドブに捨てたほうがマシよ! ……いけない?」(ミミ)


 あとに「いけない?」がつくあたりがミミ流。
 …と言ってた人がいます。私も全面的に同意。


「いいウンチになった気分〜」 (スカモン)

 …いいとか悪いとかあるのかなあ、排泄物に。


「はあ…こんなんばっかり……もうイヤ」 (ミミ)

 スカモンから逃げた時のセリフ。
 心中お察ししますがこれもあなたの宿命です。


「…ああ、ミミさん」 (光子郎)

 こ、光子郎はん……(^^;)


「光子郎はどうしてアタシたちのコト無視するの?」 (パルモン)
「無視してるわけじゃないよ」(光子郎)
「じゃあ、どうして口聞いてくれないの?」 (パルモン)
「いまはこのデータを解析する事が大事なんだ。わかってもらえないかもしれないけど、
 結果的にはミミさんたちのためにもなるし…」(光子郎)
「なにがミミのためよ! 自分が好きで機械いじってるだけでしょ!」 (パルモン)
「ちがう、そんなんじゃない…!」 (光子郎)
「ぜったいそうよ! そうに決まってるわ! ウワーン」
(パルモン)

 この間にミミは怒ってどっかいっちゃいます。
 初めて見た時はけっこう感心したなあ、このやり取り。


「いやぁ…光子郎はんはたしかに人付き合いは不器用やけど、そんな悪い人やありまへん」 (テントモン)
「でも、じっさいあたしのことなんか全然アウトオブ眼中じゃないのッ」 (ミミ)
「なにかに熱中すると、ほかのことには気がいかへんようになるだけや。ほんまは、ええヤツ思います」 (テントモン)


 八つ当たりぎみなミミへのフォロー場面です。いいヤツだなあ、テントモン。


「ミミ、だいじょうぶよ! アテにならないかもしれないけど」 (パルモン)
「パルモォン…」 (ミミ)
「光子郎、いっしょうけんめいやってくれているよ!」 (パルモン)


 そしてここでも橋渡しが。しかしこんなときでも歯に衣着せませんなこの子は。


「えろう、すんまへん」 (カブテリモン)

 せまい場所で進化しちゃったコトへの謝罪です。10話といえば、このセリフも外せません。
 その後の定番セリフのひとつにもなりました。


「子供たち…倒す…われらの目的のジャマになるもの…!」(レオモン)
「レオモン、どうしたんだ!? …! レオモン…!」(ケンタルモン)


 短いやり取りですが、それなりの間柄だということがわかります。
 いろいろ想像させてくれるじゃありませんか。


「…そうか、これだ! ミミさんも!」(光子郎)

 すかさずデジヴァイスの効力を有効利用しています。さすがにのみこみが早い。


「…まったく! こんな歯車、腹のたしにもならないわ!(げしっ)」(ミミ)

 いま必殺のミミキック! ミミパワーが暗黒の力をも逆流させます。



★次回予告
 次回は丈と空の出番。どっちかというと丈の暴走がみどころかもしれない…。
 ギャグ話ということもあって、ふたりの顔のくずれっぷりが豪快なことになってます。