コロモン東京大激突!

 脚本:吉田玲子 演出:細田守 作画監督:信実節子
★あらすじ
 時空のゆがみに巻き込まれ、気付いたら東京にいた太一とコロモン。
 闇のデジモンを倒し、もとの世界に帰れたのだろうか? うだるような暑さのなか、疑念と歓喜をいだいて家にもどるのですが、8月1日…サマーキャンプに出かけ、冒険にまきこまれたあの日、あの瞬間からほとんど時間が経っていないことに気付かされます。
 これは一体、どういうことなのか…困惑する太一の前に、風邪で寝こんでいた妹のヒカリがあらわれました。

 なぜかコロモンのことを知っていたヒカリにますます困惑する太一でしたが、ひさしぶりな家での食事や快適な空調になつかしく身をゆだねていきます。
 ところが、テレビのニュースにデジモンが映っていることに気付き、しかも光子郎たちがまだデジモンワールドにいるらしいことも判明しました。しかし、太一はおおいに揺れます。ここにいればもう戦うこともないし、それに夏休みを満喫するつもりが、こんな冒険に巻き込まれて…。

 そんなとき、とうとう家の近くにもデジモンがあらわれました。影のような姿の彼らはすぐに消えますが、今度はべつの方向からオーガモンがあらわれ、おそいかかってきました。太一とヒカリを守るため、コロモンは必死に戦います。危機に瀕したとき、デジヴァイスが輝いて進化がおこりました。同時に時空のゲートが開き、敵を撃退したコロモン=アグモンはひとり、その中へ姿を消したのです。デジモンはこの世界にいちゃいけない……そんな言葉を、太一の耳に残したまま。

 太一はパートナーのため、仲間のため、そして自分のなすべきことのため、必ずもどるとヒカリに告げ、ふたたびデジモンワールドへ身を投じるのでした。

 

★全体印象
 さまざまな意味でジンクス的話数となった第21話です。タイトルコールは藤田淑子さん(太一)。影絵コロモンの背景にはお台場がうつっています。

 いやはや、とうとうこの回に触れることになってしまった…。
 なにしろこの21話は私がデジモンに完全にノックアウトされたエピソードとして、脳裡にレーザー光線で焼きつけられているおそるべき一篇です。はじめて見た時の衝撃はそれこそ頭がい骨強打して記憶すっ飛ばないかぎり、とうてい忘れられそうにありません。私にとってはそれくらい「特別」な回。
 なので冷静な回顧などとてもできそうにありませんし、この回にかぎれば一家言ある方が山ほどいらっしゃると思うので、そちらのほうを参考にしていただくといいと思います。ものすごく細かいところまで見ておられる方もいますし。

 なんでいまだに「何を書いたらいいんだろう」と悩まされるのか…その理由はたぶん、書くことがありすぎて本が一冊できてしまいかねないから、かもしれませんね。実際、それに近いことをやった人がいますし、映画のほうですが01の2作にかぎってだけ専門のムックが出ているという事実をかんがみれば、細田演出の回がどれだけ密度の濃いものに仕上がっているかわかるというものでしょう。細田氏自身からもあれこれコメントが引き出されていますしね(^^;)

 いずれにせよ「デジモンアドベンチャー」という作品の空気づくりに、細田氏の色がひじょうに濃く影響しているのはまちがいないと思います。
 言い尽くされたことですが、要はあの時点でふとこういうお話が挿入され、また最初と最後を映画が括っているので、この3本の柱が共鳴するかのように全体の雰囲気をもぴしりと締め上げているんでしょう。今となっては、少々その傾向が強すぎたとすら感じるほどです。自分の色をバシッと着込んでいる人が抜けてしまうと、見ている側よりも制作側のほうがあわてて、影をひきずってしまいかねないんじゃないでしょうか。まあ、ただの推測ですけど。

 そんなわけで、観た当初はびっくりしていろんな人に見せまくってましたが、少し落ち着いてから考えると、やっぱりこの回を単体で見せるのはどうかと思うのです。これ以前の20話ぶんもすばらしい出来ですし、以降もまたしかり。それら全部ひっくるめて「デジモンアドベンチャー」であり、選ばれし子供たち8人とそのパートナーの冒険や悲喜こもごもを見てこそ意味がありましょう。

 そういう目でみても、このお話には「イレギュラー」であり「橋渡し」であり「新たな決意」でもあるという、ちゃんと次へつながる役目があります。
 ですから「ぜひ見てくれ」とは今でも言いますが、 「これだけでもいいから見るといいよ」とは、少し前から言わないようにしました。

 それでもこのお話を見ると、今もなおデジモンのいる世界への想いが揺りおこされます。
 語って語って語り抜いて、まだ足りない。大きな源泉のひとつはまちがいなく01=無印であり、劇場版であり、この21話なのです。



 いやー、それにしてもやっぱりこの回のヒカリはエロい…(貴様、最後がそれか!!)



★各キャラ&みどころ

・太一
 仲間といっしょのときに見せる天然リーダーっぷりや、アバウトだけど比類のない行動力といった描写が圧倒的に多い彼ですが、そばにいるのがコロモンやヒカリだけという状況になるとかなり柔らかさってものが出てきます。ですから、この回はとりわけ「普通の少年」度合いがたかい。むしろ、ふとあそこにほうり出されたことで「戻った」といってもよさそうです。ヒンヤリとした日陰や、穏やかな景色がよけい彼の不安をあおっている。
 もちろん、大半は演出の道具として仕立てられたものです。でも、太一という少年…いや、人間により厚みというか、幅が出たのもたしかで、しかもそのわりに今までと違和感がありません。言うまでもないことでしょうが、かなり計算して立てられていますね。

 ただ、彼は勇気の紋章の持ち主であり、すべてを乗り越えて戦う決意をしたばかり。
 選んだのは自分の身の安全ではなくこの世界とあちらの世界のため、そこでいまだ彷徨っている仲間たちのため、自分から冒険に飛び込むことでした。
 そう、八神太一はたしかに自分の意志で、デジモンワールドへ行くことを選んだんです。巻き込まれてただうろたえていた1話のころとは、そこが決定的にちがう。なぜなら、彼は知りすぎてしまったから。向こうで起こっていることがこちらにどんな影響を及ぼしていて、それを正すために何が必要なのか。
 そして、アグモンに必要なのは誰なのかを。

 もうひとつ特筆しておきたいのは、やっぱりヒカリへの驚くほど優しい目線と言葉です。いかに演出とはいえ、あんな態度だれにも見せたことない。
 ヒカリが全開バリバリなのは見ればわかるんですが、彼もそうとうのもんです。根底に流れているドキリとするような倒錯の匂いは、そういうところにも原因があったんですよね。あらためて実感してしまいました。声のかけ方がまた白眉で、藤田淑子さんの本領発揮といったところ。


・ ヒカリ
 出ました新レギュラー。私にとってはいろんな意味でこの作品中、最強の存在です。
 でもそれは、初登場であるこの21話の演出によるもの。もし通常と同じふんいきの回がデビューならこれほどひっくりかえらなかったでしょうし、ここでのイメージをあとに引きずることもなかったことでしょう。記憶が正しければ「本当は明るい子です」とスタッフによるフォローがさかんだったのですが、はっきりいってまったく説得力がありませんでした。もちろん、暗い子じゃないのはたしかですけど。

 だいぶこの回限定ですが、彼女を決定的に印象づけたのは、全身からオーラのように立ちのぼる異様なほどの稚い色気、存在感です。
 とりわけ衝撃的だったのが初登場の立ちポーズで、ただそこにいるだけなのに死ぬほど色気があります。それは空気のせいもあるし、服装のせいもあるし、背後にしなだれたポーズのせいもあるし……要は全部なんですが……とにかく、メガトン級の破壊力。生半可な美少女キャラなんぞはロケットブースターで裸足をすり切らせながら逃げ出すでしょう。シリーズ通してベストな絵をいくつか挙げろといわれたら、このカットをかならず推しますね。

 …冷静になると我ながらなんだかなぁ(^^;) と思わされたりしますが…こればかりは嘘をつけないというもの。
 まあ大小の差はあれ、似たようなことはみんなが感じていたようで、くだんの場面をそのままズバリ立体化した方もおられます。

 また彼女はデザイン単体でみても、非常に秀逸だと感じました。髪形にも、あとに登場する普段着にしても特筆すべき記号は少なく、あとはホイッスルを首からかけている程度なんですが、シンプルイズベスト。とても可愛らしく仕上がっています。それだけに、02で記号がふえてしまったことを残念に思ったのは認めねばなりますまい。…というか、残念に思ったポイントはそこだったんだなと今さらながら気付きました。
 はでな方が似合うように立てられてる京はともかく、彼女はあそこまでの服装にせずともじゅうぶん魅力的なはず。オデコ娘になったことにはだいぶ慣れましたが、やっぱり服装だけはいまでもあんまり納得がいっていません。そんなわけで、夏服や冬服の方が好みだったりします。

 …こういう風にあれこれ語れるってことは、やはりどっかで彼女には別の惚れこみかたをしてるんでしょうね、私。
 ひらべったく言えば純粋に「萌える」キャラなんでしょう、ヒカリは。便利な言葉だ。

 それはともかく、演出意図を汲んで普通の妹じゃないように演じたという荒木香恵さんのお声も、ぴったりはまっていますね。
 あのいい意味での舌足らずと色気の同居した声は、波長の合う人にはかなりのアピール力があります。最近あんまりお名前を見なくなってしまったのが寂しい。
 …まあ、それをいうなら天神有海さんや風間勇刀さん、小西寛子さんも見ませんけれど。


・光子郎
 中盤の盛り上げに一役買ってました。うつろな目はこの時点だとなんとも怖くて、何があったんだオマエという感じ。
 あとでああいうオチになったあげく、つながるシーンがあっさり流されたのには笑いましたけど。


・コロモン
 いつにもましてよく動いてます。アワの吹き方も一味ちがいますね。
 それに表情もずいぶんと豊かで、オーバーアクション気味なほどです。そこらへんはほかと一線を画している感じ。ただ太一のことを慮ってみずから離れようとしたり、基本的な姿勢はそのままでした。ただ、もはや太一の方から追いかけていくまでに切っても切れない関係になってるんですけどね。

 アグモンに進化するとぽよぽよした軽さがなくなり、一気に重量感がでてきます。着地したときにそれがよくわかる。
 そうした明確な表現分けをしつつ、いつものノリから逸脱しすぎないようバランスをとられた戦闘に仕上がってますね。

 …といっても、あの作画とレイアウトと動きの時点でもうとっくに別アニメみたいなもんですけど。
 この回のベビーフレイムは、ふだんの10倍くらい威力がありそうです。演出として技名を言わないあたりは一貫してますね。


・幻のデジモンたち
 メラモン、シードラモン、ユキダルモン、ティラノモン、ドリモゲモンが確認されています。
 共通項としてあるのは、 いずれもどこか無気味で文字通りの怪物じみている点。ときどき忘れがちになりますが、彼らはやっぱりモンスターなのですね。
 とくに、目が意外とかわいいティラノモンがあんなに無気味に見えるというのは不思議なものです。

 あと14話とちがい、ちゃんと全部太一が見たことのあるデジモンで構成されているのがポイント。


・オーガモン
 街なかでいきなり襲ってきた個体です。なぜそこにいて、なぜ襲われなければならないのかは、言葉を発しないのもあって皆目見当がつきません。しかしゆきかう人々の間にぬっと倍くらいの身長で立っている異様さや、そのあと団地で繰り広げられるふしぎな戦いの前ではささいな疑問。身のこなしなども根本からちがっていて、ものすごい重量感があります。一発で地面をえぐり壁に大穴をあける破壊力もすごい。

 このオーガモンをふくめ、今回出てきたデジモンたちは多くがファイル島出身になっていますが、たぶんちがう個体でしょう。
 なかには知らないうちに影響を与えてしまっているデジモンもいそうです。


・ 作画
 この回にかぎり、めちゃくちゃな高レベル。映画級とまではいえないかもしれませんが、生半可なテレビレベルは完全に超えてます。
 もともと細田監督がかかわった作品は作画にもかなりのこだわりが出るので、そのおかげなんでしょうけど…これで枚数変わってなかったらすごい。たしか東映には1話ごとに動画の枚数制限があったので、めいっぱいやってたとしてもそれほど大差はないと思うんですが…特例も考えられますけど。
 絵そのものはほぼキャラデザインに忠実で、そこが映画とちがうところです。

 細田氏の最新作「ワンピース オマツリ男爵と秘密の島」も、作画面でかなり話題をよんでいるようですね。
 おなじみの山下高明氏や、テイマーズ初期にも参加していたすしお氏などが大車輪の活躍をしていました。


・ 演出
 上記の高い作画レベルを前提として組み立てられていますから、もう完全に別アニメみたいです。いちいち細かいところまでは挙げませんけど、なにもかもがふだんとは違いすぎ。毎回こうだったら胃もたれをおこすかもしれませんが、そこは細田氏自身もわかっているらしく、みずからイレギュラーな回と位置づけていました。逆に去年夏ごろ担当したTV版「ワンピース」では連続エピソードの途中ということもあって押さえをきかせており、バランス感覚がうかがえます。むしろ、たいていのことは全部計算づくで作ってるんじゃないでしょうか。ほとんどの反応は想定範囲内って気がするんですよね。そういう風にすら思えてしまいます。

 これだけの仕事をやってのける背景には本人の才能もさることながら、徹底的にこだわる製作姿勢があるんでしょうね。いっしょに仕事をしたあの森田元氏をして「レイアウト魔」と評されるほどなので、あらゆる場面に手を入れてそうです。スタッフの人選にもかなりこだわりがあるに違いありますまい。

 そーいえば演出助手に地岡公俊さんがいました。なるほど、ここでも学んでたのか。


・ 脚本
 で、細田氏が「この人なら」と評するのが吉田玲子さん。
 実力のたかさは当然いうまでもないんですが、今回や映画では細田氏の意向も強く受けているはずなので、さらに一味ちがいます。
 いいものを書くだけに、作品によって落差がもろに出やすい人でもあります。よく比較対照にされるのは「フロンティア」と「ボンバーマンジェッターズ」で、見比べてみればその差は歴然としたもの。ふたつの作品の差がどこにあるか、両方を観た方にはおわかりでしょう。



★名(迷)セリフ

「ねえ、ボクこわい!? ボクこわい!?」(コロモン)

 自分が怖がられるっていう自覚がないんだろうなあ…。
 そりゃずっと幼年期でこないだ成長期になったばかりだったんだから、当たり前かもしれませんけどね。
 「ちょうだいちょうだいちょうだいちょ(略)」といい、今回はとにかくセリフ連呼がめだちます。


(…あれ…。
 そういえば…おれが向こうの世界へ行ってどのくらい経ったんだ?
 一ヶ月? 一年? それとも………
 ひょっとしたら、父さんや母さんはおれのこと、もう忘れちゃってるんじゃないだろうか… 。
 このドアを開けたらぜんぜんべつの人が出てきて 「あなた、だあれ?」 って言われたりして……) (太一)


 長いセリフだなあ。思わず長い長い熟考になってしまい、魚眼レンズみたいになる太一視点の扉が不安をあおります。
 このあとの「ただいま…ごめんくださーい」込みで、いかに長く家へ帰ってなかったのかあらためて突きつけられますね。
 でもこれは、きわめて当たり前の反応かもしれません。

 ところで本編の描写だけみれば、たぶん一ヶ月と経ってないはずです。
 でも、体感時間ってものがありますし。


「1999年の8月1日は…おれたちが、キャンプに出かけた日だよ!!」 (太一)

 驚愕の事実。まだお昼すぎのままだって言ってるので、向こうへ行ってからほとんど時間が経ってなかったわけか。むこうの1日=何秒だったんでしょう。
 このあと少しうたた寝もしてるので、もう少し戻るのがおくれたらえらいことになってました。


「だって、コロモンはコロモンでしょ?」 (ヒカリ)

 …なんなんでしょう、この子は。
 ひとりだけ映画の事件をおぼえていたり、テイルモンを手玉にとったりヴァンデモンにも怯まなかったり、いきなり光ったりどこか超越してます。
 なぜなのかはいっさい説明がありませんでした。ひとりだけ概念でなく「光」の紋章をもっていることや02での解説からみて、魂が本質的にそういうものなのだと思うしかない子なのかもしれません。「説明」ではなく「認識」が必要な、口では表現しづらい才能というか。

 02ではそこらへんが影をひそめてますが、人との接し方をおぼえて表面へ出さなくなっただけかもしれませんね。


「…おにいちゃん。ホントはどこに行ってたの?」
「…やっぱり、みんなとキャンプに行ったんじゃないのね」 (ヒカリ)

 取り繕おうとする太一にズバリ本質を突くセリフ。あらためてみると、たしかに浮気した夫を粛々と追いつめる本妻のようだ…。
 太一も、彼女にだけはどっかで頭があがらないところがあります。唯一の弱点か…。

 そういえば、太一って電話では自分のことを「ぼく」って言うんですね。


「むこうでヤマトに教えてもらって… 前からこのくらいはできたさ」 (太一)

 見てないところでもそういう交流があったことがわかるセリフです。
 太一も早くから料理はやっていましたが、ヤマトから見ればまるでなってないレベルのはずですから、見かねて教えてくれたんでしょう。
 うがった見かたをすれば、これこそヤマトが太一に対し自尊心を満たせる畑だったことでしょうし。


「けっこう優しいんだよね…」 (ヒカリ)

 粗相がらみのお話。太一との間柄の深さ(一種の自慢話?)を訥々と語るヒカリの流し目が、クラクラするほどエロエロです。
 終始押さえぎみな演技なのは風邪気味なのが理由なんでしょうけど、そのせいでよけいにエロエロです。

 対するコロモンは無邪気なもんで、素直に賛同していましたが。


「ずっと前からよ。だって、見えるっていっても誰も信じてくれないんだもん」 (ヒカリ)

 4歳くらいのころからずっとだったのかあ…。
 子供の言うことだからたわ言と片付けてもらえたけど、そうでなければイジメに遭っていたかもしれません。
 …でもそこらへんはうまく立ち回ったような気がします。友だちだって普通にいるし、別のところではしたたかな面がある子ですから。


「おにいちゃん……スイカ、食べる?」 (ヒカリ)

 「見えない世界」に心を飛ばしつつある兄を引き戻そうとするセリフ。荒木さんの口調が最高です。


「おにいちゃん…もう戻らなくていいよね?」 (ヒカリ)
「えっ!?」 (コロモン)
「コロモンもずっとここにいていいよ」 (ヒカリ)
「…………」 (コロモン)
「ふたりとも、ずっとここにいて…」 (ヒカリ)

 スイカと交換条件ということらしいです。コロモンはおまけ。
 ええ、荒木さんの口調が最高です。


「夏休みなんだよ! いま夏休みなんだ! まだ海にも行ってないし、花火大会だって…! 宿題だってやんなきゃ!
 こいつのせいでおれは、向こうへ行ったんだ…! なにが聖なるデバイスだよ!
」 (太一)

 揺れています。そして言っていることはとても切実。気持ちはわかります。ある意味呪いのデバイスだものなあ(^^;)
 ただ弱さを見せながらも、乗り越えて前に進むのが太一という男。これは細田氏の基本姿勢にも合致します。
 弱さを見せないことより、弱気になっても上を向くことのほうが難しく、それができる者はほんとうの強さを持っているといいたいのかもしれません。


「デジモンはこの世界にいちゃいけないんだ。ボクもデジモンだから…ここにいちゃいけない」 (コロモン)
「コロモン…! なんでそんなこと言うんだよ!? もどるなんて言うなよ!」 (太一)

 太一が平和な生活を送っていたと知り、その安息に惹かれていることも知り、それなら自分がはなれたほうがいいと思ったんでしょうか、コロモンは。
 こんなことを言うのも、結局は太一の身を考えてのことです。たとえ彼を悲しませる結果になっても、守ることができるならそういう事も言いだすのが彼ら、パートナーデジモンなのですから。とても勇敢で、悲しいところもある考え方です。追いかけてきたヒカリを見て背を向けようとしているし。

 でも、そこで引っ張り戻すのが相方の役目です。太一にとっての安息には、もうコロモンも仲間に入っているんですから。


「ひとりで戦うな! いつも一緒にやってきたじゃないか!」 (太一)
「太一…!」 (コロモン)

 このふたりはまさに今さっき、それを再確認したばかりです。何度かの挫折でなにを感じたのか、太一もまざまざと思い出したはず。
 もう戻れないんです。デジヴァイスを手にしたあのときから。後悔なんてものは、いま言葉になってほとばしる熱い気持ちの前では塵芥も同然。
 その気持ちがアグモンを進化させ、そして扉を開くんですね。

 想いが、世界をつなぐ。


「太一…ヒカリ…。バイバイ…」 (アグモン)

 いまにも泣きそうなのに、笑っているアグモンがじつにいい表情です。


「風邪…はやく治せよ……」 (太一)

 「必ずここへ帰ってくる」と、無言ですがりつく妹に笑顔で答え…最後にこの言葉。兄貴の鑑ですな。個人的ベストに近いセリフです。
 というか、ここの太一はびっくりするほど穏やかで優しい視線をヒカリに投げており、むしろもう普通の兄貴じゃない感じ。
 藤田さんの演技も最高の一言。そして絡まる指が妙にエロい。


「もどってきたね…」 (アグモン)
「…ああ」 (太一)
「ホントによかったの?」 (アグモン)
「また…かならず帰るよ。おれたちがやるべきことをやったらな…
」 (太一)

 なんだか嬉しそうなアグモンの声が心に残ります。
 やっぱり、いっしょにいるのが最高ですものね。



★次回予告
 ピコデビモン登場。この回のあとでいきなり海老沢作画がくるとギャップが大爆発です。
 ここらへんのお話はちょっと見ててキツいんですが、これも今後のお話のためには必要な試練です。がんばって見よう。