友よ!ワーガルルモン

 脚本:吉村元希 演出:志水淳児 作画監督:出口としお
★あらすじ
 タケルと別れ、様子を見に行った先でヤマトとガブモンが見つけたのは奇妙なレストランと、そこで働かされている丈やゴマモンでした。
 ピコデビモンの策略もあってヤマトもそこで働くことになり、タケルを迎えに行けなくなってしまいます。しかも丈は失敗ばかりでそのたびに労働期間が追加され、ヤマトのイライラはつのるばかり。いったい、いつまでこの場所にいなければならないのか…。

 そんな彼に、ピコデビモンは「お友達(丈)は独りになるのが怖いばかりに、わざと失敗をくりかえしているらしい…」と吹きこみました。これが原因となり、やがてヤマトはそれまでの不満と不信を爆発させてしまいます。ようやくたどり着いたタケルと太一が逃げようと説得するのですが、彼がいだいてしまった丈への疑いは、いつしか仲間への不信へと拡大しようとしていたのでした。

 そこへレストランの支配人・デジタマモンと、ピコデビモンが姿をあらわしました。すべては陰謀だったのだと気付く子供たち。しかし、デジタマモンは強敵です。おまけに、横から出てきたベジーモンがタケルを捕らえてしまいました。丈がイッカクモンを進化させ、体まで張ってタケルを助けようとするのですが、今度は自分がつかまってしまいます。丈の行動と目にし、言葉を聞いたヤマトは失ってはならないもの…友情に気づき、絶叫!
 完全体進化、ワーガルルモンが登場しました。デジタマモンの技を真正面から受け止め、みごとに撃破したのです。

 自分がいだいた不信と暴言を詫びるヤマト。丈は、「いつも助けてもらっているのは自分だから」と、笑って許すのでした。
 こうして合流した4組でしたが、ふたたび会えることを信じ、残りの仲間をさがして二手に分かれることになります。



★全体印象
 23話です。タイトルコールは山口眞弓さん(ガブモン)。影絵はもちろんワーガルルモンです。
 ひさしぶりに全面メインとなるヤマトと、そして丈のお話ですね。この二人がいっしょにメインを張るのは今回がはじめてなのですが、ヤマトの成長エピソードであると同時に、これをきっかけとして丈とのあいだにより強い友情が生まれたという意味でとても重要です。丈はヤマトにとって、太一やガブモンともまったくちがう意味で親友になれる存在。そして現実に、以後の二人は目に見えて連帯感が強くなっていきます。

 また、丈が着実にじわじわと成長してきていることもあらためて実感できるお話です。友情にしろ誠実にしろ、相手がいないと成立しない長所ですから、それを描くためにこの二人が選ばれたのはしごく当然というべきなんでしょう。そもそもヤマトと丈、そして空の持つ紋章の特性はよく似ています。 お互いがお互いの長所を伸ばしあえるのなら、この3人がほかの繋がりと少し違う興味深いかかわりを持ち得たのも、これまた当たり前だったのかもしれませんね。
 …そうすると、タケルが太一に憧れたのはやっぱり勇気と強さが欲しいと思ってたからなんでしょうね。

 ぶっちゃけて言うと、初見ではあまりにも痛々しい展開に、視聴してて一番つらかった記憶のある回です。
 でもこうして振り返ってみると、やっぱり必要なお話でした。これでヤマトの交友に幅が出たわけですし。

 それにヤマトはこの第一の試練において、かなり核心に近づいていたんだと確認できます。そうでなきゃ、完全体進化なんてできるはずがありません。ただ、あと一歩、どうしても見えなくなるものがある。そう、タケルへの拘りです。彼は自分の裡にある最後の弱さを認め、それを共有しあえる友を見つけなければならなかったのかもしれません。こればかりは太一でも丈でもダメで、むしろ近くにいすぎて気付かなかったんでしょうね。

 バトル面では、そろそろ完全体が当たり前のごとく出てくるようになってきました。24話のベーダモン、25話のトノサマゲコモンも完全体ですし、26話ではヴァンデモンが出張ってきます。成熟期での戦いに余裕が生まれてきている以上、もはや同レベルのデジモンじゃ強敵とはいえないってことなんでしょう。ただ、一度完全体になるとしばらく戦闘不能同然になってしまうため、3クール目前半あたりまでは言わば切り札として扱われていました。究極体登場後も段階が引き上げられるだけで、基本的には変わりません。よって、各パートナーの出番がうまく平均化されているわけです。このパワーバランスが絶妙。01が名作と言われるゆえんは、戦闘面でのさじ加減にもおおいにあるのだと言っていいと思います。

 ところでこの回、時に猛威をふるう出口作監なんですが、アラはあまり目立ちません。特にアクションはなかなかのもんです。
 これは3話でもみられた現象で、動画と演出がいいのでしょう。人数が多いとやっぱりずいぶん違うものです。



★各キャラ&みどころ

・ヤマト
  頭に血が昇りがちでことさらにクールと慎重さを強調し、バランスを取って生きてる彼ですが、基本的にはごく普通の少年です。理由もなく他人を見下したり必要以上に拒絶したりしないし、ふつうに行動している間は、みんなから浮いてるようなこともありません。丈と再会したときの態度をみても、むしろいいヤツです。少年向きアニメでスタンダードとなっているクール型少年とは、そこが違う点でしょう。
 普通みられる「クール型」タイプの人物というのは、常に集団からはずれることで平静を保とうとします。ですが、彼はまったく逆。集団の中で生きつつ、自らのスタンスを持とうとしているのですから。ですから彼がクールであると感じるならば、他者とのかかわりを保ちながらクールであろうとするその懸命さ自体に、いろんな意味でのクールさを感じるからなのかもしれません。

 ですから、丈や太一を拒絶したあの態度はやっぱり「らしくない」ってことになると思います。
 なぜなら彼がとろうとした行動は、本来彼がめざすクールさとははずれることになるからです。それに他人とのかかわりを捨て、肉親のタケルだけを守ろうとする考え方は、まさしく友情を捨てる行為に他なりません。それだけ自分の気持ちに自信がなくなっていたってことですから、彼もタケルと同じようになかば自暴自棄。仲間を信じられない自分を嫌いになりかけていたのでしょう。タケルへの暴言だって、本当なら吐きたくない言葉のはずなのです。

 でも本来の彼はやっぱり普通の、育ちのいい少年で、過ちをみとめて謝罪することができます。
 そんなヤマトだから、トラブルがあっても少しずつ友情を育てていけるんでしょう。少しばかり根気はいりそうですが。


・丈
 7話で一大イベントが用意されてましたが、以後は11話を経てじわじわマイペースに成長をつづけています。
 彼の長所をあらわす「誠実」というのはハッキリしてるようでいて意外と定義づけがむずかしい。ひょっとしたら「友情」より難しいかもしれません。

 それでは、今回彼がとった行動がなぜヤマトを動かしたのか。
 それは信じるとか信じないとかを越え、仲間と認識している他者のためになにをすべきか、身をもって示してくれたからなんだと思います。
 丈にとってヤマトは仲間であり友だちで、それ以外のなにものでもないということです。たとえ罵倒され、おまえなんか信じないと言われてもそれは変わりません。むしろ奮起して、信頼というものを掴み取るために思いきった行動をするのが、たぶん丈という人間です。ここで逃げたらおしまいだという一線を知っており、踏みとどまることができるんですよ。そういう時の丈がどれだけの強さを発揮するか、みなさんはもうご存知のはずです。

 ヤマトの友情は丈の誠実に引っ張り戻されて上にぶん投げられ、はずみで紋章が光ったのかもしれません。
 なんだか間抜けに見えてしまいますが、他者とのかかわりが特に重要なのが彼らふたりの個性ですし、元を正せば人の個性や長所なんて、一人だけじゃ成り立たないもの。少しくらいみっともなくたって次につながればいいんだと、私はそう思います。

 物語ラスト近くでも、仲間とのかかわりが紋章を輝かせたのだというセリフが出て来ます。
 それを口にしたのはヤマトですから、心当たりはこのへんのお話にもあったことでしょう。


・太一
 ヤマトとは放っといたらあわや喧嘩でしたが、目立った出番はありません。まあ、今回はしかたありませんね。
 ただ、ピコデビモンを追っていったと思ったら気がつくとヤマトのすぐそばにワープしたりしていて、微妙にわけがわかりません。 


・タケル
 今回はヤマトとの対比をつくるためもあってか、ひたすら無邪気に描かれてました。
 ただ、怒鳴られて怯えた表情になっているあたりはかなり必見。生まれた時からああいう類の「声」に堪えて育ってきたんだろうなと容易に想像できます。


・空
 今回の出番はホントにちょっとだけ。決定的解決に結びつくようなこともしてません。
 おそらくピコデビモンをずっと見張っていて、だから全員の位置も把握していたんでしょう。気付かないピコデビモンはかなりマヌケです。


・デジモンたち
 ワーガルルモンの戦闘以外だと、案外目立ってません。特にゴマモンのほうは今回やられ役だし、おもしろいセリフもなしです。
 元気のない顔で給仕をしているガブモンはまるでヤマトのささくれ立ちに呼応するかのようで、ポイントといえばポイント。


・ワーガルルモン
  のちに双璧を張るだけあって、メタルグレイモンに続いての登場です。絶対的なスピードがダウンした代わり格闘能力の爆発的アップに成功しているのが特徴で、特に攻撃力が半端じゃありません。デジタマモンの技を真っ正面から受け止め、もろともにはじき返すのですから、これはもうガルルモンのときとは比較にならないパワーでしょう。成熟期レベルがカイザーネイルを受けたらひとたまりもありませんね。じじつ、28話でもドクグモンを一撃のもとに屠っていますし、単体でヴァンデモン相手にある程度戦えることも33話で証明してます。

 惜しむらくは、4クール目にほとんど出番がないことでしょうか。
 それに究極体ではまた四つ足にもどってしまうので、なんだかこの形態だけが浮いてしまってるよう。ちょっと不遇です。


・ デジタマモン
 ある意味究極の姿といえる完全体のデジモンです。じっさいの肩書きもパーフェクト型で、戦闘力は絶大。特にすさまじいのは防御力で、自分の技込みで2発分の威力があるカイザーネイルをくらっても殻にはヒビひとつはいっていませんでした。もちろん、顔を出していたので中身はのびてしまったはずですが。
 …ひょっとしたらエテモン並みに強いんじゃないでしょうか? あんな所で店を開いてられるのも、生半可なデジモンじゃ返り討ちにしてしまうからでしょうし。それに、どうやらピコデビモンとは知り合いだったようす。たぶん、依頼されれば協力はおしまないという約束で不可侵条約でも結んでたんでしょう。

 そんな彼ですが、どうやら01後半のあの再統合をも生き延び、変わらずレストランを経営していたことが02で確認されてます。
 たぶん、持ち前の防衛力でほとんどの天変地異を堪え忍んだのでしょう。とんでもないタフさです。それでも相当ひどい目にあったのか、再登場の時分にはだいぶ毒気が抜けてましたけど。かと思えば中華街に仲間がいたりして、地味だけど相当打たれづよい、したたかな種族です。

  ちなみに小説版では、あの丈夫な殻が思いっきり割れてます。後にも先にも、彼の殻が割れるなんて事態が起きるのはここだけ。
  02で改心したのを知っていたので複雑な気持ちになったものですが、よく見るとそれでも死んではいないようす。…どうやったら死ぬんだ?
 万が一殻を失ったときは、新しく殻のデータを集めて形になるまで待つのでしょうか?


・ベジーモン
 しゃべり方が妙に印象的な食虫植物型デジモン。オーナーやピコデビモンとグルで、タケルを人質にしたりもしてましたが、小心者でいまいち憎めません。ふだんは割とまじめに店員さんやってるみたいなんで、どこからどこまでが素なのかちょっと判断つきかねます。
 なお、レストランで働いてるにしては不潔すぎる技を持ってるんですが、さすがに使う事はありませんでした。


・ピコデビモン
 抑え気味の演技で賄賂を差し出したり、なかなかの悪党ぶりです。
 というか、丈がみんなからはぐれたのは彼のウソが原因だったわけですね。あちこち働いているなあ。
 ここまでの描写だけみると

 丈をウソではぐれさせる→タケルに顔見せ、様子を見に行くと言ってデジタマモンに賄賂を渡しに行き、ヤマトを店に釘付けにする
 →タケルに忘れキノコを食べさせようと画策→いったん退散し、ヤマトにウソを吹き込む→デジタマモンに太一たちもろとも始末させようとする

 こんなところでしょうか。この後、今度は光子郎のところに行ってるので休む暇もありません。まったく大変ですね。同情はしないけど。
 しかし、太一やタケルのいる前で姿をあらわしてしまったのは非常にまずいですね。あのままもうしばらく様子を見ていれば、かなりの確率で聞く耳を持たないヤマトとそんな彼に腹をたてた太一との間に、深刻な衝突が起こったはずです。むしろ最後まで出て行かないほうがよかった。そうすれば、分裂の原因がどこにあるのか丈もヤマトも認識しきれず、溝を埋めきれなかったかもしれないのです。

 …やっぱり詰めが甘いですね。デジタマモンの力を頼りにしているなら、彼にまかせておけばよかったものを。主人のヴァンデモンがどうして姿を見せず引っ込んでいるのか、その理由をほんとうに彼は理解してるんでしょうか?(^^;)


・ヴァンデモン
 ここで初めて声がつきました。しだいに姿もハッキリしてきてます。
 大友龍三郎さんって、ホントに悪魔とか人外とか変態ばっかり演じてる感があるなあ…。
 だから逆に「明日のナージャ」で優しい店員さんをやっていたり、ケルビモン(善)で理性的な声を出していたりするのが心に残るのかも。


・ デジタマレストラン
 常連もついてるけっこう評判っぽい店です。ただし裏にはいろいろ黒い噂が…というパターン。でも、味そのものはかなりいいようです。
 02で出てきた中華レストランもそうとういけるみたいだし、モン格的には問題のあるデジタマモンも料理の腕ならたしかみたいですね。
 普通にお勘定はらって去っていくヌメモンがいい味を出しています。

 それにしてもドルしか通用しないとは、中途半端に現実ばなれしたお店だ。交換所とかないの?



★名(迷)セリフ

「ま、まさか、あんた…無銭飲食かー!?」(ベジーモン)

 別にどうということのないセリフなんですが、なぜかイヤに印象的でした。

 ところで、スティーブン・キングの小説「タリスマン」に主人公が飲食店で過酷な労働を課せられる一幕があるんですが、この回はそれによく似てます。
 実は主人公を邪魔するための罠だったというあたりも似ている。


「かれこれ2週間くらい…」(丈)


 ってことは、はぐれた時点からは2週間以上経ってるってことですか。太一が戻ってきた時点でいったいどのくらい経ってたんだ?
 2ヶ月ちょいとふんでたんですが、どーやら2か月半でもきかないみたい。

 ここは切りよく、全員集合の時点で太一以外の体感時間=3か月ってことで手を打っておくべきでしょうか?
 1か月=現実世界での30分ということにしておけば、たぶんそんなに無理がないと思うし。とりあえず、今はそんな感じにしときましょう。


「そしたら、お前のぶんもいっしょに働く。いいな」 (ヤマト)
「…! ヤマト…恩に着るよ!」(丈)


 たぶん丈は、このときや少し後のシーンでヤマトがごく自然に言ってくれたことを、ずっと憶えていたんでしょう。
 このへんは小説版でもけっこう語られてるので、あわせて見るとおもしろそうです。


「とにかく、そーゆーことになったんだよ!」 (デジタマモン)

 ヘタをすると裏があると見抜かれかねない物言い。
 料理と戦闘の腕は立つけど、口はあんまりうまくないみたいです。でも、ここでピコデビモンが出るわけにはいかないので仕方ないでしょうね。


「行きなよ。ぼくのことはいいから」 (丈)

 思えば丈は、ずっとヤマトの立場に立って話しています。
 どんなに罵倒しても絶交同然の言葉をたたきつけても、終始一貫して変わりませんでした。
 だからこそヤマトは、丈のような友を失ってはならないと最後に気付くことができたんでしょう。


(…! 丈はオレのことを思って言ってくれたのに…オレは…) (ヤマト)

 結局のところ、本当はわかっていたはずなんです。丈が不誠実をはたらくような男じゃないってことは。
 あの絶叫は、そんな丈を疑ってしまった自分を吹き飛ばすための儀式みたいなもんだったのかもしれません。


「……いいさ。気にするな」(ヤマト)

 風間さんの搾り出すみたいな声が、必死に怒りを抑えてる感バリバリで実にいい感じです。


「生きてたのか、お前!」(ヤマト)
「へへへ、お前より先に死んでたまるかよ」(太一)
「そうか、すまん」(ヤマト)


 かなり笑えました。ヤマトの応対が妙にズレてる気が…。


「なにが仲間だ! そうやってお前がみんなを引きずり回したんだ。おかげでもうクタクタだ!
 お前は一人で好きなようにしろ! 」(ヤマト)


 いや、太一は行方不明にはなったけど別にそんなことしてないし…。引っ張ろうとはしたけどちゃんと意見は聞いてましたぜ。
 スカルグレイモンのとき盛大に迷惑をかけたのはたしかですけど、その後は自重も挽回もしていますし。
 太一への鬱屈が丈への不信とごちゃまぜになって、自分でもなにを言ってるんだかわからなくなってる感じです。


「うるさいッ!! お前はだまってオレについてくればいいんだ! 」(ヤマト)

 で、これがタケルへの知らず溜めていた鬱屈。
 あらためて見ると、終盤ああなることへの判断材料はごろごろ転がってるもんですね。
 タケルの怯えた表情はマジで必見です。いろいろと深い。


「い…今まで…ヤマトがいっしょに頑張ろうって言ってくれたから、ぼくは我慢できたんだ…だから、今度はぼくが…!
 イッカクモン! みんなを助けるんだ…! 」(丈)


 窮地にあってもこのセリフ。ここに至って、ヤマトは丈への信頼をなくしてはいけない、この友を失ってはいけないと悟るのです。
 それにしても丈って、いざとなると太一以上に行動で語るところがありますね。誰かから信頼を勝ち取るためには、うわべだけの言葉ではダメだということを自覚している…というより、冒険のなかでハッキリ自覚しはじめてるのかもしれません。
 この行動の前では、ピコデビモンのウソなぞ台風の前の紙屑も同然といったところでしょう。


「丈ォーッ!!」(ヤマト)

 なんとなく、大輔の「オレって、なさけねぇー!!」にかぶります。
 自分がキライになるのを通り越して一周すると輝くのが、友情パワーなんでしょーか?


「お前たちなんかね、やろうと思えばいっぺんに片付けられるんだよ。知らないだろうけど」(デジタマモン)

 最後に「知らないだろうけど」なんて付け加えるのがデジタマモン流なんでしょうか?
 いまいち決まらないセリフだなあ。


「オレはもう忘れない…! 忘れてはいけないんだ! 仲間を…友を信じる気持ち! 友情を!」(ヤマト)

 ここまで掴んで究極体進化まで到達しているんですから、本当はもうここで何かにたどり着いていたと思うんですが。
 彼に課せられた試練もなかなかに苛烈です。認めたくないものを受け入れて、昇華しなければいけなくなったのですから。
 脳裡に浮かんだと思しきイメージの最初が太一で、最後が丈というあたりにも意味があります。


「丈……ありがとうな、タケルを助けてくれて…」(ヤマト)
「いいんだよ。ぼくの方こそ、いつも助けてもらってばかりだから」(丈)
「それと………ご、ごめんな」(ヤマト)
「ヤマト……アハハ」(丈)


 暴言を吐いたあとですからさぞ気まずいことでしょうが、ここできっちり謝れるのがヤマトの良さです。
 基本的にいいヤツで、時に自制を失ってもちゃんと理由があり、謝罪ができる彼だから、悪感情を持たずにすむのでしょう。
 ヤマトファンは、彼のそういう欠点も美点も込みで好きなんだと思います。

 そして丈も、ヤマトの気持ちをわかっていたから責めなかったわけですね。小説版ではさらに突っ込んだことを言っていましたし。


「会えるさ! オレたち、仲間だからな」(ヤマト)

 持ち直すと、人が変わったように有頂天になって調子のいいことを言い出すのもヤマトという少年の魅力です(^^;)
 最終話でも無闇にさわやかな発言をしてて、不謹慎にも吹き出しそうになった憶えが。

 この後の、噛みしめるような丈のセリフも印象的です。



★次回予告
 光子郎のお話。ほとんどテントモンとの間柄だけで完結してるので、ある意味彼らしいエピソードのひとつです。
 ベーダモンの動きが奇妙すぎて夢に出そう。