眠れる暴君!トノサマゲコモン

 脚本:大和屋暁 演出:芝田浩樹 作画監督:清山滋崇
★あらすじ
 太一と丈は、たどりついたお城でミミと再会しました。
 ところが、彼女はワガママなお姫さまになって贅沢三昧の日々をおくっていたのです。もともとは歌声を買われ、もう300年も眠りつづけている君主・トノサマゲコモンをめざめさせる役目についていたのですが、自分でなければそれができないのをいい事にやりたい放題。ついには、また旅に出ようと説得してきた太一たちだけでなくパルモンまで牢屋にほうりこんでしまいました。そんなミミに、パルモンは非難のことばを浴びせます。

 仲間に見捨てられる悪夢を見てうなされるミミの寝室に、空の姿が。夢かうつつか、彼女に勇気づけられたミミは全員を集めてこれまでの素行を詫び、高らかに歌いはじめました。甲斐あってとうとうトノサマゲコモンが復活するのですが、これがとんでもない暴君だったのです。

 トノサマゲコモンの大暴れで大ピンチのミミを助けたのは、パルモンが進化したトゲモンでした。
 ふたりは無事和解し、暴君はメタルグレイモンの必殺技によってふたたび深い眠りの世界に追放されたのです。



★全体印象
 25話です。タイトルコール・影絵ともにトノサマゲコモン(声:故・松尾銀三さん)となってますが、この個体の出番はあんまりありません。

 22話のときとちがってある程度の条件がそろっているにもかかわらず、新たな超進化が起こらなかっためずらしいお話でした。丈もこの段階ではまだ完全体進化へ到達していないので、良くも悪くも二人してマイペースなんでしょう。ただし、小説版ではここでリリモンが登場しています。

 みどころの一つは、いつもより数段美少女に描かれてるミミでしょうか。
 ミミ関係の作画を担当してるのはおそらく竹田欣弘さん。「カードキャプターさくら」などでも作画監督をやってただけあり、艶のある絵柄が持ち味です。微妙に路線を変えてきた「02」では個性をさらに全開したため、一部でやりすぎではないかとの声も聞かれましたがそれは別の話。同番組では後期EDでもメイン作画を担当しており大活躍でしたが、テイマーズになると脇に引っ込み、あらたに台頭してきた上野ケン氏のサポートに回るようになっています。
 また、なぜか今回のように清山滋崇さんと組む事が多いため、絵柄のちがいがわかりやすくなっていますね。フロンティア18話なんて見え見え。

 お話のほうはギャグもけっこうあったりして、このあたりのエピソードではいちばん気楽に見られる回です。ミミがメインにくるとホッとする描写がふえるように感じますね。これは終盤でも変わりません。また、今回は彼女メインにはめずらしく太一がからむお話でもあるんですが、かんじんなところを持っていったのは空。終盤いっしょに行動したのは丈だし、会話が成立しやすいのは光子郎。どうも太一とミミのあいだには距離があるようです。まあ、それでいいと思いますけどね。それぞれが各々の範囲でできることを担当し、太一はそれを総合的にまとめる進行役なんですから。

 ちなみに太一以上にミミと距離があるのは、ヤマト…かもしれません。このふたり、とにかく会話がないし二人だけで行動したこともないので。
 ただ距離があるからといってべつに仲が悪いはずもなし、むしろ良好な間柄でしょうけど。

 そういえば、脚本担当の大和屋暁さんにとっては唯一のミミ主体エピソードなんですね。
 これは細かい心理の推移より、ノリとギャグを愉しむお話し仕立てになっていることと無関係じゃなさそうです。



★各キャラ&みどころ

・ミミ
 素直にあやまちを認め、謝罪したことが紋章を輝かせました。これがなにを意味するのか。
 まあ、そのまんま受け取れば「素直じゃない」状態になっていたってことになるんでしょう。数々の暴言や無体は、さまざまな意味で引っ込みがつかなくなったがゆえの自己防衛と正当化であり、エスカレートして悪意すら感じさせるまでになってしまっていたんですね。表情も変わってて絶妙。

 もともとミミはワガママで自分本位なところも隠さない子ですが、同時に自分の弱さや友人への思いやりも隠しません。裏表がないのです。光子郎がふだん味わっているような照れの感情などは、あまり自覚したことがないでしょう。30分前にさんざんワガママを言ったと思ったら、急に神妙な顔をして「ちょっとやり過ぎちゃった、ごめんなさい」と謝ってしまえるのがミミという少女なんだと思います。そんなミミだから、つきあう人々はしょうがないなあと思いつつ、ペースに引きこまれていっしょに笑ってしまったりするんでしょう。

 つまり、今回ミミは自分の気持ちにウソをつき、しかもそのウソをただ自分のためだけにつき通そうとしたことになります。
 感受性のたかい彼女にとって、それはたぶん辛いこと。ゲコモンたちや仲間がどんな気持ちでいるか、わからなかったはずがないと思います。パルモンの一言で夢にうなされるまでになったのは、板挟みの気持ちが彼女にひどいストレスを与えていたからかもしれません。

 そう思えば、終盤なぜ別行動を取ったのか類推できます。気持ちに整理のつかないまま前に進めばどうしても自分を押し殺すことになり、足を引っ張って自身だけでなく、仲間にさえ迷惑をかけると判断したんですね。彼女に必要だったのは、なにかを救いたいというはっきりした気持ちだったんでしょう。

 それにしても、お姫さまの衣装がよく似合っていました。ファッションに関しては随一のバリエーションと着こなしを誇るだけあります。


・パルモン
 ひさびさの登場はドレス姿でした。彼女も不思議とこういう衣装が似合います。ミミから連想するイメージゆえでしょうか。
 …それにしても、ミミに注意してなかったのは単に状況が分かってなかったからなんですね。映画のムックで自我が弱めなどと書かれるわけです。

 それでも、彼女の言葉がミミを大きく揺り動かしたのは事実。最後にして最大の味方であるパートナーの進言は、やはり堪えるようです。


・太一
 わりとギャグ調。ミミ説得も歌も大失敗で、前半はあんまりいいところがありません。
 バトルではメタルグレイモンをふたたび登場させ、トノサマゲコモンをノックアウトに追い込みました。
 カラオケはひどい点数でしたが、藤田淑子さん本人はそんなことないのでお間違えなきよう。


・丈
 カラオケの腕は太一とどっこい。もちろん、菊地さん自身はちゃんと歌唱力があるのでキャラソングを聴いてみましょう。


・空
 ミミの枕元に登場。すべてを把握しているかのような笑顔で、彼女の心のトゲを取り除きました。すごいぞ、おふくろさん。
 初見では彼女が別行動していると知らなかったので、なにか深刻な事件にまきこまれ、幻としてしか出てこれないんじゃないかと思ったものです。
 ある意味においてはまちがいなく深刻な状態におちいっていたんですが。


・デジモンたち
 アグモンとゴマモンは予想通り、歌についてはメタメタな腕でした。
 だからといってパルモンが上手いのかというと…ミミほどじゃないにせよ、案外歌えるのかもしれない。なんとなく、歌唱力がパートナーに比例しそうな気がしてきました。そうすると、ガブモンあたりはけっこう歌えるかもしれませんねえ。本人は照れてやらないだろうけど。

 今回でひさしぶりにメタルグレイモンが登場しました。苦労しただけあり、しばらくは完全無敵をほこる形態です。
 対してイッカクモンは地味な出番。完全体進化はもうしばらく先なので、お披露目がつづく前後のエピソードにあっては目立たないのもやむなしといったところでしょう。とはいえ、成熟期を相手にする機会も少なくないのでその時は活躍するんですけど。


・ゲコモン、オタマモン
 ミミのワガママへ献身的にこたえていた人のいいデジモンたちです。
 もともとミミのことは気に入ってたようで、あやまちに気付いた彼女をこころよく許していました。
 終盤や02にも再登場しており、旧交をあたためる場面も用意されています。

 ただ、彼らのこういう気弱で頼まれるとイヤと言えない性格が事態を悪化させたともいえてしまうんですね。むしろ、ピコデビモンは彼らのそういうところを利用しようと思ってミミをあのお城にさそいこんだのだと思います。もちろん、ゲコモンたちにミミを陥れようなんていう気持ちはないし、迷惑をかけていたのはミミのほうなのですが、悪意がなくても物事をこじれさせてしまうことって、あるもんなんですよね。


・トノサマゲコモン
 そんなわけで、彼があんな暴君になったのは気弱で唯々諾々としたがうだけの家臣にも責任があったのかもしれません。
 この性格はミミの行く末を暗示していた可能性もありますね。あのままいけば、こういう風になっていたという。

 さて、完全体なので壁ごと太一たちを外へすっ飛ばしてしまうほど強力な技を持っていますが、メタルグレイモンにはかないませんでした。Vテイマー01でも、完全体でありながらあっさり一本とられていたりするので、戦闘力そのものはあんまり高くない感じです。性格的にも今回のように暴君だったり、Vテイマーのようにどこか卑屈で疑り深かったりと、好感のもてる描き方がされているとはいえません。唯一マシなのは02で出てきたときくらいでしょうか。

 小説版では魔法使いに眠らされたことになっていました。
 魔法使いといえばウィザーモンですが、さすがに完全体を百年単位で眠らせるほどの腕があるとは考えにくい。何者だったんでしょう。


・ピコデビモン
 今回の根回しはミミじゃなく、ゲコモンたちに仕込んでいました。
 それにしても、彼はなんでミミが歌うたいとして並ならぬ腕を持つと知っていたんでしょう? 空といい、情報源が気になります。


・ ヴァンデモン
 前回とほとんど同じで、多少ディテールの見えるシルエットのみでの登場でした。
 次でいよいよ出陣となります。



★名(迷)セリフ

「へん! 替わる気なんて毛頭ないくせに」(太一)

 …やけにむずかしい言葉を使いますね太一。
 これを脚本上のミスとするのは無理がありますが、ちょっとだけ不思議に思ったのはたしか。


「お姫さまは趣味の悪い水玉のドレスがほしいタマ!」
「ちがうタマ! お姫さまはバッタモンの指輪がほしいといってるタマ!」
(オタマモン)

 …それにしてもミミの趣味っていったい。
 それに、ゲコモンの言ってたオカラの味噌煮地中海風って…。


「いつもお世話になってます。こちら、ピコデビモンでございます」 (ピコデビモン)

 なんだかおかしな呼びかけかただったので記載。
 でも、あんまりお世話になってる感じじゃないどころか、手当なしで飛び回らされてるイメージが。


「このへんな声」(アグモン)
「パルモンだ!」(ゴマモン)


 たしかにとても個性的な声ですが、ちょっと失礼ですよ?(^^;)


「よーするに、このでかいのを復活させればいいんだろ? 歌には自信がある!」 (太一)

 なんの根拠があってこんなに自信まんまんなんだろう…。


「ヘン? んー………やっぱりそう!? あたしもなんだかヘンだなーって思ってたのよ」(パルモン)

 …この一か月くらいずーっと気付いてなかったわけですか。
 ミミとはちょっとちがうベクトルで天然って感じです。


「こんなことするミミなんて…こんなことするミミなんて、大ッキライよー!」(パルモン)
「…! …あ、そう…。あたしも、あんたなんか大ッキライ!!」(ミミ)


 前者のパルモンの場合は、いまの気持ちをうまく説明できないゆえのはずみで出た言葉。本当だけど、本気ではありません。
 後者のミミの場合は、息をのむほどの衝撃を受けたくせに、引っ込みがつかなくなってつむいだ言葉。
 ですから、ウソをついているのはミミのほうってことになるんでしょう。

 このことがミミの胸にひどい自己嫌悪をもたらし、孤立して闇のデジモンの爪にかかる夢を見させてしまうことになります。


「よかった…ミミちゃん、ほんとはいい子だもんね」 (空)

 背中を押してくれたのが空というのは、いろいろと意味があるんだと思います。
 こんなに包容力のある彼女に愛情がないというのはなにかの冗談としか思えないわけで、それは今までのお話でもよくわかる事実。
 ですから結局は、それぞれの心の問題ってことなんでしょう。


「ゲコモンやオタマモンのみんな…。太一さん、丈先輩…。アグモンにゴマモン…。それに、パルモン…
 みんな、ごめんなさい!
 あやまってすむことじゃないかもしれない…だけど、あたし気がついたの。みんなにひどいことしたのに気づいたの!
 だから……だから……!」 (ミミ)


 こんなふうに、いけないと思ったら真摯に謝罪できるのがミミ…というか、選ばれし子供たちはみんなそうですね。
 ここまで神妙な面持ちで謝られたなら、受け手側としても誠実に応えたいと思うもんです。
 ゲコモンたちはやっぱり、基本的にミミのことが好きだったんでしょう。始めはああじゃなかったわけだし。
 それに、のちにも彼女との絡みがありますしね。


「トゲモン…あたし、トゲモン大好き」(ミミ)
「あたしもミミのこと、好きよ」(トゲモン)


 いいシーンなんですが、でっかいグローブでミミを撫でるときの「キュッキュッ」という音にちょっと笑ってしまいました。
 リリモンになるにはここからもう一段階必要なものがあったと思うんですが、それは35話で語るとしましょう。
 ちなみに、小説版だとこのあたりでリリモンが登場してトノサマゲコモンを倒すんですが、やっぱり少し早いんじゃないかと思った次第。
 まあ、先にアニメを見ているからそう感じるんでしょうけどね。



★次回予告
 うーん、直井作画はわかりやすいなあ。
 いよいよヴァンデモンが出陣してきます。立ち向かうのがガルダモンというあたり、ボスの顔見せ回としては変則的かも。