熱いぜ東京タワー！ デスメラモン

★あらすじ
　８月２日。
　芝浦に『８人目』がいるかもしれない──わずかな手がかりをもとに、子供たちは捜索を開始します。
　一方、力をたくわえながら本拠地を移したヴァンデモン軍も動きはじめました。そんな中、テイルモンはヒカリと運命的な邂逅をし、自分をデジモンと看破したうえアグモンのことを知っている彼女を、『８人目』ではないかと疑いをいだきます。

　炎天下の行動に疲れはて、東京タワーでなかば涼んでいた空とミミでしたが、そこへデスメラモンが襲ってきました。
　異常に気づいた太一と光子郎が応援にかけつけたものの相手は完全体、成熟期のままでは勝ち目がありません。メタルグレイモンの出番です。得意のトライデントアームで空中にほうり投げたところを、ギガデストロイヤーにより何とか撃破することができたのでした。

　ヒカリがただの子供でないとにらみ、今のうちに始末しようとするテイルモン。しかしなぜか果たせず、その場を去ります。
　彼女はまだ気づいていませんでした。ヒカリが自分にとって、どういう存在なのかを…。



★全体印象
　32話です。タイトルコール、影絵ともにデスメラモン。ただし、デスメラモンの声優さんは不明です。菊池正美さんかな？

　わりと全員のお話です。加えて『つなぎ』エピソードの側面もありますが、こういう回となると西園脚本の出番。小学生らしいやり取りの中に丁寧な人物描写が織りこまれていて、退屈しません。それに、合間にはテイルモンとヒカリの邂逅という重要イベントがありますから、東京篇ラストへの結実にはやはりはずせない回といえるでしょう。空にミミという、17話以来のツーショットも見られます。

　今回はまた、デジモンという存在が秘めているおそるべき破壊力もあらためて示唆されました。
　成熟期同士がやりあっただけで芝浦埠頭の倉庫がいくつも潰れていた描写や、一撃で東京タワーを倒壊寸前に追い込むデスメラモンと、その凄まじさは言語につくしがたいものがあります。02以降で変化していく現実世界との関わりようを思うと、ゲンナイさんたちが情報操作に乗り出したのもやむなしといったところでしょうか。もしこの力を悪用されたりしたら大変です。実例があるだけに、冗談にもなりません。

　さて、作画には竹田欣弘さんが参加しているため、ところどころ少しふんいきの違う絵が見られます。影のつけかたで見分けるのが一番かんたんだと思いますが、絵そのものにも特徴が見られるので、担当パートを見つけるのはそう難しいことじゃないはず。

　何が言いたいかというと、今回から普段着に着替えたヒカリが可愛いなというだけなんですが。特に竹田作画で。



★ED
　前から疑問に思っていたんですが…声の出演、なんでヒカリだけ名字がないんでしょう。
　たぶん、それ自体に特に意味などはないと思うんですが…。



★各キャラ＆みどころ

・太一
　今回もリーダーらしく的確な行動をとっていました。
　手持ちの単眼鏡はここでも役に立っており、おかげで東京タワーの異常と、空とミミが襲撃を受けていることを突き止めています。
　もはや完全体進化を自在に使いこなしてますね。

　情報管理についてはだいぶガサツ。まあ、これは前からわかってたことだし、後天的に改善されていったかもしれません。


・ 空
　ミミ組しか同伴者がいない状況でも頑張って捜索の仕事をこなす姿に、責任感の強さが強調されてます。
　ミミが相手だと手がかかるぶん、ぐっと上級生らしさが出てきますね。タケル相手の場合はたぶん、それほどでもないでしょう。
　タケルは多少のつらさなら我慢する性質だからです。ですから、むしろ空の方から声をかけることになるはず。


・光子郎
　 そろそろ太一へ容赦ないツッコミを入れるようになってきた気がします。
　 名簿を参照しようと提案したのは彼でしょうね。


・ミミ
　休みたいときには休み、言いたい事は言う。今回もミミクオリティは絶好調です。
　それがイヤミにならないのは、全くもって奇跡的なバランスというほかありますまい。


・丈
　受験勉強をしながら片っ端から名簿先へ電話をかけ、『８人目』を少しでも特定しようとしていました。
　家にいたので、この日はただ一人戦いに巻き込まれていません。とはいえ、受験勉強の大切な時期にばかでかい悩みをもう一つ抱え込むはめになったばかりか、貴重な時間を割かなければならなくなったので、目の前の現実にはさぞかしゲンナリさせられたでしょう。


・ヒカリ
　出会っていきなりテイルモンを圧倒。おそるべし。
　ここでの振る舞いを見ていると、むしろ三年後より明るい娘に見えるのが不思議です。


・ヤマト、タケル
　 前半にしか出番がありません。活躍は次回へ持ち越しです。


・デジモンたち
　27話以来の登場となるメタルグレイモンが、デスメラモン相手に大立ち回りを演じます。ここで始めて『トライデントアーム』が披露され、からめ捕ろうとした敵を逆にパワーでぶん投げ、空中で破壊するという離れ業を演じました。腕力そのものならデスメラモンの方が上ですが、鎖をうまく逆用した形。わざわざ投げ飛ばしたのは、観覧台の上で爆破するわけにはいかなかったからでしょう。有機ミサイルの命中率がものを言いました。
　ここでメタルグレイモンがはなつ不敵な物言いは、戦士としての凄みを感じさせます。太一の成長と歩調をあわせていますね。

　ひるがえって前半では、パートナーたちの珍妙な変装が笑いを誘ってくれます。
　テントモンの変装がいちばん無理なく見れますが、パルモンのベビールックも捨てがたい。そしてアグモンは暑そう。


・デスメラモン
　東京タワーで空とミミを見かけ、襲撃してきた完全体デジモン。これまでの個体とちがい、ちゃんとしゃべります。
　さすがに完全体だけあり、マンモンと同じくメタルグレイモンが出てこないことにはまともな戦いになりませんでした。それでも純粋なパワーにおいてそのメタルグレイモンさえ圧倒したので、ヴァンデモン軍ではかなり強い個体だと考えていいでしょう。テイルモンも、こいつを仲間に引き入れるのには苦労したはず。

　戦い方はひたすら力押しです。破壊力がたかいので厄介ですが、単純なぶん意外と与しやすいところはあったかもしれません。


・ ヴァンデモン
　ひと晩に何人も女性の血を吸い、力をたくわえていました。
　力を高めてから事にあたる…あいかわらず周到ですが、やはり少々『８人目』にこだわりすぎなきらいがありますね。
　８人揃わせないことが目的なら、ほかにも手はあるんですし。いわゆる美学ってやつでしょうか？

　そういえば血を吸っていたわけですから、つまり人間のデータを取り入れていたってことですよね。
　破壊されても、魂…というか基礎情報…を人に宿らせる事ができた背景には、この事実が大きくかかわっているにちがいありません。

　現実世界にかかわっていたデジモンということで、思えば答えははじめから出ていたんです。


・誰がために
　今回で、あのゲートを通ることが100パーセント完璧なリアライズを可能とする、少なくともこの時点では唯一の方法だということがわかりました。
　ここを通ってデジモンたちが暴れ出てきたらたいへんなことになるのは、子供たちなら直感でわかります。
　なぜなら、誰よりもデジモンたちの力と、ある意味での恐ろしさを肌で感じてきたのが他ならぬ、子供たちだからです。

　事はもうデジモンワールドだけの問題じゃなく、もとの生活を守るための戦いになりました。
　そして子供たちには、それをしなければならない…せずにはいられない、今までの戦いという経験があるのです。

　自分たちしかいない。それでも、やるしかない。

　頭ではなく心で理解しているんです。理屈じゃないんでしょう。
　めちゃめちゃになった芝浦埠頭と折れかけた東京タワーが、否応なくその事実を突きつけてくるのでした。



★名(迷)セリフ

「かまわぬ。いずれこの世界も、私のものとなるのだ」(ヴァンデモン)

　自信たっぷり。現実世界そのものにも、並ならぬ執着があるようですね。


「緊張感のねえヤツ…」(太一)

　気の抜けた叫び声で全員の腰を砕いた丈に。
　しかし、これが丈らしさなんでしょう。


「きみってやつは…なんていいヤツなんだ！」 (丈)
「いやあ、それほどでも」(太一)

　なんというか…もはや丈は完全にポジションが確定した気がします。
　ホイホイと仕事を押しつけていく他の子供たち(先陣を切ったのはやっぱりミミ)の姿は、しかし信頼感の裏返し。
　丈だったらなんだかんだ言ってもさぼらずにやってくれるだろうとわかっているんですね。

　わかってて押しつけるあたりなにげにひでえヤツらだ(＾＾;)　と思いますが、それだけ気の置けない間柄になってきたんでしょう。


「『８人目』を探すのが、我らの使命だろうが！」 (テイルモン)

　もう完全に口調が変わってますね。当初のままだと悲壮感が足りないからでしょうか？


「あなた、アグモンのお友達？」 (ヒカリ)

　いきなり先制ジャブ。無警戒というか、天然というか…。


「おいで！」 (ヒカリ)

　２発目、ストレート。機先を制されて、らしくもなく慌てるテイルモンがポイント。
　ここらへん前後のヒカリは竹田作画なので、かなりの美少女です。


「空のお母さんって、とっても優しそうだったし。ね、空」 (ピヨモン)
「そう？　ありがとう。さぁ、仕事、仕事」(空)

　セリフのみながら、35話以降への仕込みです。同様に、ミミ組のほうにも伏線が敷かれていました。
　…太刀川家はひょっとすると、ああ見えて普段はそれなりに普通のメニューなのかもしれません。


「あたしはか弱い乙女でいたいの」(ミミ)

　まあ彼女なら、女性であることに不利を感じるどころかバリバリ武器として活用することでしょうね。いい意味で、ですが。


「うあ！　なんで真夏にコートなんて着てられるのよ!?　見てるだけで暑くなる!!」(ミミ)
「ちょっとミミちゃん、聞こえるわよ」(空)
「だってホントだもん」(ミミ)

　ミミ節絶好調。暑さでブーストがかかっています。


「捕まったのは、どっちかな!?」(メタルグレイモン)

　デスメラモンをぶん投げる直前。うん、かっこいい。


「行っちゃうの？
　また、来てくれるよね」(ヒカリ)

　だめ押し左アッパー。





★次回予告
　渋谷系という、なんだか懐かしい言葉がタイトルに登場します。
　そしてなにげにあの天使も復活！