沈黙の海底ホエーモン

 脚本:大和屋暁 演出:今村隆寛 作画監督:八島喜孝
★あらすじ
 ホエーモンに隠れ、深海の逃避行を続ける子供たちはその間、打倒メタルシードラモンの策をさがしていました。
 一方、海にいるかぎり自らの手のうちと豪語するメタルシードラモンはハンギョモン部隊を差し向けます。執拗な追撃をさまざまな手だてでかわし続けるも、そのたびに追いつめられていく子供たち。もはや戦うしかありません。

 しかし、メタルシードラモンの装甲はクロンデジゾイト製。接近戦を挑もうとするウォーグレイモンですが、頼みのドラモンキラーも弾かれてしまいます。逆に水中に引きずり込まれ、絶体絶命の大ピンチ! それを救ったのは、退避したはずのホエーモンでした。怒り狂った大海龍の必殺技によってホエーモンが致命傷を受けたその瞬間、ブレイブトルネードが敵を内側から突き破ります。ついにメタルシードラモンは倒れました。

 世界の行く末を子供たちに託し、その生命を終えるホエーモン。またしても大きな犠牲が出てしまいました。
 見ると、海がスパイラルマウンテンから消えていきます。メタルシードラモンの死が、エリアを開放したのでしょうか?

 スパイラルマウンテンの城でも、そのありさまは見えていました。
 ピノッキモンの不敵な笑いがひびきます。つぎの敵は、こいつだ──!



★全体印象
 42話です。タイトルコールは木村雅史さん(ホエーモン)。影絵も当然、ホエーモンです。最後の見せ場ですから。

 メタルシードラモンを水の中で覗くカットや回るスクリューなど、のっけから分かりやすい今村演出の回ですね。例にもれず戦闘シーンがたいへんスピーディで、緩急がよく利いてます。いつにも増してバンクが多く見えるのは難ですけど、メリハリが無いよりはマシ。41話を見たあとならなおさらですね。
 動画としてはブレイブシールド→水中直滑降と最後のブレイブトルネードが特に必見。後者では「勇者ライディーン」49話で妖魔の守り獣・バラゴーンを内側からゴッドバードで突き破るシーンが強く思い起こされます。バラゴーンが龍型であり、味方の特攻直後というところまで共通。ただライディーンの場合、その時命を散らしたのは初期からの戦友・ミスターこと神宮寺力なので、まったく違う感慨があるんですが…。

 ストーリーもシンプルながらかなり緊迫感があって、やきもきさせてくれます。合間にギャグも挟まれたりしますが、テンポがいいので気になりません。
 気圧調整やソナーなど海の中ならではなネタも盛り込まれており、また視覚とパソコンを同期させられるというデジモンの神秘も示されていて、冒険もの要素を強く感じとることができました。あっけないと言われるメタルシードラモンも、見直すとやはりメチャメチャ強いですね。

 今回、この上ない助っ人となってくれたホエーモンが死亡しました。なまじ再会してからが長かったので、子供たちの衝撃は最大級です。
 この事がみんなの足並みを乱してしまうんですが、結果的にはより結束が強まったので無駄ではなかったでしょう。

 みずからを盾にしてまで子供たちを守るデジモンはこれからも出てきます。
 目の当たりにすることで、太一たちもまた戦いの意味とその先にあるものを考えていくことになるのです。
 なんのために戦うのか、誰のために戦うのか。そして、自分はどうしたいのか。過酷ですね。



★各キャラ&みどころ

・太一
 悔しさと怒りをにじませるシーンがものすごく多かった気がします。
 この回や45話を見てると特に思うんですが、デジモンたちの死を誰より悼んでいるのって、むしろ太一なんですよね。
 ただ、そこから先の考え方というか、昇華のし方がみんなと少し違うし、たぶん制御もきかせてる。

 つまり、衝撃と怒りを恐怖や焦燥や憎しみとかじゃなく、即座に勇気へ変換できているんです。
 これは暴走の恐ろしさを知り、生命の危機への恐れをも克服してみせた彼だからこそできる芸当。

 …だから、怖いとまで言われることがあるのかな…。
 下地はあったし、こうでなければ過酷な戦いにおいてリーダーなど勤まらなかったとは思うんですが。


・ 空
 今回は案外目立ちませんね。
 彼女が本領を発揮するのは43話みたいな話…かもしれません。


・ヤマト
 ちょっと弱気な発言が多いですね。
 相方の出番もなかったし、次回まで待つしかなさそう。


・光子郎
 ドラモンキラーの情報を提供したりホエーモンの視覚をパソコンに繋いだり、ヒカリの笛をソナーに利用することを思いついたり、大活躍でした。
 こういったテクニカルな面では完全に彼の独壇場となるため、太一も任せっきりです。
 そして彼もまた太一を信頼しているため、ヤマトやミミほど大きくは揺らがなかったんでしょう。

 ムゲンドラモン戦やピエモン前半戦ではかなり強く出るシーンがあって、これは成長と言えましょうか。


・ミミ
 ホエーモンの中ではしゃぐなどだいぶ元気を取り戻してたみたいなんですが、43話の状態を思うに相当ショックだったようですね。
 チューモン、ピッコロモン、ホエーモンと来てとうとう決壊というわけです。
 ここらへんは単なる弱気というだけじゃないんですが…次回にくわしく語りましょう。


・タケル
 兄と同じくあんまり目立ってませんが、ホエーモンの死を受け入れきれずにこぼした言葉が心に残りました。
 ミミのようにならずに済んだのは直接庇われたケースが無いことと、(ヤマトでなく)太一をたよりにしていたからだと思います。
 また、ヒカリという同世代の女の子が仲間になったのも大きいかもしれません。

 なんだかんだと成長してきてるのは東京篇でわかるし、その成果が次回で発揮されるわけですが。


・丈
 太一とウォーグレイモンを援護し、ズドモンを連れハンギョモン軍団をまとめて相手にしていました。
 なんか水柱を上げてばっかりに見えますが雨あられと襲ってくる銛にもひるみません。頼りになります。


・ヒカリ
 一つ挙げろって言われたらホイッスルですね。何秒滞空してるんだ。
 兄を心配して声をかけたり、逆に何かあるとすぐ太一が声をかけてきたり、お互い気遣いを見せてますね。
 ヒカリに対してだけは太一も少々神経質なんですが、そこらへんにも理由があるんですよね。


・デジモンたち
 タイマンでメタルシードラモンを倒したウォーグレイモンが大金星。彼はのちにムゲンドラモンも倒しているので、貫録の勝率トップクラスです。
 うかつに砲撃戦をしかけず、積極的に接近戦へ持ち込もうとしていたのも重要なポイント。ちゃんと考えてますね。ただし、敵は不得手の水中戦がホームグラウンドなうえ空中戦をもこなすインチキな強さなので、成長差し引いてもムゲンドラモンより苦戦してましたね。

 小ネタでは熟練ハンターのテイルモンと目を回してばっかりのパルモンが笑いを誘ってくれます。


・ホエーモン
 タイダルウェイブ使ってるってことは、なにげに「ホエーモン完全体」へ進化してたんでしょうか?
 気圧調整や視覚接続などのギミックはまさに生ける潜水艦といった風情。

 そして、今回の大殊勲賞です。みんなを連れて対策立案と回復の時間を稼いだだけでなく命がけの特攻をかけ、勝利への糸口を掴ませてくれました。彼のはたらきがなかったら、メタルシードラモンには勝てなかったかもしれません。ほんとうにいいヤツでした。だから誰だよ獰猛なんて言ったのは。
 彼を放っておいたのは敵の大きなミスでしたね。まあ、ホエーモンだけならいくらでも逃げようがあるし、いちいち追いかける理由もないのでしょうが…。

 というか、一度は子供たちのはからいで退避してるんですよね。見直して確認しました。
 にもかかわらず、ピンチを見かねて戻ってきてくれたのですから頭が下がります。
 まあ子供たちはホエーモンを傷つけたくなかったわけだけど、彼自身はメタルシードラモンに一矢報いたかったというのが本音でしょうしね。ヤツがスパイラルマウンテンの海をわがもの顔で荒らし回っていただろうことは、容易に想像がつきます。

 ホエーモンは02でも協力者として登場し、フロンティアでも出番があります。古参では優遇されているほうでしょう。


・メタルシードラモン
 水中戦には絶対の自信があるためか、かなり余裕のある発言が目立ちます。
 その言葉通り着実にターゲットを追いつめ、 ウォーグレイモンとのガチンコ勝負においても終始押しまくってましたが、ホエーモンの特攻で全部引っくりかえされてしまいました。一度ならず二度までも邪魔されているあたり、脇が甘いですね。

 とはいえ、やはりそのパワーは凄まじいものがありました。じっさい、まともに水中戦をやって勝てるようなデジモンなんぞ数えるほどしかいないでしょう。デジアド世界にはほとんど皆無。水中にさえ持ち込めば同じダークマスターズにさえ勝つ自信があるでしょうし、ピエモン以外になら勝てそう。
 その自信がどっかで過信になったってことでしょうね。あまりにも長く天下が続きすぎたか。

 なお、彼はダークマスターズで唯一のデータ種です。
 それもあってはじまりの街で転生し、マイケルのパートナーになったのかもしれないと想像してるんですが…どうでしょう?
 死と新生はすべての生き物に平等なはずですから。アポカリモンは知らないですが。


・ ハンギョモン
 メタルシードラモンの手足となり、複数でホエーモンを追撃していました。
 はなれていても相互に連絡が取れるようなので、諜報部員としてはつごうがいいんでしょう。ズドモン一体に退治されてしまったところからみても、戦闘能力より適応能力や情報収集能力を重視した進化かもしれません。でも天災にあっては、こういった種族が生き残りそうです。

 02ではインス…じゃなかった、ダゴモン世界の住人の仮の姿として登場し、陸で行動するシーンも見られますがやっぱり弱くて、テイマーズに至ってはジェン一人にボコボコにされるという完全体の名が泣く醜態もさらしてしまっています。まあ、純粋な腕っぷしならリリモンも弱そうですけど。



★名(迷)セリフ

「今はまだのんびりと狩りを愉しむのだ。
 クククク……選ばれし子供たちよ、狩りは始まったばかりだ」(メタルシードラモン)


 「まだまだ殺すな。いつでも殺せる。ゆっくり殺せ。楽しく殺そう。うす汚いネズミどもを」
 というセリフを思い出します。誰のセリフかって? そりゃ、ノロイ様に決まってるじゃないですか。

 あれはトラウマだった…。


「他愛もない、ウォーグレイモン! これが最後だ!」(メタルシードラモン)


 別にどうってことないようですが、予告にも載ってたので妙に憶えてるセリフです。


「冗談ではない!!」(メタルシードラモン)

 「メタルシードラモンめ、この海から出て行け!」
 「大尉! ウッディ大尉!!」

 誰がウッディ大尉やねん。


「ホエーモンッ!!!」(太一)

 まあ巫山戯ばかりというのもなんなので…。
 この絶叫と45話の涙が、ダークマスターズ篇の太一をすべて表していると思うわけです。ハイ。


「ごらんよ。海が消えてくよ」(ピエモン)

 ピノッキモン個人に話してるセリフはたしかこれだけです。
 それにしても、もうあの道化口調がくずれてますね。




★次回予告
 次なる敵はピノッキモン。罠…というよりは、彼のゲームに子供たちが翻弄されます。
 しかし、いちばんの見どころはやっぱりあの兄弟でしょう。