メタルエテモンの逆襲

 脚本:まさきひろ 演出:川田武範 作画監督:出口としお
★あらすじ
 それぞれの道をさがすため、別れ別れで行動することを選んだ子供たち。

 とりあえず、ひと休みしていた丈とミミのすぐそばに突然、謎の隕石が落下してきました。現場に倒れていたのは、あのオーガモン。みんなが警戒する中、ミミは彼の負傷を放っておけず、助ける道を選びます。感謝しながらも、彼女の行動を理解しきれないオーガモン。そこへ、ピノッキモンが登場しました。圧倒的パワーの前では、ズドモンの必殺技も通用しません。と、今度はやかましい掛け声とともにメタルエテモンがあらわれました。暗黒の淵に葬られたかと思われたエテモンが、復讐の一念で究極体の力とメタルボディを手に入れ、帰ってきたのです。

 ところが、メタルエテモンは突っかかってきたピノッキモンと殴り合いをはじめました。これ幸いと、ミミたちは脱出します。
 その頃、ヤマトを除く太一たち残りのメンバーはピノッキモンの館へ偵察に来ていました。守衛へ先制攻撃を仕掛けるのですが、彼ら2体はピノッキモンのことをよく思っておらず案内役に。思わぬ協力者を得た太一たちは、館に設置されていた大砲で戻ってきたピノッキモンへ攻撃をはじめます。

 ふたたび追ってきたメタルエテモンから、ひたすら逃げつづけるミミと丈、そしてオーガモン。その前に、新たな謎のデジモンが…。



★全体印象
 46話です。タイトルコールはもちろん、メタルエテモンの増谷康紀さん。影絵でも無駄にポージング決めてます。

 メインはミミと丈。次回でミミが戦いを決意するので、その前フリですね。サーベルレオモンもからむ47話がピノッキモン戦のクライマックスというのもあって、より重要だといえるでしょう。とはいえ、エテモンやオーガモンが二十数話ぶりに再登場する点は見のがせません。どちらも選ばれし子供たちと戦った悪党でしたが、復讐しか頭にないメタルエテモンと戦いだけの生き方にはじめて疑問を持つオーガモンとは、いい対比になっていたと思います。
 まあこのあたりは、オーガモンもエテモンもコミカル寄りなのでだいぶマイルドになってましたが。

 太一組のほうも、フルメンバーじゃない分慎重になったリーダーの描写も加わって思いのほか見せてくれます。微妙にアグレッシブなタケル(…兄貴いるときと態度ちがいませんか君)とかあれこれ余計な気苦労してそうな空とか、けっこう面白い。この五人の組み合わせはかなりバランスがいいと思ってたんですが、実はいろいろあるみたいですね。そのせいか戦い方もまずは情報ありきと、いよいよ戦術的になってきました。

 とまあ、お話はこれといって問題ないんですが絵と演出は地獄の二重奏。47話予告の直井作画とくらべてはいけません。



★各キャラ&みどころ

・太一
 上で書いたように、彼と空、光子郎、タケル、ヒカリのチームはバランスがいいと思ってたんですが、ちょっと違ってたみたいです。
 確かに意思統一はしやすそうなのですがそれは太一にとってという意味で、よく見ると太一により好意的なメンバーばかり。悪く言えばイエスマンの集まりで、いわゆる派閥といっていい組み合わせではありませんか。さしずめ「八神派」といったところ。

 もちろん、だからといって我を通しまくるほど太一はバカじゃないし、それだけの成長もしてきています。でもその分、彼にかかる負担がより大きくなった。今までなら、突っ走ろうとするとヤマトが別の視点から意見をのべますから「言われてみればそうかもしれない」と納得できれば、ブレーキがかかります。いつのまにか、それが当たり前になっていた気がしますね。だから、こういう状況でいざヤマトがいなくなると硬軟すべての判断を全部太一ひとりでやらなければならなくなり、たいへんな責任がのしかかることになります。真正面から意見をぶつけてくる相手がいないというのは、意外に危険なこと。

 とはいえ、一度はこの組み合わせで行動してみるのも太一にとっては必要だったかもしれません。
 現にこのあと数話にかけて、また成長している節があります。


・ 空
 たぶん彼女の負担も重くなってます。ヤマトがやってた分を半分くらい兼任して、その上取り持ちは前と同じようにやらねばなりません。
 こうして見ると、ヤマトの存在はやはり大きかったですね……いなくなったことで、見えてくるものは確かにあるようです。
 いろいろ意見は割れるでしょうけど、それでも太一にあれだけ言えるのってヤマトだけだったんですから。


・ヤマト
  その彼は今回出番なし。でも戦う気はまんまんだったようなので、近場でようすを見ていたかも。


・光子郎
  あとで太一と2人(+2匹)で行動するお話も出てくるので、正面から意見をぶっつけざるをえない局面を経験することになります。
 以降、ヤマトほどじゃありませんが太一に対してかなり強いことが言えるようになっていくので、彼にとってもいまの状況は貴重な経験でしょう。


・タケル
 ヤマトがいなくなったとたん、なんかえらく発言権が増したような…。
 これは彼自身が、どっかでヤマトへ遠慮していたからなんでしょうね。今回の太一への発言のほうがよっぽど「弟」っぽい。皮肉な話です。
 兄がいない穴を埋めようと頑張ってるんでしょうし、太一は太一で、少しくらい露骨な発言をしても受け止める度量があるんですけど。


・ヒカリ
 チーム八神派ではぱっと見一番控えめで一番発言権がないように見えますが、太一も彼女には弱いので意外に重要なポジション。
 というか彼女になにかあると太一も冷静さを欠きがちになるので、ある意味じゃ要ともいえます。


・ミミ
 なぜ戦うのか。オーガモンへの質問が、だいたいの心理をも教えてくれますね。

 彼女はつまり「戦いのための戦い」を忌避したんでしょう。先になにが見えているかを知って納得できないかぎり、動けなくなってしまった。過酷な争いで支払っただけの代償に見合うものをほんとうに得られるのか? もし何も得るものがなかったとしたら? などと、疑問に思ってしまったんでしょう。
 ワガママで後先考えてないところもある彼女としては、実のところけっこうな成長なのかもしれません。
 先が見えるってことは、見越して感情のセーブもできるようになるってことですから。そういえば、今回はかなり穏やかでした。

 彼女の葛藤は、次回でひとつの解答をみるまで続きます。


・丈
 シン兄さんのことを思い出したり、事前にあれこれ用意していたり、ゴマモンを逆に諭したり、いよいよ02のイメージに近づいてきました。
 歌にあったように、自分や仲間を信じつづけることが彼の道、彼の戦い。丈はミミがいずれ必ず決心をしてくれると信じ、その手助けをするために残りました。彼女とパルモンだけじゃ危険というのはまさにその通りで、彼の心配は当たっていたのです。

 空も最近は丈先輩のフォローを当てにしてたでしょうから、こんな時に彼までいないというのは不安だったでしょうね。


・デジモンたち
 丈がまともなことを言うと、ゴマモンは素直になりますね。こういう積み重ねが、彼らを地道に着実に成長させてきたわけです。
 今回は全体的にややコミカルムードなので、彼らもちょっと遊んでる感じですね。


・オーガモン
 仁義とか言い出しました。こーして見ると、なんかちょっと性格が変わったような…。
 まあ、味方についてもあんまり「え〜っ」とは思いません。デビモンが仲間になったりしたらさすがにギョッとすると思いますが。
 彼については、レオモンと絡む47話でもう少し詳しく語るとしましょう。


・メタルエテモン
 いまいち状況わかってなさそうな彼。タイプ的には味方にまわってもおかしくはない敵役なんですが、ちょっと自尊心が高すぎたようです。
 もう少し状況引っかき回すのかと思いきや、ミミを決心させるための出汁でした。扱いの格がだいぶ下がってる。

 それに進化してパワーが上がったのはいいんですが、ラブセレナーデが使えなくなったってことは事実上の弱体化なんじゃ…。


・ ピノッキモン
 メタルエテモンと同レベルで殴り合い。どうやら実力は互角のようです。
 もっと削りあいしててくれれば子供たちも楽だったのでしょうけど、メタルエテモンは子供たちしか眼中にないので難しかったようですね。
 まあ、獲物をとられそうになったら突っかかるかもしれないけど。

 ジュレイモンの言葉がまだ引っ掛かっているようですが、自分で考えず他者から答えを引っ張り出そうというあたり、どーしよーもないですね。
 ありていに言って終わってます。パーティ分割後のピノッキモン戦は、ほぼ消化試合といっていいかもしれません。


・ デラモン&フローラモン
 「であ〜る」口調が可愛いデラモンはしかし露骨にゴマモン声。フローラモンはたぶん前田愛さんのかけ持ちです。
 43話にも出てましたが、その時といい今回といい、ピノッキモンにはとにかく非協力的で敵対的。ま、無理もありません。人望がないんですから。

 ふたりとも47話以降は出てこないので、ピノッキモンが斃れてからは自由になり、ぶじ生きのびたものと思っていいでしょう。


・ ウッドモン
 集団でオーガモンを襲っていた連中。今回が初登場です。ってことはピノッキモンの手下でしょうか? まあ、やられ役ですね。

 これといった特徴がないせいか、シリーズ通しでもろくな扱いを受けていないデジモンの一体です。
 いちおう、フロンティア四話ではその回のボスでフェアリモンに勝ったりもしてるんですが…フェアリモンだもんなあ。


★名(迷)セリフ

「それは違うよ、ゴマモン。言いたいことがあっても、言わないほうがいい時だってあるんだ」(丈)
「…そうだね。丈の言う通りかもしれない。いや、その通りだよ」(ゴマモン)


 いつも他者を第一に考える丈らしいセリフです。伊織にもあれこれ深いこと言ってたな。
 そして肝心なときは茶化さず、持ち上げるのがゴマモンのやり方です。彼はいつでもそうだった。


「でも、いつかは戦わなきゃいけないんでしょ?」(タケル)


 タケル君、それまんま太一アニキのセリフ。


(…ヤマトならどうするだろう…こんな時、なんて言うだろう? タケルに、もしものことがあれば…ヤマトに何て言えば……)(太一)

 こういう風に考えるようになっただけでも、意味のある衝突だったかもしれません。
 彼もいよいよ熟考が似合う男になってきました。それでいて、まっさきに矢面へ立とうとする姿勢は変わりません。


「はぁ……また? 殺すとか殺されるとか、ほかにもっと気のきいたセリフ言えないの?」(ミミ)

 殺したから殺され(略) それで最後は本当に(略)。
 冗談はさておき、この彼女にとってはなにげない言葉がオーガモンの中になにかを生んだのは確かかもしれません。
 戦いに意味を求めている者と、戦いの意味など考えたこともなかった者につながりが生まれた瞬間でした。


「ボクに足りないものってなーに? 早く答えなさい。答えないと殺しちゃうよ?」(ピノッキモン)

 自分の内面にかかわる重要事項ですら、ゲームの道具にしか使えないとは…。つくづく哀れなヤツです。


「まだボクを子供扱いする気?」(タケル)

 タ、タケル君?


「レオモンがいなくなる…? よしてくれ、考えたこともねえ! レオモンを倒すことだけが、オレの生き甲斐なんだ。
 レオモンがいなくなったら、オレは…オレは……」(オーガモン)
「それって、論理的な矛盾でしょ? よく考えて」(ミミ)


 …この娘さんの口から「論理」なんて言葉が出たことがあるとは知らなかったというか、忘れてたなあ。
 言われてる方も「論理的」という意味では彼女とあんまり変わらないですが。




★次回予告
 今回の作画を見たあとだと直井絵がよけい輝いて見える…。
 そしてレオモンがダークマスターズ篇最初で最後の登場。その勇姿、焼きつけろサーベルレオモン!