闇の王デジモンカイザー

 脚本:まさきひろ 演出:川田武範 作画監督:出口としお
★あらすじ
 デジモンたちを救出するべく、今日も奔走する子供たち。
 しかし、カイザーは次々とデジタルワールドを制圧していきます。その支配地域には、謎の黒い塔が……。
 囚われたガブモンは死に物狂いで脱出し、ヤマトや子供たちに危機を伝えるのでした。
 
 SOSを受けて行動開始する子供たちですがゲリラ戦とあって、猪突猛進な大輔のやり方はことごとく空回りしてしまいます。
 さらに姉・ジュンのことでヤマトと口論にまで達してしまい、ヒカリには自分の姉を罵る人は嫌いとまで言われる始末。
 とりわけヒカリにキツくあたられた事がこたえたようで、大輔はすっかり落ち込んでしまいました。

 ブイモンはそんな大輔を元気づけようと勇躍、行く手をはばむ敵に挑みます。
 ところが油断から全員のピンチを招いてしまい、レッドベジーモンから百叩きの刑を受ける羽目に…。責任を感じる大輔。
 と、敵の鞭が勢いあまってあの黒い塔を穿ち、亀裂を生じさせました。途端、ガブモンが進化できるようになったではありませんか。
 それをきっかけに、状況は一気にひっくり返ります。ディグモンが塔を破壊すると、黒い輪の効果も消えうせました。

 件の黒い屹立──ダークタワーこそがデジモンカイザーの支配力をもたらす、電波塔の役割を果たしていたのです。
 これを倒してエリアを開放していくことこそ、選ばれし子供たちの目的。
 皆が決意をあらたにする中、大輔は自分のために奮闘してくれたパートナーへ詫びを入れるのでした。

 昏い中で一手、また一手と支配エリアを増やし、悦に入る闇の王デジモンカイザー。
 背中からじっと見つめているワームモンの脳裡には、なにが去来しているのでしょうか……。
 
 
 
★全体印象
 4話です。題名コールは朴ろ美さん(一乗寺賢=デジモンカイザー)。
 闇を思わせる背景の上でムチを振るうデジモンカイザーと、ワームモンの影絵が交差します。ワームモンはOPからの流用でしょうか。
 
 さて、1話から登場していたダークタワーの設定がここで明かされます。
 またエリアマップも公開されたことから、デジモンたちを解放するために何をしたらいいか、具体的に示すのが
 この4話の役割のひとつだったといっていいでしょう。

 ただこの「エリア」という概念についてはあんまり深い意味はなかったようですね。
 ぶっちゃけた話ダークタワーが先にあって、そのオマケみたいなものです。ひとつ倒せばひとつ戻ってくるよ、という。
 ストーリー的にも陣取り合戦というには遠いうえ、そもそも01の時点から地図自体がいい加減ですし。
 見るに、ファイル島やらサーバ大陸といった概念は消滅したようですね。世界復活のとき地形が書き換わったのかな?

 もうひとつの側面として、この回からは先輩キャラとの交流を通した各新メンバーの掘り下げが始まっています。
 その一番手が大輔……ということなのでしょうが、いま見てもなんだかよくわかりません。
 特に、姉と確執があるという設定が後にぜんぜん生かされてないので完全に宙ぶらりんになってしまっている。
 というよりこの回の前半から終盤手前にかけての大輔は、何か別人みたいな性格です。

 一方、ガブモンにも通じる妙に健気な側面をブイモンが見せ始めたのもこの回。
 後にもたびたび出てくる面ですが、しまいには「オレを蹴ってくれ!」(ドラマCDより)などと言い出すところをみると
 ただ単に脚本担当のまさき氏が暴走した結果で、それが強烈な印象を残しただけだった気がしてきます。

 作画と演出もガクンと落っこちて低調なため、大輔ファン(私だ)にとっては鬼門ともいえる回かもしれません。
 全体的にみても、リピート性の低いエピソードと受け取っています。
 
 
 
★各キャラ&みどころ
 
・大輔
 出番だけなら他の誰より多くもうけられていますが、あんまり嬉しくないのは何故なのでしょう。
 というか今回だけ無闇にやさぐれてません? イライラしているというか……。
 ああ、ジュンと喧嘩でもやらかしてたのかもしれません。

 それにしても、メインどころの中心格としては「そりゃないよ」な扱いです。
 昔の記憶をたどってみれば「あばれはっちゃく」あたりがああいう感じだったかな、とは思い当たるので
 まるっきりナシな手法だとはいえないんですが……後にあんまり明確なかたちでつなげられてないのがなあ。
 20話以降の株の上がりっぷりがだいぶ垂直立ち上げに見えるのは、初期に関係していると思います。

 太一がまさに王道的リーダーな主役だったので、彼は成長型にあたるところなのでしょうが、
 キャラが多すぎるせいか他の問題か、ハッキリここで成長した、と指摘しにくいところはありますね。
 それは京や伊織にも言えることです。前作キャラとの絡みは、必ずしも上手くいったと言えない面があるでしょう。

 …もちろん、カッコよく決めることだけが出番ではないし、そういうタイプでもないことはわかってるんですが。
 
 
・ブイモン→フレイドラモン→チビモン
 まさき脚本特有の現象かもしれませんが、考え方がアレです。

 アグモンだったら直接なぐさめるだろうし、ゴマモンだったらやんわりハッパをかけるでしょう。
 自分が活躍する姿を見せて大輔に元気を取り戻してもらおうというのは、なんかものすごく不器用じゃありませんか。
 大のアニキだったら漢は背中で語るもんだとフォローを入れてくれそうですが……。

 ボコボコに叩かれてる場面はいろんな意味で見てられません。
 どうもまさき脚本のブイモンはマゾっ気があるというか、それを感じさせる仕上がりに思えてならんのです。
 でなきゃあ「オレを蹴ってくれ」なんて発言が出るとは思えないわけだし……何を意図してこのようなことに。

 ただワームモンも近い側面があるというか彼こそ真性なので、その点ではジョグレスの相性がいいのかもしれません。
 変なところで一致しているなあ。
 
 
・京&ポロモン→ホークモン
 前半で光子郎にD-3を貸していたため、ほとんど出番なし。進化シーンさえありません。
 よく見たらゴツモン救出のときも仲介役に徹していたので、今回はほぼお話の外にいたみたいですね。
 その分だけ大輔らの出番は増えてますが…。

 ところでポロモンはどうやって連絡係をつとめるつもりだったのでしょう。
 
 
・伊織&ウパモン→アルマジモン→ディグモン
 京とちがって同行はしてましたが、ハッキリいって地味でした。
 塔を倒すという、うってつけの役割には出番がありましたがそれだけ。まあ、次回があります。
 
 
・タケル&パタモン
 横からあれこれ言ったり喧嘩を止めようとしたりしてましたが、あんまり印象に残りません。
 どっちかというとその後のヒカリと大輔のほうが心に刻まれます。
 パタモンに至っては進化する前に事が終わってしまったので、特に何もしていませんね。
 
 
・ヒカリ
 なぜこうも大輔をスルーし続けるのか理由は不明ですが、今回はとりわけ露骨でした。
 むしろこの回はみんななんか変です。タケルなんか、前の3話よりも話し方が荒っぽかったりしますね。
 まだキャラを掴みきれてなかったのでしょうか?

 …というか実際、ヒカリって大輔のことをどう思ってたんでしょうね。解釈はあくまでも解釈ですし。
 
 
・テイルモン
 こっちも進化はしてないんですが、デジモンメンバーの年長役として存在感は毎回刻んでいます。
 べジーモンをパンチ一発でのすあたりは、さすがといったところ。
 
 
・ヤマト
 なんか今回だけ見ると、大輔の視点からは嫌な先輩という描き方しかされてないような……。
 熱血漢同士相性が悪いのか、のっけからけんか腰ばかりだし。
 11話でいつのまにか和解しているのがとっても不自然でした。このあたりは今も納得してません。

 今回といいジュン絡みといい、空絡みといい、どうも02のヤマトは変に誤解される描写ばっかりだった気がしますね。
 いちばん良かったのが本編と関係ないドラマCD「手紙」だったという事実はどう受け取ればいいんでしょう。
 むしろアレ自体、何であの時期に出たのか謎なんですけど。

 そういえば、この回だけ大輔にタメ口きかれてた気がします。反発があっただろうとはいえ、初対面なのに。
 選ばれし子供たちは育ちがよいので、ミミでさえ目上に敬語を崩したことはありません。
 このへんも、大輔の株を不必要に下げていたと思います。
 
 
・ガブモン→ガルルモン
 こっちは別に相変わらずでしたが、いろいろと災難に遭ってましたね。
 先に進化したにもかかわらず、レッドベジーモンを大輔たちへ譲ってくれたことにはありがとうを言いたいです。
 
 
・太一&アグモン→グレイモン
 前半と後半に一度ずつ、ちょっとだけ出演。にもかかわらず、大変な存在感です。02キャラも大変だ。
 ヤマトと並ぶとさらに倍率ドンで、自重を申し入れたい気分にさえ。

 京のことはちゃん付けで呼ぶんですね。ヒカリ以外の年下の女の子はみんなそう呼ぶようです。
 
 
・光子郎
 D-3を調べて、デジモンカイザーのものと変わらぬエリアマップを表示させることに成功していました。
 これは敵味方のデジヴァイスがもともと同根のものだということをあらわす、重要な証拠のひとつでしょう。
 冒険にはほとんど参加してません。
 
 
・デジモンカイザー
 今回は直接大輔たちとまみえることがなく、別のエリア制圧に精を出していました。
 それがよほど重要な土地だったのか、上機嫌。サンタゲリアの町を取り返されても、戦略上影響なしと嘯いています。

 敵の規模の大きさをあらわすための手法……なのでしょうが、あのマップだけではどんくらい大変なのかわかりづらい上、
 20話そこそこでかんじんの首魁たる彼自身が攻略されてしまうので、全部うやむやになってしまいます。
 こんな感じで戦っていくんだよ、という定型、概念だと思えばいいのでしょうが。

 それにしてもあの御輿はシュールでした。やっぱりこの頃の賢ちゃんは変です。いろんな意味で変です。
 
 
・ワームモン
 いつもは例の要塞に住んでいて、毎回賢に同行してるわけじゃないようですね。
 たぶん機嫌が悪いときなど、置いてけぼりを食ったりするんでしょう。まさに虫のいどころが悪いというやつです。
  
 
・レッドベジーモン
 今回の走狗デジモン。クレジットからみて、声はたぶん平田さんだ(^_^;)
 実力的には、成長期よりも弱いべジーモンとはくらべもんにならないほどのものがありますが成熟期としてはこれが普通で、
 べジーモンが弱すぎるといったほうがいいでしょう。こっちを基準に考えたほうがよさそうです。

 とはいえ、アーマー体相手はいかにも力不足。フレイドラモンにまるで歯が立ちませんでした。
 01の時点でも一山いくらという扱いだったので、敵としてメインを張れたこと自体が快挙なのかもしれません。
 ただ彼らの技は生理的にキツいものばかりですので、子供たちとしては嫌な相手でしょうね。

 イービルリングが外れないままKOされ、タワーが倒れてから正気に戻るという変則的パターンを見せています。
 ダークタワーの効果を見せるための措置ですね。

 
・べジーモン
 レッドべジーモン指揮のもと、衛兵としてサンタゲリアの町を守っていました。
 そうとうの数がいるようですが、もともとは町の外……たとえば森に住んでいた連中だったのかもしれません。
 どっちかと言えば、あれはガジモンたちの町だった可能性のほうがたかいと思われます。

 ガブモンはそのガジモンたちと組んで防戦につとめていたようですが、戦術・物量ともに相手のほうが上なのは明白。
 いろいろ端折られてる気がしますが、最初のアレはたぶん防衛戦直後の場面なんでしょう。
 
 
・ガジモン
 捕まってた方々。上に書いたとおり、もとはサンタゲリアの住人だったと考えるのが自然だと思います。
 01のときにくらべるとなんだか随分丸くなったような雰囲気ですが、おんなじ種でもいろいろあるんでしょうね。
 町に住む町ガジモンと森に住む森ガジモンとでは、やはり考え方がちがうはずだし。
 
 
・ゴツモン
 冒頭で救出されていた方々。状況がよくわかりませんが、捕まっていたのは3話で出てきたエリアかな?
 とにかく、牢屋から救出されてしばらくの間、パソコン部の部室に避難していたようです。
 よーするに今回までは敵の数が多すぎて、リングを嵌められていない者たちを救出するのが精一杯だったのでしょうね。

 後半で彼らのエリアのダークタワーも壊されたので、無事もどることができたと思われます。
 そういえば、パートナー以外でも出入りできるんですね。触っていれば問題ないのかな。
 
 
 
★名(迷)セリフ

「恐怖の完熟野菜、レッドベジーモン!」(レッドベジーモン)

 アーマー体に対抗したかのような名乗りセリフです。自分で言うなといいたいところですがそれはお互いさまか。
 後にウッドモンも名乗りをあげていたので、イービルリングがつくと自己主張がはげしくなるのかもしれません。
 

「大輔って、ちっとも可愛くないでしょ〜? あなたたちみたいな子が弟だったらなあ」(ジュン)

 もうひとつ存在の意味が曖昧だった大輔の姉・ジュンですが、中学生か高校生かもなんだか曖昧でした。
 このセリフからして、中三以上なのはまず間違いないと思うんですが。

 表情からみて、この言葉は本気じゃないと思われます。この程度なら誰だって言うでしょう。
 というか言うほど仲が悪いよーには見えないんですけど。
 もうちょっと描くつもりが、いろいろあってバッサリ切られた可能性もなくはありませんけれど。
 
 
「選ばれし子供たち、出動!」(京)

 京といえばこのセリフ……なんですが、ぜんぜん話に絡んでこないこの回が初出とは思いませんでした。
 3話かと思ってた……。
 まあ、まだ決めポーズは取ってませんが。
 
 
「ちぇっ、オレたちゃ蚊帳の外かよ。やってらんねぇよな、伊織」(大輔)

 いま見るとお前誰だ? って感じのセリフですが、先輩への明確な反発という意味では貴重な一例でもあります。
 皆、いささか先達に従順すぎるところはあったかもしれないなあ……もうちょっとぶつかっても良かったかも。
 そのぶん、賢ちゃんが肩代わりした形ですかね。
 
 
「いや、なんか言ってたさ。会う人ごとにオレの悪口言わなきゃ、気がすまないらしいから。
 オレのこと嫌いなんだよ。ま、オレもあいつのこと嫌いだから、おあいこだけどな」

「オレがあのバカ女のことをどう呼ぼうと、オレの勝手じゃねえか!」(大輔)

 お前誰だ? パート2。
 いやコレ、まさか今回だけとは思いませんでした。ジュンへのぞんざいな態度は変わってませんが姉弟ならあんなもん。
 序盤はこういう齟齬が出やすいもんですが、これはかなり大型だと思います。

 
「お前がもしおれの弟だったら許せないね。ぶん殴ってやる…!」(ヤマト)

 そんな大輔に。
 いやあ、きょうだいの事となれば黙ってられんのはわかるんですがもう少し落ち着いてください。年配なんだから。
 もっとも、ヤマトに気のきいたことを言って諭すなんて器用なことができるとも思えないので、
 これはこれで彼らしいのかなあ。

 むしろ問題は、確執らしきものを作っていながら後のフォローが皆無だったことでしょう。
 
 
「やめてお兄ちゃん! 殴らないよね! そんなことしないよね!」(タケル)

 この手の喧嘩にトラウマがあるであろう彼ですから、ここで止めに入るのは正しい流れでしょう。
 それにしても山本さんがお兄ちゃんって言うと、何か行き場の無い気持ちになります。まだ「兄さん」じゃないんですね。
 
 
「やめて、大輔くん! 自分のお姉さんのことを悪く言う人は、きらいよ!」(ヒカリ)

 真顔で死刑宣告。脳内でさらにパワーアップ。

 ……大輔のことです。今回のことをきっかけに「ヒカリちゃんに嫌われるからやめよう」とばかりに
 姉への忍耐というものを身に付けたにちがいありません。そう思うことにします。
 
 
「オレがかっこいいトコ見せるから、大輔も元気になって!」(ブイモン)

 内心で思って行動で示そうとするあたりは、まあ大輔のパートナーらしいといえましょう。
 なぜか他より健気に見えるのは私の頭がおかしいか、声があまりに女の子してるからかの、いずれかの理由でしょう。
 
 
「きっと、オレが悪かったんだよな。気を遣わせたみたいで…ごめんな、ブイモン」(大輔)
「大輔も少しは成長したんだ♪」(ブイモン改めチビモン)

 というわけで、悪いと思ったら謝れるのが選ばれし子供たちのいいところ。
 なんかビミョーにすっきりしませんが。しかもこの場面、ふたりの絵がありません。
 あと現実世界なのにブイモンと呼んでいます。これは別にたいした問題にはなりませんが。
 

「デジモンども! 一匹残らず僕にひれ伏せ! 僕に傅け! そして僕を崇めるんだ…
 フハハハハ…ハハハハハ!」(デジモンカイザー)

 ラストシーンを飾るセリフ。なぜか心に残っています。
 今見るとああ誉めてほしいのね、認めてほしいのね、と別の感想が出てきますが。

 
 
★予告
 雪山での戦い。ちょっと忙しいながら、こんどは名編といえる部類に仕上がっている例が登場です。
 伊織ってエピソードには地味に恵まれてる気がするなあ。