ヒカリノキオク |
脚本:前川淳 演出:角銅博之 作画監督:竹田欣弘 |
競うようにヒカリ救出へ走る大輔とタケル。
間一髪合流には成功するものの、そこにアンドロモンが現れます。その首にはイービルリングが……
強行突破しようとするフレイドラモンたちですが、敵は完全体。まったく歯がたちません。
しかし、太一の呼びかけやヒカリの涙、そしてデジヴァイスの輝きにより、アンドロモンは正気を取り戻します。
必殺のガトリングミサイルが一撃のもとにダークタワーを吹き飛ばし、機械の街は開放されるのでした。
こうして騒動は落着となり、新デジヴァイスの名もD-3と決まることになります。
イービルリングでは制御しきれない完全体を、どうやって操るか……
自室の闇の中、デジモンカイザーこと一乗寺賢は厳しい表情を浮かべていました。
★全体印象
7話です。タイトルコールは荒木香恵さん(ヒカリ)。
バックに浮かぶ影絵は01を見てた向きならばおなじみな、最終話の記念写真です。撮影者はアンドロモン。
放課後にこっそり活動しているとして、メンバーの誰かが事故で戻ってこれなくなったらどうなるか……
今回のテーマはズバリ、これでしょう。ヒカリというのも妥当な人選です。
大輔にタケルという、意外とめずらしい取り合わせでの行動も見どころのひとつ。
アンドロモンがらみはどっちかというとファンサービス兼9話以降の伏線、といったほうが近い扱いです。
ついでに言うと完全体の強さをアピールする要素でもありましょう。
D-3の名前が出てきたのもこの回からですから、きわめて重要なお話のひとつといえます。
主軸にかかわってるメンバーはそんなに多くないんですが、あちこち奔走する子供たちは見てて飽きません。
面白いというだけではなく、02らしいエピソードといっていいんじゃないでしょうか?
大輔ファンにとってはいろいろ言いたいことがあるお話でもあるとは思いますが。
作画はさすがに竹田作監だけあって綺麗なものです。しかし、まだまだ空気を読んで色を押さえているようですね。
竹田作画の本領発揮はご存知のとおり、21話あたりからです。その名を私の頭に刻みつけることとなりました。
慣れが出てきたのか、どっかの時点で「もっと好きに描いていいよ」とでも言われたのか、突然すべてを語ってきます。
演出などにも特に気になるところはなく、合計点がたかい回といえるでしょう。
★各キャラ&みどころ
・大輔
かの有名?な「ウルトラエンジェモン」発言はこのお話が出典。
頑張ってはいるんですが、なんか今回もいまひとつ決まらないというか、なんというか……
アンドロモン登場のあとはほとんど蚊帳の外だし、あらためて「この人ホントに主役なのか?」と言いたくなります。
それこそが大輔らしさといえばそうですし、彼のことを嫌ってる人はほとんど見たことがないんですけれど。
単なる同情プラス、ヒカリとタケルがあれこれ言われがちな反動で嫌われてないだけという見方もありますが
そこまでは追求してやるなと記しておきます。
・チビモン→ブイモン→フレイドラモン
大輔にフォローを入れているようで何のフォローにもなっていなかったり、ウルトラエンジェモン発言に目を白黒したり
今回もかわいいです。パートナーを抱えて跳んだりと美味しいカットも。
しかしバトルではアンドロモンに一発でのされて出番おしまい。なんともしまらない終わり方です。
まあ、それはパタモンも同じなのですが。
・京
ああして見ると、年長者らしくその場をいさめようというタイプではないんですよね。むしろその役は最年少の伊織だし。
というか彼女、あんまり上級生としての自覚がないのかもしれません。上級生だからって意味もなく威張るよりはいいですが。
後半はほとんど出番なし。ただし、バトルに参加してはいます。
・ポロモン→ホークモン→ホルスモン
見たところ結構味にはうるさいようです。コンビニで買ったかんぴょう巻きでは物足りないこともあるでしょう。
あの手の市販品より手作りのほうが美味しいのは当たり前ですが、京さんもなにげに大変です。
前回はピクニックでしたが、つぎはどうやって伊織ママのかんぴょう巻きを確保するつもりなのでしょうか。
・伊織
大輔にハッキリ物申したりとっさに京を止めたり、冷静さと礼節にこだわる面が今回もよく出ていました。
この段階だと大輔とはそれほど会話してるわけじゃないのでまだちょっと堅いというか、距離が感じられるんですが、
後半あたりはもうちょっと崩れてギャグ顔で言い合いしてるシーンもあった憶えがあります。
しかし本当にしっかりした子ですね。し過ぎて可愛げがないのが可愛らしい年頃です。
・ウパモン→アルマジモン→ディグモン
アーマー体としてはわりと珍しいギャグ顔を披露していました。
しかしあのドリルが効かないなんて、アンドロモンはどういう装甲をしているんでしょうか。
完全体ともなると、それ以下の攻撃は全部ブロックされてしまうのかな。物理的というより、データ的に。
・タケル
どうも大輔に対する対応が安定しない気がするひとりなのですが、この7話はわりにいい感じです。なんというか、雰囲気が。
逆に11話あたりはすべってたように思われてなりません。
ヒカリの危機に気がつけなかったことを悔やんでいましたが、これはやはり生まれてはじめて「守りたい」と
ひとりの男として思った対象が彼女だったからでしょう。いろんな意見がありますが、タケルにとってヒカリという少女が
特別な存在だということだけは確かだと思われます。そっから先の話はまた別の問題ですけど。
そんなタケルも、アンドロモンが来てさらに太一が来たあとはすっかり脇にまわっていました。
大輔との勝負?はとりあえず引き分けといったところでしょうか。
・パタモン→エンジェモン→ぺガスモン
もともとけっこう毒もある性格ですが今回は遠慮なくズバズバ斬っています。
バトルでは結局大していいとこなしだったので、プラマイゼロですが。
ひさびさに出るエンジェモンは、相手によりますが完全体以上ともやりあえる実力の持ち主。
汎用性ならぺガスモンのほうがはるかに上でしょうが、こと戦闘となればやはりエンジェモンに軍配があがるでしょう。
フレイドラモンとエクスブイモンのどっちが強いかとなると、これは意見の分かれるところですが。
・ヒカリ
危機のなか、救出を待つお姫様のポジションです。
「自分は大丈夫だから心配しないで」という文面に性格がうかがえますね。
しかしヒロインの場合この手のメッセージは「全然大丈夫じゃないからはやいとこ助けに来てくれ」とほぼ同義。
そして、時には大輔の名を先に呼んでバランスを取ることも忘れない……というかあれはたぶん天然。
なかなか罪作りな娘さんです。
アンドロモンに高い高いされる場面は、フロンティアにまんま使いまわされたものです。
直後、涙とともに相手が正気に戻るのも同じですが、02ではD-3の輝きも加わっていたのと違い、涙自体が引き金になってました。
いちばんの違いはヒカリのような少女ではなく、少年である友樹だったという点ですが……
暴走キャラを涙で止めるヒロイン役が男の子ってどうなのよ。いや、アリといやあアリですが…でもあのパターンはなあ……
該当シーンはよくムックにも載っている有名なものですが、そこはかとなくエロいです。
やはり少女と機械の組み合わせというのはエロチシズムがありますな。
・テイルモン
孤立したぶんむしろやる気まんまんでしたが、後半に墜落して進化解除。
なので、完全体が出てきているというのにサンクチュアリーバインドを使えないという状態でした。タイミングが悪い。
あの合体技が真価を発揮するのは10話なのですが、いろんな要素が重なって結局破られてしまっています。
結果だけを見ると思いのほか役に立ってません。
・太一
思いっきり単独で現れました。よくよく考えてみたらパートナーも連れず何しに来たんだこの人。
存在自体がアンドロモンの記憶を揺り動かして攻撃の手を止めさせているから、それがお話上の役割なのはわかるんですが。
まあヒカリが関わってる事件だけにブーストがかかって、思わず自分もついていってしまったんでしょう。
おかげで光子郎に怒られることになります。彼も言うようになった。
・ヤマト
ジュンにあっさり嘘を見抜かれ、デートの約束をする羽目になりました。
この回といい21話といい、どう見てもジュンに苦手意識を持っています。それとも恋愛沙汰が苦手なのかな。
どっちかというと02の彼は受難の人という雰囲気ですね。いいところも見せてたはずなんですが。
・光子郎
今回は完全に後方支援役兼、参謀に専念していました。じつに有能です。
あんまり有能なので脚本としても使いやすいのでしょう、前作キャラとしてはホントに出番が多いのですが
それが京や伊織の出番をも削ったとしたら、これほどの皮肉はありますまい。
でも彼ってホントに有能なキャラなんですよね。描いてみたことがあるからわかる。
困った時の光子郎とはよく言ったものです。
・ジュン
勘のするどさはとても大輔の姉とは思えないものですが、惚れっぽさや行動力など共通点も見受けられます。
もちろん、あらゆる長所が変な方向に突っ走りがちなのも周知のとおり。誰に似たんでしょう。
しかし、いつ見てもものすごい髪形です。
・石田裕明
ヤマトパパひさびさに登場。02ではこれが最初の登板となります。
と思ったら息子に放置されかけたり、いろいろと気の毒な幕開けでした。
・デジモンカイザー
ヒカリをいろんなアングルから監視していました。なかなかいい趣味をしています。
今回の行動原理は完全体のテスト。あのような結果になること自体は予想していた節がありますね。
これをキッカケにイービルスパイラルの開発へと没頭していくことになるので、現実世界から姿を消したのは
その仕事へ専念するためもあったのでしょう。
そんな彼も、究極体にだけはいっぺんも手をつけたことがありません。キメラモンが実質そうなのかもしれませんが。
といっても02の世界には究極体自体がほとんどいないので、研究のしようがありませんね。
・ワームモン
いつも思うけど全身からあふれるいじめてオーラが凄まじいです。
ところで、捕らえられたデジモンたちの管理IDを記憶しているようですね。やはり、なんだかんだ手伝わされてるのでしょう。
完全体は明確にカテゴリ分けされてるみたいですね。あの時点で何体確保していたのかな?
・ガードロモン
前作では回想にしか出てこなかったデジモン。
今回は微妙な位置にイービルリングつけられてわらわらと出てきます。一体一体はどうってことないのですが、
なにしろ数が多いので立派な戦力になっているという例。脱出口を壊してヒカリを孤立させたのも彼らです。
リングを壊されるとロボらしく機能ダウンしてしまうみたいですが、アンドロモンのメンテで復活。
普段はあの機械の街でガードマンの役割を果たしているのでしょう。アンドロモンはその元締めと思われます。
ところでこの機械の街、公式によれば名前をフルメタルシティというそうです。
・アンドロモン
首にイービルリングをつけられ、かつての同志と戦わされることになりました。02初の完全体です。
01のときと同じく、戦闘能力は圧倒的。スパイラルソードの破壊力も健在で、フレイドラモンとぺガスモンをKOしました。
そもそも01では最後近くまで子供たちとともに戦った歴戦のツワモノですし、非常に強いイメージがあるわけです。
彼らアンドロモンのいわゆる強キャラ印象は、ほぼこのデジアドシリーズが培ったものといっていいかもしれません。
すさまじいパワーはガトリングミサイルにもあらわれていて、成熟期レベルでは数発を要するダークタワーも
たった一撃で破壊してしまいました。さすがは完全体です。
まあ今回の場合、もっと強いイメージのあるスカルグレイモンがすぐ後に控えているんですけれど…。
そういえば、写真撮ろうって提案した言い出しっぺが他ならぬ、このアンドロモンなんですね。
彼にしてはめずらしい気の利かせ方だし、それは彼自身にとってもそうで、だからとりわけ強烈な記憶だったのでしょう。
★名(迷)セリフ
「うるせえ! ガキは黙ってろ!」(大輔)
「……そういう言い方、やめてください」(伊織)
「あ……わ、悪かった」(大輔)
伊織としては黙ってろって言われたことより、礼節を欠いた物言いのほうが何倍も腹に据えかねるでしょう。そう見えます。
大輔は大輔で、悪かったと思ったらちゃんと謝る選ばれし子供らしいところを見せていますが、なんというか
伊織に気圧されてるよーに見えなくもないのがいろんな意味で彼らしいところ。
直後で非をみとめるタケルにも退いてしまいますが、これは上のやり取りで毒気抜かれたからというのもあるでしょうね。
「…そうね! あたしが一番お姉さんなんだから、しっかりしなくちゃ!」(京)
思い出したようにこういうことを言うので、自覚を持とうとしてないわけじゃなさそうなのですが……
「…いっしょに行こう」(タケル)
「……わかったよ」(大輔)
大輔とタケルのやり取りの中では、これが一番好きです。
私の中で、このあたりの雰囲気が一番両者の関係性のイメージに近いんでしょうね。
「はじめっからそうすればいいのに、バカみたい」(パタモン)
「そう言うなよ。ちょっと格好つけてみたかっただけなんだから」(ブイモン)
パタモン、君……いつになく毒がまわっているぞ。
あとブイモン、それフォローのようでいてミもフタもない。
「その呼び方はやめろと言ってるだろ!」(デジモンカイザー)
といいつつ、その手のセリフはこの7話が最初。見えないところで何度も何度も言ってたのでしょうけど。
虫としちゃ、「賢ちゃん」という呼び方は一種の矜持なのでしょう。
「あ、今日親父の晩飯作るんだった! ……ま、いっか」(ヤマト)
ヤマト……(^_^;)
まあ、なんだかんだで結局作るんですけどね。
「ええっと、なんか父さんに頼まれた気がするけど……いーわ、行きましょ」(京)
あとでさぞ絞られたことでしょうね。
ところで、なにげにお父さんが初登場している気がします。
「ブイモン! じゃあお前は、ウルトラエンジェモンになれ!」(大輔)
「え、ええ〜〜っ!?」(ブイモン)
「なれ、絶対になれ、根性でなれっ!」(大輔)
「ム、ムチャ言うなよぉ〜!」(ブイモン)
パタモンの「ボクたちお似合いなんだよね〜」発言に発奮して。
単体で見るとじつにアホなやり取りですが、触発されてウルトラエンジェモン描いたのが懐かしい思い出。
あの頃のパワーを、少しでもこの02回顧録から取り戻していきたいものです。
「しっかり捕まってろよ!」(フレイドラモン)
「ああ!」(大輔)
別にセリフはどーってことないんですが、ここは私的名シーン。
「へへ、聞いたかタケル! “大輔くん”のほうが先だったぜ!」(大輔)
「よかったね」(タケル)
どこまでも前向きな大輔。タケルとしてはうらやましい性格かもしれません。悪い意味じゃなく。
2行めのイントネーションにはいろんなニュアンスを感じます。
「完全体!? なんだよ、それ!?」(大輔)
教えてなかったんかい。
「アンドロモン……みんなで、写真とったよね……?」(ヒカリ)
アンドロモンはヒカリにとって、あのつらい激戦を知る数少ないデジモンの仲間であり、苦楽をともにした仲です。
厳しい戦いであればあるほど、勝ち取ったものやそれを分かち合う喜びもまた大きい。
02組が入り込めないのも当然で、冒険とはそれを知る者たちだけのもの。だからある意味、02組と01組との間には
大きな壁があるのかもしれません。
ゆえにこそ、ジョグレスが意味を持つのでしょう。
「3つともDで始まるから、これからはD-3と呼ぶことにする、って言ってました」(光子郎)
意外なことに、名付け親は光子郎じゃなくてアメリカにいる彼のメル友なんですね。
つーかほんとうに何者なんでしょう、この友人って。トーマじゃないだろうな(^_^;)
(おれがデートだって…? 大輔、この貸しは大きいからな)(ヤマト)
いやそれ別に大輔関係ないですし。少なくとも直接は関係ない、はず……たぶん……
しかし大輔もたいへんだなあ。
★予告
01のシリーズ構成・西園悟氏が唯一脚本をつとめる回です。
今後の大輔と賢を語る上でもかかせないお話なので、力をいれて語らねば。