デジモンカイザーの孤独

 脚本:西園悟 演出:梅澤淳稔 作画監督:八島喜孝
★あらすじ
 天才少年・一乗寺賢。大輔は練習試合で、その天才が所属するチームと対戦することになりました。
 後半から現れた賢は圧倒的なプレイとリーダーシップで、たちまち大量の得点を奪い去っていきます。
 唯一、大輔のタックルで最後の得点だけは免れたものの、試合は完敗。しかし、大輔の胸には賢への憧れが残りました。

 そんな折、突然ぽつんと現れたダークタワーエリア。不審に思った子供たちは調査に向かうのですが罠にはまり、
 大輔だけ孤立してしまいました。デジモンカイザーは捕らえた仲間たちを示し、大輔を精神的に苦しめようとします。
 危ういところで、当の仲間たちが現れました。捕まっていたのは、バケモンが化身したニセ者だったのです。

 怒りに燃える大輔は単身バケモンを指揮するデジモンカイザーに躍りかかり、これが勝利への端緒となるのですが、
 彼はカイザーの右足に見覚えのある傷を見つけていました。そう、タックルで一乗寺賢に負わせてしまったものと同じ傷を……
 愕然とする大輔に、敵はみずから正体を明かしました。一乗寺賢、彼こそが非情卑劣なるデジモンカイザーの正体だったのです!

 憧れだった天才少年。その彼がなぜ……大輔の絶叫が、谷に響き渡るのでした。
 
 
 
★全体印象
 意味深なタイトルの第8話です。タイトルコールは朴ろ美さん(賢=デジモンカイザー)。
 影絵は一乗寺賢からデジモンカイザーへ変化していくもので、二面性をわかりやすく示しています。

 第一クールのキモ、敵ボスの素性バレが最大のチェックポイントとなるお話なのは今さら言うまでもないでしょうが、
 注目すべきは大輔の活躍でしょう。今回の彼はもう紛うことなき主役です。サッカー少年らしさもよく出ていました。
 相対するデジモンカイザーもバキバキの悪役ぶりで、落差を盛り上げるのに貢献しています。
 このふたりのファーストコンタクトでもあるお話ですから、大輔と賢を語る上でははずせないでしょう。
 今回ばかりは他のメンバーも脇に回らざるをえないようです。

 脚本は01のシリーズ構成をつとめていた西園悟氏。02ではこのお話しか執筆していません。
 それどころか以降のデジモンシリーズでもまったく書くことがありませんでした。なにか事情でもあったのでしょうか?
 お話の流れや人物同士のやり取りを見てると、さすがによいものを書きますからもっと仕事を見たかったんですが…。

 ということは直接の続編にもかかわらず、中心人物のひとりが欠けていたことになりますね。
 02が作品としていろいろ言われがちなのも、西園氏の不在が多かれ少なかれ影響しているのかもしれません。
 お話の梶をとってきた人がいなくなってしまったということなのですから。
 氏はなぜ抜けてしまったのでしょう? 知りたい気がしますが、知らなくていい気もします。

 作監は八島氏ですが、今回は直井正博氏とのツートップで原画を描いています。
 ふたりとも癖の強い絵を描くので、どこがどっちの担当かわりにバレバレだったりするのがまた面白い。
 
 
 
★僕は僕だって
 前半のサッカーシーンで流れました。主題歌かBreak UpのB面だったかな?
 雰囲気や歌詞からみてだいぶタケルの歌だと思ってたので、ここで使われたのには少々びっくりしました。
 
 
 
★各キャラ&みどころ
 
・大輔
 前回と比較しても主役度に歴然たる差があります。02でいちばん主役らしいお話のひとつでしょう。西園さんありがとう。
 序盤からサッカー少年の顔になってたり、賢への憧れを素直に顔へ出していたり、悩んだり苦しんだり怒ったり愕然としたり
 めいっぱい詰め込まれていますね。実にいい。それでこそ主役ですよ。

 こうして見ると、彼の魅力はやはりその不器用さと前向きさだということがよくわかります。
 太一とヤマトのある意味ないいとこ取りに昔ながらのガキ大将風味を加えた造形ですから、何をやっていても
 どうしても憎めないというか、そんな雰囲気があるんですね。こう見えて悪い意味での熱血バカというわけでもないし、
 実はそうとうバランスの取れた性格だと思います。唯一暴走を免れた主人公というのも頷ける。

 今回も土下座させられたり、頼んだこととはいえ他ならぬブイモンに踏まれたりとさんざんな目に遭ってるんですが、
 ああいうことやってもそれが絵になるというのは、なかなか稀有な人物と思わされます。
 いいヤツですよ。

 
・チビモン→ブイモン→フレイドラモン
 大輔同様に不器用で素直でパートナー思いのいいヤツです。
 幼年期の愛らしさや声などから、アグモンやガブモンよりもむしろゴマモンに近いものを感じさせられるのですが、
 ゴマモンが結構しっかり者なのに対してどこまでも愚直というか、要領が悪いというか……損な性格かもしれません。

 でも大輔もブイモンも「まあいいか、そんな日もあらぁな。明日は違うさ!」と、さっさと振り払ってしまうので
 その存在が皆の力になっていきます。いわば、ムードメーカー型の主役なんでしょう。

 別の面からみれば主役にあるまじき安定ぶりで、やっぱり君ら三番手造形だよってことになっちゃうんですが。
 じっさい、歴代で大輔に近い人物といえばヒロカズと純平になりますし。
 
 
・京
 デジタルワールドに行く前の方が活躍しています(活躍か?)。
 賢に対してもうこの上ないくらいのミーハーぶりを発揮していますが、3話ではむしろ対抗意識持ってたよーな……。
 彼女も案外と、賢に対する反応が一致しない向きのようです。お話の連携があんまりうまくいってないのかな。

 しかし何べんも言いますが、よもや当の賢と結婚することになるなんて当時は夢にも思ってなかったでしょう。
 今の彼女にそんなことを教えても「まっさかー」と返されるはずです。そのあとで暴走するかもしれませんけど。
 しかし彼女のそのテンションの高さこそ、大輔とはちがう意味でのムードメーカーに収まっている理由なのです。

 ある意味女大輔、という意見もあって、ならば賢との相性も抜群というものだったのでしょう。友情か愛情かの違い。
 大輔と小競り合いやらかすことが多いのも、似たもの同士だと思えば納得です。
 逆に言っちゃうと大輔とヒカリとの相性も抜群ということになりますが、それはそれで。
 
 
・ポロモン→ホークモン→ホルスモン
 受難の回。京にプレスされたり引っ張られたり、それはもうひどい目に遭っていました。
 後半は逆に特筆すべき点がありません。
 
 
・伊織&ウパモン
 今回はちょっと影が薄いですね。まあ、大輔と賢以外はわりとそうだからしょうがないのですが。
 ひたすら京に呆れる伊織の姿は印象に残ります。以前からあんな風に時折、京に振り回されることがあるんでしょう。
 そこにフォーカスを当てたお話があってもおもしろかったでしょうね。広義では18話がそれにあたるのでしょうけど。
 
 
・タケル&パタモン→ぺガスモン
 さらっと結構キツいこと言ってるんですが、あんまり引っ張りません。真顔でのツッコミばかりなのもポイント。
 どっちかというと今回のタケルは、冷静さが前面に出た描かれ方だったと思います。
 バスケを嗜んでるという設定が生かされたセリフもありました。そういえば、まだバスケしてる場面がないですね。
 22話まで待たなきゃいかんのでしょうか。

 パタモンは大してセリフがありませんが、なにげにシューティングスターを本編初披露しています。

 
・ヒカリ&テイルモン→ネフェルティモン
 そんなには出番ないんですが、今回は正統派のヒロインというべき描かれ方です。
 大輔がサッカー少年モードになってて彼女にデレってないというのもあり、なんか普通に仲良し。

 その一方で大輔の活躍を写真に収めているという、写真好きという設定を活かした場面も用意されていていい感じです。
 ヒカリのこの設定が使われる場面は極端に少なかった記憶があるというのに。
 短い中に、ちゃんとその人物らしさを詰めこんでいてさすがに西園脚本ですね。もっと書いてほしかったですよ、ホント。
 
 もちろん脇であることに変わりはないのでテイルモンまではなかなか出番が回らないのも事実なのですが、
 なにげに彼女たちもロゼッタストーンを本編初披露しています。
 ホルスモンもテンペストウィングをお披露目しているので、初めてづくしですね。まあ、全部バンクですがそれは置いといて。
 
 
・太一
 サッカー部のOBとして前半だけ出演。面倒見のよさがうかがえます。
 先輩としてきびしい意見を述べる場面もあるんですが、太一の場合はそれがハマるんですね。言わせるだけの存在感もあるし。
 たぶん大輔だったら、後輩に苦言を呈すとしてもまた別の言い方をするでしょう。

 しかし賢のレベルを一目で見抜くとはあなた何者ですか。
 サッカー中継や生の試合を山ほど見ていれば、ちょっとした動きだけでわかるようになるのかもしれませんが。
 
 
・コーチ
 大輔が所属するサッカー部のコーチ。このお話ぐらいにしか出ないレアキャラです。ややロンゲで、Jリーガー崩れっぽい雰囲気。
 当然専属の声優さんなどはおらず、ナレーションの平田さんが掛け持ちで演じています。
 それ言ったらヤマト父やゲンナイさんもそうですが。
 
 
・デジモンカイザー
 今回はいちだんとノリノリです。悪役度だけなら、いままでで一番高いかもしれません。
 といってもいま思えば、「Vテイマー01」のネオや「セイバーズ」の倉田に比べりゃまだまだぬるいレベル。
 後半の描写で大きく相殺されてるのも確かですが、無駄に大仰な態度と変なコスチュームのせいもありそうです。

 今回の作戦にしたところで、わざわざニセモノを用意したというのがなんか中途半端です。
 ああ、ギリギリまで追い詰めたところで「実はバケモンだったんだよーん、君は自分の仲間も見分けられないのか?」
 とでも煽るつもりだったのかもしれませんね。そうして大輔のプライドを粉々にするつもりだったのでしょう。
 といっても、大輔が本当にショックを受けたのは彼の素性のほうなんですが……この時点ではわかってないんだろうなあ。

 ちょっとでもプライドを傷つけられると、ムキになって相手をボコボコにしたがるというのは典型的なお子様の思考です。
 しかし彼の場合は自身がまだ子供というのもあって、滑稽さが前に出てるんですね。ワガママも幼いうちが華。
 この手の幼児性を持ったまま大人になると及川や倉田になるわけで、こうなるともう洒落にならんわけです。

 ところで彼、そもそも大輔たちをどうしたいんでしょう。単にはじき出したいのか、ゲームを仕掛けたいのか、
 それとも殺したいのか。三番目の意味が全然わかってないようにすら見えます。
 なんせ、デジタルワールドのこともよくできたゲームにすぎないという信じられん認識でいたくらいですし…。

 このへん、もうちょっと語れそうですが後にとっとくとしますか。

 
・ワームモン
 あの人数をどうやって押さえていたんでしょう…。
 描写だけ見るとまるでアレが彼の能力なんじゃないかというようにさえ見えます。そんな見解もどっかで読んだことがあるし。

 じっさいは砂地そのものの下に別のスペースがあり、トラップを仕掛けといてタケルたちだけ放り込んだのでしょうが。
 そういうことができるってことは当然、出ることもできるわけで、それを阻止するのが次の役目。
 描かれてはいませんが、手駒としてデルタモンとは別に壁役のデジモンも用意されていたのかもしれません。

 逆に言えば、いかにデジモンカイザーといえどあの四人を瞬時に捕らえるのは難しいということになります。
 あの作戦は騙しであると同時に、自分にはそれだけの力があるんだぞというブラフでもあったわけですな。
 
 
・バケモン
 デジモンカイザーの指揮でかなりの強さを発揮していましたが、いちばんの見せ場は変身でしょう。
 タケルたちの姿かたちはおろか、声音までマネるという高等技術を披露していました。
 人間の姿にバケるという能力は01でもなにげに披露してたものだったりしますが、ここへきてさらに進歩してます。

 でもこれがもし大輔ではなくタケルだったら、ニセ者と見抜く展開になった可能性が非常にたかいですね。
 無論、大輔がタケルよりダメって意味ではありません。

 皆がそう簡単に捕まるはずがない、ニセ者かもしれないと頭で気づけたとしても、本物かもしれないという可能性が
 完全に払拭できないうちは踏ん切れなかったり、つい助けにいったりしそうなタイプだと思うんですね。
 そこをどこまで見極められるかと言うのもまた、友情で…案外と、このお話を踏まえたうえでの11話なのかな。

・デルタモン
 デジアド初登場にして、記憶が正しければほとんどここにしか出てこないデジモンです。

 おそらくいっぱい口を持ってて怖そうというのが、採用された理由なんでしょう。みっつ並んだコワモテは迫力十二分で、
 成熟期に落ち着かせとくのはもったいないくらいなんですが実はあんまり強くありません。
 必殺のトリップレックスフォースも、ファイアロケットの前には簡単に相殺されてしまいましたし。
 
 それにつけても謎なのが、腕についてるサイボーグ型と骨型のデジモンの顔です。あんなデジモン見たことない。
 ひょっとしたらサイボーグ型とアンデッド型が爬虫類(?)型を中心にして合成された結果、ベースに最適化されて
 ああいう姿になったのかもしれませんね。分離前もああだったという証拠はどこにもないのですし。

 いつかは明かされるのでしょうか?
 
 
 
★名(迷)セリフ

「勝ち負けは関係ないよ。あいつは今、全国のサッカー少年の憧れなんだ。戦えるってだけで、ワクワクしてくるぜ!」(大輔)

 漢の目になっています。ヒカリに話しかけられたっつーのに、遠いところを見ている。
 敵チームや賢が現れたときの表情なんて、ある意味冒険のとき以上にシリアスです。
 
 
「年下には興味ないって言ってませんでしたっけ?」(伊織)

「一つぐらいの差なんて、どうってことないわ。うちの母さんだって、父さんより三つ年上よ?」(京)
 
 なるほど、なるほど。
 というかお母さんがた、そうだったんだ……
 
 
「大丈夫、大丈夫。ハットトリック、決めてやりますよ」(大輔)

 敬語なのは太一へのセリフだから。
 彼がこう言うってことは、その自信が完全にあるということです。やはりサッカー少年モードのときはひと味違いますね。
 
 
「レベルが……違いすぎる……! あいつ、小学生のレベルじゃないぜ! テクニックだけなら、ユースの代表クラスだ!」(太一)

 太一の見立てはともかく、素人のヒカリが見てもあきらかに動きが違うようです。
 暗黒の種入りってのは種だけに、常時ブレイク状態になるってことなんでしょうね。目とか。だから能力が上がる。
 そしてそのクリアな意識のスピードについてこれない者への苛立ちが、傲慢として表に出てくるのかもしれません。
 
 
「オレ、ひょっとしたら将来日本代表に選ばれたりして♪」(大輔)

 といいつつなぜラーメンになったかは、デジアド最大の謎のひとつかもしれません。伏線あったっけ…。
 ……もしかして36話がきっかけ?
 
 
「ああ、だめ、できない……大輔と握手なんて、あたしの美意識が許さないわー!」(京)

 京さん……そこまで言わんでも(^_^;)
 こんな失礼な物言いにも怒り出さない大輔がお人よしというより、もうすでに全員あきれ返って
 ものも言えない状態になってたんでしょう。
 
 
「ごめん……ごめんよ、大輔……」(ブイモン)

 カイザーの命令でパートナーの頭を踏んづける羽目になる場面で。
 なんでかこんな立場になることが多いです。ドラマCDで蹴ってくれって言ったのは貸しを返してほしかったから?
 それにしてもこの子は、パートナーに謝ってるときが一番萌えますね。萌えって言うな。
 
 
(きみは僕のプライドを傷つけた……そのくらいの苦しみは当然さ)(デジモンカイザー)

 等価交換の法則にぜんぜん沿ってないよ、兄さん!(声:イクト)
 
 
「オレたちは……誰にも負けない!」(フレイドラモン)

 ブイモン進化系といえばやはりこの不敵なセリフです。映画とか。
 
 
「僕の作戦ミスだよ……きみがいざとなったら周囲には目もくれず、
 司令官に突っ込んでくるヤツだってことを忘れてた」(デジモンカイザー=一乗寺賢)

 この回のやり取りが「それじゃ、僕からボールは奪えないぜ」に繋がるのだと思うと数奇なものを感じます。
 どんな時でもムチャクチャなパワーで突っ走る大輔に、実は彼こそが憧れを抱いたのでしょうか。
 だとしても無論、この時点ではひどくゆがんだ形で出力されてるんですが。
 
 
「オ、オレ、お前のこと尊敬してたんだぜ……同い年なのに、凄いヤツだって……なのに……
 なんでなんだよおおおおおおおおおおおおっ!!!」(大輔)

 そういえば、酷いことをされたという怒りよりも「なぜこんなことをするのか」のほうへ気持ちがいってるんですね。
 あんなに凄いヤツなのに、どうしてこんなバカなことをするのかという。
 賢のことを誰よりも認めているからこそ、目の前の落差が信じられなかったのでしょう。

 そしてだからこそ、賢が立ち直って協力してきたときは嬉しかったのかもしれません。
 デジモンカイザーを闇の王という怪物ではなく、一乗寺賢という人間として認識し続けていたのは他ならぬ大輔だったのですから。 
 
 
 
★予告
 第1クールの山場、ライドラモンにつながる3連続エピソードがいよいよ開幕です。
 なんだかんだで、ここもなくてはならぬパートでしょう。