シュリモン武芸帳 |
脚本:前川淳 演出:吉沢孝男 作画監督:八島喜孝 |
乱戦のなか、イガモンがシュリモンに対し果たし状をたたきつけてきます。
同じ手裏剣使いのシュリモンを倒すことにこだわるイガモンは、ダークタワーが破壊されても戦いをやめようとはしません。
紙一重の立ち会いを制したのは、シュリモンでした。イガモンは再戦を誓い、去っていきます。
大輔たちの奮闘によってどうにかトノサマゲコモンの暴走も止まり、かくてまた一つエリアが取りもどされるのでした。
しかし、それを見つめるデジモンカイザーはただ倣岸に笑うばかりだったのです。
より巨大な企みを、その胸中に秘めて……。
★全体印象
15話です。タイトルコールは前回に続き、遠近孝一さん(シュリモン)。影絵はそのライバル、イガモンです。
前回につづき、背景は青系となっていました。
さて、お話的にはかなり単純。見てのとおり、あらすじもだいぶ短いです。
そのかわり時代劇テイストや特撮のパロディなどが横溢した、いわば娯楽篇に仕上がっているといえるでしょう。
こういうお話は02ならではってところでしょうか。
尺に余裕があるからか、足りないので穴埋めにしようとしたのか、五人分のアーマー進化バンクもあります。
また全員分の見せ場もわりにじっくり見せているため、別の面ではバトル主体のお話ともいえますね。
肩の力を抜いて見られるので、個人的にけっこうお気に入りエピソード。
どちらかというとギャグフレーバーが似合う八島作画が、さらに助長してくれていました。
脚本の前川氏的にも、どっちかといえばノリ重視で書いた類の脚本でしょう。
画面のテンポもいいので、サックリ見られる一篇です。
なお、今回から全員夏服になりました。ヒカリと京はこっちのほうがいいですね。
ただし開始3分でデジタルワールドへ行くので、すぐ見慣れた服装へチェンジしてしまいますが。
★各キャラ&みどころ
・大輔
意外と珍しいプライベートの描写があります。
チビモンとのお風呂シーンに悩殺された人がいるとかいないとか…
ジュン専用のシャンプーを使っていたのであの後たいへんなことになったはずですが、特に語られてはいません。
調子にのりやすい三枚目体質のいじられ属性は、前川氏の筆がすべったのかいちだんと強調。
マジに受け取ってこれじゃあイジメじゃないかと言い出す人が目立ちはじめたのもこの頃ですが、考えてみれば
不平ほど大きく聞こえるもの。あんなんで目くじら立ててたら、ボスなんてどうすればいいのでしょう。
いや、ボスは主人公じゃないからいいのか……ある意味、主役に匹敵するポジションではありましたけど。
少なくともはデジモン界広しといえど、大輔ほどツリガネ涙が似合う主役が他にいないことだけは確かです。
スパロボOGで言うなればアラド・バランガでしょう。
ちょっと待てじゃあゼオラはブイモンなのかと言われても困るので次いってみよう。
・チビモン→ブイモン→ライドラモン
毎日というわけじゃないのでしょうが、大輔に風呂で洗ってもらってることがわかります。ふむ。
ブンブンパンチやサンダーボルトなど、小技を使うシーンが多いのも今回の特徴ですね。
まあ敵が成長期中心ですから手加減したプラス、威力より手数を選んだ結果でしょうか。
・京
こっちもプライベートがちょっとだけ公開。地震ギライだということもわかりますがこれは後にひっぱりません。
両親につづいて兄・万太郎も出てきました。姉たちはたしかまだ出てきてなかったような。
いずれにせよ、あらためて見ると家では言いたいことがあっても言えなくて頬を膨らませることが多いようですね。
そのぶん、デジタルワールドでのテンションは妙に高いです。ホークモンのノリに引っ張られたかな。
なんとなく、現実の鬱憤を思いっきり晴らしているようにも見えますね。それが暴力に向いてないというだけで。
彼女らもまたちょっぴり病んでいるのかなと思うと、なんだか考えさせられます。
今回から登場する夏服は頭巾? のかわりにベレー帽を被っているのとパンツスタイルが特徴で、
映画とほぼ同じものですが色だけがちょっと違います。なかなか似合っていますね。
・ポロモン→ホークモン→シュリモン
時代劇の影響を受けるあたりに火鳥兄ちゃんを思い出しました(そういえばあちらも“鳥”だ)。
でも実際に目立ったのは時代劇ではなく、特撮だったという。あの頃の特撮はまあ、時代がかってますけど。
前回思いっきり飛べないなんて書いちゃったシュリモンですが、飛べんじゃん。私飛べんじゃん(作品違)。
確認しただけで足回転と背中回転の2パターンを使い、空を飛んでいます。速度はさほどでもないようですが、
京さんくらいなら楽々と連れていけるようですね。ちゃんと移動手段としても使われているではありませんか。
絶対的にはホルスモンかアクィラモンのほうが速いから、わざわざ多用する意味がないだけなのでしょう。
ただホバリング性能は高そうですから、立体的な隠密行動にはうってつけですね。
こうした手裏剣の応用だけではなく、忍術にもまた長けていることがわかります。
イガモン相手に見せた木の葉がくれがその一端で、敵の目をあざむいて上空に脱していました。
本来ならば逃げの技術、いわゆる遁術なのでしょうが、例にもれずむしろ攻撃のために使われています。
定番の分身の術は使っていませんが、これはイガモンが見せてくれました。
・伊織
12話を思わせる妙な冷静さと説明体質で、場の時間を鈍らせてます。
ただ前回同様、実は彼自身にそれほどの見せ場はありません。どっちかというとアルマジモンやディグモンが目立ってます。
次を待ちましょう。
・ウパモン→アルマジモン→ディグモン
あんまり使わないスクラッチビートで敵をしばき倒したり、ビッグクラックでまとめて割れ目に突き落としたりと
なかなか過激な活躍が目立った今回。かと思えば、トノサマゲコモンのイービルスパイラルを外す場面において
ゴールドラッシュといいつつ左手の一発だけドリルを発射するという、妙に器用なことをやっていました。
あんなこともできるんですね。
・タケル
何かさらりと無意識に音頭を取っているような気がしてなりません。
02組の場合、誰が班長だとか明確に決めてるわけじゃないんですが今回だけ見ると、どうみても彼がリーダーです。
ただ表向きは最年長でもある京がリーダーともいえるわけで、じゃあ大輔はと言われると、えーと主人公?
最後の音頭はまあ、大輔へのフォローも兼ねていたと言えないことはないでしょうけど。
・パタモン→ぺガスモン
めずらしく体を張ってはねビンタを披露してます。
相手が成長期であれば、ガチンコ勝負でも引けはとらないってところですか。
そういえばエレキモンと互角に取っ組み合いして相撲に勝っているし、ああ見えてなかなかの肉体派でしたっけ。
トノサマゲコモンとのバトルでは、ネフェルティモンと二体で空戦能力をいかして活躍。
技を逆用してダークタワーを倒し、敵の物量を減らすことに貢献していました。
・ヒカリ
ごくたまに見せる大輔への女王様気質が思いっきり直撃するのが今回のお話。
アレをどのように受け取るかで、評価がガラッと変わりかねないところではあるでしょう。
大輔だから拗ねたりちょっと甘えたりを自然にできると受け取るか、大輔相手ならばある程度までなら反撃されないので
気が大きくなってると受け取るか……。紙一重ともぜんぜん違うとも受け取れるニュアンスです。
けっこう危ない橋を渡らされてた気がするなあ。
ただ、大輔のそばにいるときの彼女がおおむね活き活きとしていることだけは確かだと思います。
どっちの意味に取るのだとしても。
・テイルモン
たぶん初めての披露となるキャッツ・アイが最大の見どころ。
敵の動きをその睨みでいっとき止めるのがじっさいの効果で、その後フローラモンがやる気をなくしてしまったのは
たぶんアレルギーシャワーの効果でしょう。戦わずして敵を制す、経験豊富の姐さんならではな技かもしれません。
・賢=デジモンカイザー&ワームモン
今回はちょっとだけ登場。あいかわらず無駄に高笑いをしています。
悪辣なんだけど笑えるのは後半とのギャップと、本来の彼にとっては羞恥プレイ以外のなにものでもない
変態的なコスチュームのせいでしょう。それゆえに短命だったのが残念……って言っちゃあ賢ちゃんに悪いか。
現実世界から消えてからは既に2か月が経過しているようです。わりにリアルタイム。
この間に、語られない冒険がいくつもあったのでしょう。
・トノサマゲコモン
時代劇エリアのお城で領主をつとめていました。変貌のさまはまるっきり大魔人。
前作に出てきた個体と同一なのかどうかは語られていないのですが、確実にそうではないとも言えないラインです。
もし同じ個体だとしたら、ずいぶんと丸くなったものですね。地割れに落っこちたときに頭でも打ったのかな。
イービルスパイラルはかなり強力に定着していて、生半可な攻撃ではびくともしません。
もしかして強いほど、そして長引くほど開放するのが難しくなっていくんでしょうか? 厄介なしろものです。
お話の都合で変動するなんて言ったらそこまでですけど。
声は故・松尾銀三さん。同時期のおジャ魔女でオヤジーデを演じていた人です。
トノサマゲコモンは後になんとパートナーデジモンとしても登場するのですが、出番は1カット程度。
今回と同一モン物かどうかはいっさい言及されていません。
・ゲコモン&オタマモンたち
こちらは確実に前作の方々と同一。
ダークマスターズが滅んだあと、新たな城を築いてコミュニティを作っていたようですね。
言及からすると、トゲモンの守っているエリアからもそう遠くはないようです。ちょくちょく顔を出しに行ってそう。
・フローラモン&マッシュモン
ゲコモンたちの街には彼ら植物系も大勢くらしていました。
マッシュモンは商業面、フローラモンは芸術・文化面で活動していたようです。
・イガモン
和風つながりで登場したもうひとりのメインエネミー。街とのかかわりはいっさい不明です。
解説どおり、もともと流浪の身で特定のねぐらを持っていないのかもしれません。
V1テイマーズやセイバーズを見てわかるとおり、いまや味方として出てくることのほうが多いデジモンですが
ここでは敵として登場。みずからを最強の手裏剣使い、ひいては忍術使いたらんと考えてるっぽい自信家で、
その拘りはイービルリングに操られていてもいなくても変わりません。
つまり、どう転んだとしてもシュリモンと張り合っていたことになります。02では珍しいケース。
なお、また出てくる気まんまんだったのですが結局再登場は果たせず。天に登ったか地にもぐったか。
声がニンジャマンこと矢尾一樹さんだったのは、おもしろい一致です。
・時代劇エリア
今回の舞台。京都太秦の撮影所というセリフが出てくるところからみて、セット風情なのかもしれません。
そんなところで普通に暮らしてるというのもまたデジタルワールドらしさ、ではありますか。
極端な言い方をすればナンジャタウンでほんとうに暮らしてるようなもんです。
とはいえ、02の世界にここまで大きなコミュニティはなかなかありません。
多くのデジモンたちが集まっているのも、生活の基盤をつくるために都合がいいからでしょう。
種の内訳が偏りまくっている気はしますが。
ところで、イービルリングはどうもダークタワーから出てくるようですね。1話を思い出します。
ということは、あれらはやはり同じ材質からできているということか。
シュリモン対イガモンの舞台となるお城の天守閣は、シャチホコの部分がオタマモンになっていました。芸コマ。
★名(迷)セリフ
「見たところ、かなりの手裏剣使いのようだけど……でも、デジタルワールドじゃ二番めね!」(京)
「なにぃ? では一番は誰だ!?」(イガモン)
「チッチッチ……この、私です!」(ホークモン)
口笛がないのがちょっと寂しい、快傑ズバットのパロディ台詞。
いちおう、元ネタを知らなくても意味は通ります。つか京さん、あなた何歳ですか。
「それはここが江戸時代だからではなく、デジタルワールドだからです」(伊織)
あいかわらず変なときに変に冷静です。
「シュリモーン! カンバーック!」(京)
別になんてことないセリフなんですが、いま見ると君らどこのレジェンズとサーガですか。
あとそれは時代劇じゃなくて西部劇です。アメリカ的には時代劇ですけど。
「楽勝、楽勝! だいじょうブイ!」(ブイモン)
このセリフもそうなんですが、今回はいちだんと可愛らしい仕草やポーズばかりです。
逃げ遅れたオタマモンを助ける場面なんて座り方がヒロインみたい。
「あは! シュリモン、勝ったね! かっこいい、だーい好き!」(京)
「え、京さん……」(シュリモン)
よく考えてみると、イメージが男女で別れている例には他にも加藤さんとレオモンという強力な組み合わせがあるんですが、
あちらはどっちかというと擬似親子でした。京さんとホークモンのように、対等というのはたいへん珍しいのです。
そしてホークモンが相方ということ自体が、京のオットコ前な面を証明するものだと思いますね。
京を演ずる夏樹リオさんが「ホークモンが人間なら京にはいちばんのお似合いになるのでは?」
とインタビューで言っていたのを思い出します。
「大輔くんって残酷なんだ〜……」(ヒカリ)
彼に対するときのあなたもある意味そうとうなものです。
大輔に「だけ」こうなのは実は本命だからなのか、単にノリでいじってるだけなのか。
かくして物議だけが醸されていきます。
それにしても楽しそうですねヒカリ。
★予告
サブマリモン登場。貴重な水中メインのお話です。
伊織の一面を研究するにおいてもかかせないエピソード。