お台場メモリアル

 脚本:吉村元希 演出:芝田浩樹 作画監督:出口としお
★あらすじ
 8月1日。それは、太一たち先代の選ばれし子供がはじめてデジタルワールドに行った日。
 喜びも悲しみも、苦難も希望もかけがえのない思い出に変わり、いつしか記念日となっていました。
 初めて一部始終すべてを聞かされた大輔たちは、使命の大きさになかば呆然となります。

 同じ頃、フジテレビ中に不可解な幽霊騒ぎが持ち上がっていました。
 そして8月3日、にわかに起こった雷がテレビ局を直撃、大騒ぎに発展します。
 何かを感じて駆けつけたテイルモンは、幽霊の正体が3年前に死んだウィザーモンだと看破しました。
 果たして影のような霊の中から、ウィザーモンが現れます。彼は警告を伝えに来たのでした。

 “優しさが黄金の輝きを放つ”

 魔法使いの残した謎めいた言葉。
 この予言にも似た報せに大きな意味のあらわれるときが、間近に迫っていたのです。
 
 
 
★全体印象
 17話です。タイトルコールは東京篇の中心人物だったヒカリこと、荒木香恵さん。
 虹色をバックに蒼い球体の中で回る一風変わった建物の影絵は、フジテレビのものです。このイメージが示唆するものは?

 内容としては、前作からつづけて見ている人むけの箸休め。
 ただし総集編というわけでもなく、日常よりの描写が多いちょっと貴重なお話でもあったりします。
 そのため大人というか親御さんの登板率もたかく、特にテレビ局という関係上ヤマトパパの出番がひさびさに多い。
 副作用として、ヤマトとタケルのファンにとっても美味しいシーンがけっこうありました。

 ちなみに予告に出てきたアメリカハコムシは、地岡くんの企画に名前が出てくるだけです。ミスリードです。
 そのせいで当時はいったいどんな話になるのか、さっぱり予想できませんでした。
 でも、ウィザーモンが出てきた時「そう来たか!」と思えたから結果的には正しかったのでしょうけれど。

 その他大事な要素として、D-3とパソコンさえあればデジタルゲートを開けるという事実がハッキリ示されています。
 次回でさっそく活かされるだけでなく、今後もかかすことのできないファクターとなっていくので、
 そういう意味ではウィザーモンの言葉と同じくらい重要な回といえるでしょう。

 8月1日という日は、すでに大切な記念日としてファンの間に浸透した感があります。
 本当ならデジモンそのものが世に出た日こそを記念日とするべきなのでしょうし、そう主張される向きも見かけますが
 いつのまにかこのようになっていました。少なくとも私にとっては間違いなく記念日ですが。
 そして今年(2007年)にはCDも出ました。当然注文したんですけど、まだ届いていません。おのれ。

 なんにせよ、今年でデジモンも10周年。デジアドが始まったときはまだ2周年たらずだったのだから、早いものです。
 これからどうなっていくんでしょう……。
 活動をつづけるにしても、離れるにしても、ずっと好きでいたいですね。

 それにしても、ポータブルMDには時代を感じざるをえません。今なら別のものが写っていたでしょう。
 私自身、この頃はまだMDでした。これにしか落としてない音源もあるから何とかしないとなあ……
 
 
 
★各キャラ&みどころ
 
・現役の子供たちとパートナー
 今回ではじめて冒険のすべてを知ることとなりました。
 それは大輔たちの冒険にはまだない「死」や「生命を賭けた戦い」、そして「倒すべき闇」を含むのですが、
 まだまだ実感がない様子。でも仕方ありません。彼ら現役組は冒険のスタートも、その性質も、目的も違うのです。
 何度も言いますが、後半の葛藤にもだからそれなりの意味はあったんですよね。今だから言えることかもしれませんが。

 個人レベルでの出番はタケルが多めでした。大輔はここでも目立っていません。崩れ顔はインパクト絶大でしたけど。

 なおデジモンたちにやる気があれば、現実世界でも成長期になれることが最初に示されたお話でもあります。
 通常進化なので、バンクは01のものを踏襲していました。これは成熟期まで共通しています。
 

・先代の子供たち
 大輔たちを力ではなく、その経験でサポートするのが彼らの役目。
 次回以降の決戦を境に表舞台からだんだん姿を消していくのですが、4クール目にも見せ場はあるのでまだこれから。
 それにしても現役とならんだ総勢11人の絵面は壮観の一言で、もっと活躍を見たいというジレンマに襲われてしまいます。
 ああして見ると、やはり年かさのぶんだけ平均身長の高さがめだちますね。

 記念日ということで、ミミもしっかり来日していました。
 いつもの派手さを押さえたむしろ清楚ないでたちが、新たな側面を垣間見せてくれます。涼しげ。
 またヤマトもかなりセリフが多く、タケルと01のころとは一味ちがうやり取りを見せてくれました。
 風間氏の演技もいい感じに情がこめられています。
 
 一番出番が少なかったのは丈先輩ですが、この人は前回でメインに絡んだのであんなものでしょう。
 
 
・ウィザーモンとテイルモン
 まるで地縛霊のような怪現象を多発させていた影の正体は3年前、フジテレビで死んだウィザーモンでした。

 ああいうのを見ると、現実世界で死んだデジモンは転生できないという説を信じたくなってしまいます。
 とはいえそんな設定があるとハッキリ示されたわけではないし、ウィザーモンのいたのが活動をはじめる前から
 現実世界だったという証拠はどこにもないので、実のところよくわからないんですが。
 (というかこの設定というか噂の出所って、どこなんでしょう)
 
 まあそれを言ったら、ウィザーモンがなんであんなことを知っているのかという話になるのですが。
 このへん、説明されてたかなあ……今後の展開に注目しましょう。
 
 枷がはずれたテイルモンは、もはやウィザーモンへの思慕を隠そうとはしていません。
 彼女たちは同人誌などでもよく取り上げられる組み合わせですし、私自身も何度か手がけたことがありますが、
 触れそうで触れられない距離感やそれでいて理解しあっていそうなところ、失ってからわかる悲恋であることが
 モン同士の取り合わせのなかで比較的よく見かける理由になっているのだと思います。ドラマだ。

 いつかウィザーモンも転生し、テイルモンと再びめぐりあう日が来るのでしょうか。
 であればその時こそ、互いに素直になれたらいいですね。
 
 …案外ヒカリの夫がウィザーモン持ちだったりしてなーとか考えつつ、閑話休題。
 
 
・ヤマトパパとその部下たち
 いつになく疲れたようすの石田裕明ことヤマトパパがなんだか心に残ったものですが、
 部下のみなさんもひさびさに登場。ただしユキはチラッとしか出ず、かわりに編集担当(知る限り名前不明)がいます。

 誰も書いてないから書きますが、菊池正美さんが掛け持ちする地岡くんはたぶん地岡公俊氏から取った名前でしょう。
 テイマーズの48話ではじめて演出を担当し、その後も良質な仕事をこなしているあの地岡公俊さんです。
 ドラマCDにも登場する音響の櫻田くんは、まんま音響の櫻田氏のことでしょうね。

 なお今回は、その両名ともにクレジットされています。櫻田氏のほうは毎回のように見掛けますけど。
 地岡氏はまだ演出助手。演出として一本立ちするのは上記のようにテイマーズ後半なので、もう少し先のことです。
 本編での地岡くんが初ディレクターとして奮起したという場面があったのは、早くそうなればいいねという願掛けプラス、
 スタッフのちょっとしたお遊びでもあったのかもしれません。
 
 
・ゴツモンとパンプモン
 渋谷を歩いている時、ヤマトとタケルがふと連想した2人。
 ああ、忘れずにいてくれたんだなと、ちょっと嬉しくなった瞬間でした。
 
 
 
★名(迷)セリフ

「はちぶんのいち計画? なに、これ?」(大輔)

 これは迷セリフの類に入るんでしょうね、やっぱり(^_^;)
 言葉の間違いで熱血漢が茶化されるという構図はたいへん古典的なものですが、大もぶちかましていました。
 もっとも豪快に間違えて冷静に突っ込まれるという、間を重視したギャグに変質していましたが。
 
 
「一年に一度の夕べなわけだし。七夕の織姫と彦星みたいなもんなんだから」(ヤマト)

 初めに言ってお(略)
 それはともかく、これはかーなーりファン層(一部の)を釣ったセリフだなあと当時でさえ思いました。
 そういうところがダメな人は、やっぱり結構いたんじゃないかと思います。
 いわゆる萌えや燃えというものは与えられるものではなく、自分で見つけ出すものですもの。

 萌えの力は萌えにあらず、心にありというやつです。
 
 
「つまりですね、いつものあのパソコンに、ゲートを開く力があるわけではないと思うんです。
 ゲートが開くのは、皆さんの持っているD-3のちからが働いているはずなんです」(光子郎)

 では一話で太一があっさりデジタルワールドに行ってたり、アメリカからミミが普通に入ってきてたりするのは
 いったいなんなんだという話になるんですが、まあたぶんソレのことを言ってるんでしょう。
 といっても、そこにD-3がからんでくるとなると話は別。いまD-3とよべるものを持っているのは、
 世界に3人だけのはずだからです。アーキタイプを持つ賢を加えれば4人になりますが。

 まあそれだけ局地的にゲートが開きやすくなっているというか、境界が穴だらけというか……
 ホメオスタシス側の意志以上に、そういう不測の現象がはたらいているのかもしれません。
 そもそも元を正せば、D-3の原型はあの暗黒の海の力を受けてのもの。改良を加えているだろうとはいえ、
 デジタルワールドにとっては諸刃の剣だったのではないでしょうか。

 しかし毒をもって毒を制するというか、どのみちD-3にたよる以外の選択はなかったのかもしれません。
 選ばれし子供が爆発的に増える契機ができたのは偶然ではなく、狙っての結果だったのではないでしょうか。
 
 
「優しさが黄金の輝きを放つ。優しさだけではいけない。それだけでは……黄金の輝きが必要なんだ」(ウィザーモン)
「わかったわ」(テイルモン)

 初見ではサプライズと懐かしさで流してましたが、わりに珍妙なやり取りです。本当にわかってるんですか姐さん。
 ウィザーモンももっとこう、具体的にですね……未来情報だから断片的にしか伝えられなかったのかな。
 
 それにしても、なんで未来情報なんて仕入れられたんでしょう。デジアド七不思議のひとつかもしれません。
 
 
 
★予告
 いよいよ4話連続、デジモンカイザー決戦編もしくはキメラモン編のはじまりです。
 ホークモンがひどい目に遭ったり美味しい目に遭ったり。