合成魔獣キメラモン

 脚本:まさきひろ 演出:角銅博之 作画監督:伊藤智子
★あらすじ
 空中要塞の存在を知った子供たちは一度合流し、その日は休息をとります。
 そして次の日、偵察に向かったタケルと伊織は海中に潜むくだんの基地を発見しました。
 巨城が向かう先には、謎の巨大な渦が。その底にわだかまる闇のなかで眠っていたもの、それは……デビモン。
 かつて選ばれし子供たちを襲い、エンジェモンがその命を懸けて倒した、あの闇の使者の残滓だったのです。

 そのデータを利用しようとするカイザーを見て、タケルの怒りが爆発しました。
 穏やかな笑顔をかなぐり捨てて、要塞の奥へ歩を進めていきます。

 いっぽう、デジモンカイザーは回収したデビモンのデータを使い、合成魔獣キメラモンを完成させました。
 さまざまなデジモンのあらゆる長所をあわせ持つ強敵に、ホルスモンたちはきわめて不利な戦いを強いられます。
 一度はカイザーと直接対決におよんだタケルですが、仲間を救出していったん撤退するのでした。

 選ばれし子供らを寄せ付けぬ力を手に入れたデジモンカイザー。しかしその心は、晴れないままでした。
 怒りのタケルに言い負かされ、叩きのめされたことで勝利を味わうどころではなくなっていたのです。
 彼の心はかくして、いよいよ闇へ沈んでいくことになります。

 遅れて到着した大輔はキメラモンの存在を知り、なんとしてもカイザーを止める決意を固めます。
 その決心が、もうすぐひとつの奇跡をになう力になろうとしていました。
 
 
 
★全体印象
 19話です。タイトルコールは朴ろ美さん(デジモンカイザー=賢)。
 影絵は多数のデジモンが寄り集まり、キメラモンへと変わっていくというもの。闇に沈む背景が無気味です。

 ついにキメラモンが登場するのですが、今回はなんといってもタケル。
 キメラモンとてお話の主軸にいるし、その能力もパワーのほども見せてはいるのですが、
 タケルが見せたインパクトの前ではなにもかも霞んでしまいますね。強敵お披露目回としては弱い。
 
 で、そんなキメラモン以上にワリを食ったのが大輔。
 02前半における彼の扱いについては、もともと方々から疑問の声が上がっていた記憶があるのですが
 このお話ではそれが頂点に達した感があり、私としても戸惑いを隠せない状況でした。
 お話を左右しかねぬ強敵の初登場に主人公が立ち会えないというのは、たしかにかなり異様な展開ですし。
 記憶にあたらしいセイバーズを思い出してみればわかることです。

 ただし、大輔がいると成立しにくい流れだったかもしれません。
 デビモンのデータが使われたことにタケルが怒るところまでは変わらないとしても、もしその場に大輔がいたら
 また別の話になっていた可能性があります。いや、そういう風にしかなりようがないかもしれません。
 だから脚本としては、大輔を外すしかなかったという見方もできます。舞台が海の上なのも、そのための策でしょう。
 そのかわり20話、21話では大輔のほうが目立っていますし。

 脚本を手がけるのはまさきひろ氏。
 01ではタケル初の主役回である「冒険! パタモンと僕」担当であり、さらにあの最終話を書いた人です。
 またテイマーズでも後になるほど良い仕事をしているので、全体の構成がしっかり出来ていれば力を発揮できるはず。
 02でやや粗さがめだつのは、どこかで構成が迷走していたからかもしれません。
 前川淳氏と吉村元希氏のふたりでやってることなので、意見の食い違いも起こるでしょうし。

 他にもプロデューサーが色気を出したとかあれこれ推測することはできますが、本当のところはわかりません。
 そもそもなぜ、大輔を外してまでタケルの一人舞台を演出する必要があったのでしょう?
 不可解さというものも、この19話が別の意味で印象に残っているひとつの要因ではないかと思います。
 
 それにしても、伊藤智子さんの作画はこういうお話だと本当にはまりますね。タケルが怖い怖い。
 
 
 
★各キャラ&みどころ
 
・大輔&ブイモン
 というわけで、置いてけぼりくらってまだキメラモンを目の当たりにすることすらできていない方々。
 たしかに水空の機動力に欠ける彼らではどうしても活躍できない状況なんですが、それは脚本の仕立て。
 あの場にいてもらうとどうしても困る人物だったのでは、と思えてなりません。

 考えてもみてください。
 伊織は(なぜか不自然なまでに)制止をするテントモンの言葉を聞いて、タケルを追うのをやめています。
 しかしこれが大輔だったらどうかといえば、やはり追いかけてたんじゃないでしょうか。
 つまり、どう考えてもふたりでデジモンカイザーに対峙することとなります。
 そうなったら、あの展開にするのはたいへん難しいと言わざるを得ないでしょう。

 タケルに仮面を脱いでもらうには、無理にでも大輔を遠ざけるしかなかったのかもしれません。
 そこから、タケルが大輔にはあんまりそーゆー所を見られたくないと思っているのでは、と妄想も成り立ちます。
 ほら、大輔ってああいう人物ですし、あんまりシリアスなところを見せるとタケルへの認識を変えてしまいそうですもの。
 距離感ってものを大事にするタケルとしては、案外大輔にこそ注意をはらっているのかもしれませんよ。

 ところで、ブイモンは相変わらずかわいいですね(お前、またそれか)。
 
 
・京&ホークモン→ホルスモン
 前回目立った分、特筆するほどの活躍はしていません。
 ホルスモンがかなりひさびさに登場してるんですが、相手が相手なのでいいところなし。
 おにぎりをむぐむぐやってるホークモンがかわいいですね。

 
・伊織&アルマジモン→サブマリモン→ディグモン
 地味だけど地道に活躍。なんだか彼ららしいかもしれません。
 いきなり要塞に潜入するなどという結構思い切ったことをやっても止められないのは、大輔とえらい差です。
 アルマジモンはあの通り大雑把な性格ですが、そこも抑えがきいてますし、ヘマはしないだろうということか。

 18話のヒカリ同様、ジョグレス相手とのちょっとした絡みがあるのもポイント。
 少なくとも、闇を強く憎むタケルの地を目にしたのが賢以外ではただひとり彼だけ、というのは
 たいへん大きな事実だと思われます。34話あたりでも回想で使われてた記憶がありますし。
 ですので、18話のものよりは直接的に今後へつながる含みがある回といっていいと思いますね。
 
 そういえば、サブマリモンのコックピット(?)にはなんとDターミナルを装着できるスロットがあるようです。
 今回の選ばれし子供たちのために進化した姿なのか、それとも元から人間とタッグを組むための形質を持っていたのか…
 なかなか興味深いところですね。オモチャ主導? そんな言葉は浪漫で蹴っ飛ばしてしまいましょう。
 
 
・ヒカリ&テイルモン→ネフェルティモン
 京とセットの扱い。ふたりして大輔を置いてけぼりにしてしまいました。
 一応気にしているようなことは言ってましたが、生粋の大輔ファンにはそれも予防線に見えるのかもしれません。
 
 
・タケル
 大輔を置いてった人第一号。
 だからこそなのか、前ぶれなしにリミッター解除してアバレマックスに変身、カイザーをボコボコにするという
 想像を絶する展開を生み出しました。初見であっけに取られたのをよく憶えています。
 頭の装身具はずすとフルパワーだなんて、君は「ジャスティ」のアスタリスか。

 さて、おもにこの回のおかげで腹黒だとか最強兵器彼氏だとかあれこれ言われているわけですが、
 正直言ってそれを否定できる根拠がありません(^_^;)
 どう言い訳をしようと、思うところがあってもそれを胸におさめて立ち回る性格なのは確かなわけですし。
 つまり腹芸をできる大人な、大人すぎるほどの性格で、そこが彼にとっての弱点というか、悲しさなんでしょうけど。
 テイマーズのジェンとはよい話し相手になれそうです。

 そして彼があれほどまでに怒った理由は「闇のちからを使用したこと」そのものというよりも、
 「闇というものの恐ろしさを知らず、安易に力として利用しようとする姿勢」なのでしょうね。
 こうした考え方が生み出すものは結局、略奪と破壊でしかありません。そのほうが楽なのですから。
 そして、ただ一緒にいたいといったささやかな願いをも奪うのは、まさにそういう考えをいだいた手合いです。
 パタモンに戦いを選ばせ、一度は死に追いやったデビモンのように。

 だからタケルは闇を恐れ、闇を利用するものを憎むのでしょう。それがもたらす絶望を知っているから。
 そういう意味ではだからこそ、暗黒進化からはもっとも遠い人物といえます。
 もし暴走するとしたら、光の方向へ暴走することになるでしょう。どんな進化をするかはわかりませんが。
 
 ただ、暴走してしまえば光だろうが闇だろうがやってることは一緒になってしまいます。
 彼はきっとそれも知っているから、滅多なことじゃそんな状況にはならないのでしょうけれど。
 
 でもセイバーズの倉田とか見ちゃったら、殴り倒すくらいじゃ収まらないかもしれないなあ……
 
 
・パタモン→ペガスモン
 そんなタケルの相方をつとめるこの方ですが、今回ばかりはやや蚊帳の外というか外野。
 カイザーを助けようとするワームモンを妨害して、微妙に緊迫感のない対峙へと持っていきました。かわいい。
 でもこう見えて戦うとなればやる気まんまんなので、むしろタケルのほうが彼に近くなったのかもしれませんな。
 
 
・テントモン
 なにげに今回も随行しています。
 でも特筆するようなことは大してしてないし、キメラモン戦に至っては力が違いすぎて逃げ回るだけ。
 気になる点といえば、上で書いた伊織を不自然なまでに制止し、タケルの後を追わせない場面でしょうか。
 要塞を脱出するときにも同じようなことを言って伊織を止めているので、印象も二倍になります。
 
 なにしろ、彼はあの場でただひとりタケルの体験を一部始終見ている手合い。
 口には出していませんが、おそらくデビモンの残滓もモニターで見ているはずです。
 タケルが何を感じ、どういう心境でいるのかがなんとなくわかってしまったんじゃないでしょうか。
 そして今回ばかりは、パタモンとふたりだけでカイザーに対峙したがっているということも。

 だとすれば、彼がわざわざこんなところまでついてきている脚本上の理由とは、まさにそれ……
 伊織の制止役だと思います。証明するように、20話以降はストーリーから外れていますし。

 でも伊織にタケルを追わせていたら、それはそれでおもしろいことになったでしょうね。
 ジョグレス周りにもさらなる前フリが振れたように感じます。ちょっと惜しかったかも。
 
 
・太一、ヤマト、光子郎
 大輔たちからの連絡を固唾のんで見守ってます。とうていキャンプと言う雰囲気ではありません。
 文字情報だけしか出ないので、さぞ歯がゆいでしょうね。
 
 
・ヤマトパパ
 そんな三人のとばっちりで、雑務はこの人がやってます。たぶん見えないところも大半。
 当事者以外では一番ひどい目に遭った人物かもしれません。それもまた大人の役割なのでしょうけど。
 
 
・ジュン
 時折脳天気なカットインを入れて緊張感をなごませるというか、萎えさせる役割でした。
 とはいえ、現実世界との落差を際立たせるという点においては一定の効果がみられると思います。
 伊藤作画ということもあって妙にかわいいですね。

 姉弟だからということなのか、状況的に大輔との対比もやたら目立ちます。わりに角銅演出の真骨頂かも。
 
 
・デジモンカイザー=一乗寺賢
 妙におだやかだと思ったらいきなり激昂したり、どうも不安定というかキレが悪いです。
 以前の彼だったらタケルが意外な態度を取っても途中で冷静さを取り戻しそうなものですが、言われっぱなし。
 やはり本物の闇に近づきすぎたことで、精神のバランスをますます欠いているのでしょう。
 馬脚をあらわしたと言えばそれまでですが。

 そして、あれだけデジモンに鞭を打っていながら人間に鞭を打つのは初めてだったのか、
 タケルの頬をかすめたというだけで必要以上に動揺していました。脅すつもりが勢いあまったようです。
 あの瞬間、痛みを受け取りやすい本来の性格が表に出たように感じました。
 このへんはいま語るより、21話にとっとくとしましょうか。

 たまたまタケルが大将首より仲間を優先せざるを得なくなったので助かりましたが、今回はいいところなしです。
 せっかくキメラモンが誕生したというのに、なんとも災難な話ではありませんか。
 21話での転落をすでに予感させる展開です。

 とはいえ、マウントポジション取られた状態で余裕ぶっこいたりと笑いをとるのも忘れていません。
 悪役の鑑といえる姿勢ですが、そろそろ手足がつってきたというわけですね。
 
 
・ワームモン
 そんな彼を必死にカタギの世界に戻そうとする女房役がこの方。

 あんた、それだけは、それだけはやめておくんなまし。ええい、うるせえ。そんな世界が見えました。
 電波が届いたようです。

 パートナーに見てもらえなければ進化できない彼には、力がありません。
 しかしパートナーさえいればいいというわけでもありませんから、この時期はさぞ辛かったでしょう。
 それでも、賢ちゃんのピンチには果敢に戦おうとする。キモカワイイほどに健気です。
 
 
・キメラモン
 デジモンカイザーが趣味の図画工作でつくった「ぼくのかんがえたさいきょうデジモン」。

 カブテリモンの頭、グレイモンの胴体、ガルルモンの足、エンジェモンとエアドラモンの翼、モノクロモンの尾、
 クワガーモンとスカルグレイモン、デビモンの腕。そして、メタルグレイモンの髪。
 以上、相当数のデジモンのもっとも優れた部分をパッチワークした合成超魔暴君怪獣です。

 いかにして作られたかは不明ですが、描写からみるにデータ状態でいったん回収し、
 それを実体化=リアライズさせて成立させたのかもしれません。デジタマから生まれたわけじゃないのかも。
 だとすると、正しくこの世ならざるものを作り出してしまったのかもしれません。

 それに卵が先か鶏が先かってな話になりますが、ミレニアモンにとてもよく似ています。
 あんな奇怪な外見になったのも、むしろミレニアモンの姿を模倣した結果とすらいえそうな気がしてきました。
 まるでミレニアモンの器となるために生まれてきたかのようではありませんか。
 むろん、賢ちゃんがそのことを意識しているとはとうてい思えませんけれど。

 カテゴリ的には完全体ということになっていますが、力はおそらくその範疇を越えたものでしょう。
 戦ったのがもう一つ実力不定なマグナモンだったせいか、ハッキリしないところなんですが。
 
 用途不明なメタルグレイモンの髪ですが、デザイン上の都合で数合わせが出るのは寄せ集め怪獣にありがちなことです。
 それでもタイラントについてるイカルス星人の耳なんかは感覚にかかわる部位なので、意味はあるんですが。
 あれはデザイン的にも非常にしっくりきますからね。
 
 
・囚われたデジモンたち
 要塞にいた方々。マッシュモンやフローラモン、それにデラモンの姿が確認できます。
 ピノッキモン配下の連中と顔ぶれが同じなのですが、同一モン物かどうかはわかっていません。
 それにしてもデラモン、あんた完全体ならアーマー体の破れる牢屋くらいなんとかできんのですか。

 状況を考えたら難しいでしょうけど。自分だけ逃げられればいいというならともかく。
 
 
・闇の声
 デビモンのデータを回収しているとき、デジモンカイザーの耳に聞こえてきた言葉…というより、意志ですね。
 キメラモンがコントロール不全に陥ったのは、言うまでもなくこのデビモンのデータを取り込んだせいでしょう。
 賢ちゃんが欲をかきすぎたか、上に書いたように知らずミレニアモンを模倣しようとした=闇に近くなっていたのか。
 
 残念ながらこの時点でもうすでに塩沢さんは亡くなっておられたので、デビモンの声は別の人がアテています。
 
 
・動く島
 大輔とブイモンが見つけた不条理自然シリーズ。
 これを使うことで、ふたりは仲間と合流することができました。彼らの前向きさが生んだ偶然です。
 海の上にも似たような島があり、京たちが降りたのはそのひとつでしょう。

 おかげで伊織たちは捕まったデジモンらを逃がすことができたのですが、
 もしこれが無かったらどうやって逃がすつもりだったんでしょう。
 
 
 
★名(迷)セリフ

「見ちゃダメだ!」(ぺガスモン)
「気ぃつけな、呑みこまれまっせ」(テントモン)

 つまり気が狂うということですかね、やっぱり。
 「レンズマン」シリーズに見つづけていると気が狂う「負の球体(ネガスフィア)」という巨大爆弾が出てきますが、
 それを思い起こさせる設定です。闇というものは、イメージとして虚に結びつきやすいですからね。
 
 まあ私の場合、ネガスフィアの存在を知ったのは02よりだいぶ後なんですが。
 
 
「……あの時、ぼくはどんなに願ったろう。時間が巻き戻せるものなら……でも、時間は決して戻らない。
 いやでも向き合わなければならない、現実……
 ぼくは、底なしの絶望の中、運命をのろっていた………
 
……何も知っちゃいないくせに……わからないくせに……! ふざけんな!!」(タケル)
 
 とうてい小学五年生の言葉ではありません。
 幼いころから特殊な状況に置かれ、争いを忌避し、必要以上に堪えることをおぼえたからでしょうか。

 それでも彼が希望をもっているのは、絶望の先にはなにもないということを知っているからです。
 裏返ったコインを裏のままにしていたら、隠れた表にどんな絵が描いてあるか忘れてしまうから。
 人は、忘れがちだから。

 ただ賢ちゃんとて何も失わないままあんなことになってしまったわけじゃないんですが、
 まだ描かれてはいないため「この時点」の認識からは外すべきなのかもしれません。
 
 
「もうやめだ。これ以上つきあってらんねえ! ケリ…つけてやる!」(タケル)

 タケルらしからぬ粗野なセリフです。ひたすら可愛らしかった三年前との差がここで決定的になりました。
 この言葉には、ふたつの意味があると思います。
 ひとつは、本人の言にある「世界征服ごっこ」に付き合っていられない、という意味。
 
 もうひとつは同じ人間であるという認識を捨て、明確に「敵」として認識するぞという意味です。
 いうなれば、デジモンカイザーをデビモンやダークマスターズと同様の存在として扱うということ。
 こうなったときのタケルの冷徹さは、もしかしたら太一以上かもしれません。

 そしてゆえにこそ、彼では賢を仲間に引き込むことができないのでしょう。
 思い出してみてください。消極的な発言とはいえ当初は彼、賢ちゃんの仲間入りに反対していたんですよ。

 大輔でなければならない理由が、まさにそれなんです。
 
 
「一乗寺さん。いつまで『世界征服ごっこ』してる気? 楽しい?
 でも君さ、暗黒のパワーなんて言ってるけど、意味わかってる? わかってないでしょ?
 ケガじゃすまないよ。いい加減、大人になんないとね」(タケル)

 またタケルです。けっこう有名なセリフ。
 最初の「一乗寺さん」については「一乗寺さぁ」と表記している例もみられます。

 キレればキレるほど冷徹になるというか、あまりに怒りすぎてかえって冷静になったというか、
 このあたりのタケルは主人公サイドとは思えないほど怖いです。今さらですが。
 同ベクトルで近いことができる存在はそれこそ太一ぐらいしか見当たりません。
 
 しかしなんというか、ストレスでちょっと退行した子といろいろ見すぎて世間ズレした子の対決だなあ……
 いろいろと歪んでます。こりゃ大輔は入れませんわ。良くも悪くも彼はまっすぐすぎる。
 
 
「……君、それしか言えないの?」(タケル)

 カイザーの貧弱なボキャブラリーを罵倒する言葉。しつこいようですがまたタケルです。
 絶妙のタイミングで痛烈なカウンターを食らわすこの手の挑発は後年シューツモンが使ってましたが、
 インパクトじゃやはりこちらに軍配が上がるでしょう。
 
 
「口でかなわなかったら、暴力ってわけか……
 ま、それはどうでもいいんだけど………今ので、おしまい?
 …じゃあ今度は、ぼくの番だね!」(タケル)

 一部略。
 もう勘弁してください。
 というか口でやりあうもなにもあなた最初ッから殴る気まんまんじゃないですか。
 
 直前で笑顔を入れる演出がね、また怖いんですよ。
 
 
「やる気か!」(パタモン)
「賢ちゃんに手を出すんならね!」(ワームモン)

 どうもこのふたりだと緊迫感に欠けますなあ……成熟期以上ならシリアスもいけるんですが。
 背後に流れるワームモンのテーマが、さらに脱力をさそいます。
 
 
「ぼくの作ったデジモン……キメラモンだ!
 すごいだろ!? おまえたちが束になったってかなうもんか!」(デジモンカイザー=賢)

 マウントポジション取られてる状態(しかも2度め)で言われても。
 
 
「一乗寺! おまえとの勝負は、また今度だ!」(タケル)

 高石君高石君、それ大輔のセリフ。
 しかも負け惜しみじゃなくてむしろ勝ち逃げになってますぜ。
 
 
「言うな! オレたちには、オレたちなりの戦い方があるさ!」(大輔)

 こうして見るとその場限りのセリフではなくて、あとあとまで懸かってきてるなあと思ったりします。
 贖罪意識の塊になった賢に生きる勇気を与え、友情を育て、ともに奇跡を起こすのが彼の戦いだったのですから。
 これはタケルでも太一でもなく、大輔だからできたことなのだと思いますね。

 
 
★予告
 21話が凄いぶん捨て回ぎみのお話ですが、シナリオ的には後半がポイントです。
 大輔がそろそろ確変を見せますよ。