豪勇進化! エクスブイモン
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脚本:浦沢義雄 演出:川田武範 作画監督:八島喜孝 |
★あらすじ
平和を取り戻したデジタルワールド。
大輔たちは荒れ果てた生活圏を復興するため、ボランティアとしての活動を始めます。
しかし、タケルとヒカリは心に引っ掛かるものを感じていました。自分たちが来られるということは、まだ危機が去っていないのではないかと。
一方、このところヒカリにいい所を見せられずにいる大輔は、同じくテイルモンにいい所を見せたいブイモンと協力(?)し、
成熟期に進化するための特訓(?)をはじめます。しかし途中でトータモンの怒りを買ってしまい、追いかけられるはめに。
進化にはなんとか成功したものの、大騒ぎを起こしてヒカリたちに歓心を買うどころではなくなってしまうのでした。
ともあれ、こうしてデジタルワールドの一日はおおむね平和に過ぎ去っていったのです。せまり来る嵐を予感させるかのように。
★全体印象
22話です。
タイトルコールは野田順子さん(ブイモン)。ただし声音はエクスブイモンに近いもので、影絵も同じくエクスブイモンになっています。
背景はオレンジ。
という具合にブイモンの通常進化が披露されるお話なんですが、脚本が脚本なのでどうしたらいいのかわからなくなるエピソード。
01であったような、危機とともに強まる絆の描写を期待していると思いっきり足払いをかけられます。
そのためか、02を低く見る原因のひとつとして挙げる人も少なくありません。私自身、ショージキに申してとてもフォローしきれない例です。
浦沢さん……(T_T)
大輔とブイモンの扱いやら周囲からの反応もまるでボスとボスボロットのような徹底した三枚目のもので、
前回のカッコ良さに「おっ」と思っているとまた痛烈な足払いを食わされることとなります。彼らがここまでギャグに徹する例は他にありません。
しかもそれがプラスに働いているとは言い難い面もあるため、その方面でも敬遠されがちな一篇、という印象が拭えぬところです。
ただ、現地のデジモンたちと力を合わせての復興活動という状況はなかなか珍しいもので、興味深いところではありますね。
その多くが以前、イービルリングのせいで敵対してた種族ばかりというのもポイントでしょう。バケモンまでいます。
こういう描写があると、やはり先代組との考え方の違いや状況の変化ってものが見えてきますね。
タケルやヒカリは心配していたし、新たな敵もたしかにまだ蟠ってはいましたけど、それだけでゲートが開いたわけではないと思います。
賛否はどうあれ、すでに25年後の未来に向けて門戸が広まりはじめていたのではないでしょうか。
作画はおなじみの八島氏。ギャグ一本槍で攻める今回のようなお話にはベストマッチします。
が、前回とは真逆にヒカリの美少女度が低いうえなまじ動きがいいため、愛らしさを出そうとしてギャグになってるカットもありました。
★各キャラ&みどころ
・大輔
頭から尻尾までズッコケっぱなし。
さまざまな愚策を練っては自爆したり、いきなり突拍子もないことを言い出したり、ときどき浦沢キャラの地がだだ漏れます。
10話ぶりに見るとその特異さがよーくわかる。周囲で生暖かく見守る他メンバーの描写にも同じことがいえるでしょう。
しかしそんな中だからこそ、ふと放った真面目な一言を記憶せずにはいられないのですが。
それに迷惑をかけた相手には(トータモンにさえ)きっちり詫びを入れるという、選ばれし子供の良さは残していたりします。
ところで、よく考えてみたら彼の作戦は他のメンバーならどれもこれも暗黒進化しかねないようなものばかり。
それをギャグで済ませてしまうあたりが彼らの強さなのかもしれません。
・ブイモン→エクスブイモン
テイルモンと仲良くしたがっているという設定が唐突に出てきました。
大輔がヒカリに惚れているからというものすごく安直さを感じる流れですが、この後いっさい活かされることはありません。いわば捨て設定です。
お目当てへの妄想は大輔もブイモンもたいへん無邪気なんですが、ブイモンのほうがちょっとだけアダルティだった……かも。
めずらしく、大輔に対して怒る場面も用意されています。
しかし直後、文字通り水に流されて謝ってしまうあたりがブイモンクオリティ。
いきなりポカッとやられたんだから君が謝らんでもいいような気がするんですけど。
なし崩し的に登場したエクスブイモンは、フレイドラモンあたりと比較して肩骨たくましく背丈もかなり大きいですね。
フレイドラモンやライドラモンがせいぜい2メートルなのに対し、こちらは5メートルくらいあります。忘れがちですが重要なこと。
あらためて見ると羽根も意外に大きく、デジモンとしてみれば飛行には充分なものがありましょう。
戦闘能力そのものにさほどの大差はないはずですが、総合的バランスならばアーマー体二体を凌いでいるかもしれませんね。
いかんせん、すぐパイルドラモンが登場するのでそのための素体というイメージも払えないんですけれど。
必殺技はエクスレイザーですが、トータモンを崖下にはじき飛ばす圧力を発揮しながら相手にはほとんどダメージ無し。
ギャグですし、対象が明確な敵じゃないので手加減したというのもありましょうが、パワーのアピールにはいささかつかみが弱かったかも。
・京&ホークモン
京の大輔への態度がぞんざいなのは今に始まったことじゃないんですが、今回はとりわけキツいです。ギャグ回だから許される感じ。
引っ張られるように、本来は温厚なホークモンまでもが結構キツいことを言っていたりします。
前半では普段まずやらないようなコントをぶちかましているし、ある意味彼女達も暴走してますね。どこのドリフですか。
・伊織&アルマジモン
伊織にはなぜか教室にウパモンを持ち込むなど謎の行動がみられるほか、命あっての物種と逃げ出す意外な面が発動してます。
彼なりのギャグでしょうか。
でもベジーモンと一緒にカレーの鍋を攪拌する場面や、ガジモンたちに剣道を教える場面は微笑ましかったですね。
ああしたシーンはもっとあっても良かったかもしれません。
・タケル&パタモン
経験者なだけに現在の状況にも警戒を怠っていませんが、まずヒカリたちに相談するあたりがポイントなのかもしれません。
この時点でもまだ新規参入の三人に距離を置いているとみることもできますし、微妙な問題を慎重に取り扱おうという配慮ともとれます。
何よりも集団としての不和を危惧するところがある彼らにとり、無意識にやってしまうことなのでしょう。
タケルとヒカリが仲良く見えるのは、ともに大きな危機的状況を乗り越えたところからくる自然な信頼感も大きいんですよね。
こればかりは大輔が持とうとしても持てないアドバンテージですし。
そういえば、タケルがまともにバスケをやってる描写があるのはこの回が初めてです。というかこれ一回だけだったような。
・ヒカリ&テイルモン
今回のヒカリは体操服でのダンスや、妄想の中ながらチアリーダー姿を披露したりしていますが、八島氏の絵が淡泊なので色気はありません。
おんなじ人物だと明確にわかるにもかかわらず、全然絵が違いますな。むしろ竹田作画でなくてよかった気がしないでもありませんけど。
いろいろと問題が発生しそうですからね、たとえばこの私とかに。
京あたりと違って大輔にそこまでキツいことは言ってませんが、彼があんまりズッコケるので笑いをこらえるのに必死だった感じ。
前にも書いた気がするけど、ヒカリって大輔のことをじっさい、どう思ってるんでしょうか。
ハッキリ描かれなくてもいい要素ではあるんですが、だったらなんでこんな設定にしたねんとは時々思います。
・トータモン
たまたまそのへんで用を足していたところを大輔たちに見られたので、怒って追いかけはじめました。頭がクラクラするような理由です。
02でイービルリング無しのデジモンを相手取るのはいちおうこれが最初(キメラモンは除外)。
必殺技シェルファランクスとそれを次々打ち砕くエクスブイモンのくだりは、今回のアクションでは一番のハイライトといえましょう。
ちゃんと人語は解するようで、あきらかに大輔の頼みを理解しているような素振りを見せています。
必殺技を撃つときにはしっかり喋っていたため、単に無口なタイプなのでしょう。
同一個体かはわかりませんが、のちにパートナーデジモンとして現れた憶えがあります。出番のわりに優遇されてますね。
・デジモンたち
ゴツモン、ガジモン、ゲコモン、オタマモン、バケモン、ギザモン、ウッドモン、ベジーモン、レッドベジーモン、
そしてヌメモンの姿が見受けられます。ヌメモンは一話以来かな?
子供たちとともに和気あいあいと復興活動にいそしむ他、大輔の依頼を受け十数体で大型のデジモンを模し、特訓相手を演じたりしてます。
このように02では多くのデジモンが無害な性格であり、敵対行動をとらなければ危険は少ないであろうことがわかりますね。
そう、これが大輔たちの見ていた現実なのです。そもそも被害を出した張本人が他でもない、同じ人間なのですから。
決して相容れぬ本当の意味での敵が存在するということを、彼ら新規組が身をもって体験していくのはもっと先のことです。
キメラモンもそうだったんですが、ヤツには意志こそあれ、言葉で表現してませんでしたからちょっと弱い。
★名(迷)セリフ
「だめだこりゃ」(京)
京さん、あなた何歳ですか。
「デジタルワールドがこんなに荒れちゃったの、オレたちにも少しは責任あるからな」(大輔)
今回では貴重な、ちょっとシリアス系のセリフです。
手前ではめずらしく京のことを嗜めるような物言いまでしてるんですが、結果的に自分が遊んじゃったみたいな形へ……
「そのためにはブイモン! おまえが成熟期に進化するしかない!」(大輔)
この論理の飛躍ぶりがある意味すごい。大輔というか浦沢脚本の本領というやつです。
それにしてもウルトラエンジェモン、成熟期のつもりで想像していたのか……意外に奥ゆかしいというべき?
「怒った! もう怒ったー!」
「でも、うまくいかなかったみたい……ごめんね、大輔…」(ブイモン)
ブイモンが大輔に対して怒ったのはここぐらいのものです。
といってもこれは大輔の作戦で、それに気付いたらあっさり引いてしまいましたけど。お人よしだなあ……
ところでよく見ると大輔、復興どころか破壊活動をしています。
「これも成熟期に進化する練習の作戦でしょ?」(ブイモン)
「トータモンが気持ち良くオシッコしているところを見てしまったってェ?」(タケル)
「やめてよかった……やはり勝てる相手ではなかった」(伊織)
無駄な説明調が出てくるとあからさまに浦沢脚本です。「た」で止める発言がめだつのも特色で、今回はそれが特に多い。
「襲うなら、手を洗ってからにしてくれ!」(大輔)
「大輔、何言ってんの!」(ブイモン)
「そのほうが衛生的だとブイモンも思うだろ?」(大輔)
「思う。 …こんなときに衛生的も不衛生もないでしょ!」(ブイモン)
…………。
ともあれ、その不衛生な足で思いっきり踏まれたエクスブイモンが哀れでなりません。
「遊びは終わりましたか?」(ホークモン)
……あなた、今日はキツいですね。
★次回予告
まるまる一話かけての賢ちゃんクロニクル。
あまりにも幼く頑是無い姿と反比例するかのような表情のカゲリが、
悲しい物語を連想させます。