大空の騎士アクィラモン |
脚本:まさきひろ 演出:梅澤淳稔 作画監督:清山滋崇 |
そんなある日、デジタルワールドに来ていたミミから緊急連絡が入りました。馳せ参じる大輔たち。
いきなり出現したゴーレモンが、ダムを破壊しようとしているのです。下流の町を守らねばなりません。
しかし、ゴーレモンにはイービルリングがありませんでした。なんとか被害の第一波は食い止めたものの、
京や伊織の躊躇いもあって下手人に決定打を与えられません。逆に痛撃を受けてしまいます。
そこへ再びスティングモンと賢が現れ、ゴーレモンと戦いはじめました。
さらにパルモンからの情報で、敵はデジモンではなく謎の女性に変化させられたダークタワーだとわかります。
賢への誤解を解いた京はデジヴァイスを輝かせ、ホークモンがアクィラモンへ進化!
元身をあらわした敵を、スティングモンとの連携攻撃でみごと粉砕してのけるのでした。
謎の女性を追う賢。彼は過去の負い目と、自分だけでケリをつける決意のため仲間入りを固辞し、去っていきます。
そんな賢へ京は別れぎわ、感謝のメールを送るのでした。
★全体印象
25話です。タイトルコールは夏樹リオさん(京)。
大空を思わせるイメージに大きく舞うアクィラモンの影絵が、タイトルとよくマッチしています。
簡単にいえば、大輔と京が賢の仲間入りへ傾くお話。
ただし大輔は一応前フリがされていたので、実質は京の葛藤がメインといえるでしょう。
伏線を考慮したとしても、大輔の入れ込みっぷりがものすごい域に達しているのはまあ、だいぶ強引ですね。
次回にはもうジョグレス進化までいっちゃうんですから、急ぎたいのはわかるんですが。
なんの説明もなくデジタルワールドに来ているミミとか、そのミミに
「たたたたたっくん! オルフェノクが!」状態のコールを受けてワープしたかのように飛んでくる大輔たちとか、
さらにものすごいワープっぷりで駆けつけてくるスティングモンとか、ほかにも粗いところが目立ちます。
こういう後半の響鬼みたいなすっ飛ばしは、デジアドじゃ珍しい部類に入るんじゃないでしょうか。
しかしながら、アーマー体の能力を活かしたすばらしい連携が見られるのは特筆もの。
ついでに言えばゴーレモンの「いやお前実は完全体だろ?」な強さも妙に心へ刻まれていたりします。
なにしろデジモンではないので、外見だけで判断しちゃいけないのかもしれませんが。
「デジモンではない」といえば、いろいろと微妙な問題が思い当たりますね。そのあたりは後述で。
どっちかといえば、作画と演出にGJを贈りたい回です。
★各キャラ&みどころ
・大輔
このあたりからいきなりロケットブースターで上昇をはじめます。
前半のいじられ体質もそれなりに残ってはいますが、それ以上にシリアスに決めるところが目立つんですね。
この回といい次回といい確変起こすにもほどがあるだろとは大いに思いますが。
正直に言うならシナリオ主導、流れありきでこのようになったというのは否定できないと思います。
ただ困ったことに、私自身が男前モードの大輔を気に入ってしまっているからなあ……(^_^;)
それゆえ、どうしても評価が甘くなるところがあると思いますね、自分自身で。
おもしろいのは、極端な結論を出していながら行動そのものは慎重なこと。
自分の意見は表明してみんなを説得はするけど無理強いはしませんし、いきなり賢へ接触しておきながら
言葉は選んでるふうだったりするんですね。なんというか、妙にバランスが取れてます。
ガキ大将とはいうけど、こういうところは現代っ子ぽいというか、空気を読むというのか。
むしろある意味、この回と次回の彼は突き抜けまくってます。それをお話主導と言うのですが。
まあ、彼の場合は皆を引っ張るというより機運を盛り上げ、望ましい方向へ誘導していくタイプなので、
お話を進めようとすればそっち方面の特性がバーストを起こすのは無理もないことかもしれません。
・ブイモン→ライドラモン
一応急いで来たという理由付けのためか、今回はライドラモンで戦闘してました。
単純なスピードでいえばたしかに一番でしょうしね。エクスブイモンの速さがどの程度かはわかりませんが。
ただし、ゴーレモン相手にはほとんど歯が立たず途中からダウンしっぱなしです。
・京
大輔につづいて賢の支持にまわった人。ここからも、彼女と大輔が似たもの同士だということがわかる…
かもしれません。悩んではいましたが、あの悩み方は「すでに肯定へ傾いてて決め手が欲しい」類。
自分でも言っていることですし。
一方、デジモンと戦うことに関しては伊織に次ぐくらい拒絶反応を抱いていますね。
ミミの「はじめから悪いデジモンはいない」という考えに賛同を示した過去もあります。
これがこの時点の01組と02組を分ける最大の差だと思うのですが、京たちにとりデジモンは初めから同胞なのです。
わけがわからないうち、破壊せねばならないデジモンがいると突きつけられた01組とはまったく逆なんですね。
それこそ選ばれし子供、ひいては現実世界とデジタルワールドの関係の変化を示唆していたものなのでしょう。
・ホークモン→シュリモン→アクィラモン
今回のトドメ担当。ある程度お話が動いたところでこういう役をもらえるあたりは、優遇というべきでしょうか。
あいかわらず、要所要所のボケで笑いも喚起してくれます。
ひさびさに登場した感のあるシュリモンですが、アクィラモンのお披露目回なのであまりいいところがありません。
必殺技を放とうとした瞬間にカウンターを食らったり、14・15話でみせた強さはもはや影も形もなく。
一応、ライドラモンらと同じく連携による災害阻止で見せ場はあるんですが。
今回から登場するアクィラモンは、鳥らしからぬ巨大な角が非常に目立つポイントですね。
伸びたりするのでサイみたいに実は硬質化した地毛なのかもしれませんが、衝角に用いての突進は破壊力充分。
この形態の登場をもって、ホルスモンが事実上お役御免となりました。後半OPでもライドラモン、ディグモン同様
その姿を消しています。パートナーが乗るぶんにはホルスモンのほうが安定性よさそうなんですけどね。
・伊織
なぜか学校で素振りを繰り返していました。こういう場面はいままで一度もなかった気がします。
単純に考えて学校では剣道部なんでしょうから不自然ではないと思うんですが(大輔だってサッカー部と両立してるし)、
わざわざああいう場面を見せたということはつまり、彼も迷っているという示唆なんでしょうね。
惑った時は突きこそ基本というか、基礎にたちかえって自分を見つめ直すというのが王道ですし。
賢のことは本人がいない場所だとまだ「あいつ」と呼んでいます。
まあ、デジモンカイザーのやったことを思えば無理もないですし、賢もそこはよくわかっているはずですが。
・アルマジモン→ディグモン
ゴーレモン戦ではアクィラモンとスティングモンを除く全メンバーと同様貢献はしてないんですが、
氾濫した河川を大地に封じ込めるという重要な役割を果たしていました。
あの連携では彼のビッグクラックこそが最後の決め手ともいえるわけで、たいへん重要な役回りだったといえましょう。
その後はぺガスモンらに拾い上げてもらったところからみて、滑空という形をとらないと飛べないのかもしれません。
21話でも高所からの降下でしたし。
・タケル&パタモン→ぺガスモン
はっきりいって今回のタケルは脇なんですが、賢の仲間入りを地味に反対していたりなど秘めた思いがうかがえます。
ただ空気を読みすぎるほど読むタイプですから、これ以降表立って表明したことがありません。
そもそも京にしか言ってないので表立ってもへったくれもないんですが。
それでいて、賢を引き込もうとする大輔の行動はトレースしているあたりに微妙な意味での大人っぽさというか、
腹に一物をうかがい知ることができます。やはり彼は望む望まざるとにかかわらず、大人の思考をしているのでしょう。
そういえば、パタモンが珍しく大輔を評価する言葉を発していました。このへんにも展開の変化を感じます。
・ヒカリ&テイルモン→ネフェルティモン
タケル以上に脇。特筆すべき場面は冒頭、大輔と割烹着姿でかわすやり取りのあたりでしょうか。
彼女も波風を立てないよう、うかつな発言は避けていたように見えます。
というか彼女も賢をどーゆー風に思っていたかがよくわからない一人なんですね。
それよりチームの和を尊重したことだけはたしかなんですが。
ネフェルティモンの特筆ポイントはロゼッタストーンの連続発射でしょう。連射できるんですねアレ。
・賢&ワームモン→スティングモン
まだまだ2人の世界を展開しつつ隠密行動を繰り返しています。
ちゃんとした理由があるにもかかわらず何も言わないまま立ち回りつづけるあたり、すでに不器用という印象で、
それだけでも前の賢とは違いますね。以前の人格なら、うまいこと言って大輔たちを引き込むぐらいはやりそう。
賢ちゃんはその優しさゆえに、自分を許せないのでしょう。
さらに一歩進んで未来のために貢献できるようになるには、さらに暫くの時間を必要としました。
さて、成績上位者20名からもあぶれたところからみて、賢ちゃんの学力そのものはだいぶ落ちたようですね。
でも今までに身に付けた技能や知識までは無くなっていなかったようで、一部を42話で披露しています。
暗黒の種はあくまで頭の働きそのものを活性化するわけですから、その恩恵で手に入れたものは残るのでしょう。
必ずしも悪い影響ばかりではなかったってことですね。本人に言ったらイヤな顔をされそうですが。
ところでゴーレモンを阻止しに現れたとき、大輔がスティングモンの名を呼んでいました。まだ名乗っていないのに。
単純に考えて脚本ミスなんでしょうが、よく考えてみたら大輔は賢と一度会っているので、
そのときに教えてもらったのかもしれません。
・ミミ&パルモン
なぜかいる人たち。局地的デジタルゲートが開くたんびに行き来してるんでしょうか?
まあミミのことだし、目の前で開いたら「やらない後悔よりやった後悔」というノリで突入しつづけてそう。
パルモンにも会いたいでしょうしね。
そう考えると、正直に行動する彼女のところにゲートが開きやすいのも当然かもしれません。
正直といえば、02組の空気を直感的に察して先手気味に行動すると言う先輩らしいアクションも見せていました。
賢の仲間入りには、ミミも一役になっていると考えるべきなのでしょうね。
パルモンは登場こそするものの進化なし。いっさい戦いません。
ここからもすでに先輩連の役目が終わりかけており、02組のさらなる躍進へ布石が打たれているとわかります。
・京の兄姉
兄・万太郎と長女・千鶴、次女・百恵。万太郎以外はたしか今回が初ゼリフです。
とはいえ千鶴も百恵も、声は京といっしょ。トーンを変えて演じているだけです。なので差異は薄め。
兄姉が多いこと自体が京にとっての漠然とした鬱屈になっているので、ひとりひとりの印象が小さくても
それは仕方ないことなのかもしれないとは思いますが。
そういえば、さりげに賢京フラグが仕込まれてはいます。
まさか本当に彼氏彼女の事情を展開するとは思ってませんでしたけど。
・謎の女性
今回で髪の毛をダークタワーに差し入れ、デジモンの姿をした走狗に仕立て上げる能力があきらかとなりました。
なぜそんなことができるのか、実はよくわかりません。この先を視聴していけばヒントがあるかもしれないので、
注目していかねばならないでしょう。
というか、全シリーズ通しても彼女やマミーモンほど不可解な存在はないんじゃないでしょうか。
ブラックウォーグレイモンのほうがまだわかりやすい。あっさり退場させるには惜しい方々だったような……
・ゴーレモン
今回のダークタワーデジモン。その正体をはじめて認識された個体です。
中世の動く人形ゴーレムがモチーフというだけあり、重量感のあるアクションと太い腕を駆使しての
力まかせな打撃が特色。その表皮はアーマー体の一斉攻撃をも受け付けぬほどの強力な防御力を誇っており、
メタルグレイモンをも押さえ込んだサンクチュアリー・バインドがほとんど通用しません。
さらに背中の猛毒ガス・カースクリムゾンは数体まとめてを戦闘不能に追い込む威力を誇っており、
成熟期とは思えない猛威をふるっています。むろん、シナリオの都合による補正だったのは明らかなのですが。
これらダークタワーデジモンは、見た目上ふつうのデジモンと区別ができません。
ために正体を知らない子供たちの攻撃の手をにぶらせることになるのですが、それもタネが割れるまでのこと。
アルケニモンが狙ってああした姿をとらせたというより、ダークタワーを動かすためには
デジモンの姿をとらせるしかないと考えた方が自然かもしれません。多少の効果は期待したでしょうけど。
じっさい、一般のデジモンの中にまじって活動されたらかなり厄介だったでしょうし。やらなかっただけで。
ともあれ、正体がデジモンどころか生き物ですらないダークタワーだということで、
02組にもばんばん倒しまくっていいというお墨付きが出ました。今回はそういう意味で転機といえます。
しかし、まだ問題が残っているんですね。デジモンじゃなかったら倒してもいいのかという。
そこに欺瞞を指摘する意見を山ほど見ました。やむを得ず倒しまくっていた01のときは聞かれなかった類ですね。
いちおう、ブラックウォーグレイモンが答えのひとつというか、アンチテーゼなのかもしれませんが……
非常にあつかいが難しい問題なので、あんまり大きく扱うのも良し悪しなんですよね。
正直、意思疎通が不可能で殺る気まんまんの相手にとれる選択肢はほとんどないのが現実だと思いますが。
基本的に意志をもたないダークタワーデジモンは、いわば苦肉の策なのかもしれません。
・スナイモン
前半に登場。スティングモンと夜間戦をくりひろげ、必殺の百裂蹴りに砕かれました。
まだアルケニモンはその姿を見せず、散発的に子供たちをねらったり破壊活動を繰り返しているようですね。
賢とスティングモンが阻止した活動もそれなりに存在するのかもしれません。
・ユキミボタモン
ミミといっしょにマシュマロを食べていた幼年期たち。
セリフからみて、下流の町に暮らしているかダム周辺の森に生息しているものと思われます。
どーゆー状況でミミと知り合ったかは不明。
・対氾濫防衛大作戦
ゴーレモンが砕いたダムの穴から溢れる水を、アーマー体五体の連携で食い止める場面。
まずはネフェルティモンがロゼッタストーンの連発で穴を塞ぎ、ライドラモンとシュリモンが周囲の木を切断、
サンクチュアリー・バインドで即席の二次堤防に仕立て河をさえぎります。その手前に控えるのがディグモン。
ビッグクラックで大地に大きな裂け目をつくり、激流を封じ込めました。
溢れたぶんは、さきほど作っておいた二次堤防にはばまれてやはり裂け目へ呑み込まれるという寸法。
アーマー体五体の能力をフル活用した、見事としかいいようのない連携です。燃える。
ある意味、この25話におけるいちばんの名場面かもしれません。
まあ、これがほぼアーマー体最後の活躍らしい活躍になるんですが……
★名(迷)セリフ
「一乗寺賢も、いいとこあるよな〜」(大輔)
この思考の一足飛びぶりも凄いですが、ヒカリの生返事ぶりもいろんな意味で徹底してます。
まだ答えを出せる時期ではないので、妥当な反応といえばそうなんですが。
「ぼくは、反対だな……」(タケル)
賢を仲間に引き込みたいという大輔の意志を京から伝え聞いた時の反応。
現時点でのタケルの意見なのはたしかなんですが、このセリフの中でさえトーンダウン。
本来なら伊織とならんで反対派の急先鋒となってもおかしくない考え方を持つにもかかわらず
これだけ消極的ということは、自分の感情より波風を立てることへの警戒が優先している証拠かもしれません。
結局ハッキリ反対だと言ったのはこの一回だけで、あとは曖昧にしたまま状況をみて立ち位置を変えました。
聞いた本人である京は彼の態度をどう思ったでしょう。気にしてないかもしれないけど。
たぶん、タケルは今でも賢のことを許してはいないと思ってます。
けれどもそんな個人的感情より、賢を受け入れていく皆の気持ちを慮ったのでしょう。
そういうところが悲しいくらい大人なんだと思います。
「だってオレたち、同じ選ばれし子供じゃないか」(大輔)
このへん、3話あたりからわりにずっと言っていることだと思います。
デジモンカイザー時代の賢に「同じじゃいけないのかよ」と問いかけを投げてましたし。
なんだかんだで考え方がブレてないってことなんでしょうね。
直後に賢のことを仲間だと発言するくだりはさすがに跳びすぎだと思いましたけど(^_^;)
「あっちが本気なら、こっちも本気を出さないと…! 本気で、倒す!」
「敵を倒さずにか?」(大輔)
かと思えば、こんなことも言ってます。一部略。
やはり大輔はキメラモンと戦ったときから、交渉の余地の無い悪辣を防ぐための方策と
そのために必要な覚悟を知っていたのかもしれません。そう受け取れます。
「そんなことをしたら、僕たちもあいつと同じになってしまう!」(伊織)
確かに行為そのものはいっしょなんですが、それ言っちゃったら太一たちはどうなんのって話。
突き詰めれば肯定するしないではなく、どちらを選ぶのかという問題になるわけで、
そうするとハッキリ言って取るべき行動はたったひとつしか無いんですよね。
相手が本物のデジモンかどうかさえ、その意味では瑣末な問題ということになってしまうのです。
極端な話、テロリストを殺さずにどうやって止めんのってところまでいってしまう。不毛だ。
現実問題として、ゴーレモンの活動は素性を偽ってのテロそのものなんですが。
「そうよ。いけない?」(ミミ)
賢を呼び出すためのメールを打ちながら。いかにもミミらしいセリフですね。
そしてこの行動が、事態を好転させていくことになります。
彼女本人はカイザー時代の賢とほとんど面識が無いので、こだわりが少ないのかもしれません。
「わ、私にもなにがなんだか……」(ホークモン)
ふしぎな力によって寝たまんまの体勢で起き上がったときのセリフ。
緊迫した状況にちょっとだけ一休みが入る瞬間です。
『仲間になれる日を待ってるわ。今日はほんとうにありがとう』(京)
賢に贈った感謝のメール。極端に短いのは別れ際に打ったからでしょう。
京が賢のことを天才少年としてでもデジモンカイザーとしてでもなく、一乗寺賢というひとりの男の子として
はじめて好意をもった最初の瞬間なのかもしれませんね。
賢ちゃんは何も言いませんでしたが、むしろ言葉にできないくらい感謝していたにちがいありません。
★予告
急展開。謎の女性たるアルケニモンの宣戦布告と、そして遂にジョグレス進化のときです。
惜しむらくはデビュー戦のわりに対戦相手が地味なことでしょうか……