アルケニモン 蜘蛛女のミス

 脚本:まさきひろ 演出:芝田浩樹 作画監督:八島喜孝
★あらすじ
 孤立無援、絶体絶命の危機に立たされた大輔たち。
 必死の策でなんとか当面のピンチは逃れるものの、ますます追い詰められていきます。

 しかし賢と伊織の知識、大輔の機転、京の技術、タケルとヒカリの奔走で紅衣の女の笛の音を妨害する策に出ました。
 ギガハウスのパソコンを使い、笛の音を反転させた音色で昆虫型の群れを正気に戻したのです。
 操られていたディグモンとスティングモンも開放されました。

 劣勢に陥った紅衣の女はその元身をあらわし、アルケニモンとなって襲いかかってきます。
 が、ジョグレス進化を遂げたパイルドラモンの敵ではありません。追い詰めたところで子供たちが処遇を考えていると、
 突然新手が出現しました。アルケニモンと同じように人間型から変化する新たな敵の名は、マミーモン。
 子供たちが戸惑う間に、マミーモンはアルケニモンを連れて遁走してしまいます。

 みずからの意思で破壊を企てる敵。子供たちに、いよいよ決断の時がせまられていたのでした。
 そして、さらなる脅威が目の前に待ち受けていたのです……
 
 
 
★全体印象
 29話です。
 タイトルコールは山崎和佳奈さん(アルケニモン)。影絵もだいぶネタバレです。
 題名は明らかに「蜘蛛女のキス」からのパロディでしょう。

 さて、ギガハウス篇後半。劣勢も劣勢、超劣勢から機転と知恵で逆転するというなかなか燃える展開です。
 もっとも、反撃の余地は大半がアルケニモン自身によるものなのですが。
 順を追って彼女のミスを検証してみましょう。
 
 
 1.巨大とはいえ、パソコンが設置されているような舞台を選んだ
 
  そのうえ京にとっては勝手知ったる(ものと思われる)音楽ソフトまでインストール済みというおまけつきです。
  これをまんまと利用され、絶対的アドバンテージたる笛の音を無効にされてしまいました。
  しかも以降の子供たちは十中八九対策を弄していると思うので、二度目はありますまい。
  自らのミスで最大ともいえる武器を失ってしまったことになります。当然代替策などはありません。
 
 
 2.子供たちを分断したのはいいが、通信の遮断をしなかった

  まあDターミナルの通信性能は次元世界を飛び越えるほどですから、子供たち自身からデバイスを奪わないかぎり
  通信を防ぐ手はないでしょう。アルケニモンのミスというか誤算は、大輔たちのチームプレイを侮っていたことです。
  もっと根本的にいえば、情報というもののちからを甘く見ていたということになりましょうか。
  ほんの数分でも余裕があれば連絡をとることはできるし、ほんの数行でもヒントを与えれば、そこから作戦に
  致命的な破綻が生まれるかもしれないのです。そして、あの時点のアルケニモンに状況を把握できる手段はありません。
  敵が何をしようとしているか、伝えてくれる仲間がいないからです。
  マミーモンの到着が早ければだいぶ違ったでしょうけど。
 
 
 3.作戦がだめになった時点で正攻法を取った

  あの段階ではたぶんパイルドラモンを相手にまわしても勝てるつもりだったのでしょうが、いささか認識が甘い。
  ここは慎重を期して一度撤退をかまし、パソコンを破壊して再度笛の音を使うくらいの狡猾さが必要です。
  悪党を自負するものがわざわざ正々堂々と正面からぶつかる必要がどこにあるのでしょう。
  ここからも、不利になると冷静さを失うアルケニモンの迂闊さをうかがい知ることができますね。
  またしても舞台装置を逆利用され、デジモンならぬ子供たち相手にボコボコにされてしまいますし。

  
 とまあ蜘蛛女の詰めの甘さを列記してきましたが、大輔たち自身もそうとうのものです。
 これだけ危険な相手を目の前にしてもまだ「逮捕」にこだわっている。別に私は過激思想の持ち主じゃありませんが、
 これほどの凶悪犯は本来、問答無用で殺されても文句は言えないはずなのです。
 みずからの何倍、何十倍もの魂を巻き添えにするかもしれないのですから。

 ですから、たとえ後味が悪かろうと大輔たちはここでアルケニモンを仕留めておくべきでした。大局的にみれば。
 それができないのは何回も述べてきたように01組との立場の違いと、あとは育ちのよさが原因でしょう。

 02組の子供たちにはどんな理由があれ、何者であれ、朋友であるデジモンたちを殺すことへの抵抗があるのです。
 それが次回からの急展開を呼んでしまうのだとすれば、なんというパラドックスでしょう。
 26話とは違う意味で、けっこうなターニングポイントといえる回だと思います。

 作画は八島氏で、合わせるかのようにわたわたと忙しいところのあるお話でした。
 しかしデジアドの本領はこういうエピソードにこそあると思います。それぞれが得意分野を発揮した作劇ですし。
 ただ、前半におけるドクグモンの巣の場面はかなり冗長です。あの距離を何分かけてるんでしょう。
 
 
 
★各キャラ&みどころ
 
・大輔
 今回の逆転劇における最大の立役者は京ですが、きっかけを作ったのは彼です。
 大輔のサッカーの技量が最悪の危機を防ぎ、そのひらめきが反撃への糸口につながったのですから。
 彼にしてはやけに冴えてますが、今日はきっと調子がよかったに違いありません。

 そしてやはり、やむを得ないとなれば本気で倒してでもアルケニモンを止める覚悟はあるように見えます。
 時に応じて振りかざさないあたりがたぶん太一との最大の違いであり、また彼の良さでしょう。
 ここでもあくまで全員の意思を尊重していますね。それが02組最大の弱点でもあるのですが。

 一方で、ブイモンの意志をすばやく察してディグモンたちをフォローする場面もあります。
 こういうところが天然気配りさんなんですね。
 
 
・エクスブイモン→ブイモン→パイルドラモン→チコモン
 ディグモンのドリルにガリガリ削られてたはずが、いつのまにか脱出して激しい乱撃戦をくりひろげていました。
 一時退化してしまっていたのはやはり、孤軍奮闘によって消耗したからですね。
 ただ篭城戦が功を奏したのでしょう、アルケニモン戦ではふたたび進化できるまでに回復していましたけど。

 私的最大のポイントは酷い目に遭ったのに、スティングモンたちの心中を慮って何も言わないよう、
 大輔へサインを送ったあのシーンです。なんとも損な気性ではありませんか。そこが好きなんですけど。
 
 
・京
 パソコンに強いという設定をフルに活かして大活躍。巨大なマシンを駆使しての大胆ともいえる行動力は見事です。
 さりげに操作の相方がヒカリなのも注目すべき点でしょう。
 
 何か知識の紋章を受け継ぐ伊織のお株を奪いっぱなしという気もしますが、考えてみれば伊織にそれをやらせても
 あの歩く知識欲・泉光子郎の影にかくれてしまうでしょう。そこを彼女に振ることで差別化をはかったのですね。
 伊織のほうもだからだんだんと、知識よりむしろ誠実の人になっていったのだと思われます。
 あるいは2話で書いたようにはじめからふたりにはいくつもの可能性があって、固定されていた心の特性は
 あとから手に入れたもう片方のデジメンタルのほうだったのかもしれません。
 
 ティーンエイジ・ウルブズの打ち込みの手伝いなんかもやってるんですね。
 アマチュアとはいえ、バンドマンの助っ人になれるところからみて腕前はかなりのものがありそうです。
 専門用語バリバリのセリフからもそれがうかがい知れますね。
 
 
・アクィラモン→シュリモン→ホークモン
 比例してこちらの見せ場もそれなりにあります。
 特筆すべきはアクィラモン時の垂直上昇ですね。ホルスモンではちょっと無理な芸当だと思います。
 総合ではともかく、瞬間における機動面において大きく水をあけているように見えます。
 もっともホルスモンはどちらかといえば一撃離脱型ですから、翼も速度重視に進化したのでしょうけど。

 後半では局地戦むきのシュリモンへ進化し、正しく雲霞の勢いで迫る昆虫型相手に奮戦していました。
 さすがにアルケニモンには手が出ませんでしたが、殊勲賞のひとりといえます。
 
 
・伊織
 またまた賢に助けられ、今度はちゃんとお礼を言っていました。
 らしくもなく取り乱したところをより危険な立場から逆に叱咤激励されて、何かを感じ取ったようです。
 そういえば彼、意外に自分を失いやすいんですよね。それだからこそ律しようと努力しているのかもしれません。

 しかしまだ打ち解けるとまではいかず、賢とはもうちょっとの間ぎくしゃくすることになります。
 その件やジョグレスの引っ張りで、第3クール影の主役といえる立場になっていきました。
 第4クールでもポジションだけなら主役もいいところだし、やはり構成がたのお気に入りだったのかもしれません。
 
 
・ディグモン→アルマジモン
 前半まるまる操られっぱなしで、後半においてもあまりいいところがありません。
 見どころは、アルケニモンに殺虫剤を浴びせ掛けるシーン。一歩間違えれば自分が酷い目に遭いそうな位置です。
 あんな物騒なものを置いておくなんて、アルケニモンはここでもミスをかましていたんですね。
 
 
・タケル&ぺガスモン→パタモン
 前回では子供らしからぬ老獪さを見せたタケルですが、活劇となると実はこれという得意分野がないので、
 ひたすら肉体労働に従事しています。音波かく乱作戦においては、ケーブルの接続と防衛がおもな任務でした。
 
 さて、賢がアルケニモンへのトドメを指令しようとしたとき、真っ先に止めたのはタケルでした。
 ですがもし当事者が彼とヒカリだけなら、おそらくは迷わずトドメを刺したものと思われます。
 むろん好き好んでやるわけではないし、大輔たちが抵抗を持っていることも知っているから妥協案を出したのでしょう。
 
 ここにも自分の意見よりみんなの意見を重視する彼、ひいてはヒカリの姿勢が見えますね。
 しかしそれが元で敵にわずかながらの時間を与え、逃走を許す結果に終わってしまいました。
 口に出したことはなかったと思いますが、このとき手を止めてしまったことを悔やんだにちがいありません。
 それがブラックウォーグレイモンへの怒りにもつながったと考えてもいいでしょう。

 パタモンはほぼ進化しっぱなし。もっぱらタケルの護衛役で、特筆すべき出番はありませんでした。
 
 
・ヒカリ&ネフェルティモン→テイルモン
 京とペアで音楽ソフトの操作をするシーンがヒカリの今回最大の見せ場。
 彼女もパソコンにはそこそこ通暁していると思うのですが、専門はたぶん画像系で音楽系には明るくないはず。
 そもそも純粋な習熟度では京に及ぶべくもないでしょうし、チンプンカンプンになるのも無理はありますまい。

 テイルモンはパタモン同様、ネフェルティモンに進化したまま長丁場を戦っていました。
 アルケニモンに対しては殺る気まんまんです。認可さえあれば、すぐにでもタマを取りにいきそうな雰囲気でした。

 というか、デジモンたちのほうはもうとっくに準備OKって感じですね。あとは子供たち次第だったのです。
 
 
・賢
 今回はかなり男前です。とりわけ伊織に対して。
 ひととおり学んでいたと思いきや、音楽方面には暗いという畑の穴も露呈しています。そういやそうでした。
 もっとも興味がなかっただけみたいなので、ちょっと前の賢ちゃんならやる気があればすぐ修められたんでしょう。
 なんてこと言ったらまたいやな顔をされそうですが。

 後半ではすっかり恒例と化したいつもの癖が出て、自分ひとりが重荷を背負い込もうとします。
 無論あれは彼の優しさからきた言動でもあるんですが、分かち合える仲間にはまだなり切れてない証左とも言えましょう。
 このしこりを解くためには、黒ウォの登場で共闘が嫌でも前提になっていく過程を待たねばなりませんでした。

 その意味で、黒ウォさんは賢と大輔たちの接近を早めたと言えなくはないかもしれません。
 
 
・スティングモン→パイルドラモン→リーフモン
 見せ場は後半から。といっても、そのほとんどはジョグレス後のものです。
 ジョグレスさえすれば、アルケニモンには完全に勝てるでしょう。一対一で真正面からという条件はつきますが。
 なればこそ、ブラックウォーグレイモンの登場が必要になったという寸法ですね。
 
 
・アルケニモン
 上でさんざんひどいことを書きましたが、実際あまりにもミスが多いのでどうしようもありません。
 まあ、ようやく正体をあらわしたと思ったらパイルドラモンにまるで歯が立たず、子供たちに追いまわされたうえ
 目の前で処遇を吟味される屈辱を味わうなど、見ててけっこう可哀想なんですが笑えるのは何故だろう。作画のせいでしょうか。
 いちおう、デスペラードブラスターを食らっても致命傷には至らないぐらいのタフさは持ってるんですけど。

 とは言ったものの、ほんとうに怖いのは彼女自身の戦力ではなく、その能力なんですよね。
 なんせ、たかだか100本のダークタワーを媒介とするだけで世界を揺るがしかねないブラックウォーグレイモンを
 作り出してしまえるんですから、危険きわまりないものがあります。欲をかいて200本とか300本とか使われてたら
 どうなっていたのだろうと考えると、世にも恐ろしい想像に導かれてしまいますね。

 もし彼女をこの時点で倒すか捕らえるかしていたら、ぜんぜん違う話になっていたかもしれません。
 その点において、今後の鍵をにぎっていたキャラだと思います。
 
 
・マミーモン
 初登場です。残り数分の時点でいきなり現れました。
 車掌か運転手のような風体の人間体を持ちますが、アルケニモンと違って出たその場で元身をあらわしています。
 人間体といってもかなり怪物然としており、そのためか「デジモンネクスト」にもこの姿で登場したことがあります。

 あくまで顔見せな扱いですが、加勢よりもアルケニモンの救出を最優先で実行するくだりなど、この時点ですでに
 アルケニモン至上主義な性格がハッキリ示されていますね。
 アルケニモンの存在を自分の生きる意味そのものと言い切るほどですから、このくらいは当然かもしれません。
 万が一アルケニモンが子供たちに加勢すると言ったら、その判断に従いそうです。ちょっとは悩むかもしれないけど。

 どちらかといえばズッコケが目立つキャラですが、実力は決してあなどれないものがあります。
 特に、包帯だらけの体から不意に繰り出されるスネークバンテージは変幻自在かつ鋼の頑強さを持っており、
 パイルドラモンですら動きを封じられたことがあるほど。アルケニモンと連携を取られたらやっかいな相手ですね。
 すぐ黒ウォが登場するので、アルケニモン以上に便乗犯に見えてしまうのがちょっと気の毒ではありますが。

 声は森川智之さん。精悍な美形役を得意とし、洋画吹き替えでも主役を多数こなしておられる実力派です。
 私個人としては、このマミーモン役でぐっと深みが増しましたね。あ、こんな役もできるんだ、という風に。
 「ふたりはプリキュア スプラッシュスター」ではこのマミーモンと同系列の演技から、ラスボスに相応しい
 端正にして重厚な演技への華麗なシフトを披露しており、さらなる円熟を感じさせてくれました。
 今後いっそうの活躍が期待されます。ってか、そもそも02でもラスボス役でしたね。
 
 
・昆虫型のみなさん
 集団催眠にかかっていた方々。笛の音が撹乱されて正気に戻るや、特に害意を示すことなく去っていきました。
 もともとはただ、自分の領分を守って暮らしていただけの連中だったようです。
 ちなみにゴキモンやクネモンたちの姿は見えませんが、やはり正気に戻って帰っていったものと考えるのが自然でしょう。
 
 
 
★名(迷)セリフ

(ドクグモンに一番近いのに……! 僕も、しっかりしなくちゃ……!)(伊織)

 賢からの叱咤を受けて。一乗寺賢という少年へはじめて本当の感銘を受け、勇気と冷静さを取り戻した瞬間です。
 そういえば、直後のシーンで落っこちていったドクグモンはどこに消えうせてしまったんでしょう。気絶?
 
 
「いやあ、ブラス担当がいないのにブラスの音が聞こえて、空耳かと思ってたよ」(タケル)

 京から打ち込みの話を聞いて。そんなことを言うと空とミミが飛んできますよ。
 冗談はさておき、タケルもそれなりには音楽に造詣がありそうですね。兄の影響はこの方面だったようです。
 ついでに言えば、ティーンエイジウルブズのメンバーとも面識があるようですね。まあ当然か。

 後年は小説家となる彼ですが、音楽の知識は執筆にも役に立ったことでしょう。
 
 
「選択範囲を反転させいらない部分を除去してからすべてを選択で波形をリバースさせてサウンドファイル新規保存!
 そして、ループ再生よ!」(京)

 こんなセリフはデジタル世代な昨今のアニメにすら、なかなか出てこないものです。ましてキッズアニメでは。
 まあ、何をしようとしてるのかはだいたいわかりますけど。
 一部でDTMが話題になってるここ最近において、なかなかタイムリーなネタですね。もう七年前か。
 
 
「! ……(ふるふる)」(ブイモン)

 なにも憶えていないスティングモンとディグモンを見て、大輔に贈った無言のサインです。
 ええ子や。
 
 
「人間じゃないって言いたいの? ええ、そうよ。私はアアアアア…アァルケニモン!」(アルケニモン)

 やっと抽象的な呼び名を使わなくてもよくなりました。
 魔獣型という肩書きは、ただの昆虫型から文字通り進化した存在だということを示しているのでしょう。
 ちなみにここで流れていたBGMは、夏の映画で使われていたものです。
 
 
「なんて無意味な質問なんだ……
 なぜ破壊するかだと? 破壊することが私の生きる目的だからだよ!」(アルケニモン)

 正確に言えば、たぶん彼女たちはそれしか知らないのでしょう。そのためだけに生まれたようなものだから。
 マミーモンの生きる目的は上に書いたとおり、アルケニモン自身なのですが。
 というかこの人たち、そもそもダークタワーがなんなのか本当はよくわかってなかったんじゃ……
 結局ろくな目的に使われてない以上、壊さなきゃいけないことに変わりはないのですし。
 
 
「かっこうをつけるな!」(タケル)

 アルケニモンに手を下す役を申し出る賢に。
 希望というものを重んじる彼にとっては、賢のそういうどこか捨て鉢なところが時おり我慢ならんのかもしれません。
 そこから次第に脱却していく過程を経てはじめて、少しずつアプローチを強めていっている気がします。
 
 この後アルケニモンの「逮捕」を提案しますが、当の蜘蛛女が言っていたとおり、彼らのこの甘さが
 のちに大きな苦境をまねくことになっていくのです。
 しかし、子供たちばかりを責めるのも酷というものでしょう。それが02組の個性でもあるのですし。
 この傾向がよい評判を呼んだとは思えないのも事実なのですが、個人的には納得しています。
 
 
(あんなやつらと戦っていくなんて…僕にできるんだろうか……)(伊織)

 みずからの意志で強大な力と狡猾な知恵をふるい、悪虐をなすデジモン。
 彼にとってはその存在そのものがショックでしょう。話に聞くのとじっさいに見るのとでは大違いです。
 とはいえ、人間の中にだってそういう輩はいるのだからお互い様のはず。

 ただ伊織の場合はそこで終わらず、なぜ悪が生まれたのか知ろうと思うようになっていったのですね。そこが偉いところ。
 
 
「どうも! ありがとうございました……せっかく借りを返せたと思ったら、また借りができてしまいましたね」(伊織)
 
 上の直後。ドクグモンのとき、巣から落ちかかった自分を助けてくれた賢に対してのセリフです。
 スーッとトーンダウンしてゆき無理して抑えたようになっていく、浦和さんの演技が絶品。
 それにしてもこの回の伊織はモノローグも多く、まるっきり主役みたいです。
 
 
「伊織が一乗寺を助けたのは、そーゆー貸し借りじゃなかったと思うんだけど……」(大輔)
 
 こちらはマイペースに三番手ポジションの真・主役。でも前回につづいて、さりげに本質を衝いています。
 チコモンがすぐ後にもっとハッキリ言っちゃってますね。伊織には聞こえなかったみたいですが。
 
 
 
★予告
 ついに、現れてはならない漆黒の爪がその姿を見せる時がきました。
 風よ、雲よ、太陽よ。心あらば教えてくれ。なぜ彼はこの世に生まれたのだ──