ホーリーポイントを守れ

 脚本:吉田玲子 演出:吉沢孝男 作画監督:清山滋崇
★あらすじ
 ホーリーストーンを求めて彷徨いつづけるブラックウォーグレイモン。
 光子郎のサポートで彼のいどころを察知した子供たちですが、駆けつけてみると三つめの聖石はすでに砕かれた後でした。
 世界を混沌に傾けようとする所業に怒りをあらわすタケル。それを見て、伊織はとまどいを覚えていました。
 恐らくはジョグレス進化の相手であろう、この穏やかな年上の少年のことが未だもってよくわからずにいたのです。

 続く四つめのホーリーポイントこそは死守せんと、先回りしてブラックウォーグレイモンの迎撃にまわる子供たち。
 しかし、 アルケニモンやマミーモンの乱入もあって苦戦をしいられます。後詰めのタケル組と伊織組の参戦も焼け石に水。
 叩きのめされるエンジェモンを見て、タケルは怒りを増大させていきます。闇をもって世界を変えようとするものへの怒りを。

 そのときホーリーストーンが輝き、光を受けたエンジェモンがホーリーエンジェモンに進化!
 ヘブンズゲートによってブラックウォーグレイモンを滅し去ろうとしますが、暗黒竜人の気迫がなおも撥ね除けます。
 かくて四たびホーリーストーンが破壊され、パタモンも力を失って完全体からもとに戻ってしまいました。

 そして、全員が目にしたものは天を衝いて苦悶する巨大な竜の姿。あれは一体?
 すでに一度同じものを目にしていたブラックウォーグレイモンは巨竜がまもなく現れると確信し、次の目標を求めて去っていきました。

 気を取り直し、次の作戦へ気持ちを移していく子供たち。
 伊織は、タケルがなぜこんなにも闇を憎むのか知りたいと思いはじめていました。
 


★全体印象
 34話です。サブタイトルのバックには伊織を手前に、タケルとブラックウォーグレイモンが相対するような影絵が。刺さりそう。
 しかしなぜか、タイトルコールは木内レイコさん(大輔)でした。35、36話との兼ねあいでしょうか?

 今回から、いよいよ最後のジョグレス進化三部作に突入します。
 シャッコウモンが登場すれば残るはインペリアルドラモンおよび、同ファイターモードの登場を待つばかりとなるので、
 その前に引っ張れるだけ引っ張っておこうという腹づもりだったのでしょう。
 伊織とタケルをそのための役として持ってきたのは妥当といえるかもしれません。

 黒ウォ篇がこうして見ると、ちゃんと考えられて組み立てられていることもわかってきました。
 30話が黒ウォ登場で31話がシルフィーモン登場、32話が黒ウォ本人の掘り下げとホーリーストーンの登場、
 33話がホーリーストーン破壊による弊害の京都にからめながらな説明。でもって34〜36話が最後のジョグレス三部作、
 そして37話のチンロンモン登場で締めですから。あらためて理解しました。

 しかし、この頃になるとお話の展開に不満を口にされる向きが増えてきた記憶があります。
 理由としては以下が挙げられます。
 
 
 1.ブラックウォーグレイモンらに敵としての「怖さ」を感じない

 2. お話に多様性が無く、そもそも負け戦続き
 
 3. ホーリーストーンの唐突さと、破壊されることによる弊害がいまひとつピンと来ない

 4.子供たちにも必死さが足りないように見える
 
 
 1番についてですが、よく考えてみたらこの段階になっても敵が何をしたくて破壊活動をしているのか、よくわからないんです。
 というか黒ウォに至ってはさっぱりわからなかったと言われても反論しづらいんですね。私が書いているのは想像と補完ですもの。
 しかも彼らは悪辣なばかりじゃなく妙に愛嬌があったり妙に真面目だったりするので、憎まれ役もこなせてない。
 言ってしまえば立ち位置が半端なのです。そういう意味でも、デジモンカイザーのほうが遥かにわかりやすかった。

 なもんですから、彼らを相手に引っ張りまくる黒ウォ篇はスッキリしない流れがワンパターンとして固定しており、
 これが見ている側の欲求不満をつのらせる原因になったのだと思います。
 2番に相当する問題ですね。

 3番目ですが、話がぶっ飛びすぎていて言葉だけじゃいまいち実感が湧かないんだと思います。
 01やセイバーズ終盤みたいにビジュアルでドーンと見せられるとうわぁこりゃ大変だって一発で理解できるのでしょうが、
 黒ウォや猿や武者がもやーんと出てきただけではもう一歩アピールが足りなかったのかもしれません。
 つまり抽象的にすぎ、なんで止めようとしているのかという危機感があんまり伝わってこなかったのです。

 それもあってでしょうか、何か妙にマイペースな子供たちにも違和感を持ったという意見も多数目にしました。これが4番目。
 視聴者と同じように良く分かってない=必死になれてない、というふうに見えてしまうのかもしれません。
 となると、このさい石を全部ぶっ壊させても面白かったかもしれませんね。え、01の繰り返しになるだけですって?

 なんにせよ、この回以降しばらくはタケルと伊織と黒ウォがらみが中心となります。
 久々にホーリーエンジェモンが登場した回でもあるんですが、暗黒系キラーの面目躍如とはいかず。
 敵の数が少なく、簡単に退場させられないがゆえの弊害といえましょうか。
 同じことがフロンティア第4クールにも当て嵌まります。

 ちなみに本格的なホーリーストーン防衛戦はこれがなにげに初めてで、全部入れても三回しか行われてなかったり。
 厳密にいうなら四回なんですけど、メインに据えられたわけじゃありません。意外に少ないですね。
 まあホーリーストーンはあくまで舞台装置ですから、やはり30話代は黒ウォ自身が牽引したというべきなのでしょう。
 
 
 
★各キャラ&みどころ

・大輔
 上ではああ書きましたが意外に目立ってます。五話と同じ現象。
 この頃になるとズッコケも板についてきたというか、流れを妨げなくなりました。
 多くがヒカリがらみなのは脚本担当である吉田玲子さんの意地でしょうか? 31話でもそういうシーンがありましたし……


・京
 見返してみれば、その大輔とゴッツンコする場面が記憶以上に多い彼女。
 ただし一度も深刻なパターンに発展したことがなかったので、拘りあうほどでもなかったということですかね。
 そこが彼女たちの強みでもあるし、だからこそ京と大輔はジョグレス相手じゃなかったのでしょう。

 一方で、ヒカリとの親密度上昇も地味にアピールしています。31話からの流れ。
 お互いピンチを乗り越えて、より強く近くなったわけですね。

 なお、京都みやげは生八ッ橋でした。ベタだ。
 
 
・ヒカリ
 前半に操っていたのは画像ソフトか何かでしょうか。
 重ね合わせると黒になるってことはCMY、つまり減法混色法を想像してモデルを作ったのでしょう。
 混ぜ合わせた色要素をマイナスに振って黒に近づいていくので、闇をあらわすには似付かわしいかもしれません。
 逆に加法混色だとやはり唯一無二の白色へ近づいていきますから、これが光に位置づけられます。文字通り、光の三原色ですし。
 そういえば、テイマーズの3人はこの光の三原色にあたるDアークを持ってましたね。

 この場合調和とは、白地にさまざまな色=未来を過剰な加算や減算に注意して描いていく状態を指すのでしょう。
 魂そのものにちからを持つかもしれないヒカリが闇に引かれるのは、本来光と闇が同じものの相乗結果であって、
 本質的には実のところとてもよく似ているからというのもあるのかもしれません。
 まあ、今回はそんなに目立ってないんですけど。
 
 
・伊織
 ほぼ主役。なまじジョグレス相手が特定されたからでしょうか、いろいろ考えるようになってきました。
 そりゃあ相手があのタケルでは、思うところあるでしょう。19話の伏線が浮上した今となってはなおさらです。
 じゃあ他の四人ならどうだったのだろうと考えると、なかなか難しいものがありますけど。
 ドラマとしては賢でも面白かったとは思いますが。
 
 とりあえず、いまは疑問を抱くまでの過程という段階。本格的に動きはじめるのは次回からです。
 そのため、お話としてはタケルのほうが目立つ恰好になっていますね。
 戦闘においてもアンキロモンは一瞬でKOされてしまい、あとはホーリーエンジェモンの独壇場でしたから。

 にしても、ホントにモノローグが多い子ですね。
 
 
・タケル
 19話以来ともいえる裏モード発現。あっちほど強烈ではありませんでしたけど。
 ひょっとしたら憎悪という点では、デジモンカイザーに対してがいちばん強かったのかもしれません。
 そこから脱却した「一乗寺賢」についてはそうでもないみたいですけど。

 悲しいほど大人な彼ですから、その賢に笑われるようなことはやらないんじゃないかなあと思ってます。
 具体的にいえば暴走とか。 怒れば怒るほど加速度的に冷静になっていき、またいつもの彼に戻っていくように見えます。
 なにより、自分が原因で誰かを困らせるようなことはいちばん嫌うタイプだと思うし……

 で、それゆえに他者の目からみれば二面性が強いようにうつるのでしょう。
 外キャラでガードして黒い腹芸を駆使するタイプに見えるのだと思います。その意見にはおおいに正しいところがありましょう。
 しかし、そこにこそタケルの苦しいところがあるのかもしれません。彼は暴走したくても、できないのです。
 少なくとも、仲間の前ではそんな自分をできるだけ見せたくないと思っている気がします。
 あるいは今回も、全員の前だから抑えをきかせてしまったのかもしれません。

 何の気兼ねもなく行動できるとなったらもしかすると、その時にかぎり暴走できる男なのではないでしょうか?
 独りのときにこそ最大の本領を発揮するにもかかわらず、誰かの間にいたいと願うがゆえにそれができない。そんな印象です。
 だとしたら、ヒカリとは別の意味で独りにしてはいけない少年……それがタケルではありますまいか。
 ほんとうの意味で暴走したときには、悲しいことが起こるのではないかと考えてしまいます。

 ジョグレス進化は誰かとともにありたいタケルの願いはそのままに、大きな力をくれる福音なのかもしれません。
 
 
・賢
 タケルの言葉がかなり身につまされてたようですが、そこ以外に特筆すべきところはありません。
 あれが契機になって、37話の言葉へつながっていくのでしょうか。
 
 
・デジモンたち
 黒ウォを前にして初の迎撃戦に臨みました。これまでに比べればだいぶ善戦したほうでしょうね。
 まだシャッコウモンがいないのでこれでも戦力的にじゅうぶんとはいえないのが泣きどころですが、
 それでも1on1であればアルケニモン&マミーモンには負けますまい。

 まあ今回は、半年以上ぶりに出張ってきたホーリーエンジェモンにつきるでしょうね。
 あのピエモンをも葬った秘義・ヘブンズゲートは黒ウォ相手にも通用するということが判明しています。
 ただしピエモンの時はウォーグレイモン&メタルガルルモンという超強力タッグによる打撃あってこそだったともいえるので、
 まだピンピンしている黒ウォに使っても今一歩だったようですね。
 それに恐らくはホーリーストーンの力を受けての進化なので、石が破壊されてしまえばそれまで。決定力不足でした。

 完全体以上への通常進化が困難な02世界においては、どうしてもジョグレス進化が必要ということなのでしょう。
 三体集まれば究極体とも戦えます。
 
 
・光子郎
 またまた登場。どうやって開発したのか知りませんが、ブラックウォーグレイモンの特性を逆用したレーダーを提供してくれました。
 完全体への進化がむずかしい彼らにアルケニモンたちの相手は荷が重いので、きっと歯がゆい思いをしているのでしょう。
 具体的な支援ができる光子郎はもしかしたら気が楽なほうかも。

 まあ、太一たちが光子郎を手厚くサポートすることによって早めにプログラムを完成できたのかもしれないのですが。
 いわゆる裏のドラマというやつですね。


・アルケニモン&マミーモン
 ブラックウォーグレイモンを追いかけ、ホーリーストーン破壊を見とどけると同時に子供たちの足止めを行っていました。
 黒ウォにくらべれば数段与しやすい相手ですが、無視できるほど弱いわけじゃないので防衛戦を行う側にとっては厄介でしょう。
 まして、トータル戦力としてみればまだまだ子供たちのほうが不利な状況です。

 スネークバンテージで頻繁に動きを封じてくるマミーモンは、特に嫌な手合いといえるでしょうね。
 アルケニモンも似たような技を使うので、黒ウォ=敵主戦力に集中できず、手数が減ってしまうことになります。
 今回はかなり効果的にはたらいていました。

 ただ、真正面からの一対一でとなるとジョグレス体に歯が立ちません。
 シャッコウモン登場後はもはやまともな足止めすらできないでしょう。封じ技もニギミタマを飛ばされたらお手上げです。
 そのためか、38話以後は戦闘場面そのものがなくなっていくことになります。戦闘員としての役目は第3クールまでですね。
 シャッコウモンもそうですが、インペリアルドラモン出されちゃったらもうどうしようもないわけですし。
 
 
・ブラックウォーグレイモン
 やはり、何故自分がホーリーストーンを破壊したいという欲求に駆られているのかいまいちわかってないようです。
 ただただ衝動のまま動いているみたいですね。その向こうに何かがあると期待しているんでしょう。
 チンロンモンを見たあとではなおさら。他にすべきこともまだ無いでしょうし。
 
 立ちはだかるものには相変わらず容赦なしですが、よく見るといちおう警告はしてるんですね。
 反撃へうつるまでに多少のタイムラグもありました。やはり邪悪とするには性格が真っ直ぐすぎます。
 まあ、強者の余裕ってやつもあるんでしょうが。
 
 最後はエリアル状態からのガイアフォースで決め。やはり不完全な完全体進化でどうにかなる相手ではありません。
 これほどの強敵あいてにインペリアルドラモンが出てこなかったのはたぶん、彼がジョグレス完全体の出番を引っ張る役目だから。
 ぶっちゃけ、第3クールで皇帝竜とぶつかる予定はなかったんでしょう。
 とはいえ、ウォーグレイモンとの2体がかりで痛み分けというとんでもない強さではあったのですが。
 たったあれだけで死んだのがいまだに信じられません。実はダメージが残ってたのかな?
 
 
・チンロンモン
 本編初登場。デジモンシリーズにおいてもこれが初登場です。
 ホーリーストーンが破壊されるたびごとにビジョンとして現れ、苦悶の体をさらしていました。
 よく考えてみたらだいぶどうかと思う登場ではあります。

 さて、彼は聖石がのこり一個となった段階で現れたわけですが、それなら何故もっと早い段階で出てこなかったのでしょう。 
 もしかしたら復活してすぐ、デジタルワールドを安定させるためにみずからを再封印してたんでしょうか?
 ホーリーストーンがそのための楔なら、破壊されるたびに存在が示唆されるのも納得できます。

 ほかの三体がいないのは、まだ復活のためのちからが足りていないか、ダークタワーによってひどく枯渇していたか。
 ダークマスターズによる破壊と再統合のダメージは、想像以上にデジタルワールドを疲弊させていたのかもしれません。
 新たな敵はそこにつけ込んだことになります。
 
 
・ホーリーストーン
 三つ目と四つ目が登場。
 前者は遺跡の一部と化したかのような直方体にちかい形で、いかなる力によってか中空に浮かんでいました。
 後者はクリスタル状。エンジェモンに力をあたえたのは、この四つ目のホーリーストーンです。
 ここから、ホーリストーンには選ばれし子供たちのデジモンの進化を促進するはたらきがあるものと思われます。

 というか、チンロンモンの力とほぼ同質ですね。
 この世界のチンロンモンは光と希望のちからを背負っていますから、もともとエンジェモン系とは相性がいいのでしょう。
 そんなチンロンモンだからこそ、デジタルワールドの礎となれたのかもしれません。
 あるいは彼がホーリーストーンを打ち込むために、紋章が必要だったとか…37話で語られてたような、なかったような。

 ただ、紋章の8つに対してホーリーポイントは7つですから数が合わないんですよね。
 あぶれたのはやっぱり光の紋章でしょうか。
 となると、光の紋章についてはチンロンモンとしての存在を維持するために使われたのかな。

 って、推測ばっかりですね。
 
 
 
★名(迷)セリフ

「ヒカリちゃんが報せるこたぁねえよ」(大輔)

 賢にメールを打っているヒカリに。なんか色々な意味に解釈できるセリフです。
 ヒカリの手をわずらわせたくないということなのか、賢に報せるのは自分の役目だと思っているのか、
 はたまた賢にちょっぴりヤキモチを焼いたりしてるのか…これは無いな。

 まあ少なくとも、31話をきっかけにヒカリと賢の間のわだかまりが払拭されたのは確かみたいです。
 32話でも賢にメールを送っていましたね。ある意味同類、同志みたいな気持ちなんでしょう。
 
 
「なあ……あの石を壊すと、俺たちが思っているより大変なことが起きるんじゃないのか?」(マミーモン)

 いや君が言い出したことだろってツッコミは置いといて。
 自分たちのたくらみが大それたことだと、彼らはずっと薄々気付いていたのかもしれません。
 アルケニモンが余計なことは考えずに動くので、彼としても従わざるを得ないのですが。
 
 
「いつもの穏やかなタケルさん……激しいタケルさん……どっちが本当のタケルさんなんだろう?」(伊織)

 同じようなセリフが二度繰り返されますが、これは前半のもの。
 後半はより具体的な表現になっています。

 でもタケルの場合は両方とも同じ、本当の彼なのではないでしょうか。
 人当たりがよく、少しいたずらな性格も本当のタケルなら、闇をにくみ糾弾する激しさもまた本当のタケル。
 なぜならたぶん二つの側面は、タケルにとって矛盾しないものだから。
 またはどこかが矛盾していても、折り合いをつけている。そういうイメージがありますね。
 
 
「じゃあね、ヒカリちゃん!」(京)

 前半、一度解散する場面にて。なにげないセリフですが、ここにも関係の変化があらわれていそうですね。
 
 
「残りもんには福があるだぎゃ!」(ウパモン)
 
 ジョグレス相手が確定したことを語る伊織に。彼らしい、良いセリフです。
 食べ物にからめてあるところがいい。
 
 
「いや、ブラックウォーグレイモンは倒さなくてはいけない。
 それが闇のちからを必要以上に増大させて、生まれた以上……!」(タケル)

 
 どんな存在であれ、世界をゆがめる力を持ち混沌へみちびく行動をとっているなら、それは討たなくてはいけない。
 この当時のタケルにとっては持論にもひとしい言葉かもしれません。
 たとえ手を汚すことになっても、大切なものを傷つけられるよりは良いという考えでしょうか。

 しかし同時に、タケルは友や仲間との間柄を壊したくないとも考えています。
 だから伊織たちが可能なかぎり殺生はひかえたいと希望するなら、それに協力するんでしょう。29話のように。
 それがきっと彼の暴走をおさえると同時に、別のちからを生むきっかけになるわけです。

 最大の弱点は翻れば、最大の強みにもなるのかもしれません。
 
 
「許さない……許せない!
 恐怖や憎悪……戦慄や暗黒……! そんな力で世界を変えようなんて…! 世界を…手に入れようなんて!
 許せない!!」(タケル)

 
 上から直接つながるセリフ。
 黒ウォというよりは、アルケニモンたちも含めたその後ろにある意志を指しているようにも取れます。
 おのれの我執のために多くを巻き添えにし、ささやかな希望さえ奪う悪意そのものが彼の心に定めた敵なのです。
 このへんはラストに現れていますね。

 そして黒ウォはその悪意の産物ですから、タケルにとっては討たねばならない相手なのでしょう。少なくとも今は。

 
「闇の…意識を感じる…… お前はこのデジタルワールドに、あってはならない!」(ホーリーエンジェモン)
「なんだと…! オレの存在をお前に否定されるおぼえはない!!」(ブラックウォーグレイモン)

 
 テイマーズ35話でも、デュークモンとベルゼブモンの間で似たやり取りがかわされていました。
 暗黒のちからを秘めたイレギュラーという点で、黒ウォとベルゼブモンにはいくつかの共通点があります。
 純正のデジモンでパートナーも手に入れられた後者のほうが、ずいぶん恵まれてますけど。扱いはどうあれ映画にも出られたし。

 それに性格もけっこう違っていて、ある意味どこまでも真っ直ぐでマジレスな黒ウォに対しベルゼブモンはヒネクレのヤンチャ。
 でもそれだけに、出会ったら案外凸凹コンビとして成立しそうです。その場合は黒ウォがボケ役か。
 
 
「…ぼくは、闇の力そのものが憎いんじゃない」(タケル)
 
 そしてこれが、ラストシーンでのセリフ。
 恐怖や憎悪、戦慄などといったものは闇から誘発されるものですから、闇を憎むのと同じに見えても仕方ないでしょう。
 しかし、暗黒にしろその力にしろ光とおなじように、そこにあるものです。消し去ることはできません。
 19話でも少し書きましたがタケルは闇へ傾倒し、その力に手を染める心の弱さ、愚かさ、醜さを嫌悪しているのかもしれません。
 ちょうどデジモンカイザーがそうであったように。だから今でも、賢のことは許していないのだろうと考えています。

 タケルは知っているんです。闇に心を許したらどんな結末が待っているのか。
 そしてきっと、今でも戦っているのでしょう。自分の中にある憎悪という闇への誘いと。
 未来においては、ひとつの結論を得たようですけれどね。
 
 
 
★次回予告
 今度は伊織のターン。かなり久々にヤマトの出番もあります。
 黒ウォの姿勢が「このポーズに絶対の自信を持っている」と言わんばかりでもうなんて言ったらいいか…すごい作画だ。