ニューヨーク香港大混戦!
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脚本:まさきひろ 演出:吉沢孝男 作画監督:伊藤智子 |
★あらすじ
迷い出たデジモンたちをもとの世界にもどすため、子供たちはインペリアルドラモンに乗って世界に散らばりました。
フランスには太一とタケル。オーストラリアに丈と伊織。ヒカリと光子郎は香港。京と空はロシア。
そしてアメリカに降り立った大輔と賢は二手に別れ、それぞれニューヨークとメキシコへ向かいます。
ニューヨークにはすでに、現地の子供たちによって多数の迷いデジモンたちが誘導されてきていました。
ところが、些細なことで興奮したジュレイモンが暴れだし、思わぬハプニングに見舞われます。
そこへ他の子供たちも到着し、なんとかジュレイモンの暴走を鎮圧。かくて迷いデジモンたちは残らず送還され、
ニューヨークの混乱は終息に向かうのでした。
ところ変わって香港。こちらにも順調にデジモンたちが誘導されてきていましたが、やはり問題が発生します。
インドから来たデジモンらの一団と中国の人民解放軍が国境でにらみ合っており、へたに動けない状況に陥っていたのです。
ここはヒカリの機転もあって、意志を伝えることに成功。なんとか事態を収めることになります。
新たな出逢いに大きく意気をあげる子供たち。
しかしそのころ、日本ではアルケニモンたちの暗躍が始まっていました……
★全体印象
40話です。タイトルコールは複数人。おそらく大輔、ミミ、光子郎、ヒカリ役の声優さんがたでしょう。
影絵はゲストの子供たちで構成。
ここから42話までの三部作は、俗に「世界篇」といわれています。
メインキャラの大半がばらけて登場する反面、とにかく大量のゲストキャラが出てくるので、把握にも一苦労。
しかしながら、現地の子供たちと合流して現実世界を駆け抜けるシチュエーション自体が痛快といいますか、楽しいんですね。
なかでもこの40話は一発目というのもあって、総合での出来が三回中トップ。本放送時はたいへん堪能しました。
上記したように、ほぼ一発キャラというわりには個性ある顔ぶれが少なくないのも世界篇の特徴です。
ルー、ポイ三兄弟、月紅、ミーナあたりは特に印象的。まあ皆よくも悪くもお国柄の記号を身にまとってますから、
それだけで目にとまるんですけど……それでも、ちょい役には惜しい連中ばかりでした。
なおこれも上記したことですが、登場する人物が非常に多いため声優さんの数がまったく足りず、
ゲストは全員メインの声優さんによる掛け持ち。被ってないのはパルモンとマイケルぐらいです。
それだけなら今までもよくあったケースなのですけど、ここまで大規模なのは珍しいでしょう。
もっとも、スタッフや役者さんたちはけっこう楽しんでたみたいですが。
作監は伊藤氏。さすがの安定ぶりですがバトル動作はちょっと乱れがち。
でも演出が良さげなので、あんまり気になりません。
★挿入歌
「Now is the time!!」が流れました。たしか「アシタハアタシノカゼガフク」のカップリングです。
ニューヨークの子供たちと大輔、ミミたちが力を合わせるシーンに使われ、場面をより盛り上げていました。
ところで曲名を直訳すると「今がその時だ」といきなり渋くなります。勇気はあるか、希望はあるか。
★各キャラ&みどころ
・大輔
考えてみたら、この回は他の02メンバーが周りにいないんですね。賢が最初ちょっと一緒にいただけです。
こんなシチュエーションは他にCDドラマぐらいしかありません。アニメ本編としてはかなりイレギュラーな状況ですね。
そういえばサムたちや映画のウォレスとも普通にコミニュケーションを取っていたことから、英語圏内の帰国子女なのでは?
という意見も聞くのですが、明確な証拠はありません。言葉の壁について半端にリアルな表現がされていたことから、
かえってそういうふうに見えたのではないかと思われます。もしそうだとしても、話の都合で省かれたと見ますね。
ただ未来において大輔がアメリカに渡り、一定以上の成功を収めていることから、あの超大国が彼にとって
一定のシンパシーを感じる世界だったことは確かだと思われます。サムやルーたちにもえらく受けがよかったし。
まあ、ラーメン屋の設定自体が最終話になっていきなり出てきたものなので、意見が分かれるところでしょうけど……
・ミミ
他の先輩組に少し遅れての再登場。
冬服が大変可愛らしく纏まっていますね。02での服装では映画のそれと並んで一番好きなもののひとつかも。
大輔とはなかなかの名コンビぶりを発揮しています。CDドラマでもそんな感じでしたね。
まあぶっちゃけて言えばこの二人の場合、特にどっちかが突っ張ることも意地になることもなく、
即座に適当な距離をみつけて連携を取れるという良い意味での他人な間柄だからなのかもしれません。
姉弟みたいという意見も見たことがありますが、姉弟ならもうちょっと遠慮無いんじゃないでしょうか。
まあ、CDドラマでは適度にツッコミ入れあったりしてましたから充分気は合ってるし……やはり接点の少なさが問題かな。
大輔がアメリカに渡った後ならたぶん、よき理解者にして協力者になったことでしょうが。
・マイケル
こちらは14話以来の登場。出る回出る回ことごとく作画に恵まれているというラッキーガイです。
なんせ前回は竹田作画でしたもんね。
目立ち具合はミミの次ぐらいですが、この回でハリウッドスターの息子だということが明らかになっています。
大輔が連想したのはお父さんの代表作か、または最新作か。とりあえず、西部劇のイメージがある人なのは間違いありません。
自分で操縦してたのであれは自家用ジェットでしょう。ヘリの方は別途チャーターかもしれませんが。
まあ、このへんはあちらの稼ぎと国土の馬鹿でかさを表す典型的パターンですね。
マイケルもまた、アメリカに渡った後の大輔にとっては強い味方になったことでしょう。特に経済面で。
考えてみたら初登場時、五人分の代金をポンと現金で払ってのけてたのもひとつの伏線だったんですねえ。
・ヒカリ
エンジェウーモンに意味もなくお姫さま抱っこされての登場がいろいろと素敵すぎます。
駄目押しの笑顔であっさりポイ三兄弟を魅了していました。とりあえず、どんな説得よりインパクトがあったようです。
あとは国境で事態の打開策を思いついたり、めずらしく頭脳労働をしていましたが光子郎の立場がない。
・光子郎
英会話の不得手が発覚してしまいました。
逆に読み書きなら相当こなせることが容易に想像できるあたり、彼らしいなとは思いますけど、
まさかその後ヒカリにお株を奪われるとは思ってませんでした。
・アメリカの選ばれし子供たち
サム、マリア、スティーブ、ルー、テータムの五人がいます。さすがに大勢ですね。
荒木香恵さんと櫻井孝宏さん、徳光由禾さん、天神有海さんが掛け持ちで演じてますが、明確なセリフが無い子もいました。
パートナーはサムがフレアリザモン、マリアがケンタルモン、スティーブがユキダルモン、ルーがトータモン、
そしてテータムがエアドラモンです。テータムは合流が最後でしたが、登場そのものは最初でした。
みな大輔とたちまち意気投合し、ストレートに好意を表現しています。アメリカらしいと言うべきでしょうか。
米国らしいと言えば人種もアフロアフリカン系、ヒスパニック系、ユダヤ系、ネイティブアメリカン系、アイルランド系と
きっちり分かれているようですね 。まさに坩堝状態ですが、デジモンをパートナーに持つという共通言語で結ばれている形。
ただ彼らゲストは一部を除いて厳密には選ばれし子供じゃなく、パートナーを得た子供たちです。
デジヴァイスも旧型のままなので、大輔たちのように特別な使命を背負っているわけではないのでしょう。
しかし相方との絆は本物ですから、力を合わせれば大きなことを成し遂げられるというわけですね。
なお、彼らは9.11事件のときも救助活動に参加していたそうですが、この話題は微妙なので多くを語らずにおきます。
・ポイ三兄弟
上から風間勇刀さん、木内レイコさん、野田順子さんの掛け持ちです。兄弟そろって見るからにお調子者。
あやしげな呪術を使うじい様がおり、ゲストとしては珍しく保護者筋が確認できます。ご両親は出稼ぎにでも行ってるのかな。
三人ともシャコモンをパートナーに持ち、簡素ながら進化シーンも披露していました。成熟期では全員オクタモンになります。
パートナーたちの声もメインどころの掛け持ちみたいですね。
・月紅(ユエホン)
中国出身。ハヌモンをパートナーに持つ女の子です。
つり目に中華っぽい衣装と、ベタながら印象に残る外見ですね。セリフらしいセリフがまったく無いのは残念。
声は竹内順子さんだそうですが……まさか語尾にアルなんてつけないでしょうね?
・ミーナ
インドから迷いデジモンたちを誘導してきた女の子。印度式民族衣装と挨拶で完全武装しています。
名前はインド映画界のスターから頂戴したものでしょうか?
落ち着きのある喋りですが、前田愛さんの掛け持ちだということはすぐわかりました。
相方はメラモン。
・ディエン
ベトナムから来た選ばれし子供です。パートナーはゴリモン。
ほとんどしゃべらない上にたいへん地味な外見なので、うっかり存在を忘れそうになりますね。
・パートナーデジモンたち
山ほど出てきますが、妙にクールなボケをかますエクスブイモンがなんといっても素敵。
リリモンも久しぶりに飛び回ってるんですが、思いのほか活躍はできてません。
悪意のない相手には花の首飾りが意味をなさないということがハッキリ示されたぐらいでしょうか。
まあシチュエーション的に、現地の子供たちとの連携が見せ場ですからしょうがないですけど。
ゲスト達は01での味方と同じ種も混ざった顔ぶれなんですが、同一モンかどうかはいっさい不明となっています。
特に挙げるとしたら、フレアリザモンでしょうか。実はこれがアニメ初登場だったりするんですよね。
それでパートナーデジモン待遇ですから、かなりラッキーな立場といえましょう。声も櫻井さんが男前気味に演じてますし。
メラモンも落ち着いた佇まいで、ミーナとの間柄が想像できます。
そういえばエンジェウーモンとアトラーカブテリモンも久方ぶりに登場してるんですが、なんと何もしてません。
やったことといえばヒカリをお姫さま抱っこしたことぐらいです。
なんのために完全体になったんだ(^^;)
とはいえエンジェウーモン本人はアクション起こしたくて起こしたくてウズウズしてたみたいですが。
逆にアトラーカブテリモンはべつに不満がなさそうなので、微妙に性格が出てます。
それにしても、シードラモンまで飛んだのにはかなりびっくりしました。
すいちゅう型デジモンって実はなにげに空水両用なんでしょうか? メタルシードラモンも空を飛んでた気がするし……
サブマリモンも……
・ミミの両親
ミミが渋滞を逆走して大輔たちと合流しに行ったので、あわてて追いかけてきました。
冷静に考えたらだいぶ無茶なことをしています。検問突破なんて、アメリカだったらいきなり発砲されそうですよ。
手薄だったのと、警官たちが出遅れたのとで運良く切り抜けたみたいですけど。
本来だったらミミを怒ってもよい立場なんですが、
なにしろお台場の事件を経験している立場。
たぶんリリモンを見た瞬間に事情を察知したことでしょう。
・ベンジャミン&ジャッキー
ゲンナイの仲間。判で押したようにおんなじ顔をしています。正確には分身のような存在らしいですね。
それぞれがちょっとずつ違う並行存在だったりするんでしょうか?
いずれにしてもゲンナイさんの消え方からみて、現実世界への属し方はかなり曖昧なものというか、
仮のものっぽく思われますね。全員が半分ずつこっちへ来ている感じなのかもしれません。
考えてみれば、彼らもそうとう謎が多い存在なんですよね。
・迷いデジモンのみなさん
トノサマゲコモン(15話登場の個体と同一かは不明)をはじめ、実に数多くのデジモンが確認できます。
完全体もけっこうな数がおり、よく見ればパロットモンなんかもいます。純正のオオクワモンもいますね。
どれも自然発生の個体なので注意深く接すれば説得可能みたいですが、ちょっとしたことで暴れ出したりも。
代表例が、ロックフェラーセンターのクリスマスツリーを敵と勘違いして暴走したジュレイモンです。
怪獣的演出のせいもあり、なんだか知恵が足りないように見えなくもありませんがこれは仕方ないかもしれません。
いきなりまったく勝手の分からない世界に放り出されれば、正常な判断ができなくなっても当然です。
選ばれし子供たちとしては、とにかく殴り倒して引きずってでも元の環境に戻してやらねばならんということでしょう。
それにしてもあのジュレイモン、かなり容赦なくボコられてましたが大丈夫だったでしょうか(^^;)
・吉沢孝
夕焼けの公園でひとりシーソーに乗り、寂しそうにしていた少年。7歳だそうです。
なかなか愛らしい顔立ちなので、将来はかなりカッコよくなりそうですね。
もっとも本人は現状 、将来どころじゃないみたいですが……
名前は今回の演出担当、吉沢孝男さんからの捩りと思われます。
これは同じ立場の子供たち幾人かにも適用できる法則。
ひょっとしたらDVDBOXの解説に書いてあったりするのかもしれません。
・マミーモン
ラストシーンで登場。人間体のまま、吉沢孝少年のとなりでキーコキーコやってました。りっぱな未成年略取罪です。
言葉を発さないとかなり怖いなあ……おしゃべりで良かったですよ。
・その他
・宇宙飛行士たち
冒頭に登場。スペースシャトルで衛星軌道を回っている最中、インペリアルドラモンを目撃する役まわりです。
ただ皇帝龍の速度は計算が正しければ第三宇宙速度すら突破しているので、見たとしてもごく短い間でしょう。
声はそれぞれ風間氏と徳光氏の掛け持ち。
・アメリカ軍司令
ナイアガラの滝に居座るトノサマゲコモンを監視していました。メラモンと同じく木村雅史さんが演じています。
へたな攻撃は指示していなかったようなので、そのへんの怪獣映画に出てくる軍人さんよりだいぶ有能ですね。
同じことが人民解放軍の指令にもいえますが。
・人民解放軍司令官
インドから来たミーナたちと睨みあっていました。声があからさまに平田氏。
あらすじで書いたとおりデジモンたちに戦闘の意志がなく、それどころか意志疎通可能だということを知り、
ほぼ独断に近いレベルで通行を許可していました。
初見時、もしかしたらデジモンのことを知っていたのかと思いましたがどうやら違うっぽいですね。
単純に、知的生物の存在を知って感銘したからみたいです。
★名(迷)セリフ
「あれ? オレ、なんで成長期?」(ブイモン)
チンロンモンの光を浴びたからだというのが火を見るより明らかな答えなんですが、
逆にワームモンがなんで現実世界でも成長期でいられることがあるのか聞きたいところです。光を浴びる前からそうでした。
賢のデジヴァイスがアーキタイプにあたるモデルだからでしょうかね?
ところでこのシーン、大輔たちがしっかり上着を脱いでいて芸コマです。
最初に降り立ったマイアミビーチは12月でも10度を下回らないようなので、そのままでは少し暑いんでしょう。
よく見ると、直前に出てきた野次馬たちもマフラーまでは着けていません。
「それは、私たちがもともと一つの存在だから……」(ベンジャミン)
一なる多者なのか、多なる一者なのか。
結局説明してくれたおぼえがないんですが、一体どういうことだったんでしょう。謎です。
小説版によれば、彼らがホメオスタシス(デジタルワールドの安定を望む者)に造られたことだけは確かみたいなんですけど。
チンロンモンの復活とともに若返ったのか、それともちょっと前からああだったのかも実はよくわかりませんし。
「悪性のウイルスに侵されたわけじゃないからよ!」(ミミ)
花の首飾りがジュレイモンに効かなかったのを受けて。いきなり悪手を打ってしまったかっこうです。
単純な鎮静効果とか、そういうものが期待できるというわけでもないんですね。
それにしても説明口調なセリフだ。
「これでいいの?」(エクスブイモン)
ジュレイモンの頭を冷やせと言われたのを受け、アイススケートリンクの上にはたき落とした時のセリフ。
口調込みでクールに決めてますが完全にピントがずれていてボケ倒しです。たまらん。
「メリークリスマス! ミスター太刀川! えへっ」(大輔)
ミミパパを相手に笑って誤魔化したときのセリフ。この後どうなったんだろう(^^;)
この笑顔にやられた女性ファンも少なくはないと聞きます。
なお、日本を出発してから5時間ほど経っての収束みたいです。
描写は短いですが、まあ確かにそのぐらい経っててもおかしくありませんね。
マイアミからニューヨークまでは、大型旅客機でも3時間かかるみたいですし。アメリカに来るまでが速すぎなのです。
「あ…あのデジモン、悪いデジモンちがう、だからノーモア攻撃……ザッツライト?」(光子郎)
思わぬ弱点が露見した瞬間。
問答無用で振ってくるヒカリと真下でテキトーなことを言ってるアトラーカブテリモンが面白すぎます。
もっと面白いのは、日本語喋ってるようにしか見えないのになぜか通じてるジャッキーさんのくだりですが。
しかもその後は光子郎たちもフツーに喋ってますし。いろいろ省かれてるのかしら。
「ヒカリたちでなく、デジモンの私が話しに行ってもいいのだが、中国語はわからない……」(エンジェウーモン)
それでいてこのセリフ。言葉のことを考えはじめるとキリがありませんというか話が進まねー。
この上旅券の問題とか言いはじめるともはや収拾がつかなくなりますが、それはまあ非常事態ということで……
「われわれは、一人ではなかったんだな……」(人民解放軍司令官)
なんと一発ゲストからのエントリー。それだけ印象深かったセリフです。
人類以外の知的生命体への敬意と取るか、身内(ひょっとしたら息子や娘)にパートナーがいたことの示唆と取るかで
ずいぶん解釈が違ってくる言葉かもしれません。たぶん前者でしょうけど。
いずれにせよインドと中国の関係は決して蜜月とは言えず、とりわけ国境問題は微妙みたいなので、
光子郎の判断もこの司令官の判断も穏当なものですね。というか、なればこそお互いに気を遣ったのだと思います。
「……おじさんも、一人?」(吉沢孝)
一言で、どういう立場と心境の子かなんとなくわかるようになっていますね。
場所的には渋谷近辺でしょうか?
★次回予告
デジアドとしては最後の浦沢脚本。かなり軽いノリの回だった覚えが……