最後のアーマー進化

 脚本:前川淳 演出:梅澤淳稔 作画監督:竹田欣弘
★あらすじ
 孤軍奮闘、ベリアルヴァンデモンに戦いを挑む大輔とエクスブイモン。
 無謀と思われた勝負でしたが、ふたりの想いが高まるとともにパワーが上昇していきます。
 予想外の事態に、ベリアルヴァンデモンは必殺のマインドイリュージョンを仕掛けてきました。幻覚に囚われるタケルたち。

 それは理想の世界。心穏やかになる世界。そして、いつかは叶えたい未来。でも、現実ではない。
 大輔の導きで、ひとりひとり幻を脱していきます。未来を掴むため、絶対にベリアルヴァンデモンを倒す!
 するとどうでしょう。進化体がつぎつぎと分裂していくではありませんか。連続攻撃が決まり、敵をじわじわと追い詰めていきます。

 自分の力が通用しない相手に、ベリアルヴァンデモンは驚愕していました。今を全力で生きている大輔は、悩みがなかったのです。
 そしてついに、驚異のダブルポジトロンレーザーが炸裂。勝利は確実と思われました。
 ところが、衝撃がデジタルワールドへの道を開き……ベリアルヴァンデモンが、力を取り戻してしまったのです!

 勝ち誇るベリアルヴァンデモンは闇の力を増幅させ、現実世界とデジタルワールドを融合させようとし始めました。
 このままでは、両方の世界が闇に染められてしまう……!
 
 
 
★全体印象
 49話です。タイトルコールは複数人によるもの。おそらく、パートナーデジモン役のみなさんでしょう。
 背景には最初何も映っておらず、それを打ち破るようにして新たな背景とアーマー体たちの影絵が現れる形になっています。
 マインドイリュージョン打破のイメージでしょうか。
 
 残るは2回。これを打ち終えれば、残るは最終話のみということに。気合も入るというものです。
 
 といっても、この回にそれほど細かいポイントはありません。
 各メンバーについては書くことがありますが後半はバンク地獄だし(よく見ると描き起こしも結構あるんですが)、
 しかるに半分近くが戦闘シーンで占められている内容なので。

 まあ最終話がああいう締めなので、その前に最後のサービスということなのかもしれません。
 ジョグレス進化が出て以降、出番といえるほどのものがほとんどなくなった姿もけっこうありましたからね。
 何より、アーマー進化こそが02の顔でもあったわけですし。

 割を食ったのはベリアルヴァンデモン。
 いくら増幅されているからといっても、格下の攻撃にボッコボコにされている姿はとてもラスボスとは思えません。
 その後の逆転もラッキーみたいなものですし、前回で見せた恐ろしさが相殺されてゼロ、むしろマイナスです。
 これは彼の評価をおおいに下げる現実でしょう。もちろん、地形効果のおかげなのは確かなんですけれど。

 で、このお話は最後の竹田作画でもあります。
 そのせいでしょうか、ヒカリはもとより京さんも賢も伊織もさらに美人になっていて堪能したり引いたりできる仕上がり。
 逆に大輔やタケルは男前度がアップしてカッコ良くなってるんですが……

 ただ竹田氏はモンスターも上手いので、トータルでの満足度も高かったりするんですよね。
 なんだかんだでこの方が描くときは、安心して視聴できたものです。
 
 
 
★OP
 バギーで疾走する在りし日のアルケニモン&マミーモンがちょっと涙を誘います。
 彼女たちはもう、いない。
 
 
 
★各キャラ&みどころ

・大輔
 主人公の面目躍如、ラスボスキラーの発動です。
 ベリアルヴァンデモンにとってはほとんど罠カードにも等しい存在でしょう。わかるかこんなの。

 思いだしてみれば、選ばれし子供たちにはそれぞれ一つ以上の弱点がありました。
 いくつかには本来なら子供が負うべきではないものもあり、01ではそこを突かれてダメになりかけたこともありましたね。
 そんな中にあってつねに今を全力で生き、未来へ突き進んでいる大輔は逆に異質ともいえる存在なのでしょう。
 単になんにも考えてないだけだなんて言わないであげてください。

 ただ、彼だって人間ですから別にまったく悩まないというわけじゃないのだと思います。
 むしろ、そこからの立ち直りが早いのでしょう。悩むより先に行動して失敗して落ち込んでまた立ち直って、
 そうして自分の中にある葛藤を消化しながら進んでいるのです。それこそ、後悔が次の行動に上書きされるぐらい。
 だから悩みといってもきわめて短期的なもので、次の日には自分のものにしてしまう子なのでしょう。
 ある意味、精神にテンセグレートシールドを張っているのかもしれません。

 考えてみてください。五人いるデジモンアニメの主役の中で、パートナーを暴走させていないのは彼だけです。
 あのタカトや大でさえもこの宿命から逃げられなかったことを思うと、驚異的なことではないでしょうか。
 むろん、思いっきり暴走させてる太一と同じことをさせるわけにはいかなかったという事情もあるでしょうが、
 逆に言うならだからこそ、彼はこういう人物になったんじゃないでしょうか。

 しかしながら、この造形には疑問も残ります。
 他でもない、初期において取り沙汰された姉との確執です。この時点では確かに、彼にも克服すべき課題がありました。
 有耶無耶になった理由はわかりませんが、物語のウェイトが賢に傾くにつれてやる余裕がなくなってきたのか、
 もしくはやってもたいしたドラマにならないと判断されて、無かったことになったのかもしれません。

 彼を語る上ではそこを引き算して考えないといけなくなるので、本来の完成度は他の子より15点ほどのマイナスになります。
 残りが私のツボに嵌まったので、こうして長文を割いているのですが。

 まあ姉の件に関しては「ヒカリちゃんに言われたのでやめた」という恐ろしい仮説が成り立つ人物でもあるんですけどね。
 本人のいないところでジュンを悪しざまに言ったのは、たしか4話だけだったと思いますし。
 
 
・京
 マインドイリュージョンに引っかかった五人のなかでは、比較的症状が軽いと思われる人物。
 15話などでも描かれたとおり、家での彼女は案外と肩身の狭い存在です。もちろん、悪し様にされてるわけじゃありません。
 ただやっぱり末っ子ということで、我慢することも多いんじゃないでしょうか。
 他愛のない理由のようですが本人がああいう性格ですから、 小さいようでも知らず積み重なっているんだと思います。

 気の置けない仲間と繰り広げるデジタルワールドの冒険は、そんな彼女にとって伸び伸びできる場面だったことでしょう。
 なにしろ02メンバーでは彼女こそが最年長ですから、ある程度のワガママだって言えちゃいます。
 戦いが深刻になりかけたとき拒否反応を示したのも、そう考えれば納得。ある意味、遊び場を壊されるような気分だったのですね。
 なんて考えると、案外賢とも似たもの同士だったのかな? なんて勝手な想像も沸いて出てきちゃうんですが。
 
 でも、もちろん彼女は知っています。独りになりたいわけじゃないのだということを。
 そう思っていても、本気じゃないのだと。いずれは、輪の中に戻りたくなるのだということを。
 
 そう、視聴者である私たちも知っているではありませんか。仲間と一緒に笑っているときの京こそが、いちばん輝いていることを。
 
 
・伊織
 彼が見たまぼろしは、父・火田浩樹のものでした。
 常日ごろから父を引き合いに出し、尊敬している彼からすれば至極当然な流れですがそれだけではなく、
 及川と父の関係が記憶に新しくて引きずられやすかったというのもあると思います。

 でも、あれは本当にただの幻だったのでしょうか?
 自分はもういない。誇りと願いを受け継ぎ、叶えられなかった夢を叶え、未来へ歩んでいってほしい。
 そんな浩樹パパの親心が幻という形を借りて、伊織の前につかのま現れたような気がしてなりません。

 父親にとって息子というのは、きっと心残りであると同時に未来への希望でもあるのでしょう。
 もし存命だったなら、伊織にとって祖父以上の理解者となったことは間違いありますまい。
 押しつける気はなくても、自分の子供が自分と同じものを見、同じものを感じてくれるのはきっと嬉しいことですから。

 少なくとも、伊織としてはあれを幻であって幻でない、ほんとうの父の仮初だと受け止めたのではないでしょうか。
 
 
・タケル
 いつも穏やかにしている彼ですが、それはきっと争いを忌避し、敵を作らないための壁。
 大輔はもしかしたら、彼の態度がある意味でのポーズだと無意識で見抜いていたのかもしれません。

 そんなガードを纏うようになった背景には言うまでもなく、両親の離縁というトラウマがあります。
 本人のセリフから見て、必ずしも穏便な別れではなかったでしょう。それでなくても、離ればなれになるのは不安です。
 もう誰とも別れたくない。早く大人になって、迷惑をかけないようになって、足を引っ張らないようになって……
 気づかぬうち、本来備えもつであろうヤマトにも劣らぬ野性的側面を、覆い隠すようになっていったのだと思います。
 あるいは感情を隠すことこそ、争いを避けるいちばんの方法だと学んだのかもしれません。

 それでも彼は兄が、両親が大好きなのです。
 いつかは何もかも元通りになる。なると信じたい。そんな希望を、ずっと胸に抱いて生きているのです。
 そしてそれゆえに、ベリアルヴァンデモンの術中にはまってしまったのでしょう。
 
 
・ヒカリ
 彼女が見たものは、未来の光景でした。
 誰もがデジモンを連れて歩き、共に笑い、共に過ごし、共に生きる世界。
 現れた幻がソレということは、彼女の人格形成にデジモンが大きくかかわっている証左かもしれませんね。

 思えば、彼女はずっと願っていました。
 デジモンと人間がともに生きられる未来を願っていました。
 当然かもしれません。幼いとき友と認識したものを皆に紹介したいと考えるのは、ある意味あたりまえの気持ちです。
 あれこれ言われがちな最終話も、ヒカリにとっては夢が叶った大切な未来であり、世界なのですね。
 もし未来の自分に会えたら、らしくもなく飛び上がって喜ぶことでしょう。

 そしてこの光景がある意味皮肉にも、彼女の気魄に火をつけることになります。
 彼女だけではありません。マインドイリュージョンを食らった全員が、ベリアルヴァンデモンへの恐怖を乗り越えることになるのです。

 にしても、竹田作画における彼女への拘りは尋常じゃありませんね。
 なんというか、出てるシーンのひとつひとつが絵になってます。今回に限っては賢のほうがすごいけど。
 
 
・賢
 トリを飾ったのが彼。
 現れたものはやはりというべきか、罰せられるデジモンカイザーの姿でした。
 これはもちろん、彼の心の奥に秘められた恐怖が形になったものといえるでしょう。

 しかし、その後に現れた治兄さんの言葉からすると、あれこそが賢がかかえる最後の過去へのわだかまりであり、
 その中に澱む理想だったような気もしてくるんですよね、これが。

 そう、彼はずっとどこかで「罰せられて死にたい」「自分が一番悪いのだと罵倒されて死にたい」という、
 自殺願望にも似た罪悪感を抱えつづけていました。それだけのことをしてきたのだから、文句は言えない。
 むしろ、そうしてもらったほうがどんなに楽か…… なんて考えたことも、一度や二度ではないでしょう。

 けれども後悔があり、罪をつぐなうつもりがあるのなら、 それではやっぱりダメなのですね。
 死ねば彼自身は満足かもしれませんが、そこで終わりです。もう何もできません。
 いえ、むしろ贖罪を越えてやらなければならないことが山ほどあるのです。投げ出すのは無責任というものでしょう。
 彼はこれからも十字架を背負い続け、それさえも力に変えて生きつづけていかなければなりません。
 なぜって、もう君は一人じゃないのですから。

 きっと彼が刑事になったのは、 自分のような思いをするものを一人でも減らすためなのでしょうね。
 たぶん、事件を未然に防ぐことにこそ拘るタイプのデカになったんじゃないでしょうか。

 なお、私は死刑廃止論者ではありません。
 ケースによっておおいに考慮すべきだとは思っていますが。
 
 
・デジモンたち
 成塾期以上のすべての進化体が総登場しました(ただし、マグナモンは除きます)。
 意志現世界のちからを使うことで、最大三体に分裂するという他に例のない現象を発現させています。
 いったいデジモンたちの意識はどーなってるんでしょうね?
 見たところジョグレス体が残っているので、通常進化体が本体のようなのですが。

 どの攻撃も軒並みパワーアップしていて、格上相手でもおかまいなしにダメージを与えています。
 まるっきりザ・パワー状態ですな。全員が気力300ぐらいいってそう。
 ベリアルヴァンデモンにとっては新たな肉体を形成してくれた世界ですが、こんな落とし穴があったというわけですね。
 ところで、よく見るとホーリーエンジェモンだけ何もしてません。働けよ。

 そしてファイターフォームがいつのまにかファイターモードになってました。あれ、45話じゃどうだったっけ……
 
 
・ベリアルヴァンデモン
 というわけで、完膚無きまでにボコボコにされてます。おい! 魔王! 魔王!
 強がってますけど、どう見ても6割ぐらいライフゲージ削られてませんか。死因の半分ぐらいクリアしてそうですよ。

 まあ、こんなひどい目に遭った原因はほとんど大輔ひとりにあるんですけれど。
 意気揚々と狼煙を上げたとたんに足払い食らって崖から転げ落ちそうになった気分でしょう。ふう、死ぬかと思ったぜ。
 ですがやっぱりあらためて見ても、ラスボスとしちゃ少々情けないと思います。

 最後のどんでん返しでいきなり調子づいてるのがまたみっともないんですよね。小物っぽくて。
 あんたは激震のミザルか。さすがにあっちと比べちゃ気の毒ですが。
 
 
 
★名(迷)セリフ

「ホークモンは、いつもあたしのことわかってくれてるのね。今度は、あたしがホークモンのこと知りたいな。
 教えてくれる?」(京)
「ちょっと照れますね……」(ホークモン)


 彼女にかぎらず、子供たちを引っ張り戻したきっかけのひとつがパートナーだということは憶えておいていいポイントです。
 これはそんな中でも、心に残ったセリフのひとつ。やっぱりいいなぁ、この二人。
 
 
「さようなら……お父さん……」(伊織)

 この時、伊織は自分が幻を見ているのだと気がついたのでしょう。
 でもたとえ幻でも、在りし日の父に会えたことはきっと嬉しかったに違いありません。それを糧に、彼は進むのです。
 
 
「いっしょに戦いましょう、一乗寺さん!」(伊織)

 賢の加入にいちばん抵抗を示していた彼がこーゆーことを言うというのは、やはり感慨深いものがありますね。
 実質は38話ぐらいで認めてもらってますが、ここまでハッキリ言ってもらえたのは初めてなんじゃないでしょうか。
 なおタケルも直後に、賢のことを仲間だとハッキリ言ってくれています。
 
 
「ぼくは、闇のちからには決して負けない!」(タケル)
「負けない……負けない……負けない……!!」(京)
「人の心をもてあそぶなんて……絶対、許せませんっ!」(伊織)
「未来のために……わたしたちは絶対負けない!」(ヒカリ)


 分身進化をするときのセリフです。別の言い方をすれば気合を入れてる状態。
 それぞれの性格がなかなか良く出ていますね。特に指向性パニックを意図的に引き起こそうとしている京さんが。
 
 
「最後まであきらめない、絶対に負けないって信じる大輔くんのまっすぐな心がなかったら……!」(ヒカリ)
「そんな大輔の熱い心がなかったら……きっと、これだけの力は生まれなかったわ!」(京)


 何かもう今回の大輔は株がストップ高どころか、青天井の真霸猛撃烈破という感じがいたしますな。
 
 
「本宮大輔と言ったな……!」(ベリアルヴァンデモン)
「ああ。それがどうした」(本宮大輔)
「なぜお前は俺の術にまどわされなかったのだ? 今の自分に不満や悩みを持っていないというのか……?」(ベリアルヴァンデモン)
ああ、持ってないね。オレは、今がいちばん幸せなんだ!
 家族がいて、仲間がいて……デジモンたちがいる! 何の不満も悩みもない!」
(大輔)
「この世の中に不満や悩みを持たない子供がいるというのか!?」(ベリアルヴァンデモン)
「わるかったな。……でも、不満や悩みを持つことは別に悪いことじゃない。今より良くなりたいって思うのは、きっと大切なことなんだ。
 それを、闇のちからで汚そうとするなんて……! 今のオレに望むものがあるとしたら、たったひとつ!
 ベリアルヴァンデモン! おまえを倒すことだっ!!」(大輔)


 人の心を利用するベリアルヴァンデモンにとっては、まさに天敵中の天敵ですね。
 そんな男がよりによって復活の門出に居合わせるなんて、ツイてなかったのはベリアルヴァンデモンの方だったのかもしれません。
 最終話でも結局大輔にひっくり返されますし。

 大輔の強さはきっと「自分が恵まれていると知っている」ところにあるのでしょう。
 だから少々のことではめげないし、明日は違うさと悩みを昇華できる。恵まれているぶん、人にも優しくできる。

 物語というものは、主人公が「自分は恵まれていた」と知るまでのお話であることも少なくありません。
 はじめからそれを知っていた彼に語るべきことが少なかったのも、ある意味で当然だったんじゃないかと思えてきました。
 克服すべきものを、実は持ってなかったってことになるんですから。
 
 
「ふははは……惜しかったな、坊やたち。もうちょっとでトドメを刺せたのにな……!」(ベリアルヴァンデモン)

 つまりあなたさっきまで死にそうだったってことですね?  この態度の変わりっぷり、たまりません。
 「あぶないところだった、素直にお前の強さを認めよう……」とでも言っていれば、まだよかったものを。

 
「三年前にも同じことを言ってたわ……! 前とちっとも変わってない!」(ヒカリ)

 デジタルワールドと現実世界を闇で統一し、その王となろうとするベリアルヴァンデモンの野望を目の当たりにして。
 
  いや、ちょっと若返ってますよ。
 そのぶん貫録が消えて、かなりアホっぽくなってますが……あれ、つまり退行してるってこと?
 ……われながら酷い言いようです。少しだけベリアルヴァンデモンが可哀相になってきました。
 
 

★次回予告
 そして今、すべてのゲートが開く。