ぼくらのデジタルワールド

 脚本:吉村元希 演出:角銅博之 作画監督:信実節子
★あらすじ
 ベリアルヴァンデモンによって、世界がみるみる闇に染められていく……
 あと一歩というところで絶望的状況に突き落とされながらも、大輔たちは必死に抵抗を続けていました。
 世界じゅうの選ばれし子供たちもデジモンとの絆を糸口に、決戦の場へ馳せ参じてきます。

 しかし、絶望から抜け出せない者たちがいました。暗黒の種を植えつけられた子供たちです。
 夢や希望をなくしかけていた彼らに、彼女たちに、大輔は語りかけます。自分たちは、選ばれし子供は特別なんかじゃない。
 何かを為し遂げられると信じていれば、デジモンたちはかならず応えてくれるのだと。そこにいてくれるのだと。

 果たして光が勢いを取り戻すとともに、新たなパートナーとデジヴァイスがつぎつぎ現れはじめたではありませんか。
 逆にベリアルヴァンデモンは力を失い、影だけの存在となり果てていきます。
 そこに炸裂したインペリアルドラモン最後の必殺技により、死の魔王は今度こそ完全に消滅したのでした。

 そして何と、瀕死の及川悠紀夫の前にもパートナーが現れます。
 自分の過ちを悟った彼はみずからの生命と意志を具現化する世界のちからを使い、荒廃したデジタルワールドを再生させました。
 彼は死しても光の蝶となり、きらめく風に乗って皆を見守り続けています。

 25年後。大輔たちはそれぞれの道を歩み、夢をかなえ、りっぱな大人に成長しました。
 いまや、人類全てがパートナーデジモンを連れています。
 そして冒険はいま、大輔たちの子供の世代へ受け継がれようとしていました。

 そう。夢を信じる心を忘れないかぎり、デジモンはいつでも君のそばにいるのです。
 新たな冒険のゲートを開くのは、君だ──
 
 
 
★全体印象
 最終話です。タイトルコール担当は複数。おそらく、この回に出た人全員によるものでしょう。
 で、影絵はラストシーンですね。この時点だとなんだかわかりませんが、最後でああ、と納得するという。

 これで、2年間続いたデジモンアドベンチャーもおしまいです。
 個人的にはずっと見て書いて心に留めてきたものが埋まった瞬間でもあるので、感慨深いものがありますね。
 うまい具合にこの最終話とリンクしてくれました。

 さすがに最後だけあって、これまでのゲストや端役にいたるまでがほぼ総登場しています。
 01組もふくめた子供たち全員の親御さんがたのみならず、シン兄さんや世界の選ばれし子供たちまで顔出し。
 さらには大人になった大輔たちやその子供たちまで出てくるのですから見る方も描くほうもたいへんですね。
 今さらながら、登場人物の多いシリーズだったんだなあ。

 それにしても、物議を醸したラストでしたね。
 ネットの片隅ではいまだにあれこれ言われてるようですし。それだけ、皆の心に残った作品でもあったのでしょうけど。
 私自身、あの終わり方にはたいへん驚いた口です。

 ただ当時の日記を見返してみると、事前に情報があったとはいえ意外に冷静な受け止めかたをしてたみたいですね、私。
 じっさいそこまで心を乱された覚えはなく、むしろ残されたいろんな謎の考察へ関心が向いていたようです。

 もちろん、前向きにとらえたいという心構えがあったことは否めません。
 提示されたものは何でも受け止めようという悟ってんのか狭窄なのかよくわからん心持ちだったのでしょう。
 02そのものに不満がなかったわけじゃないんですが、最終話についてはそれほどでもなかったと思ってます。
 あんまりいろいろ言われてるんで心理的バランスを取ったという説もありますけれど。

 なんにせよ、当時も今もめいっぱい楽しませてもらっています。
 これほど好きになれるシリーズには、今後出会えるかどうかすらわかりません。
 たぶん脳細胞がまともに働いているかぎり、ずっと忘れないでしょう。

 冒険をありがとう、選ばれし子供たち。
 


★各キャラ&みどころ

・大輔
 ラーメンのひと言で圧倒的劣勢をひっくり返した漢。
 最後の最後で、あまりにも意外すぎる夢が明らかとなりました。
 なにしろ賢でさえ知らなかったぐらいです。私たちにわかるはずもありません。

 思い返してみても、伏線といえるほどのものはないんですよね。
 無理につなげるなら、36話にラーメンのエピソードがあったというぐらいのもの。
 しかもそのお話は大輔ではなく伊織メインなので、ここから彼の発言を予想した人はまずいないでしょう。
 そのぐらい意外でした。お前、サッカー少年じゃなかったのかよと。

 うえに25年後ではそのラーメンで爆発的成功をおさめており、たぶんメイン格いちばんの金持ちに躍り出ているはずです。
 主人公としては異例の経緯かもしれません。お約束どおりの大を見たあとだとよけいそう思いますね。
 まあ見たところ背丈と年齢と髪形以外はぜんぜん変わってないので、彼は彼のまんまなんでしょう。間違いなく。
 
 なんとなく、有能な副官が勝手にくっついてきそうな人物だと思いました。
 
 
・京
 大輔みたいなオドロキの真相はないので、いままで語ってきた以上の事柄はありません。
 なんせもうラストですから、シメを語るしかないという。

 25年後では専業主婦。数少ない、当時のメンバーとくっついたことが明確になっている人物です。
 すでに三人目をもうけているところからみて、 賢との結婚はかなり早い段階だったとみるのが自然でしょう。
 上の子がもう当時の京とほぼ同年代っぽいので、20代なかばぐらいにはもうゴールインしていたものと思われます。

 今も昔も元気にパニクっているようですね。
 
 
・伊織
 たぶん、劇中の誰よりも及川を気にかけていた人物。
 思慕を寄せていた父の親友だったり、いろいろ思うところがあったはずです。
 彼や黒ウォさんの存在や行動が、弁護士をめざす直接にちかいきっかけになったということでしょう。

 そういえば、彼はあれほど尊敬していた父親とはちがう職業に就いたことになるのですね。
 でも決して父を軽んじるようになったというわけではなく、父と違う道を進んでみたくなった、などと
 ことさらに思ったわけでもないのでしょう。父への思慕も憧憬も変わらないまま、少しばかり横を通っているだけ。
 
 少なくとも、彼自身はきっとそういう気持ちだと思います。
 草葉の陰のお父さんも、きっと良くわかっていることでしょう。
 
 
・タケル
 実はナレーターでしたというオチ。君はジョルジュ早乙女か。

 大人になった姿で出てくるというラストは言うまでもなく、映画「スタンド・バイ・ミー」のオマージュ。
 なんでも続編が決まらなかったら01の時点でそうするはずだったそうで、じっさいに小説版ではそうなっていました。
 結果だけみれば、02につづいてて本当によかったなぁというのが正直な感想になりますね。

 しかしこうして見ると、40話代はほんとうに地味だった……
 デーモン相手に歯グキ剥き出して怒鳴ってたシーンぐらいしかありませんよ。
 いつのまにか、大輔と立場逆転してた感じです。うーん。
 
 
・ヒカリ
 身バレがないぶん、そのタケル以上に地味なのが彼女。

 保母志望という夢こそかなり唐突に明らかになってましたが、本人の雰囲気というか性格にはよく合っているため
 大輔の方ほどの衝撃はありません。これも地味とされる原因のひとつ。
 あっちのラーメン屋とくらべたら、彼女の保母姿のほうがずっと簡単に想像できちゃうんですよね。

 25年後ではやや年長っぽい男の子を連れてましたが、いったい誰との子なのかいろんな意味で気になります。
 想像ならしてますが、ここで書くのはやめておきましょう。
 
 
・賢
 前回が事実上、最大最後の見せ場。この最終話ではポイントを大輔にまかせ、一歩退いていました。
 伊織が目立ってたぶん、土壇場でけっこう埋没したなという印象。
 そんな中、ダゴモンの海についての見解も述べていますね。って、これで解決?

 で、25年後のアレですが……
 あの当時「仮面ライダークウガ」がなかば社会現象になっていたことを思えば、すぐにわかる絵面でしょう。
 未見だった私でさえ、ああつまりコレはアレなんだなと一発で見抜いたぐらいのものです。
 さすがに偶然でしょうけど、パートナーのほうの名前まで似ているし。
 今ちょうど機会あってクウガを一から視聴しているところなので、感受もまた一入。

 ただ何回か前に書いたとおり、彼が刑事をめざすようになった経緯もわからなくはないんですよね。
 罪を裁くよりも罪を犯させないため、未然に防ぐためにどうしたらいいのか考えた結果なのだと思うんですよ。
 やはり、コトが起こる前になんとかしようとするタイプの刑事なんじゃないでしょうか。

 上司に煙たがられそうなタイプだな……(^^;)
 30代後半にしていまだにヒラ刑事なのは、そーゆー理由なんですかね? 深読みしすぎ?
 
 
・先代組
 世界中のデジヴァイスの輝きに便乗するような形で、最終決戦の場に駆けつけました。
 セリフの端々で締めにかかっていますが、マイケルたちとくらべて特に何かしたというほどのこともなく。
 最終的に半引退でしたね。まあ、しかたないところです。

 さて、彼(女)らも当然のように25年後の世界で活躍しているわけですが……

 空、光子郎、ミミ、 丈はいいとして太一はだいぶ意外、斜め上に吹っ飛んでいったのはヤマトですね。宇宙飛行士だけに。
 バンドマンから何をどうしたら宇宙飛行士になるのか、スタッフの皆さんを小一時間問い詰めたいところです。
 「宇宙戦艦ヤマト」から取ったダジャレだなんてまさかそんな事はありませんよね?(^^;)
 なんでしょう……02のヤマトは最後の最後まで弄られ続けというか、不幸続きというか、ある意味愛されてるというか……

 で、この6人に関しては仲間うちでくっついたというハッキリした言及がありません。
 ヤマトと空は結婚してるという話を聞いてますし、それと納得できる描写(同一フレームに登場、ピヨモンのセリフなど)
 がありますけど、他は特になし。ミミのダンナはマイケルかと思ったことがありましたけど、証拠がありません。

 まあ、このへんは想像にまかせるということなんでしょう。そろそろいい加減にして、次へ行きますか。
 
 
・デジモンたち
 ひとつ覚えのよーにポジトロンレーザーばっかり使ってた皇帝龍が、やっとギガデスを使ってくれました。
 映画とはちがい、ポジトロンレーザーの発射器を胴体に連結させて発射するというものです(それとも映画のはメガデス?)。
 この威力によって、不死の魔力を持つベリアルヴァンデモンを消滅させることに成功しました。

 というか、そもそもドラゴンモードでメガデスを使ったこと自体がなかったような……
 あんなに威力があるんなら何でさっさと使わないのかという論点に陥りそうですが、デジヴァイスの輝きによる
 バックアップがないと使えないのかもしれませんね。少なくとも、テレビ版では。

 25年後の世界では爆発的に増殖し、世界中の人々にパートナーとして付き添っています。
 大輔たちの子供らも親と同系のパートナーを連れていたので、パートナーの型と遺伝子にはなにか関係があるのかもしれません。
 
 
・家族のみなさん
 泣いても笑ってもこれが最後なので、メイン格の親御さんがたが総登場しました。さすがに壮観です。
 シン兄さんや光子郎パパのようにほとんど1年出てなかった方々もいて、物語の終わりを演出してくれていました。
 もちろん02組のご家族もいて、ジュンもいましたが残念ながらセリフ無し。45話で打ち止めだったようです。

 こんなに大勢が、デジモンの事件にかかわっていたんですね。
 しかも、まだ始まりにしかすぎないというのですから。
 
 
・世界の選ばれし子供たち
 顔見せレベルながら、こちらも総登場しました。
 しかし、これだけのデジヴァイスが揃うとさすがにその光の力も絶大。ベリアルヴァンデモンの野望を挫くことに成功しています。
 ドサクサにまぎれてアンナ、ローラ、ユーリ、そしてユエホンがこっそり最初で最後のセリフを発音していました。
 ユエホンの声はたしかに竹内順子さんでしたね。情報通りだ。
 
 
・希望を取り戻した子供たち
 途中までズンドコにやさぐれてた人々。おかげでベリアルヴァンデモンがマッハで調子を上げていました。
 しかし大輔の不意打ちぎみなカミングアウトにより、ネガティブハートがフルリニューアル。パートナーがボコボコ現れます。
 初見ではあまりの事に顎が大地を穿ちました。卵さえ経てねえ。それとも実は、初めっからそこにいたのでしょうか?

 顔ぶれとしてはおなじみの川田のり子ちゃん、吉沢孝くん、芝田浩くんのほか、彗星のごとく現れた倉田けいこちゃんがおります。
 喋りだしたのがいきなりこの回になってからなうえブイモン声なので、見ている方は戸惑うことしきり。特に私が。
 しかも結構かわいいぞ、この娘。どことなく加藤さんを連想させてくれるではありませんか。

 それにしても倉田とは……なんとも因果な名前だ。
 
 
・ゲンナイさん
 いつのまにかホーリーリングをパクっていた人。
 で、そのホーリーリングはちゃんとカイザーが回収して使ってたんですね。あの要塞を制御するという目的で。
 ……あれ? じゃあ、要塞が暴走したのってゲンナイさんがホーリーリングをネコババしたせいなんじゃ……

 もしかして大輔たち、尻拭いさせられたんでしょーか。
 
 
・及川
 最後の最後で美味しいところを持っていきました。
 顔色もまともになって瞳や口ぶりもずいぶん優しくなり、まるで毒気が全部抜けたかのようです。
 これはベリアルヴァンデモンが離れたせいもありましょうが、それだけではないでしょう。

 ベリアルヴァンデモンが取り憑こうと取り憑くまいと、彼が良心をかなぐり捨ててまでもデジタルワールドに拘っていたのは
 決してぬぐえない事実です。 そしてそう思った瞬間から、彼の夢は他者を傷つける我執になってしまった。
 ただ、彼とて心のどこかでそれが間違いだと知っていたはずです。こんなものは違うと思っていたはずです。

 だから自分が賭けに敗れて所業を否定され、死さえ目の前に迫ったとき、やっと業から解き放たれたのでしょう。
 あるいは安心したのかもしれません。やはり、デジタルワールドは自分が思っていた通りの場所だったのだと。
 そこに至ってはじめて文字どおり、子供のような素直な心持ちですべてを見つめることができるようになったのだと思います。
 あるいは死に瀕したことで、自然とそういう心理になったのかもしれません。

 そんな彼の最後の願いはだからこそ、悲しいほど純粋で真摯なものでした。
 ひょっとしたら彼のはなった力の影響により、アルケニモンたちや黒ウォも本物のデジモンとして甦れるかもしれません。
 だとすれば、それもまた彼のせめてもの償いになると思います。
 
 
・ピピモン
 及川のパートナーデジモン。土壇場で現れました。何に進化するのかは不明。
 彼の存在そのものが、及川の解放を意味しているのでしょうね。たぶんこの二人の会話がいちばんの泣きポイントでしょう。

 及川とは、子供のころに一度チラリと会ったことがあるようです。
 その時になぜ手をとりあえなかったのかはわかりませんが、いろいろ考えあわせれば想像はできますね。
 火田家がそうであったように、及川の家でも想像力の翼を縛り上げられていたのだと思います。

 彼はいま、どこにいるのでしょう?
 及川がデジタルワールドを見守り続けているというのなら、彼もまたどこかに存在し続けているのでしょうか。
 あの日の姿のままで。
 
 
・ベリアルヴァンデモン
 全開バリバリで大事業の口火を切りましたが選ばれし子供たちの袋だたきにあい、さらに川田のり子ちゃん達の心変わりにより
 モリモリと力を失って小さくなったあげく、ろくに抵抗できないままギガデスの洗礼を受けて消滅してしまいました。
 ラスボスとしてはダントツで情けない散り方だったと思います。

 なんでまた、ここまで悲惨な末路にたたき落とされてしまったのでしょう。

 もちろん、あの場に大輔がいたことが大きな敗因だったことは間違いありません。
 ですがそもそもの間違いは、力の源に暗黒の種なんぞを使ってしまったところにあると思います。
 見たところ、川田嬢らのネガティブハートから力を受け取って闇のパワーを増大させていたようなのですが、
 これはもし当の彼女たちが光の方向を向いてしまったら途端に失われてしまう不安定なもの。そのように見えます。

 たしかに人の心は大きな力を持っているのかもしれません。また、少しのきっかけでバランスを崩すかもしれません。
 しかしそれは、なにも闇の方向にだけ起こるものではないのです。
 パートナーデジモンでもないくせにそんなモノに頼った時点で、彼の敗北は見えていました。
 そう、彼はおのれの策に溺れたのです。ま、それもこれも大輔の存在を考慮に入れてなかったせいなんですけど。

 種に頼らなくても絶対的な闇のちからを持つデーモンのほうが強いと感じた理由は、ここにありました。
 もしこの両者が戦った場合は、どうなるかわかりませんが……
 
 
・25年後の世界
 成長した大輔やタケルたちが暮らす世界。
 すべての人々にパートナーデジモンがいるという触れ込みで、デジタルワールドへの行き来も自在にできるようですね。
 何かえらく飛躍してますが、短いようできっと苦労の多い25年だったのでしょう。
 でもタケルにとってはそんな労苦も、幼い日の体験を輝かせる助けになるだけだったのだと思います。

 それにしても、なんでまた子供たちだけで冒険に行くことになったんでしょうね。
 どう見ても、何かヤバいことが起こっているよーな雰囲気ではありません。むしろ遠足気分ではありませんか。

 いや、文字通りの行楽行事なのかもしれませんね。
 かつての冒険の旅路を追体験し、世界に触れ、見識をたかめるという。誰の企画でしょうか?
 いずれにせよ大輔たち親御がたのバックアップも万全な、ひたすら楽しい旅になりそうな気がします。
 それもまた、忘れ得ぬ体験になるのでしょう。
 
 戦いはまだ続いているのでしょうか? 世界のどこかで、知られざる誰かが闇を祓っているのでしょうか?
 であるならば祈りましょう。まだ見ぬ新たな子供たちに、勝利と幸せがあるよう。
 
 
・新たな選ばれし子供たち
 というわけで、大輔たちの血筋も新たな世代へと交代しています。
 出番はラスト数分ながら、大勢のファンへ強烈な印象を残していきました。

 しかし、誰が誰の子供か随分わかりやすくなってますね。
 太一や大輔やタケルの子供なんて、まるっきり縮小コピーですよ。セルフクローニングか君ら。
 丈の子供もわりとそんな感じですが、シン兄さんの面影もあるのでかろうじて回避というところでしょうか。
 ダークホースは伊織の娘さん。初見で死にました。まさか髪を伸ばしただけで美少女になるなんて、そんな安直な。
 
 幸いというべきか、名前のある子はひとりもいません。
 そのため、思い思いの名前をつけて楽しんでおられるファンの方も多かったようです。今もいるのかな?
 
 
・ぼくらのデジタルワールド
 この最終話のタイトルにもなっている、非売品CD収録の歌。流れたのは後にも先にも、この回だけです。
 やや切なげな歌い出しから徐々に盛り上がっていく曲調は、ラストの盛り上がりを飾るにこの上なく相応しいもの。
 残念ながら私は入手できませんでしたが……(T_T)

 どことなく、往年の「We are the world」を思い出させてくれますね。
 何といっても「ぼくらは世界、ぼくらは子供たち」 なわけですから。
 
 
・Butter-Fly
 最後を締める曲はこれ。この物語が「デジモンアドベンチャー」なのだと再確認させてくれます。
 この曲でスタッフロール流してくれたら最高だったんですが。
 
 
 
★名(迷)セリフ

「ぼくたちは、ずっと戦ってきた。
 デジモンたちは戦いをかさねるたび進化し、強くなっていった。
 デジモンにとって、進化とはなんだろう? ぼくたちとデジモンとの出逢いは、なんのために。
 そして、ぼくたちの進化とは……」(ナレーター)

 
 先週の引きからこっち、語りかけるような形になってますね。語り部であるタケルが地を出してきたようです。
 気のせいか、平田さんの語りにもいつも以上の力を感じる。
 
 
「そう。私たちが、最初にデジタルワールドへ行った場所なんだから」(空)
 
 ある意味究極の切り札。最後に原点へ回帰するというのは、作劇のお約束でもありますね。
 
 
「あたしたちは選ばれなかったんだもの。選ばれし子供じゃないもの……」(倉田けいこ)
 
 これ、01を受けての02のテーマを表してる感じですね。
 そうだとすると、あのラストは確かに必然なのかもしれない。
 考えてみれば、5話における丈のセリフにも繋がってきます。選ばれるんじゃなく、選ぶという。

 それにしてもこの娘、かわいいな。
 
 
「パートナーデジモンがいないからって、なんだよ!
 選ばれし子供が、なんなんだよ!
 オレは別に、特別でもなんでもないぜ!」
 (大輔)

 
 ますます沈み込んでいく川田嬢らに。
 確かに特別ではないのでしょう。障害とたたかい、克服していくエネルギーは誰もが秘めているもの。
 必要なのは特別な才能ではなく、そうした未来への活力なのだと思います。紋章はその整理づけでしかありません。
 天才の力を得た賢が一度否定されることにより、このへんは消化されてますね。
 
 
「オレ? オレはね、ラーメン屋!」(大輔)
 
 将来の夢を聞かれて今必殺のカミングアウト。後ろで京さんがすごいポーズを取っています。
 でも、このほとんどギャグみたいな発言が場の空気を一変させてしまいました。後はもう、ただ打ち貫くのみ。
 もし大輔に才能があるとすれば、こういうところだと思いますね。
 
 
「……知らなかった……」(賢)
 
 って、君でさえ知らなかったんかい。
 
 
「そうだ……なりたいものがあったのに、いつのまにか、それは考えちゃいけないことだと思ってた……
 でも、違うんだね!」(吉沢孝)

 
 とても子供のセリフとは思えません。親御さんは何やってんのと敢えて言わせていただく。
 いや、まだ間に合いますね。やりたいようにやればいいんです。デジモンがついてるよ。
 
 
「「ホントの、ホントに?」」(光を掴んだ子供たち)
「「ホントの、ホントさ!」」(光と駆ける子供たち)

 
 デジモンの進化。それを強く発現させるものは人の強い願い、未来へ向かう力、進化を願う心なのかもしれません。
 そこに将来の夢を引っ掛けるあたりはわかりやすさ優先というところでしょうか。
 微妙に話の流れが変わってる気がしないでもありませんが、たぶん気のせいでしょう。
 
 
「実はデジタルワールドも、その力をもとに成り立っている……」(ゲンナイさん)
 
 その力とは、意志現世界のことです。
 なんのことはない、アレこそがある意味デジヴァイスのパワーソース、力の封土でもあったわけですか。
 そりゃ進化しほうだいだったわけですね。
 
 
「そうか、あの海も……人の心の昏い想いが具現化したものなのかも……」(賢)
 
 一種のダークエリアですか。
 だとすれば、ダゴモンもデーモンも人が心に秘めるもっとも手ごわい敵、恐怖から生まれたのかもしれません。
 あんまりそーゆー認識論は好きじゃないんですけど。

 直後のシーンにおける京とのやり取りは、のちの進展を多少なりとも感じさせるものでした。
 
 
「おい、聞こえたか! あんたのパートナーデジモンだってよ!」(大輔)
 
 及川に。こういう時、まっさきに声をかけるのはいつも彼だったりしますね。だからお気に入りなんです。
 
 
「ああ……よく知ってるよ。初めて会ってから、ずいぶん時間が経ってしまったけどね……」(及川)
 
 やっと会えたピピモンに。森川氏入魂の演技は必聴モノです。
 01では別れで泣かせ、02では出逢いで泣かせるとは、なかなか心憎いことをしてくれますね。
 もちろん、死という別れが目の前に迫っているからというのもありますけど。
 
 
「俺にも夢をかなえる力があったら……君たちのように冒険することができたんだろうが……」(及川)
「夢をかなえる力、ありますよっ! だって、こうして……デジタルワールドに来られたじゃないですかっ!
 パートナーデジモンに会えたじゃないですかっ!!」(伊織)

 
 及川、光の蝶となって散る。
 きっと伊織はこの時、決定的な何かを心に刻んだのでしょう。
 デジモンカイザーを悪と断じて憚らなかった雅い正義感は、かくて大きな成長、ないし変化を遂げたのだと思います。

 そう考えるといちばん学び、変わったのはある意味でこの伊織かもしれませんね。なにしろ最年少だし。
 
 
「もう行っちゃうの? せっかく会えたのに……」(ピピモン)
 
 無邪気な物言いが、ひたすら愛らしくも哀しい。
 その後彼がどうなったのか、語る者はいません。ファンは想像してましたけど。
 
 
「人の心のなかにも、そして世界じゅうにも、光と闇がある。
 これからも、ずっと光と闇は戦いつづけるだろう。
 しかし、心の中の光を、夢を実現する力を忘れなければ、大丈夫だ。
 新しい冒険のページをめくるのは……君たちだ!」(高石岳)

 
 3行間で25年とんでます。
 前作よりもメッセージ性のたかいラストですね……01にあった要素を強化すれば、そうもなるか。
 
 

★最後に
 サイト活動の開始とほぼ同時に放映開始し、人集めに四苦八苦しながら楽しませてもらった作品です。
 そのぶん、01とは別の意味で思い出深い番組ですね。人物に関しての思い入れなら01以上かもしれません。
 とりわけ、大輔とブイモンのお馬鹿で愛すべき活躍には一喜一憂させてもらった憶えがあります。
 勝手な想像をふくらませて勝手に萌えまくってみたり。

 むろん、 良いところばかりの作品だったとは言えません。そのへん、01よりは冷静に見ていると思います。たぶん。
 なので、良くないと感じたところはなるべく正直に書くようにしました。
 ただそれでも好きだと言えてしまうだけの魅力は充分残していたし、補完のしがいもおおいに感じてます。
 いまだにいろいろ考えて遊べるぐらいのものですから、なんとも良いものを残していってくれましたよ、ホント。

 さて、ちょいと過ぎてしまいましたが、今日は02が終わってからまる7年になります。
 そして、来年は01の放映からちょうど10周年。時の流れの早さってものをひしひしと感じますね。
 果たして来年になにか起こったりするんでしょうか? それとも、何も起こらないのでしょうか?
 
 まあどうであれ、ずっと好きでいたいと思います。
 いつか離れるときが来たとしても、もう決して忘れることはないでしょう。
 最後にひと言、この物語にもう一度お礼を言ってキーボードを離れたいと思います。

 ありがとう。

 ありがとう、選ばれし子供たち。ありがとう、デジモンアドベンチャー。