帰ってきた天才トーマ! メラモンをぶっとばせ
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脚本:横手美智子 演出:佐々木憲世 作画監督:出口としお |
★ストーリー要点
DATSのEU支部から天才少年・トーマが帰ってくる。着任早々、見下してかかるトーマに激昂した大は勝負を挑むが試合はボロ負け。
ルール無用の殴り合いでは引き分けに持ち込むものの、大の心は晴れなかった。
しかも大のしとめ損なったプチメラモンが増殖、各地に大挙して出現する。だが、トーマとガオモンはそれもあっという間に片づける。
力の差に悔しさをかみしめる大だったが、些細なヒントから勝機をつかみ、奇策で残りのプチメラモンを倒したのだった。
薩摩司令は大とトーマにチームを組むよう命令を下す。この凸凹コンビ、大丈夫なのだろうか?
★全体印象
第3話です。トーマが初登場ですが、タイトルコールは保志さんのまま。やっぱりこのまま最後までいくのかな?
一撃必殺の奇策に根性で戦う大と、冷静沈着で計算されつくされた戦いを持ち味とするトーマ。情熱の赤と高貴の青、くっきりとしたコントラストが確実に打ち出されたお話になりました。というか、ものすごい勢いでベタ。でも形はちがえど太一にヤマト、大輔とタケル(または賢)、拓也に輝二と、正反対の気質をもった主役に準主役という取り合わせはデジモンシリーズの伝統、ひいては王道です。王道とかベタというとつい「ありきたり」と取りがちなのですが、逆に言うなら、うまくやればこれほど効果的な手法もありません。王道を進むこと自体よりも、進み方を問題としたほうがいいのでしょう。
…でもこの作劇ってどっちかというとロボットアニメな感じが。
脚本はシリーズ初登板、横手美智子さんです。去年や一昨年は戦隊に参加してました。この脚本家、どうも複数人の連名らしいのですが詳しいことは不明。
…ってことは「さん」付けするのもちょっと変ってことになるのかなあ…どうしたものか。
見てきたかぎりじゃ仕事は良いものをこなすので、そんなに不安要素はありません。今回も一箇所をのぞけば大した問題はなし。
作画も人数が多かったおかげか、思っていたよりはデグっていませんでした。(デグる=出口作画全開)
ただし場合によっては作画スタッフが減っていくケースもあるので、油断できません。
それにしても八島さん、仕事しすぎ。
★各キャラ&みどころ
・大
負けカウント1。その後ただの殴りあいおっぱじめて無理矢理引き分けに持ち込んでましたが、試合と思っている相手に後ろからぶん殴りにいくのはさすがにどうかと思ってしまいました。10カウント前に勝利を確信して背中を向けたのなら単にトーマの油断ですが、取り決めたルールをブッチしてまでというのは、いささか厳しい目を向けざるをえません。理論やルールに拘るトーマとの対比でもあるのでしょうけど。
しかしその後は謎の老人が示した僅かなヒントから奇策を編み出し、名誉挽回。
負けっぱなしではいないしぶとさと大胆な発想力、行動力をアピールしています。
勝つことだけでなく、負けないことを学びそのために戦うことを覚えたということかな。
・アグモン
突然新技・ベビーバーナーを披露しました。いつのまに…。
火焔を圧縮して爆発力として撃ちだすっぽいベビーフレイムとは違い、純粋に火力だけで相手を焼く技みたいですね。
大門家にはすっかり馴染んで、エンゲル係数を上げまくっていますが…大丈夫なんでしょうか家計。
大の経済状態からみて、たぶん心配ないんでしょうけど。お父さんの稼いだぶんもあるのかな?
・トーマ
もう少し柔らかいタイプかと思ったら形が違うだけで、カズマに対する劉鳳のような俺様ぶり。
しかしまあ、このくらいじゃないとあの大とは張り合えないのかもしれません。
いきなりサービスシーンを披露したり、執事がいたり、のっけから大をバッサリ切り捨てたり、イヤミなくらい完璧な戦いぶりを見せたり、自分の立てた作戦を恥ずかしげもなく「華麗」と形容したり、えー天才ですとも、ボンボンですとも、イケメンですとも、ナルシストですとも、それが何か? といわんばかりの立ち居振る舞いは、まごうことなきライバルキャラ。大でなくたっていけすかないと思うでしょうよ、ええ(^^;)
彼になにかドラマがあるとすれば、やはり「挫折」でしょうかね。期待したいです。
そこに大がからんでくるのも容易に予想できるでしょう。
このふたりの関係はケンカチャンピオン・香取石松と、越後長岡の若武者・河合武士にも通じるものがあるなあ…。
竜児は大に例えるにゃちょっぴり品がよすぎる。
・ガオモン
無口ですね。私語をいっさい叩きません。かわいい顔してスーパークールです。っつーか中井氏のおかげでむしろいぶし銀。
ただ、それもあって今のところ戦闘マシーンみたいにも見えます。今後に期待しましょう。
・ガオガモン
中井氏がだいぶ野太く演じています。エコーのおかげでむしろベアモン系の演技に聞こえる。
技は風系か。幼年期程度なら50体くらいくらいまとめて吹っ飛ばしてしまえるようですね。
ただ、
なまじトーマがあの戦闘スタイルなぶん、進化そのものがクライマックスからも外れてます。
まあこれは淑乃もそうだったので、完全体進化のときにこそ突っ込んだ描写が見られるはず。
・ 淑乃
今回はほぼトーマのサポートに徹し、変わった事はなにもしませんでした。
かと思えば大に絆創膏貼ってあげていたり、面倒見のいいところも見せていて好感度アップ。
…でもやっぱり大とトーマには、今後も手を焼かされるんだろうな。
・ララモン
ほとんどセリフも出番もなし。でも、ゴングをカーンと鳴らす仕草が可愛いです。
・大門一家
お母さんがあまりにも大物すぎる……。
それにしてもガッシュの清麿ママといい、卵焼きは母の愛のシンボルですね。
知香はひたすら可愛くないなあ(^^;) だが、それがいい。
・薩摩長官
先週も淑乃に雷を落としてましたが、今回はそれを遥かに上回る電圧。
この一喝の前にはトーマでさえたじたじになるようです。けど、上が締めてくれるというのは良いことですね。
普段それほど口数が多くないぶん、よけいに効くというもの。
長官がトーマを呼んだのは時期的にいつあたりなのでしょうか?
大を引き入れるメドが立ったタイミングなら、大とトーマをかち合わせることによってより良い結果を引きだそうというくらいの計算は働いているものと思われますね。正反対のふたりがもしうまく補いあうことができれば、それは絶大な効果をもたらすはずですから。
無論そうすぐにうまくいくとは思えないし、長官とてそれは承知の上でしょうけど。
・クダモン
長官がしゃべらない分、積極的に大を煽ってむしろ奮起させているようにさえ見えてきました。
わりにうまいこと役割を使い分けている気がします。
・謎の老人
神出鬼没。おっちゃんはなんでも知っている?
大のことを非常に買っているようなので、しばらくは毎回のようにヒントを与える役になるんでしょうか。
・プチメラモン→メラモン
ほんの少しですが、しゃべってました。 人語を解するのは、どうも別にパートナーたちだけじゃないみたいです。
戦闘力はあんまり高くなく、進化したあともほとんど見せ場はありません。密度が増したところをまんまと大にぶん殴られ、そのまま得意のバーニングフィストを見せるヒマもなく、属性相性も蹴り倒す威力の新技・メガバーストで吹き飛ばされてしまいました。ほぼジオグレイモンの引き立て役。
この展開だとむしろガオガモンさえジオグレイモンの引き立て役なので、やむを得ないところですが。
・地域差
ヨーロッパには、EUたっての希望でトーマが一時的に出向していたそうです。
ところが本人が言っていたとおり、欧州のほうはデジモン関連の事件が頻度・規模ともにごく小さいみたいですね。
何故極東だけに集中しているのか……単なるお話の都合以外にも、何かがありそうな。
★名(迷)セリフ
「子供ねえ…」(知香)
二連発。ナマイキ盛りだ。
そういえば、アグモンは結局お母さんを呼び捨てしっ放しなのか。
「イエス、マスター」(ガオモン)
何かファティマみたいな物言いですが、ガオモンのセリフはほとんどこれだけ。
あとは必殺技のかけ声と「フン」と「お任せください」だけ。…無口だなあ。
メラモンのタマゴを回収してる時、アグモンに向けた視線が微妙に気になります。
「トーマだかトンマだか知らねェが、ここじゃオレのほうが先輩なんだよ!」(大)
どうしよう。これでは…これではトーマのネット上綽名がトンマになってしまう…。
「勝負ってのはな、どっちかが負けたって音を上げないかぎり、終わりじゃねェんだよ!」 (大)
ルール違反気味の直後なので少々かっこわるい場面での発言ですが、後半にも生きています。
「出来る!」(トーマ)
大をもたじろがせた絶対の自信。
しかしこれは逆を言うと「できないことは絶対に無理と認識する」ということなのかもしれません。
だから100パーセントと思っていた確率をひっくり返す大には驚いたでしょうし、今後も驚かされることになるのかも。
「ちがう…! オレが腹を立ててんのは、オレ自身になんだよ…! くそっ! 何やってんだよ、オレはよ!
ホントに…何やってんだよ…!」(大)
ここで半端者のチンピラなら八つ当たりをするところですから、なんだかんだで真っ当な育ち方をしてるんでしょうね、大は。
直後の立ち直り方が異常に早かったり、有頂天になったりするのも標準装備か。
「最悪なんですけど…」(淑乃)
心中察します。
声優さんの演技も、いつになく感情がこもっていたかと。
★次回予告
ドリモゲモン登場。前後編になるらしいので、けっこう良い扱いになりそうです。
大とトーマがここであっさり氷解するような展開には…ならないでしょうけど、多少は接近するかな?