新チーム初出動! ドリモゲモンを追え

 脚本:稲荷明比古 演出:山田徹 作画監督:伊藤智子
★あらすじ
 チーム行動を開始する大、トーマ、淑乃だったが、連携はボロボロ。作戦行動中以外でも最悪の雰囲気だ。
 そんな時、ふたたび新たなデジモン反応が…銀行強盗たちが、偶然出会ったドリモゲモンの地中穿孔能力を利用している。現場を押さえて揉みあっているうちに、ドリモゲモンは強盗の感情に反応したのか、暴走をはじめた。
 
 確実にドリモゲモンを追いつめようとするトーマとガオモンだったが、大とアグモンの突拍子もない行動にペースを乱されっぱなし。ついには必殺技どうしを打ち消しあうという事態が発生し、その間にドリモゲモンはゲートを開いてデジタルワールドへ逃げ出してしまった。

 責任を感じるトーマは、薩摩長官の命令を無視して単身、デジタルワールドへ突入する…。



★全体印象
 第4話です。ところどころ口パクがずれてる気がするんですが、これは…?

 大とトーマの激突その2。とにかく連携の悪いふたりですが、経験不足で無軌道な行動をするのがもう分かり切っている上、曲がりなりに礼を述べるなど良いところも見せている大にくらべ、本来なら先輩としてチームを纏めねばならない立場のトーマはうまい対応ができず、弱点を晒しています。くわしい事はあとで書こうと思いますが、長官がふたりを組ませた理由がまたほんの少し理解できた気がしました。

 筋立て的にはいきなりヌメモン追跡からスタートするなど、大胆な構成。設定をお約束で固めてはいるこの作品ですが、その分早い段階からフットワークの軽い展開ができるのは強み。従来のシリーズと完全に趣を異とするのは、見続けるならそろそろ慣れないといけない頃でしょう。

 作画は安定株の伊藤智子さん。翻って脚本は稲荷明比古氏で、サイトに寄せられた情報にしたがって調べたところじゃ改名した疑いが確かにあります。当時の名前「稲荷明彦」としてはサンライズ作品を中心に、かなり多くのアニメを経験している様子。私の知る限りでいちばん最近はやはりゾイドジェネシス。微妙にキャラが違う気もしますが気になるほどではなく、脚本陣については今のところ問題ありませんね。
 演出の山田徹さんはあちこちの東映作品に参加していますけれど、デジモンにはたしか初登板。

 ここまで見てきた段階では、作品としてみるなら悪くありません。あとはもう受け取る側の問題でしょうか。
 少なくとも、私は楽しませてもらってます(^^)

 第一クールが終わった段階で、もう一度判断してみるとしましょう。



★各キャラ&みどころ

・大
 3話でも描写されてましたけど本当に機械オンチですね…。彼には端末を触らせないほうがいいのかも。
 しかし上でも書きましたが、些細な事ながらトーマに礼を言うなど多少は歩み寄ろうとする姿勢が見えます。けれどもあまりに取りつく島なしなので、ますます意固地になってしまったという寸法なんでしょう。プライドが高いというか、上から押さえつけられるのがとことん嫌いなので。

 行動的にはなんとなく端末をいじってしまい叩いて止めたり、突っ込んでいって海に放り込まれたりバカ度がさらに高め。しかし彼は(主役だからというのを差し引いても)無能じゃないし、何より溢れるばかりの行動力をなくしては成り立たない人物。トーマとしては我慢するというのじゃなく、締めるところは理で締めつつ上手いこと誘導する必要があるし、それができると思ったからこそ長官はチームを組ませたのだと思います。

 少なくとも、トーマよりは長官のほうが遥かに大の扱い方を知っていますね。


・アグモン
 大とふたりでひたすら突進しまくり。まさにガキ大将とその子分といった風情です。アホの子レベルもやや高め。
 ただ今回はトーマ組の描写のほうがメインというのもあり、意外としゃべっていません。


・トーマ
 第1ポイントはエリートが陥りがちな、大とはちがう意味でのプライドの高さ…でしょう。傲慢といってもいい。
 彼が有能なのは疑いないし、作戦もたしかに的確でした。大もトーマの能力そのものを、もう否定してはいません。
 しかし、予想通りというべきか…プラン通りにいかないのをどうしても許容できないところがあるようです。なまじ能力が高すぎ、相方にもそれに合わせることを求めるため、実質自分ひとりで片づけてしまう=結果としてチーム行動が取れない。弱点のひとつでしょう。
 似たような欠点が「特捜戦隊デカレンジャー」のデカブレイクにも見られました。すぐ馴染んだけど。

 それでもうまくやってるように見えていたのはまあ要するに、大のような真逆タイプの人間と組んだことが無いからですね。
 だけど、大みたいな男を納得させるには自分のやり方に合わせるよう強要するだけじゃ、絶対にうまくいかない。作戦を立案する立場にいるのなら、むしろ大がノープランで突進すること自体を計算に入れてフレキシブルに組み立てていくほうが、円滑に進むでしょう。
 要は各人の性格や得意分野を把握し、それに合わせた行動を瞬時に柔軟に決められるかどうか。ぶっちゃけ、対人関係スキルの向上です。彼のあの雰囲気は、大よりもはるかに人を寄せ付けないところがありますから。…ファンは多いんだろうけど、友人は少ないんだろうな。

 第2ポイントは家族ですね、普通に。
 2話でも母親について言及していたし、屋敷には執事や大勢のお手伝いさんがいるものの、家族らしき者の影は見えません。
 既にいないかほとんど会えないほど不在なのか、または会えなくなったのか…。

  大のことを羨んでそうな描写や、それ絡みで言わなくてもいいイヤミを言ってしまう場面など、家族がらみとなると感情的になりがちな様子。家族というものが、トーマにとって重要な意味を持っているのはあきらかでしょう。それがどういう事情なのかは、あとのお楽しみですね。

 
・ガオモン(ガオガモン)
 基本的にあくまでもトーマへ忠実。
 しかし、忠実すぎていざという時にとっさの行動ができず、トーマへ指示を仰ぐ場面があったのはポイントです。あのタイムラグがなかったなら、大たちよりもさきに攻撃してドリモゲモンを倒すか、動きを止めることができたはず。少なくとも、逃がすことはなかった。
(なぜか、ニューマシンガンズのジェロニモを思いだしたのは秘密)

 このコンビもまだまだ成長の余地があるようですね。
 

・淑乃
 不協和音奏でまくりの大とトーマを必死にフォローしており、結果として後方支援役でした。
 けれども徹夜で当直してたりネコの写真見て和んでたりなど、良い味出してる場面もあって存在感はあります。

 年長だけあり、ああ見えてもやっぱり落ち着いてますな。


・ララモン
 ナッツシュートでヌメモンを倒したり新技シンガーソングで強盗を確保したりと、地味に点数を稼いでいます。
 気づいたら、今回のエピソードで一番ちゃんと仕事をしたパートナーデジモンになっていました。


・大門一家
 トーマとは意外と早い顔合わせ。ふむ…。
 この方々、トーマにとっても案外と重要な存在になるかもしれませんね。


・薩摩長官&クダモン
 あくまでも理由は述べないまま、トーマの申請を却下した彼ら。
 このふたりから見れば、トーマもまだまだヒヨッコといったところでしょう。でも評価はきちんとしているし、だからこそ真逆のふたりを組ませ経験不足の大のみならず、トーマの成長をも促そうとしている。伊達に、人の上に立つ仕事はやってません。
 締めてくれる人物がいると、話にメリハリが出ますね。


・ヌメモン
 アバンパートのみに登場。ヌメってましたが粗相は投げません。どっちかというとヘドロ。
 成熟期のくせにララモンにやられました。ヌメモンだから仕方ないですけど…。
 今回の敵は造形的にあんまり怖くないのでちょっと複雑な気分。


・ドリモゲモン
 今回はオペレーターさんが特性を説明してくれていました。
 今後定着するのでしょうか? それとも、回によるのかな。

 出てきたのはなかば偶然みたいですが、ビッグスモールン演じる二人組の強盗に利用され、ATM荒らしの片棒をかつがされていました。
 最近は重機を使った荒らしも少なくないので、なんだかリアルなお話。こっちのほうが足はつきづらそうですが。
 で、車を止めようとした大やアグモンをひき殺さんばかりに激昂した強盗たちに反応をおこし、巨大化しました。このあたり、2話のクネモンにも通じる描写です。もしかすると、デジソウルチャージとは本質的に同じものなのかもしれない。ベクトルはだいぶ違うみたいですけど。

 暴走したあとも仕草などに意外とコミカルさが残っていて、倒すのはちょっと可哀相になってきます。
 この個体が好みな向きにはなおさらでしょう。

 そーいえば、トンネルの中から吹っ飛んできて大の拳にデジソウル出てましたがもしかして吹っ飛ばしたの兄貴? すげえ。



★名(迷)セリフ

「…ありがとうな。一応、送ってくれた礼は言っとくぜ」(大)

 彼がトーマに向けるセリフにしては、めずらしいほど殊勝。
 相手方がこれを素直に受け取るか流していれば、丸く収まったところなのですが…。


「…母親のご機嫌が心配なら、帰ればいいだろう」(トーマ)


 こちらは、彼がはじめて見せる類いの嫌味。
 少しあとのセリフとあわせ、視聴者心理としては完全に八つ当たりです。このへん、まだまだ未熟ですね。


「そんなとこだけハモるし…」(淑乃)

 呼吸ぴったりか…。誘導すれば非常によい結果を生みそうですね。
 まあそんな淑乃も、大とハモったことがあるんですけど。


「ケンカに場所なんか関係ねぇ! 火花が散れば、そこがリングなんだ!」(大)

 淑乃にも指摘されてましたが、大のこういう認識に変革が起こることはあるんでしょうかね?
 いや、下手をうつくらいならこのまま突っ走ってもらったほうがいいんですが…。


「地面の上で戦えば、地中へ逃げられる! どうしてそんなことがわからないんだ!!」(トーマ)

 はい、ポイント。
 彼はつねに自分の立案へあわせられる者しか、いままで求めてこなかったことがわかります。
 そして、そんな手合いは決して多くなかった。場合によっては絶無だった可能性すら、あります。

 出戻ってきた遠因って、案外そこらもあったりするのかなあ…。



★次回予告
 デジタルワールド突入。どんなイメージになっているのか、今から気になるところですねぇ。
 何とディグモンも登場です。たぶんドリモゲモンからの進化で…段階もなんもめちゃくちゃだ。
 カードではレベル4からレベル4になることもあったはずだから、完全になしじゃなかったと思いますが…。

 …人間のダイブがダメなのは、最初法規制かと思ったんですが技術的にまだ確立不足だからみたいですね。