知香はボクが守る! ピヨモンの決意

 脚本:山口亮太 演出:土田豊 作画監督:清山滋崇
★あらすじ
 大門家にとつぜん降ってきたデジタマ。中からはプワモンが孵化し、知香とたちまち仲良くなる。
 ところがその晩、ファルコモンが卵を取り返しにやってきた。騒ぎのなかで知香を救ったプワモンは、ピヨモンに進化を果たす。

 進化の原因が知香のデジソウルにあると見たDATSは調査をはじめようとするが、彼女を戦いに巻き込みたくない大と小百合の胸中は複雑だった。そして大はついに、ピヨモンを呼び出してデジタルワールドに帰れと言い放つ。しかし、知香を守ると誓っていたピヨモンはこれを拒絶、殴り合いがはじまった。そこへ、またしてもファルコモンが。淑乃らが加勢するも、スピードに翻弄される。大はピヨモンの助けを借りて、やっとのことで一撃を入れた。

 トドメを刺そうとしたジオグレイモンらの前にあらわれたのは、巨大な影。ファルコモンを連れ戻しにやってきた、メルクリモンだ。
 その力は……究極体!



★全体印象
 12話です。今回も8話ばりにアバンが長い。どうも山口脚本のときは長くなりがちです。

 ストーリー的には、まさに怒濤の展開。
 あんまりにも怒濤すぎて、場面場面にやや溜めがたりない印象すら受けてしまうほどです。これは事前に10話以上の仕込みがなされており且つ、知香の出番そのものもかなり多かったからこそ取れる、かなり思い切ったやり方かもしれません。そうでなければ、見ていた方は完全に置いてけぼりにされていたはずですから。一話にしてこれだけの波乱を持ち込む荒業は、やっぱり戦隊シリーズを思い起こさせます。

 今回ではさらに、新たな設定がいくつか明らかになりました。
 メインキャラのパートナーは全て、孵る前の状態でリアルワールドにやってきたということ。というか、そういったデジモンはすべてパートナーを必要とするわけですね。しかもこれは極めてめずらしい事例で……つまるところ、イリーガルということになります。

 そして、デジモンとデジソウルの相性が一致すればDATSにスカウトされるということ。
 これはアレでしょうか、「B'TX」のビートとドナーの関係みたいなもんなんでしょうか。血液入れ変えたらデジソウルも変わるとか。

 おまけにもう一つ、お母さんが最初から全部知っていたことも明らかになりました。二面性あるなあ。
 この人のセリフからは読み取れることがあるんですが、それについては後で。

 絵と演出は今回も良好。戦闘シーンについては旧シリーズ以上になっていますね。プリキュアと張れます。
(というか向こうは川田演出が原因で、こちらより乱高下が激しいように見えてしまう…)



★各キャラ&みどころ

・大
 コミカルな場面もありましたが、全体的にシリアスな表情が多めだった今回。

 彼がもっと狡ければ、たぶんあんな事をしなくてもよかったと思います。
 わざわざ真っ正面からぶつかっていくのは、そういうことができない性格だから……つまり「男」だから、ですね。
 そして同時に、ピヨモンのことを男として認めるに値する存在かどうか確かめたかったってことなんでしょう。
 平たく言えば

  「どうしても妹と一緒になりたいというんなら、この俺を倒してからにしろ!」

  って具合。
 ……ってか、これって父親のセリフですね。でも父親であろうと目指す大にとっては、それで正しいのかな。

 で、いろいろと横槍が入りましたが最終的には、ピヨモンを認めるような発言をしています。
 このまま何もなければ「妹にもしものことがあったらぶっ飛ばす」くらいで済ませそうな雰囲気ですが……。

 それにしても、成長期とはいえデジモンをまったく相手にしない兄貴は強すぎです。
 しかしさすがに相手が究極体では、いささか厳しすぎる…!?



・ アグモン
 要所要所でいい味出しまくり。可愛いなあ(^^;)
 知香を止めるシーンではキメたセリフを言っていましたが、キマりすぎていて背中がもにょもにょしました。
 いかんいかん、あれは別に笑うところじゃない。



・トーマ
 大門家が絡んでるせいか、今回もけっこう表情が柔らかめです。当初のイメージとだいぶ変わってきてるなあ。
 ギャグ顔も見せるし、淑乃に食ってかかられると狼狽えたりしてます。

 彼のセリフから、なんとなく伏線めいたものが見えてきていますね。そのへんは後で。


・ガオモン
 彼は二番目だったんですね。やっぱり今回みたいに、ノルシュタイン邸の上空から降ってきたんでしょうか?
 それは、トーマが何歳くらいのころだったんでしょう。過去話が見てみたい。


・淑乃
 ひさびさのデジソウルチャージ。心なしか、前より堂が入って聞こえます。
 でもどっちかというと、ストロー吸ってたり大にツッコミ入れてたりする場面の方が印象的でした。


・ララモン
 意外?にも、このデジモンが最初の事例だったようです。淑乃の年齢と打ち解け方からみて、予想よりさらに付きあいが長そう。
 …あれ? ということは、カメモンとクダモンは違うんですね。じゃあ、彼らはつまり「そういった一派」で……隊長やおっちゃん達は、その協力を受けてDATSを設立したってことなのかな。どういった経緯でコンタクトしたのか非常に気になる。
 何より隊長がデジヴァイス持ってるかどうかがまだわかりません。たぶん持ってるんでしょうけど……。


・知香
 無心にプワモンを世話した結果、進化をうながすという現象が起きました。
 その気持ちは、純粋な好意です。それを受けたプワモンも知香に応えようと、共存のできる方向へ進化を果たしました。相互影響です。
 やはりデジソウルと七罪は本来同質で、向いている方向によって進化が決まるんじゃないでしょうか。デジヴァイスはそれを効率良く変換し、パートナーへ充填する役割を果たしているだけなのかもしれませんね。いまのところはそう見えます。

 今までのデジモンと人間は主役たちを除くと一方的な関係ばかりで、おたがいを思いやってはいませんでした。
 はじめから愛情をもって接した知香(しかも生まれたての幼年期から!)は、デジヴァイスこそ持っていませんが彼らと完全に一線を画していることになります。むしろ大たちDATSのメンバーにかぎりなく近い立ち位置ですから、調査をすることになったのも当然といえば当然でしょう。

 もちろん、それとこれとは話が別で……さらに言えば、彼女の意志とも別。
 たとえまわりが反対しても、彼女自身の考えまで縛ることはできません。
 ですが、その意志でさえ押し流すような大きなうねりが来るとしたら……次回は、悲しい結末が待っているのかも。


・プワモン→ピヨモン
 でかいです。大を乗っけられるくらいだから、相当な大きさ。

 幼年期がファルコモン因子強めだったのには、ちゃんと意味があったんですね。
 要するに知香と会わなかったら、親?と同じファルコモンになっていたんです。でも、そうはならなかった。運命のいたずらが、進化の方向を変えたのでしょう。それでもファルコモンに識別できたのは、たとえ姿は変わっても匂いは変わらなかったからでしょうね。
 まあ、他にもなにか識別方法があるのかもしれませんが……同種になったら呼び名はどーすんのかな。Vテイマーだと一部に固有名詞があったけど…。

 で、今回はデジアドのときと違って大とも殴り合う「男の子」として描かれています。
 とはいえ、Vテイマーやフロンティアにも男の子ピヨモンは出ていましたけどね。やはり色が女の子を連想させるのか…。

 声を演ずるは寺田はるひさん。男の子役としてデジモンシリーズに出るのはパンプモン以来なので、これまた久しぶりです。
 レギュラーとしての代表は言わずとしれたラーナモンで、けれど今回のピヨモンは例に挙げたどちらとも違う演技でした。新鮮です。
 予告だとヤバそうな状況ですが、なんとかレギュラー化してくれないかなあ…。


・小百合
 薩摩隊長と知己だったことが判明しました。明確な描写はありませんでしたが、判断材料は転がってましたね。
 ただ単に大人物だから、アグモンを受け入れたわけじゃあなかったというわけです。

 それにしても、気になることを言っていましたね。
 父親がデジモンに関わりがある人物だというのはどこかで見た情報でわかってたことですが、その父親が失踪したのもまた、デジモン絡みでのことだった……いや、これも想定の範疇内です。問題は、「なぜ」「なんのために」消えたのか、ということ。
 彼女の証言をトーマの警告に重ね合わせると、その答えは……?

 ところでこの人、ああ見えてほんとうはデジモンってものを恐れてる……いやむしろ、憎んでさえいるのかもしれません。
 隊長に見せた表情が、二面性を深く深く彫りはじめました。
 

・薩摩隊長
 冒頭でトーマの示した図が10年前のものだったので、それが最古のデータだと仮定すればDATS設立は10年前くらいってことになります。
 この人はその頃から現役だったんでしょう。パートナーを得たのがどのくらい前かわかりませんが、クダモンとはどちらかと言うと契約を結ぶような形でパートナーになったのかもしれませんね。まるで式神みたいだ。

 してみると、隊長とクダモンはデジヴァイスの最初の被験者だったりするのかも。
 アレです、橘さんとか不動さんみたいなもんですね(後者はいいとして前者はどうよ…)。


・ファルコモン
 プワモンの卵を取り戻しにきたデジモン。凄まじいスピードを誇る強敵です。成長期にもかかわらず、大たちをきりきり舞いさせる実力者。
 しかし軽量の悲しさ、一発いいのをもらってしまうと厳しいようです。大のパンチと高空からの落下ですでにグロッキー状態でした。

 でも、これまた今までと違い、彼(?)にも言い分があるんですよね。
 やり方に問題ありまくりとはいえ、自分の分身たる卵を取り返しにきただけ。体は小さいけど大巨獣ガッパとかラゴンみたいなものです。

 さらに言えば人間のことを忌避しており、これまでの悪性どもと違って人の意志の影響も受けていません。これは重要です。
 要するに、完全に自分の意志で行動しているということなのですから。人間界に来たのも、完全に自分の意志です。
 彼がレギュラーだということを差し引いても、非常に大きなことだと思います。指し示す真実はどこにあるのでしょう。

 それにつけても、橋の上でパリーンと割れたアレはなんなんでしょう。なにかの誘導装置というか、プログラムでしょうか。 

 さて、視聴に先立ってデジモンアクセル版のデザインを確認したんですが、あちらよりもさらにフクロウっぽいデザインになってます。
 忍者属性も付加されているし、何より見たかぎりじゃちゃんと飛べるみたいですね。
 アクセル版の設定だと、翼は飛ぶのに不向きと書いてあったんですが。

 声は神代知衣さん。おぼっちゃまくんか……。最近だとガッシュのコーラルQですね。



・ メルクリモン
 いきなり出張ってきた究極体。さすがに顔見せ程度の出戦でしょうから案外すぐ帰ってしまいそうですが、そんな事は慰めになりません。
 状況的にはガーゴイルとやりあってたらいきなり魔王ハドラーがやってきたようなものです。

 でも部下とのやりとりと行動を見るかぎりじゃ、少なくとも身内にとってなら悪い大将に見えませんね。
 急を要する状況とはいえ、ほかにも派遣できる部下はいるでしょうに自分から迎えにいくんですから、決断力がありそうに見えます。
 まあただ単に出たがりだったり、ほかに意図があって顔を出したのかもしれませんが…予告からして、あの状況を作るのは彼でしょうし。

 声を演じるのは廣田行生さん。馴染みのない名前なので調べてみたら、やっぱり出てる作品全部見てませんでした。
 事実上、意識して声を聴くのはこのセイバーズが初めてということになります。でも、威厳があってなかなか悪くありません。


・ 謎と伏線
 まず、序盤にトーマが並べた「七つの大罪」。
 次元の壁の崩壊が自然なものではなく、人為的なものだという指摘。
 それから、小百合ママが言っていた大の父親の失踪がデジモン絡みだったらしいという話。
 そして「人間と関わらない」と決め込んでいるメルクリモン。


 ……うーん、DATSは戦う相手を間違えているのではないでしょうか。
 他の十二神が割って入ってきて「真の敵に向かえ!」なんて言ったりする展開が待っていたりしますか? しませんか?



★名(迷)セリフ

「…怖いんです。わたしの周りの人が、みんなデジモンに奪られてしまいそうで……」(大門小百合)

 いつも笑顔の小百合さんが、はじめて垣間見せた複雑な内面。
 家族だからこそ、あるいは隠し通すかもしれない心の襞を覗かせました。
 いやホント、この人の内面は思っていたよりもさらにもっとドロドロしていそうです。


「効かねェ……効かねェよ!! そんな拳で、知香が守れるかあっ!!!」(大)


 こちらは複雑な内面全部ひっくるめて、拳での勝負。
 男であれば、こういった事も許されるのでしょうが……。

 大自身にあんまり語らせないのがいい感じ。



★次回予告
 ガルダモン登場。完全体です。メルクリモンよりはマシですが、今のDATSには荷の重い相手。
 いよいよライズグレイモンも登場しますが、苦い初陣にならなきゃいいなあ。
 デジタルワールドに行く展開になるなら、別の予想も立てられますが。