マサル新たなる力 進化!ライズグレイモン

 脚本:山口亮太 演出:佐々木憲世 作画監督:浅沼昭広
★あらすじ
 突然あらわれたメルクリモンの力を知らず、向かっていく大。しかし、その巨体に触れる事さえできない。しかも、数々の強敵を退けてきたジオグレイモンたちでさえ一蹴されてしまう。瞬時にして絶望的な状況に陥ったそのとき、ピヨモンが命を捨ててメルクリモンへ体当たりする。その行動と知香の言葉に何かを感じたのか、メルクリモンはそれ以上の手は下さずに去っていった。

 一方的な敗北を喫したDATS。大のリベンジ宣言も、今度ばかりは虚しく響くだけだった。
 いきなり姿をあらわした神レベルのデジモンに、トーマらは危険な陰謀の匂いを感じ取る。

 そんな折り、横浜上空にアクィラモンが現れた。一度はデジタマに還ったピヨモンが、そのメモリーだけを暴走させて本能的に暴れているのだ。止めようとする大だったが、アクィラモンはさらに進化を重ねてガルダモンとなる。もはや知香を知香だと識別することさえできない。完全体の力の前に倒れ伏すジオグレイモンの姿を見たとき、大は心の底から己の無力を思い知っていた。自分は何も守れないのか……?

 強くなりたい。祈りにも似た想いが巨大なデジソウルを誕生させ、ジオグレイモンをライズグレイモンへと進化させていく。
 圧倒的な力を得てガルダモンを倒すことに成功するが、傷だらけの苦い勝利だった。
 デジタマに戻ったピヨモンを抱いて泣く知香を見つめながら、大はもう二度とこんな悲劇を繰り返さないことを誓う。

 一連の事件の陰にはメルクリモンがいる…? 元凶を断とうと、デジタルワールドを目指す決意をする大たち。
 そのとき、隊長の口からある意外な事実が…。



★全体印象
 13話です。第一クールのラストを飾るにはふさわしいエピソード。
 急展開を象徴するかのように、今回はアバンがむやみに短く、それでいて濃い内容です。

 前回がやや詰め込み過ぎの感すらあったのに比べ、今度はしっかり各人の気持ちを追うことができます。むしろ、これをやるために12話の展開を急いだとすら言えそうなほど。重点を置かれてるのが大に知香と、前回よりももっと限定されているゆえ、散漫にならないで済んだというのもあるでしょう。それでも、文字通り晴天の霹靂な流れなので少し前までのムードが嘘のよう。後から何度か見返すといいかもしれません。

 ただ、視聴者の感覚へ合わせるかのように「メルクリモン憎し」へ流れていく大たちの描写はけっこう上手いです。
 冷静になって考えてみれば「何かが腑に落ちない」と気づくはずなんですが、あまりの状況に誰もが判断力を狂わせています。そもそも彼らはアクィラモンが人間界に出てきたいきさつを知りませんし、メルクリモンがどういう考えを持っているのかも知りません。にも関わらず、これまでこなしてきた任務による「常識」と照らし合わせ、完全に打倒メルクリモンへと全員の意志が固まってしまっている。
 その根底にある感情は、恐怖にも似た脅威。今までさんざん悪性デジモンを見せてきたのは、この裏付けを取るためでもあったんでしょう。

 しかし、皆は忘れています。彼らの戦いもまた、デジモンの力を借りたものだということを。
 知香の悲鳴のような訴えかけは、この先の展開を示唆するものになっていますね。

 ほんとうの影はどこに蟠っているのでしょう……次回で少しはヒントが出てくるかもしれません。

 さて、節目の回だけあって作画・演出ともにこのシリーズとしては満点の出来映え。スタッフのリキの入り具合がうかがえます。
 なにしろ構成の山口氏と総作監の浅沼氏、両方がお出ましなのですから。これは一話以来の組み合わせ。
 よく見ると八島氏もクレジットされているので、つまり一話と同程度以上に力が入っていたことになりますね。作る方も見る方もこなれてきているので、体感的にはむしろ完全に1話よりも上と感じます。スタッフも熱いぜ。

 そういえば味方サイド完全体が1クール目の段階で登場するのは、実のところこのセイバーズが最初だったりします。
 メガログラウモンでさえ14話なので、ライズグレイモンのほうが早い。
 第2の進化ということで厳密に言うと、ガルムモンの10話が最速ということになりますが…あれは少し違うし。



★各キャラ&みどころ

・大
 今までどんなデジモンにも果敢に立ち向かい、自力で進化のトリガーを掴んできた彼ですが、とうとう壁にぶち当たりました。
 思えば、彼が殴ってきたのは結局成熟期。良くてアーマー体です。完全体以上は馬鹿みたいに強い個体が増えてくるから大丈夫かなあ、なんて思っていたものですが、なんといきなり究極体。それもただの究極体ではなく、神の二つ名を戴いた存在です。実質的にみて3桁はレベルの違う相手でしょう。もはや絶望的という言葉でさえ足りません。あの力の差は、すでに理不尽の域に達していました。
 テイマーズで言えば、ミヒラモンの代わりにのっけからスーツェーモンが出てきたようなものです。

 理不尽。そう、突きつけられたものはあまりに巨大でした。あの場の誰もが感じたことでしょう。
 そして彼は、現実をすぐに受け入れることができませんでした。つい数秒前まで守れると思っていたものが、いともあっさりと崩れ去っていく……その無力感から逃れるために怒りを不必要に募らせ、苛立ちが焦りを呼び、焦りが余裕を削り取っていく。だから、見かけより強いだろうとはいえ老身のおっちゃんに簡単に投げ飛ばされたりするのでしょう。怒りのスーパーモード状態ですね(そういえば、山口氏はGガンダムにも関わっていたっけ……)。

 この展開に説得力を持たせているのは、12話までの快進撃です。
 5話でディグモン相手に手を焼いた以外は、ジオグレイモンさえ出れば常勝でした。つまり大の拳が、勝利へのトリガーだったのです。
 自分たちは強い。最強だ。そういう風に考えるようになったとしても、なんら不思議じゃありません。6話を経たあとではなおさらでしょう。

 その方程式が、今回で完膚無きまでに崩れました。ジオグレイモンは一度ならず二度までも、地に伏したのです。
 逆に言えば、崩さねばならなかった。自分たちは弱い、そう認めるところから全てが始まる……そんなような事をおっちゃんも言っていましたが、でもそれは弱いから駄目だという意味じゃなく、弱いから…未熟だから強くなりたいと思え、成長できるということです。
  それを知ったとき、人は一まわり強くなれるし……デジモンもまた、一まわり強くなるんでしょう。

 …あー、そうか。「俺って情けねー!!」って言ったら進化できた大輔にちょっと被るんだ(^^;)
 赤裸々な叫びにデジソウルが反応したんですね。
 


・ アグモン→ジオグレイモン
 最後で取り返しましたが、上で書いたように今回はそれまでの無敵っぷりが嘘みたいなボコられよう。
 しかも一戦目は片手でKOされてます。大にとっては衝撃どころか、何が起こったかさえわからなかった程のものでしょう。
 それだけに、シャドーウィングをものともせず突進するライズグレイモンの強さが映えるわけですが。

 そういえば、成熟期の時に「兄貴!」って言ったの初めて聞いた気がしますね。
  


・ ライズグレイモン
 ついに完全体の登場です。こんなに早く出てくるとは、正直思ってませんでした。
 進化バンクは線画から起こした風に見えるジオグレイモンと違い3Dモデルを使っているように見えますが、かなり秀逸な出来映え。とりわけ、グアッとカメラ目線になったジオグレイモンの頭が瞬時に鋭角的なライズグレイモンの頭へ変わるショットは、一度見たら忘れられないほどです。他にも千切れ飛ぶベルトやリボルバーをグルンと回す演出など、凝ってますね。原型であるメタルグレイモンの進化バンクと比べても、決して見劣りしません。

 その背には完全な機械の翼が生えていて、ジェット噴射(?)で飛行可能みたいですね。 空飛ぶデジモンに対応して飛行に適応したようにも見えるので、そういう計算のもとでガルダモンが選ばれたのかもしれません。だとしたら、細かい配慮がなされてると思います。
生身だった翼が機械になるというパターンは、メガドラモン→ギガドラモンを思い起こさせますね。
サイボーグ型という観点でいえば、似たような関係なのでしょうか。

そんでもって必殺技のトライデントリボルバーも本邦初公開なんですが、いきなり三発撃つとは…。
しかも三発の弾丸が物理もへったくれもない動きで収束し、敵にブチ当たるという凄いことに。だから「トライデント」なんですね。
まさか名前通りの技だとは思わなかった……凄いな、デジモンって。

でもやっぱり動きません。わりに必殺技撃って終わりでした。線が多いから動かしづらいんだろうな…。絵は崩れてないからいいんですが。



・淑乃&ララモン
 今回も仕事はちゃんとしてましたが、戦績ボロボロ。さすがにちょっと可哀相になってきました。ピンでの活躍が見てみたい。
 後半はララモン助けてるだけで終わってしまったみたいです。

 淑乃単体で言うと、ララモンに包帯を巻いてあげながら力なく大たちを諌める表情がなんだか心に残っています。
 


・トーマ&ガオモン
 今度ばかりは淑乃組以上にひどい目に遭った両名。
 メルクリモンにはボコられ、海に落っこちて岸にぶっ倒れたまんま放置ですから、惨憺たるありさま。

 しかしああは言っていましたが、トーマだって大に負けないくらいのショックを受けているはずです。
 必要以上に表には出しませんが、彼とてDATSきってのデジモンテイマーとして自負があるし、実績だってあります。しかし、あの圧倒的な力の差の前じゃそんなものは何の役にも立ちませんでした。あのセリフは、自分への戒めも兼ねていたのだと思います。

 そんなトーマが完全体進化をするには、どのような条件が必要になってくるんでしょうか。
 そろそろ過去ネタが出てきそうな予感も……。


 
・薩摩隊長&クダモン
 隊長の予想より厳しい中間管理職ぶりに、ちょっと溜め息が出ました。普段おくびにも出さないんだから、やっぱり大人ですね。
 そんでもって、クダモンはメルクリモンのことを知っていたようです。そういった類の情報を持っているということは、やはりデジタルワールド内に人間に友好的な一派がいて、彼はそのうちのひとりだったのでしょう。DATSに登録されているデータは、彼ら友好デジモンらの協力によってもたらされたものがかなりの割合を占めるとみてよさそうです。1話の段階からそういうことは言っているのだから、今さらですが…。
 


・国家機密庁長官&長官秘書
 出た瞬間「ゲーッ、トリヤマ補佐官!!」と叫びそうになりました。
 いや、だって「ウルトラマンメビウス」のトリヤマ補佐官とあんまりイメージが被るものですから…ご丁寧にも、秘書までいるし。
 もっとも、無能っぷりが芸風の域に達しているトリヤマ補佐官にくらべ愛嬌が足りません。いまのところは、単なる横槍要員に見えます。
 
 近いうちにとんでもないポカをやらかして、もっと大変な事態を起こしてしまいそうな臭いがしますね。
 それはもう、鼻が曲がるくらいに。

 なんとなーくですが、DATSにかわる新しい組織を計画していそうな雰囲気も感じます。



・おっちゃん
 キャストではまだ名前が出てませんが、公式ページのほうでは本名が出てるみたいですね。
 でも何だか今さらなので、まだしばらくはおっちゃんで通します。

 大が悩んでるときにはいつもそれとなく助力しているこの人。それでいて、小百合さんと対面してるシーンがまだいっぺんも無いのが気になります。隊長とは一度だけあったんですが、こうなると小百合さんとの関係も気になりますね、かなり。
 大がまったく面識ナシな反応なので、少なくとも親族じゃあなさそうですが……。

 妥当な線はやっぱり、大パパの研究仲間か師匠あたりでしょうか。
 


・知香
 よく考えてみたら、テイマーズで言うところのレオモン死亡を第一クールでやったようなものなんですね。
 突然つらい経験をすることになってしまった彼女ですが悲しんでばかりではなく、涙混じりながら自分とピヨモンが築いたものに希望を示し、ガルダモンを倒した大を責めることすらなく、ただ静かに眠るデジタマを労うばかりでした。……いやはや、出来すぎだな。この娘さんは強い。
 …ある意味じゃ、むしろ大よりも強いんじゃないかとさえ思えます。

 DATSの面々を圧倒したあの叫びは、まさにその「無心の強さ」からくるものでした。
 そういうところは7話でも見せてましたけど、DATSのメンバーじゃない彼女が言うからこそ力を持つ言葉なんだろうと思います。

 …この娘さんの影響を受けたんだから、そりゃピヨモンが強かったわけだ…。



・ピヨモン→アクィラモン→ガルダモン
 1度目の死亡はメルクリモンへの突貫。
 相当に強引な展開ですが、あれは自分の意志を示してメルクリモンの心を変えさせようという狙いがあった、と捉えることもできそうです。その結果メルクリモンは目的を失って引き揚げることとなり、言葉通りに彼は知香を守ることができました。

 しかし未練だったのか、それとも彼の知香を想う気持ちがそれほどまでに強かったのか、デジタマから強引に孵化して進化し、暴走をはじめました。ですが、これは言わば残留データ。ハッキリ言うなら、亡霊です。虚ろな瞳を見たときには、正直言ってゾッとしました。嫌悪でゾッとしたわけじゃありません。そのあまりに一途で悲しい意志の強さが、私を恐れさせたのです。しかもこの現象が、DATSの抱くメルクリモンへの「疑惑」を決定的にしてしまうのでしょうから、こんなに皮肉なことはありません。思えば、コトの発端はファルコモンのデジタマへの愛情が原因でした。
 愛情は絆をつくり、同時に争いをも齎す。ギリシャ神話の時代から変わりません。これもまた二面性ですね。

 最終的には完全体へ進化し、ジオグレイモンを圧倒します。メルクリモンを除けば実のところ、最強の敵だったのです。
 それほどの力を呼び込んだものが知香への想いだったのだろうと考えると、やりきれない気持ちになります。
 愛情は他のどんな思念にも勝る強さ……それを、こんな形で証明する事になってしまったのですから。

 …ナチュラルに愛情、愛情って書いたけど、そーいえばこの系統って「愛情の紋章」と関わりがあるんでした。なんとまあ。
 シャドーウィングの動画は元祖よりも迫力がありますね。



・小百合
 知香の発言にかなり大きな反応をしてたのが気になります。なんかこう、内心になにか思うところありそうで…。
 シャドーウィングの煽りを知香より食らってそうなのに、先に起き上がってた根性の人でもありますが。



・メルクリモン
 今のところの状況証拠で言うなら、彼は境界の件に関わってないと思います。
 行動はあくまでも王としてのもので、立場を考えれば特におかしな事はしていません。ピヨモンの行動と知香の涙に心を動かされたようですし、ファルコモンへの振る舞いも厳しい長以上のものではなく、その上回収したデジタマを手元で管理していたようでした。小間使いのゴツモンには慕われている風に見えますし、孵化の場面ではファルコモンたちの安全を気づかうような発言までしています。
 人間を嫌っているのは確かでしょうが、それをもって悪とはいえますまい。

 ただしDATSへの第一印象が最悪だったのもまた確かで、アクィラモンを放置したために起きた事件も見逃せません。
 何より知香を泣かせたというだけで、大やトーマには充分でしょう。当面は、大きな軋轢がきしみを上げそうです。

 でもイクトの件があるので、実はまだ五分五分の段階。
 イクトの持っているデジヴァイスを拵えたのが誰か、メルクリモンがどこまで関与しているのか…それ次第で状況が変わります。
 知らないうちに加担させられていた、という線もアリ。



・ファルコモン
 イクトを擁護するようなセリフを吐きまくっていました。
 イクトはすでに人間ではなく自分たちの仲間だという認識なのでしょうが、本質的には知香とピヨモンの関係そのものじゃありませんか…。
 なぜそこに気づけなかったんだ。

 ところで、メルクリモンを呼び捨てにしてました。ってことは本来メルクリモンの傘下じゃなく、外様の新参である可能性が大。
 つまり、デジヴァイスを持ったイクトと一緒にメルクリモンの里へ来たんでしょう。そのように導いたのは誰なのか……そこが問題です。
 メルクリモンはメルクリモンで呼び捨てを許しているようだし、わざわざ自ら彼を拾いに行ってるのでもし何かたくらみがあるのなら、そのために必要だから是が非でも連れ戻さねばならなかった、と推測できないわけじゃありまえん。根拠は弱いけど。

 で、当のイクトはまだ予告でちょろっと出ただけです。どんな子なんでしょう。




★名(迷)セリフ

「人間を守るために生命をなげうつとは……愚かな奴だ…」(メルクリモン)

 字面だけだとアレですが、ちょっとだけ入ってる間などから、嘲笑のたぐいではなくむしろ「嘆き」のセリフだと思います。
 人間の感情というのはデジモンにとって諸刃の剣で、彼はそれを嫌っているのかも。


「やめて!!! ……どうして人間とデジモンが、戦わなきゃいけないの!?
 …あたしとピヨモンが一緒に過ごせた時間は…ちょっとだったけど…でもあたしたち、友達になれたよ!?
 デジモンと人間が仲良く暮らせる方法だって、きっとあるはずだよ!!」(知香)


 非戦闘員が言うからこその言葉です。
 思わず全員が絶句。隊長だけはわりに冷静な顔ですが。むしろお母さんの反応が気になってしょうがありません。


「イクトは何も悪くない! イクトの悪口を言うなっ!」(ファルコモン)

 ベタボレですね。どうやらパートナー仲は良好らしい。



「……何が番長だ…。
 ……何がケンカ日本一だ……!
 知香の想いも…ピヨモンも……何ひとつ、守ってやれなかった……!
 結局オレの拳は、何の役にも立ってねェじゃねェかあああああっ!!

 …強くなりてェ……
 …もう…誰にも悲しい思いをさせないで済むような…

 強い男になりてええええええっ!!」(大)

 まあ、ここまで来たら説明不要。
 一皮むけて男を上げたってところです。



★次回予告
 早くもデジタルワールド突入。そして、新キャラのイクトが登場です。
 見たとこ、かなり野性的な少年みたいですが…年の頃からみて、意外に知香とのフラグもありそう。
 そういえば、敵はまた完全体か…。