デジモン少年イクト 森の番人ジュレイモン
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脚本:稲荷明比古 演出:伊藤尚住 作画監督:青井小夜 |
★あらすじ
薩摩隊長が語る衝撃の事実…。大の父・大門博士はデジモン研究の第一人者だった!
デジタルワールドで行方不明になった父を探す。目的がふえた大は、仲間を伴って決意も新たに出発する。
ところが、そんな彼らをいきなり襲撃してきた者がいた。しかもそれは、イクトと呼ばれる人間の少年。おまけに彼はデジヴァイスまで持っているではないか。デジソウルの力で進化したファルコモンはペックモンとなり、持ち前のスピードで大たちを翻弄する。そこへ、周辺の森を縄張りとするジュレイモンがあらわれた。幼年期のニョキモンたちを守っているのだ。だが上空からゴツモンが介入し、巨大岩が落ちてくる。大たちはジュレイモンへ味方することに決め、ふたたび登場したライズグレイモンの必殺技が危機を打ち砕いた。ニョキモンたちを巻き込むことを嫌い、イクトらは姿を消す。
イクトの襲撃で装備を失い、帰る手段を失った大たち。だが、ジュレイモンの情報でメルクリモンの居城にデジタルゲートがあることを知る。
かくて一行の目的は完全に固まったが、彼方のメルクリモンは
玉座の上で不敵に笑うばかりだった。
★全体印象
14話です。2クールめに突入。
始まっていきなりのサブタイトル披露は、もはや定番になりつつあるようですね。
1クールめの段階ではほかにも確定してない要素があったんですが、だいたい固定されたようです。
さて、サブタイトル通り噂の新キャラ・イクトが初登場。
…なんですが、思ったほどクローズアップはされず。どちらかというと謎をはらんだ登場のしかたで、とりあえずの顔見せといったところです。印象的にはジュレイモンと半々でした。これもまあ、タイトル通りではあるんですけど。
それと同じくらい重要な要素としては当然、明かされた大の父親とその素性についてのお話があげられます。
どっかで概要について目にした気がするのでなかば予想通りなんですが、こちらも新たな謎を呼んでいますねぇ。くわしくは後述で。
それにしても、見れば見るほど父親に似ている…案外親父似だったんですね、大って。男の子は母親に似る傾向があるというし、てっきり小百合さんの面影が強いのかと思っていたものですが、特にそーゆーわけでもなかったみたいです。
そして、しばらくの間デジタルワールド篇が続くということも今回で確定しました。
このペースだと2クール目ラストか3クール目頭…つまり、秋にはメルクリモンとの対決ということになりましょう。究極体の登場もちょうどその頃になりそうな予感がします。しかしながら、問題はその後。すでに伏線は多数敷いてあると思うんですが、これで「ヤツら」が一人でも登場しなかったら肩透かしを食らう羽目になりそうです。まわりのいろんな情報を総合するに、もっとも有力なのは憤怒をつかさどる「閣下」なのですが……。
作画監督にはキャラデザインの青井小夜さんが初登場。言われてみればなるほど、OPの絵に近い作画です。
ところどころ崩れ気味ではありましたが、トータルでは悪くありません。よく動いています。
演出も1話以来となるSDの伊藤さんで、全体的な印象はなかなか良いエピソード。もっとも個人的な事を言わせてもらえば、ここまで見てきたなかで予想を大きく下回るほどの外し具合をみせたお話…いわゆる「ハズレ」は、このセイバーズじゃ皆無なんですが。
★OP
今回から微妙に変わりました。進化形態のシルエットが半分だけ外れ、ライズグレイモン・マッハガオガモン・ライラモンの姿があきらかになっています。テイマーズでは最初から完全体まで明かされていて、以後第2クールまで外れませんでした。ここからすると、究極体一発目のデビュー戦は思いのほか早い、26話以前かもしれません。むろん断定はできませんが、今の進行度から考えるとそういうケースもあり得ます。
ただ、秋の段階でそこまで到達してしまうとしばらくは弾がないのでどうなんだろうという気も。他にも何かあるのかもしれませんが…。
そのほか動画が一部改善されていて、とりわけ最後の全員集合の場面ではあきらかに手を加えられた形跡がありますね。
全体的にレベルアップが為されているようです。
★各キャラ&みどころ
・大
すっかりいつもの調子に戻ったように見えますが、前回を経ているためかセリフに重みが増したように思えます。
それに、さりげなーくデジモンを殴らなくてもデジソウル発動できるようになってますね。魂こめた一撃であれば発動できるようになったのでしょうか。6話あたりに兆候らしきものはあったと見てるんですが、あの時は微妙だったけど今回はハッキリ「デジモン以外のものを殴って」発動しています。この違いはひじょうに大きい。もし次回以降に何もなかったら、戸惑ってしまうほどの変化ですね。
そして、完全体進化さえ早くも使いこなしているようです。
いまのところは最大戦力。次にはさすがにトーマも追いついてきますが、その強さは確実にレベルアップしているようですね。
・アグモン→ジオグレイモン→ライズグレイモン
今回はダイブ後にリアライズして(というか、勝手に出てきて)いましたが、前のケースを思い返してみると別にデジヴァイスの中にいなきゃダイブできない、というわけじゃないようです。あれはただ単に、転送機のスペースの問題でしょう。
で、前回から切り札としてのライズグレイモンがカードに加わった分だけジオグレイモンが弱体化したように見えなくもありません。今後しばらくはジオグレイモンに代わり、ライズグレイモンが出れば常勝の必殺キャラになるというわけですね。とは言っても相手は成長期の段階ですらガオガモンらの攻撃を避けてみせた強豪なうえレギュラーキャラだし、このお話だけ見ればジオグレイモンとてそんなに弱くは見えませんが。
・淑乃
2クール目にしてはじめて、母親との会話を見せました。相手は受話器の向こうでしたが、大きな布石として覚えておくべきです。
すでに予告でわかっている通り、完全体進化は過去話が鍵になりそうな雰囲気。となれば、彼女の過去……ひいては、ララモンとの出逢いも明かされる可能性がたかいでしょう。これは、いやでも期待がたかまるというものではありませんか。
ポジション的にはわりに現実的な意見を言う位置にいて、かかせない人材です。
デジタルワールドに来た時の大とのやり取りで、02の大輔と京のやり取りを思い出し、懐かしくなりました。
実はちょっとあずまんが大王も思い出したんですが。
・ララモン
デジモンでありながらデジタルワールドが初体験という彼女。
あまりに人間臭すぎる言動は、パートナーとのつき合いの長さを感じさせます。目をみはるような活躍をできていない背景が戦闘となればいつも夜だとか曇りだとかいろいろ言われてますが、リアルワールドでの生活が長すぎることもあるのかもしれんなぁ…などと、ふと思いました。
正直、どういう過去があるのかいちばん読めないのが彼女たちです。どんなものを見せてくれるか、いまから楽しみにしたいところ。
・トーマ
大が完全体進化をなしとげたのに加え、その父親がデジモン研究家だと知った彼。その心中はいかばかりでしょう?
大については思いのほかそれほど思うところはないのかもしれませんが、その父親についてはおおいに興味があるようです。小百合さんへの一種特別な感情も朧げながら示されていて、本人は否定も肯定もしてません。このへんは、次回への仕込みでしょうか。
ぜひとも期待したいところです。
・ガオモン
こちらもペックモンのスピードに驚愕し、次回の伏線になりえそうなセリフを吐いています。
しゃべっていないように見えて、細かいところであれこれ言っていますね。
・薩摩隊長&クダモン
よく考えてみたら肝心なことを言っていませんが、この人らにとって調査隊のメンバーはどういう位置づけなのでしょうか?
あらためて見てみると調査隊メンバーの中におっちゃんらしき人がいるので、ひょっとすると隊長の恩師がおっちゃんなのかな。
で、大パパのおかげで戻ってきたおっちゃんが隊長らの協力と機密庁の後援を得て作ったのがDATSだとか…。
で、そうするとイクトのデジヴァイスを作ったのが誰かという話になるんですよね。
基礎理論をつくったのはたぶん、大パパでしょう。それを実用レベルに持っていったのがDATS。
ほかにアレを完成に持っていけそうなのはと言えば……。
・イクト
途中参加にして単独で敵に回る人物ということで大変なナマイキ系を想像してたんですが、ちょっと予想外でした。
理論武装してるわけでも口が立つわけでもない、突進系の純朴少年です。一本気すぎてものすごく騙されやすそう。……あのネイティブアメリカン系なペインティングで気づくべきだった……って、まんまもののけ姫じゃないですか。…まさか女の子じゃないだろうな。
そんな彼ですから、むしろファルコモンのほうが保護者のよーな状態です。
ただし、いつも一緒に行動しているわけじゃないみたいですが。
気になるのは、大の父が行方不明になったという話が出たのと同じ回が初登場話という件。
ミスリードというのでなければ、
彼が大パパと深い関係があるのはまちがいありません。あるいは冗談抜きで大パパ本人だったりして…?
髪の色が違いますが、これは逃げ道がありますし。
声を演ずるは釘宮理恵さん。前番組のガッシュではティオを演じていたレギュラーです。しかもデジモンシリーズにはたしか出演経験がないので実のところ予想してなかったわけじゃなかったんですが、ある意味斜め上をいかれました。女の子を演じるときは大抵の場合おしゃまで生意気な娘さんが多く、その典型例がティオなんですが、男の子役となると一転して純朴な、それでいてどこか陰のある役柄ばかり。イクトは後者にあたるため、人選としては意外なようでいてけっこうはまっているのかもしれません。というか、私が釘宮さんの少年役が好きというだけなんですけど。
デジタルワールド暮らしが長いだけあって地の利に長けているようですが、ガチンコの殴り合いとなるとさすがに大相手じゃ分が悪いようです。
補うためのブーメランなんでしょうが、これも大に木っ端みじんにされました。ひとまず引き分けってところですか。
・ファルコモン→ペックモン
メルクリモンはある程度思うところあってイクトを好きにさせているのでしょうけど、彼はどーもベタ惚れですね。
なんせ、イクトへの口ぶりが他とぜんぜん違います。一人称「僕」になりますし。なんつーかこれが本当のツンデレってヤツでしょうか。
戦いにおいてはほとんど有効打を受けてませんが、そのかわり大たちへも決定打を出せていません。はたして、これ以上の進化ができるのかどうか。イクトの態度はどちらとも取れるものなので、現状じゃ判断がつきませんね。
ただし、同胞でもあるデジモンたちを巻き込むことは避けていました。この点から彼らは悪ではありません。
12話でみせたファルコモンの行動も元を正せば悪とはいえないものなので、微妙な立ち位置がつづきそうです。
今後しばらくは彼らふたりより、各地の強敵を当面の打倒標的と見立ててお話が進んでいくのでしょう。
・ ゴツモン
ただの小間使いと思いきや、侮りがたい念動力(?)を持っています。
だてにメルクリモンの側近をやっているわけではないようですね。
攻撃の無差別ぶりからみて、メルクリモンのためなら多少のダーティは厭わない考え方と見えます。
まあ、あの場合は事情がよくわからなかったのかもしれませんが…。
・ヤンマモン
ゴツモンの乗騎。なんとシリーズ初登場です。
立場からして口は聞きそうにないなあ。
・ジュレイモン
02やフロンティアにも出たデジモンですが、まともに口をきいたのは01以来。イメージがそうさせるのか、美味しい立場が多いですね。
声はエコーを通すと大木民夫さんっぽく聞こえますが木村雅史さん。ああ、思い出した。ホエーモンです。
テイマーズではジジモンなども演じてるみたいなので、そりゃ味方寄りにもなるというものでしょうね。
彼が示してくれた事実はふたつ。メルクリモンに従うデジモンは思いのほか少ないということ。
そしてもうひとつは、彼のように悪意のないデジモンも確かに存在しているという事実の再確認です。
ピヨモンの件を経ているので、そんなに違和感はありません。
キャラの中ではこのデジモンだけ塗りにボカシが入っていて、なんだか浮き気味でした。週間ストーリーランドみたい。
・ニョキモン
もしかして、こんなに大きくテレビに写るのは初めて…? 01にも出たと思うんですが。
中にはここから、ピヨモン系に進化する個体もいるんでしょう。
・メルクリモン
今回はやや悪役っぽい表情が目立ちました。
放置を命じたのはどうせたどり着けないと思っているのか、来たとしても自分が出ていって潰せば済むことだと思っているのか。
それとも、イクトらに一任しているのか…?
★名(迷)セリフ
「約束して。必ず戻ってくるって…。愛する夫と息子を両方ともデジタルワールドに奪われるなんて、嫌よ?」(大門小百合)
「奪われる」というセリフからみて、やっぱりこの人はどっかでデジモンを憎んでいるのかもしれないとあらためて思った反面、
それも夫と、その血をつよく受け継ぐ息子への深い理解の前では溜息に変わるだけなのかもしれないと思いました。
この人はなかなかに深い。
…それにしても大門博士の情報が全部トップシークレットなのは気になります。
機密省としてよほど知られたくないことが紛れているのか…。
「…私は信じたいのだ。彼らに秘められた無限の可能性を…」(薩摩)
ライズグレイモン登場を受けてのセリフでしょうが、ぱっと見月並みだけど思うところありそうに感じるセリフです。
「あきらめんな! 男が魂込めた拳には、不可能なんかねェんだ!」(大)
自分の強さをどこかで縛ってしまっていた大。
強くなろうという想いを得たことでひとまわり大きくなり、その壁を破りました。
そんなわけで、セリフも微妙にスケールがでかくなってますが、こめられた重みってものは違ってきていると感じます。
「いいって事よ。 …確かにあんたの言うとおり、人間ってのはバカなやつばっかりだ。
だがな…バカだからこそ熱くなれる。見ず知らずのデジモンを助けたりもできる…!」(大)
このへんは1クール目でさんざん描いてきたことなので、それが効いています。
デジタルダイブに関しても5話で仕込まれているので、打たれた布石はいまのところ有効に活用されているみたいですね。
★次回予告
大に続きトーマも完全体進化。ガオガモンも飛行可能になりそうです。
さらに、メタルファントモンがシリーズ初登場。てっきり究極体かと思っていたこのデジモン、完全体でした。
となれば、大のセリフに反しそれほど強敵というわけじゃないかも。