標的はイクト!? ゴツモンの企み
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脚本:大和屋暁 演出:門田英彦 作画監督:清山滋崇 |
★あらすじ
薩摩隊長の口から明かされる事実。それはデジタルワールド探検隊の発足理由と、イクトの素姓だった。
10年前、超空間研究の第一人者である野口夫妻のもとから神隠しのように、デジタルワールドへ消えた赤子。それが、イクトの正体だった。
かくして、野口夫妻へ会いにいくことになる。初めは拒否していたイクトだったが、無限氷壁でゴツモンから受けた仕打ちが
心に引っかかりを作っており、おとなしく従うことに。
道中だんだんと打ち解けていく一行だったが、そこへオオクワモン3体を連れたゴツモンの襲撃が。
戦いに乗じて、ゴツモンはイクトを消そうと企む。なぜという問いに答える声は、あまりにも非情なものだった。
間一髪、大が助けに入り、オオクワモンも2体までがライズグレイモン、ライラモンによって倒される。
形勢逆転に出くわし、ゴツモンは捨てゼリフを残し逃げ去っていった。
自分は人間……デジタルワールドに災いを呼ぶ、忌むべき存在…。イクトはゴツモンの虚言にショックを受け、膝を落とし涙する。
そして、いつになく神妙に佇む彼を乗せた車が今、野口夫妻のもとに……。
★全体印象
19話です。次回でついに20話。
ひとやま越えて再び小康状態。しかし勿体ぶることはなく、さっそくイクトの正体が明かされました。
12話からこっち連続ストーリー形式に移行してるんですが、毎回毎回かならずポイントになる要素が埋め込まれていて見落とせません。
隊長の話の中にも今後へのヒントが隠されており、アタマを捻らせてくれます。
イクトの揺れる心も正攻法で段階的に積み上げられつつあり、次で迎えるであろう彼にとり最初の山場へ、着実に布石が打たれています。
また、人間界の様子へ我を忘れて見入る彼の動物的な好奇心は可愛らしく、作画もよいので、イクト好きにはこたえられない一篇でしょう。
年齢もあり、大の弟分になりそうな雰囲気も強くなってきました。これは冗談抜きで知香とのからみが出てきそうです。年齢も近いし。
というわけで、この回はイクト仲間化計画・第一段階。次ではいよいよユキダルモンとの出逢いが描かれるようなので、それで第二段階ですね。
第三段階を経る必要があるかどうかは、20話を見てみないとまだわかりません。
上にもちょっと書きましたが、この回のトータルバランスはシリーズ全体で見ても上の方に入るであろうクオリティ。
毎回このくらいだといいんですが、そうはいかないのが伝統のようです。
そうは言っても、これで前4シリーズより平均アベレージは上がっているはずなんですが。
そういえば、大和屋脚本にしてはめずらしくトーマがあまり出てきませんでした。
かわりに淑乃のセリフが多めで、また別のアプローチが為されているように感じます。
★各キャラ&みどころ
・大
イクトに世話を焼く姿は、文字通りの兄貴が似付かわしいもの。
その背景にあるものがまだ見ぬ父親への思慕なのはこれまでの積み重ねで明白であり、イクトと自分とをダブらせるところがあったのでしょう。
もちろん人間界育ちで母親なら健在である大とイクトではだいぶ事情が異なりますけど、それでも半分はわかるってことですから。
戦闘ではあいかわらずの暴れっぷりで、立ちはだかるなら人間だろうがデジモンだろうが殴り倒して進む人生。
今回は14話以来ひさびさとなる、段階を踏んでの完全体進化でした。16〜18話では殴って即、フルチャージできていたので奇妙ではあります。
もしかすると日にちや殴り具合によってデジソウルの量が乱高下するのかもしれません。いい感じに入ったら2段階進化とか。
それにしても、彼に殴られたデジモンはみんなかなり痛そうです。メルクリモンでさえ思わず怯むほどでした。
腕力というよりは、拳のデジソウルに影響を受けるのかも。
・アグモン→ジオグレイモン→ライズグレイモン
メルクリモンとの激戦を経たあとでも、13話ほどはダメージが残ってるように見えません。これはガオモンとララモンにもいえ、
完全体に進化していたためにダメージが軽く済んでいたのでしょう。日々確実に強くなっているということですね。
そんな彼らには、もはやそこらへんの完全体じゃ相手にならないようです。
ライズグレイモンになってからはほぼ一方的でした。
オオクワモンを強引に引きずって崖にたたきつける場面で、圧倒的なパワー差を描写してくれていました。
・淑乃
上述のとおり、大和屋脚本にしてはよく喋ってる印象。
長いセリフも多く、あらためて新垣さんの上達ぶりを実感させられます。叫びの演技もだんだん良くなってきたような。
そーいえば大に運転を代わってもらいたがってましたが、年齢的にまだ無理なんじゃ?
それともDATS所属となった時点で、そこらへんは超法規となるのでしょうか?
だけど免許があろーがなかろーが、大に運転させるのはゆかり先生に運転させるのと同義な気がするんですが……。
ぼやきながら粒ガム引っ張り出してムシャムシャやってるあたりに、妙な親しみやすさをおぼえてしまいます。
・ララモン→ライラモン
前回辛酸をなめましたが、今度はしっかりと白星取得。オオクワモン相手にまったく危なげない勝ちっぷりです。
少し前まで、成熟期にすら手を焼いていたのが信じられません。彼女たちが目覚めた力はまさに本物だったみたいです。
でも、もうサンフラウモンにはあんまりならないんだろうなと思うと少し寂しい気もしますね。あの声はもう聞けないのでしょうか…。
キメ技は17話と同じくマーブルショット?でしたが、18話で使っていたのはライラシャワー。強力なのはどっちなのでしょう。
必殺技として紹介されているのが後者だし、メルクリモンに対して出した技でもあるのでこちらのほうが強力なのかもしれません。
でも敵を倒してるのはいまのところマーブルショット?なわけで、どうしてもこちらの方に強力なイメージがついてしまいますね。
一発一発がサンシャインビーム級の破壊力を秘めていそうです。
別の場面では、01最終話のリリモンばりに大をぶん投げるという荒技も披露していました。
そのシーンをよく見ると、やっぱり相当でかいです。4メートルはありそう。
・トーマ&ガオモン
大が勢いあまってぶっ壊した転送装置の修繕にかかりっきりで、出番は前半しかありません。しゃべってる場面自体も少ない。
思い返すと、16話からこっちワリを食ってばかりです。まあ、後からいくらでも挽回できますが。
隊長たちはむしろこれで良かったと言ってましたが、修理するのがトーマなのは変わらないので、どっちにしろ災難ですね。
まあ、オペレーター嬢お二方もできるかぎりバックアップはするんでしょうが。
修理期間2週間というのは、ストーリーの中でタイミングを決めるのか、それともリアルで2話ぶんなのでしょうか?
オペレーターさん方といえばカメモンがいないので、お茶くみはなにげにポーンチェスモンが肩代わりしていたりします。
・イクト
「お前は生まれてこなかった方がよかった」。
これは、
彼が心のどこかでずっと恐れていた類いの言葉だったのではないかと思います。
デジモンの間で育ち、デジモンを同類だと思って、思い込もうとして過ごしていたけど、やはりその違いは大きくて。
それでも人間が原因?でユキダルモンが身罷るまでは、幸せもあったのだと思います。
しかしそのユキダルモンがデータの痕跡すら残さずに死に、そのうえ原因が自分と同じ姿をした人間だったと知ったときから、
彼の中で何かが壊れそうになった。それを押さえつけるため、ことさらに自分はデジモンだと、人間ではないと主張しつづけることで、
無意識のうちに自己防衛をしていた。それが、イクトという少年だったのでしょう。
メルクリモンはそんなイクトを不憫に思って、後見人になったのかもしれません。
一帯の支配者である彼が庇護にまわることによって、イクトもかろうじて自分を保つことができていたのですね。
けれども彼はここへ来て、善意と悪意の両面から「お前は人間だ」と突きつけられてしまった。
自分はデジモンではない……でも、いまさら人間だと言われてもどうすればいい? まして人間は、母親代わりだった存在を殺した憎悪の対象。
いまの彼は否応もなく、両方の世界のどこにも居場所がない中途半端な存在となってしまいました。
だから次回は、「お前はここにいていいんだよ」という答えをもらうためのお話になるのでしょう。
所長も隊長もそれを見越して、彼を両親に会わせようと考えているのですね。
あ、そーいえばちゃんと男の子でしたね。
・ファルコモン
ユキダルモン絡みとなると、イクトへの言葉を選びがちになる彼。
イクトのパートナーであると同時に兄弟でもあるので、弟?がどれほどユキダルモンを慕っていたか、身に染みているのでしょう。
だから迂闊にユキダルモンのことは話題へ出さないし、無神経な一言には怒ったりする。
その一方、先に食料を口にして毒味のようなことをやっていたり、愛情がうかがえます。
セリフ運びなどからみて、メンタル面でユキダルモンの影響が強いのかもしれません。
ゴツモンのこともまだ仲間だと思っていますが、何はともあれまずイクト。ベタ惚れですね。
たとえ世界のどこにも居場所がなくたって、イクトには彼がいる。そういう事ですか。
・ゴツモン
わざわざ危険な人間界行きを申し出てまでイクトを排除しようとするとは、悪意にも似た忠誠心のなせるわざか、
それともメルクルモンの厚遇を受けるイクトへの嫉妬がそうさせるのか……。
メルクリモンは連れ戻したがっているのに「イクトの排除はデジタルワールドの総意」と言い切ったり、独断専行と越権行為が目立ちます。
そうまでさせるあたり、彼も人間にはそうとう恨みがあるみたいですね。
かと思えば成長期でありながら完全体3体を率いたり、なかなかに底知れぬ実力者です。
メルクリモンの側近を勤めるのは、どうも本当に伊達じゃないんじゃないかという気さえしてきました。
さて、彼の去就たるやいかに…。
・オオクワモン
OPで毎回殴られてる邪悪獣オーピー、それがこのオオクワモンです。
今回もやっぱり殴られました。完全体のくせにジオグレイモンを押し切れず、拳くらってダウンするあたり情けなささえ醸し出します。
終わってみればまったくいいところがなく、完全にやられ役でした。3体いるんだからもうちょっと頑張れや…。
けど、彼らはどうやって人間界に来られたのでしょう? ゴツモンのセリフが伏線になっているのでしょうが…棲息していた森に秘密が?
それとよく考えてみたら、このデジモンが口からビーム吐くのは根本的におかしいような気がしてきました。
・メルクリモン
なんだかんだでイクトが心配みたいです。
ゴツモンへは微妙に不信感を抱きはじめているようにも…。
ところで、湯島のおっちゃんはどこへ?
・隊長&クダモン
どうやら、隊長らしき影が探検隊にいたと思ったのも気のせいじゃなかったようです。
しかも彼が元刑事で、湯島のおっちゃんが上司だったとは。当時の髪形が今より老けて見えるのは気のせいでしょうか?
こうなると、一体いつパートナー同士になったのかが気になってきますね…。
・探検隊の謎
今回で、正確なメンバーの内訳があきらかになりました。
湯島所長、薩摩隊長、大門博士、博士の助手・倉田、そして野口夫妻。
発足の原因は失踪事件。当時から、どうも横浜を中心に起きていたみたいですね。興味深い事実だ。
デジモンたちが人間のことを知っていたのもむべなるかな。もしかすると、どこかに人間たちのコミュニティがあるのかもしれません。
さて、野口夫妻の秘密は明かされつつあるし、所長と隊長が信頼のおける人物なのはもう疑いありませんが、大門博士については謎のまま。
さらにニューフェイスとして、聞き流しがちですがその大門博士に助手がいたことが明らかになりました。
回想シーンに出ていた、ひょろ長くて神経質そうな眼鏡の青年がそうですね。博士と同じくまだセリフはありませんが、
肝っ玉の小さい性格をあらわすカットが一つだけ用意されています。…この男、今後要注目かもしれない。
で、探検隊がDATSの前身であることもハッキリしたため、流れ者の岬にあったパソコンは探検隊のものだということになります。
しかし当然、それを使っていたのは野口夫妻じゃありますまい。専門分野が違います。元刑事だというなら、所長や隊長でもないでしょう。
こうなると、残りはふたりに絞られますね。もっとも、関係のない第三者がマシンだけを使っている可能性も無くはないのですが…。
それにしても野口夫妻。
ダンナのほうもかなりインパクトのある外見ですが、奥さんがえらい美人です。イクトは間違いなく母親似だ。
なんか10年たってもあいかわらず美人みたいですし、次回はいろんな意味で期待できそう。
・花村祢音
ラジオでさり気なく新曲を発表したと流れていました。
地道にかどうかは知りませんが、頑張っているようです。
★名(迷)セリフ
「……壊したな」(ガオモン)
「…壊したわね」(ララモン)
なんでそんなに冷静なんだ君らは。
あまりのことに驚くことさえできなかったか、半分予想してたのか。予想してたんなら止めろよとも思いますが時すでに遅し。
最初聞いた時は、前者のセリフが「……終わったな」に聞こえたものですが、当たらずとも遠からず。
「なんてことを……誰が修理すると思ってるんだっ!」(トーマ)
このセリフから、大には画面へ写る以上の被害を受けているのであろうと容易に想像できてしまいます。
トーマ…いつのまにこんな苦労性に……。
「……親がいるなら、会わせてやりてェ。それだけの事だ」(大)
必要以上に表には出しませんが、父親への思慕が垣間見える一言でした。
淑乃は淑乃で親は健在だけど、離れて暮らしているし断絶の時期もあったでしょう。同意のセリフには含蓄をおぼえました。
「イクトは人間…そう、人間なのです!」(ゴツモン)
あくまでもデジモンと人間を明確に線引きしたがるゴツモン。
イクトが何者であれ、彼という存在そのものを守ろうとするファルコモン。どちらもデジモンです。
そしてイクトの母親代わりだったユキダルモンを殺したのも人間なら、彼を救ったのも人間である大と淑乃。
デジモンであろうが人間であろうが、そこにそれほどの大きな違いは見受けられません。
ならば、自分が自分でいられる場所を選び、ときに掴み取るのが男ってものでしょう。大ならそう言うのかもしれません。
★次回予告
ハグルモンが取り憑いたハウスジゲン…じゃなかった、ハウス巨人という変則的な敵が相手。意外に強そうです。
ピノッキモンが操っていた屋敷巨人を思い出しました。
そしてなんといってもイクトママに期待であります。