倉田を追え デジモン殲滅作戦始動!

 脚本:稲荷明比古 演出:園田誠、伊藤尚住 作画監督:仲條久美
★あらすじ
 倉田に先手を打たれ、デジタルワールドへ渡る手段を失ってしまった大たち。
 残された最後の手段として、国家機密庁に軟禁されていた野口夫妻を救出、その協力を仰ぐことになる。
 やっと再会できた息子のこともあってはじめは拒否する夫妻だったが、当のイクトの強い意志を知り、ついに助力を決意した。

 かくして野口邸に残されていた転送装置を使い、デジタルゲートの開放が行われる。一行は勇んでゲートに飛び込んでいくが、
 謎の三人組に迎撃をくらった。挑みかかる大の拳からは、デジソウルが…驚く皆の眼前で、3人はそれぞれデジモンへ変貌する。
 人間と融合したバイオデジモンだ!

 見かけはアーマー体にもかかわらず、圧倒的な強さでたちまちアグモンたちを追い詰める3大バイオデジモン。
 思わぬところで窮地に陥った大たちを救ったのは、遅れて駆けつけた薩摩隊長だった。薩摩は部下たちを先にゆかせ、自らはクダモンとともに
 バイオデジモンたちと激突する。閃光とともにゲートは扉を閉ざし、大たちはどうにかデジタルワールドにたどり着いていた。

 隊長の行動を無駄にしてはならない。誓いも新たに、決死行の第一歩を踏み出すわれらがセイバーズだった。



★全体印象
 27話です。第3クール突入ですね。
 そして今回もやっぱり2分遅れでした。いつまで続くんでしょうか?

 野口夫妻の救出とそれに伴ったイクトの物語のひとまずの決着、新キャラの登場、デジタルワールドへの大きな舞台移行、
 そして薩摩隊長の出戦と、「これでもか!」とばかりに詰め込まれた充実度満タンのエピソードに仕上がっています。この内容の濃さは
 12話をも凌ぐものがありますね。集大成と新展開が同時に来たような密度で、後半一発目としては、これ以上ないくらいです。

 象徴するように、演出にはSDの伊藤氏を迎えています。また、作画にも新たなローテが加わったようす。
 かわりに誰かが抜けたのでもないかぎり、これでさらに層が厚くなったかもしれません。

 思えば第2クールは予想外につぐ予想外で、大たちDATSの面々も苦闘の連続でした。
 20話以降に至っては倉田に何もかもしてやられた形で、これが現状における強力な行動原理のひとつとなっています。
 彼とその一派との対決が第3クールのキモなのは疑いないところですが、しかしラスボス級としてはいかにも役者不足。
 いままでの展開の速さからみて、第4クールへの仕込みはこれから始まるでしょう。ますます目がはなせませんね。

 さて倉田は冒頭、これで名実ともにDATSは消滅したと言っていました。
 しかし計らずも、あるいはスタッフの計算通りにか、大たちは入れ替わりで新たな使命を背負ったことになります。
 そう、デジタルワールドを……デジモンたちを救う使命を背負うことになったのです。

 それこそがセイバーズ。命の重さを知り、命のやり取りをする痛みをも知り、無辜へ及ぶ心ない災いを砕く救助隊。
 DATS崩壊により、むしろこれで名実ともに彼らは「デジモンセイバーズ」になった。私は、そう捉えています。
 長い目でみたら、DATS支部潰滅も次のステップへ進むための必然で…ただ少し、その時が早まっただけだったのかもしれません。



★OP
  変わるかな変わるかなと思っていたら、特になにもありませんでした。
 しかしまだ究極体進化をしていないので、そのときに変わるのかもしれません。イクトはその時に追加かな?
 01やフロンティアのときみたいに見送りになる可能性もありますけど…。



★各キャラ&みどころ

・大
 初対面では野口博士に詰め寄った彼でしたが、今回はちゃんと礼を言っていたり、男としてかなり見直したみたいですね。
 あいかわらずお話の強力な牽引役で、ずっと苦戦つづきでも決して音をあげず、どこまでも食らいついていく姿勢が確立してきました。
 淑乃もトーマもイクトも、そんな大にすっかり一目を置いています。オチョクリも一種のレクリエーション。

 もちろん彼とて最初からそうだったわけじゃなく、大いに壁となってくれたのがメルクリモンでした。
 あれで「俺は強い」から「俺はもっと強くなりたい」へと自身の意識を変革させ、次のステップへ進む事ができたのです。
 彼にとってはデジタルワールド救出そのものが、メルクリモンへの借りを返すこととすでに同義なんじゃないでしょうか。
 その向こうに、父の背中を見ているわけですから。

 意識してないかもしれませんが、きっとそういう風に昇華されているんだと思います。


・アグモン→ライズグレイモン
 第1クールの快進撃が遠い昔のような厳しい戦いを強いられている彼。
 でもよく見ると、要所要所では締めてるので意外に勝ち星はあります。ただ、さすがに格上とまともにやり合って勝てたためしがないので、
 事実上の上限である究極体になった後がよけい気になるところ。なにしろバイオデジモンなんて裏技が出てきてしまいましたから、
 何が起こっても不思議じゃありません。あの3人にしたって、まだ何か奥の手があるかもしれないわけですし。

 ただ、さすがに30話代そこそこで出てきそうな形態で打ち止めとも思えないので、映画ネタなんかも絡めてくるかもしれませんが。


・トーマ
 母親の伏線は仕込んでありますが、イクトの描写に食われて第2クールでは貧乏籤ばかり引いていました。第1クールで主役の回が多かったのは、
 こうなることが分かっていたからではないかと今なら推察できます。あの貯金があればこそ、影が薄くなってもなんとか
 空気になり切らずに済んだのです。スタッフさえその気なら、これから彼の大逆襲がはじまるでしょう。断言してもいいくらいです。

 少なくともミラージュガオガモンへの進化エピソードがあるのは確定なわけですから、ほかにも温存されたドラマがあるとすれば
 かなりの面目躍如が期待できます。楽しみに待ちましょう。


・ガオモン→マッハガオガモン
 やられシーンが勝利シーンより多いという、ある意味トーマ以上にビンボー籤を引いていた彼。全然出てこない回さえありました。
 それでも初進化で難なく勝ちをおさめていたり、23話で単独の活躍場面があったのは見逃せません。
 旧シリーズには、メインキャラにもかかわらずシリーズ通しての単体でみた勝率が、第2クールの彼にさえ及ばないという例がありました。
 そういった手合いにくらべたら一時的に落ち込んだくらいは、どうということもないと思います。

 なあに、これからですよ。気を落とすのは早すぎますって。


・淑乃
 今回もやっぱり運転手でした。大もトーマも運転してる場面を見たことないので、免許持ってるのはやっぱり彼女だけなのかな。
 あ、でもトーマはモーターボートなら運転してましたね。小型なら免許がいらないそうですが、結構な大型モーターボートでしたっけ。

 それはさておき、 眼鏡の扮装となにげにへそ出しのラフな普段着がポイントです。
 新垣さんもじわじわ発音のメリハリが上達してきていて、デジソウルチャージの叫びも様になりつつありますね。

 彼女の持ち味は、戦闘に出なくても確保される一定の存在感。
 第1クールの苦戦を逆利用した印象に残る進化エピソードなど、うまく仕掛けられていました。
 ここからどういう風にあのロゼモン進化へ繋がっていくのか、ある意味で誰よりも楽しみ。


・ララモン→ライラモン
 今回もシング・ア・ソングが大活躍でした。人間相手のスペックならもしかしてNO.1?
 戦闘ではステゴモンに煮え湯を飲まされましたが、彼女の力とてまだまだこんなものではありません。
 華麗なる逆襲の日を待ちましょう。


・イクト
 紆余曲折を経て、今回の境地へたどり着きました。振り返れば、長いようで短かったですね。
 彼の憎悪と苦悩、葛藤、そして決意がほかを犠牲にしてでも丁寧に描かれたのは、彼自身が第3クールへの原動力のひとつだから。
 デジモンと人間はともに生きられる。そのことを存在そのもので証明しているのが、彼という少年ですもの。

 言い方を変えるなら、デジタルワールドを救いたいという皆の動機の具現化が、イクトなんです。もし彼の存在なしに
 「デジタルワールドを救いたい」とぶち上げられても、ずっとウソ臭く聞こえてしまうおそれがあります。
 しかし、いまやイクトは大たちの仲間。仲間の願いは、皆の願いです。これにより、見ている方もさほど無理なく入り込めるというわけですね。

 そんな彼の役割は、この回においてひとまずの区切りをむかえました。
 まだ10歳そこそこなのに、立派なもんです。倉田なんぞより、ずっと大人になりました。


・ファルコモン
 Bサンダーバーモンにやられた傷のせいで、今回は戦闘不参加。
 フルメンバーで戦えなかったのも痛かったですね。勝負は時の運とはいえ、めぐりあわせが悪かった。

 とはいえ、あれだけの状況をなんとか切り抜けたられたのです。風は彼らに吹いていますよ。


・薩摩隊長
 前々からの「後ろでどーんと構えてる皆の親分」イメージが効いたのか、と・に・か・く滅茶滅茶かっこいいデビュー戦でした。
 他にもDATSカーから鮮やかに脱出するシーンなど、今回の隊長はイカしすぎです。
 私服の想像がつかなかったのですが、トレンチコートできましたか…違和感ねー(^^;)

 立場や抑えた見せ場から、近年なら特撮ですがドギー・クルーガー=デカマスターを彷彿させる仕上がりです。
 サングラスや回想シーンの髪形からみて、モデルはやっぱり若かりし頃の渡哲也…?

 大は隊長についてハッキリ見解を述べたことはないんですが、隊長として、漢として一目も二目も置いているのはわかります。


・クダモン→レッパモン→チィリンモン
 ついに進化形態を見せてくれました。待ってましたよー!
 四聖獣を束ね五霊太極を司るファンロンモン。そのモチーフである黄龍と同一位置にもみなされる麒麟をその名に持つだけあって、
 にわか仕立ての虚仮脅しごときに遅れはとらないようです。それでこそ待った甲斐があるというもの。

 これだけ強いんなら最初っから出ていけばいいのにと思ってしまいますが、そこはそれ。
 管理職という立場は部下たちとちがい、テイマーだけをやっていればいいというわけじゃありますまい。
 国家機密庁からの突き上げを一身に受け止めていたのは疑いないところですし。
 14話あたりの会話を思い出すと、大たちの成長もうながしたかったんでしょうね。

 あ、あとパワーがありすぎるので進化禁止令が出ていた可能性もあります。それもある程度やむなし。
 だとしてもDATSが解散になってしまったので、とりあえず関係ありませんが。


・白川さんと黒崎さん
 中盤でいきなりコスチュームが変わりました。どうやら、ライダースーツみたいです。なかなか色っぽい。
 戦力的問題もあって残念ながら待機組ですが、野口夫妻のこともありますから仕方ありません。後詰めも重要な仕事です。

 ステゴ野郎ことイワンの好みは、どうやら黒崎さんのほうみたいですね。白川さんはリアルでキンパという認識なのか。


・大門一家
 記憶の件が完全にスルーされて、なかったことになりました。ドヤドヤ入ってきたのを見て一発で記憶が戻ったのかなあ。
 記憶消去なんて、結局そんなもんってことなんでしょうか。

 なにげに知香がファルコモンの手当てをしていて、ちょっと感慨ぶかいものがありました。


・野口夫妻
 すべてを受け入れ、覚悟を決めて今度は親として、イクトを送り出しました。
 母親と父親の違いが、ここでも良く出ています。美鈴ママはとにかくイクト第一で、そのためならまわりの現実に目を瞑ることさえ厭いません。
 でも野口教授は理性の人であると同時に男であり、父親です。イクトがデジタルワールドでなにを見てきたのかは知らないけれど、
 背負っているものの大きさは感じ取り、理解した。そしてまた、共感できるところも見つけたのでしょう。この子はもう立派な男だと。

 20話とあわせて見ると、野口教授は優柔不断そうに見えて言う時は言う人ですね。
 きっと美鈴ママも、そういうところに惚れたのでしょう。彼女とてイクトの気持ちまで無視したいわけじゃないし、
 だからこそ教授に訥々と説得されることで、最後には折れたのですね。別の観点を見せられ、そこに立つことで、
 イクトを本当に愛しているならどうするのが一番いいのか認識したんでしょうね。

 もちろん、それで母親の情までを封じられるわけじゃなく…涙の抑制がきいていませんでした。
 そんな彼女が最後の最後で笑えたのはきっと、最後の呪縛を打ち砕きに発つ愛息子の、男になろうとしている顔を見たからなのでしょう。


・倉田
 相変わらずあざやかな逃げっぷり。その前にしっかり姿を現して挑発のかぎりを尽くすあたり、セオリーを心得ています。
 野口邸のゲートを壊さずに放置しといたのは、大たちの追撃ルートを絞って出ばなをくじくため……というのもありそうですね。
 国家機密庁としては壊したくなかったでしょうし、実際、ナナミたちは夫妻に手出しはしませんでした。
 このへん、見越していたんなら悪魔的です。もし味方だったら、さぞ心強かったでしょうに…。

 セイバーズの作風からみて、ここまでやってしまった彼には救済など用意されますまい。むしろ、悪役として最高の花火になるのが規定路線。
 良けりゃ命は助かるでしょうが、まともな余生は送れなくなるでしょうね……いや、悪けりゃ…かな。
 もう一度言いますが、神殺しは怖いですよ?

 少なくとも私は、個人的感情を別にしてもそのように予想し期待しています。それが、彼の役目をまっとうする道でもあるんですから。
 最後の最後で逃げ道に入るなど、悪役の風上にも置けないではありませんか。


・ 3大バイオデジモン
 コウキ=バイオサンダーバーモン、ナナミ=バイオクアトルモン、イワン=バイオステゴモンの3体。
 見るからにアブなそうだったり思ってることがダダ漏れになるサトラレ体質だったり、どうも精神的に妙なことになってる気がしますが……
 案外、元からなのかもしれません。なんせ、あの倉田が選んで力を与えたわけですから。

 で、進化後の姿はアーマー体。これはなかなか意味深ですね。

 もともと、アーマー体というのはデジメンタルを使っての進化で、疑似進化という説もあります。
 成熟期から進化したディグモンのような例もあるし、ほかの形態とはやはり形成パターンがちがうのかもしれません。
 倉田はここに着目して、アーマー体の核をつくる構造体をパクってきて3人に移植し、そこに疑似デジソウルを媒介させることによって
 文字通り、アーマー体の姿を鎧のように上乗せして人の意志を保ったまま、デジモンの力を手に入れることに成功した…そんな具合かなあ。
 デジモンが人間に影響を受けやすいことはわかっているので、あのパワーはそのへんの影響によるものでしょう。

 こう書くとまるでハイブリッド体みたいですが、決定的にちがう点があります。
 ハイブリッド体のスピリットは十闘士が用意したもので、その目的はあくまでも、デジタルワールドを護ること。
 そして何はともあれ、選ばれた素体たる人間と闘士の(恐らくは無意識下による)同意のもと、はじめて現れるものです。

 しかして、彼らバイオデジモンの目的は破壊だけです。さらに言えば間違いなく、もとになったデジモンたちの意志は考慮されていません。
 つまりハイブリッド体なんて上等なものじゃなく、 その力のみを抽出して身に纏っているというだけのことなのだと思います。
 下品な言い方をしますが、これはデジモンに対するレイプ行為に他ならないでしょう。単純なぶん、パワーはあるようですが。

 ところで、頭に生えてる薬液入りシリンダーが気になります。ゲルパー薬か、はたまたγ-グリフェプタンか。
 通ったあとに生じた次元の歪みは、まるで彼らの存在そのものを呪うかのようでした。


★名(迷)セリフ

「倉田アァァァァァァッ!」(大)

 なぜか絶叫がエントリー。悔しさの滲み出る叫び声が、いよいよ倉田を悪役として確立していきます。


「おれ……感謝する。デジモンたちに代わって……
 その考えができるおれ、ここにいる……それ、イクトとして存在するから……
 ありがとう、命をあたえてくれて……父さん、母さん……」(イクト)

「いってきます、だ。
 家から出かけるときは、家族にそう言うんだ。ただいまと、お帰りなさいを言うためにな」(野口教授)

「いって…きます…!」(イクト)


 ここはねえ。
 余計な感想はいらんと思うわけですよ。ええ。

 とにかくこれで、イクトの長い長い心の放浪は終わりました。
 そして今度は、自分たちで選んでの別れ。でもそれは、生きてまた会うための別れでもあります。
 悲しい事もあったけど、イクト、たぶん君は幸せだったんだ。そして、これからも……。


「私たちは、生きるためにしか戦わん!!」(薩摩)

 よく言ってくれました。さすが隊長。
 そして倉田一派は、この言葉と真逆の道を暴走しているわけですね。死ぬためじゃなく、自分たち以外を殺すために。



★次回予告
 うわあ、出た……とうとうこのときが来ましたか…。
 いや、個人的には大好きなんですけどねこのデジモン。

 でもまた死にそうだなあ。