よみがえるデジヴァイス 新たなる輝き
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脚本:大和屋暁 演出:佐々木憲世 作画監督:八島喜孝 |
★あらすじ
デジヴァイス修復の手だてを求める大たちの前に、ふたたび現れたバンチョーレオモン。
彼の導きにより、謎のデジヴァイス道場で修業をすることになったのだが成果はなかなか上がらない。
そんな時、またしても三大バイオデジモンが現れた。
道場の外で待っていたアグモンたちが立ち向かうがかなうはずもなく、一方的に叩きのめされる。
しかし、彼らはパートナーを信じて何度でも立ち上がっていった。その姿を見た時、大の中で何かが芽生えていく。
何かを守りたいという気持ちもまた欲望のひとつ……それを正しく制御できたとき、究極のデジソウルが目覚める!
大たちがそれに気づいたとき、デジヴァイスまでもが進化した。その名は、デジヴァイスバースト。
遂にそろい踏みをはたした三大究極体の強さは、進化を果たさせた当の大たちでさえ驚くほどだった。
あれほど苦戦していたバイオデジモンたちを、いとも簡単に一蹴せしめたのである。
かくて、より大きな力を手にすることができた大たち。
だが、大きな謎が残った。デジヴァイスのことまで熟知していたバンチョーレオモンとは、いったい何者なのか?
★全体印象
29話です。そろそろ30話、のこり話数のほうがいつのまにか少なくなってしまいましたね。
さて今回はなんといっても、究極体のお披露目がいちばんの目玉です。
これまでの例と根本から異なり、3体まとめての登場。しかも歴代最速、29話での集合です。まだレイヴモンも残ってますけどね。
待ちに待った進化ソングまでも流れて、これまでの溜飲が一気に下がる仕掛けでした。いやあ、実にいい気分だ。
そして、ここからがほんとうの戦いというヤツです。
ところで、このエピソードはおそらくGガンダムにおける「新たなる輝き! ゴッドガンダム誕生」に相当する構図。
限界に達した愛機=デジヴァイス、明鏡止水=究極デジソウル、バンチョーレオモン=シュバルツ・ブルーダーという寸法です。
まあ、正確には上記のひとつ手前の回もかかわってくるのですが。
ともあれ、究極デジソウルの境地∽明鏡止水というのは遠からずかもしれません。腕力ではないそうですし。
ということは、前回のアレはやっぱり「怒りのスーパーモード」だったってことになるんでしょうか。
無駄が多くて、デジヴァイスによけいな負担をかけてしまっていたのかもしれません。
そしてこうなると、バンチョーレオモンが大門博士の関係者であるという疑惑がますます深まっていきます。
あるいは本当に博士のパートナーなのかもしれないなあ。
作画は八島氏ですが、セイバーズになってからあんまりいい評判を聞きません。絵柄の問題…?
また戦闘も究極体の強さを際だたせるためか止め絵が多かったので、氏の長所が活かしにくかったかも。
で、抜けたのかと思ったらいましたね、大和屋氏。今期はかなりかけ持ちが多いようなので、登板頻度は下がってきそうですが。
★各キャラ&みどころ
・大
前回とやや打って変わって、バンチョーレオモンには終始けんか腰でした。
彼、会って間もない相手に上からあーだこーだ言われるのは気に入らないようですし。
超サイヤ人みたいなデジソウル放出や、道場ぶっ飛ばして「上空の」バイオサンダーバーモンに殴りかかるシーンはほとんどギャグ。
こういうの見ちゃった後では、デジヴァイスに「物理的変形までするプログラム」まで仕込まれていた、などというトンデモも霞みます。
要するに、あんまり気にしすぎると本質を見失うってことですね。わかってたことだけど、あらためて実感しましたよ、ええ。
まあ、よく考えてみたらあそこはデジタルワールドなので、人間界の物理法則が通用しないと考えればいいのでしょう。
・ アグモン
めずらしく、単独で体を張る場面があった今回。そのおかげで完全体とは異なり、パートナーとの繋がりで進化が果たされました。
八島作画で顕著になる丸っこく可愛らしいイメージが、結構雰囲気にマッチしています。
さて、デジソウルの発動さえできれば、成熟期までならさほど進化のハードルは高くないのでしょう。問題はそこから先。
大もトーマも淑乃もイクトも、彼(女)ら自身の弱さを自覚して「強くなりたい」と願うことが完全体進化への条件でした。
そして究極体への進化に必要なものは彼らパートナーへの想いをいま一度、魂の奥底から噛みしめるところにあったのです。
つまり、完全体になるためにはテイマー自身が自らに欠けているものを見つけることが必要で、究極体への進化を果たすためには
さらにその見地に立ったうえで、パートナーと二人で強くなる、強くなろうと願う想いが必要だったのでしょう。
もちろんそのためには、欲望を想いへと昇華する過程が必要ですが。
一人では「完全」になるのが精いっぱいでも、二人でなら「究極」へも、そこからさらに先へもゆける。それが、デジヴァイスの力なんですね。
・シャイングレイモン
思いのほか早く登場した究極体。それまでの野性的且つソリッドなイメージとは異なり、神秘的要素のあるデザインです。
このどこか超自然な雰囲気こそ、究極体の特徴といえるでしょう。
しかも、恐らくまだ力の全てを明かしてはいません。見せ技ぎみにグロリアスバーストを披露したにとどまっています。
が、今までまったく歯が立たなかったバイオサンダーバーモンの突進を「片手でブロックして無造作に投げ飛ばす」シーンはアピール十分。
あれは、カタルシス演出にたいへん効果的な手法です。王道ということは、それだけ使いでがあるという意味ですから。
超魔竜ドヴォルザークの拳を止めてみせたガイキング・ザ・グレートを思い出させてくれます。
あと究極体は表情が減るので、その分凄みってものが出ますね。例外はあるにしても。
グロリアスバーストは赤いガイアフォースって感じですが、ウルトラマンメビウス・バーニングブレイブの技も想起させてくれます。
心の繋がりを描く炎の翼、ってやつですね。
・トーマ
慎重派ということもあって、彼が意見をまとめて大が口添えって形がすっかり定石になりました。
バンチョーレオモンにあれこれ指摘されても反感より先に、言葉の裏にあるものを読み取ろうとしています。つまり、そういう役割。
ただ、究極体進化にあると思っていたドラマが無かったのは意外でした。
既にドラマ、ひいては各キャラの描写ではなく、ストーリーの流れで視聴者を引き込もうとしているのか。
それともここでの進化にはあえてドラマを絡ませず、別口でやる予定なのか…
なにしろまだ20話もあるので、どうなるかわかりませんね。
・ガオモン
トーマと同じく、精神年齢の高さからパートナー同士ではまとめ役になりがちな彼。クダモンがいないとさらに顕著な傾向です。
物言いもマスターによく似ているところから、思慕の強さがうかがえますね。
彼とトーマの出逢いが明かされるときは来るんでしょうか?
・ミラージュガオガモン
「獣騎士型」という、まったく新しいカテゴリに属する究極体です。
戦闘では実質的にかなり動いていたはずですが、静にベクトルが振られた演出なのであんまりそんな実感はありません。
しかしながら、あの動きをいとも易々とこなしているのはポイントでしょう。
マッハガオガモンが全力でやっと出せるようなスピードを「連続でなにげなく」出してのけてるってことになるわけですから。
その動作が自然であればあるほど、凄さがじわじわ伝わってくるというやつです。
まさに蜃気楼の名に相応しいスピードでしょう。
今回披露した技は流れ上、フルムーンブラスターでした。相手もなぜかバイオステゴモンです。
・淑乃
肉体派ではないので前半はわりに見てるだけでした。
でもデジソウルの本質を見抜くや、すぐに到達してみせるあたりはトーマにも、大にだって負けていません。
ライラモンの時すでに自分の弱点は克服しているので、条件なら同じだったってことですね。
バンチョーレオモンに敬語でお礼を言ってる場面でさらに好感度アップしてみたりしてます。
・ララモン
バンチョーレオモンを直感で信じられると感じ、そのように発言していました。
そーいえば、ファルコモンのときもそうでしたね。彼女、他者を見る目はたしかみたいです。
もちろん根拠はないので、理詰めを重んじるガオモンに訊かれるとやや詰まってしまっていましたが。
・ロゼモン
アニメ初登場。今回の進化バンクは3Dかな?
まあライラモンのバンクも、動きとかよーく見たらどうも3Dっぽいんですが。
今回の相手はナナミ@バイオクアトルモン。
体は群を抜いて小さいんですが、必殺技ローゼスレイピアはウェイト差などまるで感じさせない威力です。
(ただアレはローゼスレイピアというよりどう見てもソーンウィップだったような…)
ほか二体とちがって彼女だけ技を使ったのは、単純に殴り倒すだけだと大きさ的にちょっとアレだったからかもしれません。
まあクアトルを片手で止めて細腕でしばき倒すロゼモンを見たいかと言われれば見たいと答えますが、私の場合。
きめ手として見せたのは「フォービドゥン・テンプテーション」。既存の同名とはちょっと違う技です。
頭を薔薇そのもののように変形させて放っていました。合体攻撃にも応用されるのでしょう。
ゆかな女史、今度はアダルティに攻めるみたいです。すごいなあ、ここまで徹底して演じわけするなんて…。
・イクト&ファルコモン
今回は出番なし。14話からこっち、初めてのケースとなります。
まあ、いままで出ずっぱりだったぶんはトーマや淑乃に譲ろうではありませんか。
・ バンチョーレオモン
あからさまに謎だらけで思わせぶりの存在。今回でますますその度合いを強くしました。
マジで何者でしょう? とりあえず、以下のケースが考えられます。
1.大門博士と拳を交わした仲で、大たちのことを頼まれていた
2.実は彼自身が、大門博士のパートナーである
3.というか実は彼こそが大門博士本人である(融合しているようなイメージ)
4.
事情あって動けない博士が、自身のすべてを託した分身のような存在(いわゆるシュバルツ・ブルーダー)
さあ、どれでしょうか。
大と話してるときのやたら穏やかな瞳が気になってしょうがないので、大穴の3を推したいところですが…。
・デジソウル道場
看板はそのまんまとして、中の掛け軸?にもデジモン文字で「デジソウル」と描いてありました。
筆文字のようですが、誰が描いたものかまではわかりません。
・三大バイオデジモン
前回、前々回と強さをアピールしすぎたせいで、すっかり当て馬になってしまいました。
でも、さすがに今回で退場ということはありますまい。
立ち直り方しだいで大たちとの差が決定的になるか、それともむしろ大たちに近くなるかが決まるんですが……
でも正直いってキャラ的に、成長の要素はほとんどないといっていいでしょう。ひっくり返してくれればそれが醍醐味になりますけど、
なんせポジションが3人の真逆って感じですし…たぶんどこまでいっても、肉体的パワーアップしかしないのではないでしょうか。
中身は変わらないまま、力だけ伸びていって押しつぶされるというような。とりわけ、コウキが危ないですね。
進化形態がアーマー体というのも、何か行く末を暗示しているように思えてなりません。
・倉田
彼はどんな考えで、コウキたちを子飼いにしたのでしょうか?
見たところ、過剰な干渉は行っていないようです。扱い方を熟知しているともいえますね。
むしろ、わかっていてわざと煽るようなことを言った節さえあります。このあたり、あいかわらず狡猾ですわ。
彼の自信は「アレ」が裏付けてるんですが、もう一枚裏があるような予感もしますねえ。
★名(迷)セリフ
「諸君に問う。デジソウルとは、何ぞや!?」(バンチョーレオモン)
けっこう難しい質問です。ノルンの謎かけにもある意味近いような。
個人的には、デジモンとテイマーの絆を具体的に表現したものと位置づけてるんですが。
「力とは、強き心と不屈の勇気に宿るもの!」(バンチョーレオモン)
そして私がみるかぎり、大たちにはその資格があります。
バンチョーレオモンも、それを見抜いていたのかもしれません。
荒木飛呂彦が言っていた……ほんとうに強いヤツは、悪さなんかしないってな。
「おれたちは…兄貴を…!」
「マスターを…!」
「淑乃を…!」
「「「信じてる!!!」」」
(アグモン・ガオモン・ララモン)
セイバーズでは意外にめずらしい、パートナーデジモンたちの啖呵切り。
…と思ったけどそうでもないか。テイマーズはともかく、デジアド系のパートナーたちは案外自我が弱めだし…。
でもって、直接的に確かめる場面が全員に何度もあったわけじゃないんですが、積み重ねでちゃんと伝わってくるセリフです。
ガオモンがトーマをどう思っているか、ララモンが10年来の友である淑乃をどう思っているか、アグモンはどうなのか、
これまでの回を見ていれば自然と掴めるよう、しっかり描かれていたと思います。言葉ではなくて心で捉えるんだ。
「認めねえ…こんなこと、オレは認めねえぞ!!!!」(バイオサンダーバーモン)
君が見下していた大門大は、もうずっと前に自分の弱さを認めましたよ。
そして大は決して、ひとりだけで強くなったのではないのです。守りたいものが、掴みたいものがあったから強くなれた。
君に、掴みたいものはありますか? 守りたい大切なものはありますか? 戦いの果てに、見えているものはありますか?
それが見えないかぎり、君はもう二度と大には勝てませんよ。
いや、このままだと初めから負けていたことにもなりかねません。
彼らにとってはたぶん、ここが岐路だと思います。
さあて、どう動いてくれるでしょう。あれで死んだなんて言いませんよね?
★次回予告
どんな展開になるのか、いささか読めなくなってきました。それだけに楽しみです。
荒野にぽつーんと映ってたボロ布の男…アレはもしかして?