とらわれの大 聖なる都の罠
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脚本:山口亮太 演出:中尾幸彦 作画監督:信実節子 |
★あらすじ
バンチョーレオモンの言っていた「聖なる都」。
その正体は、大地を踏み締めて進む巨大なデジモン・エルドラディモンの上に丸ごと都市が乗っているという、とんでもない代物だった。
大たちは出迎えを受けるのだが、それは人間に不信感をいだく長・バロモンの罠。果たして、まんまと捕らえられてしまう。
引き出された広場には、姿を消したままだった湯島所長の姿も。そして彼らはついに、ケルベロモンによって処刑されんとする。
間一髪でアグモンたちが助けに入るのだが、乱闘のさなか、大がデジソウルを発したとたんにバロモンの態度が変わった。
かつて聖なる都を助けた救世主・大門英……他ならぬ、大の父親と同じ輝きを見たからである。
偉大な父を持つ大に、トーマは僅かな嫉妬を感じていた。
かくして誤解は解け、大きな後ろ盾を得た大たちだったが、聖なる都にもギズモンの影がせまってきた。
究極体の力を手にした今となってはもはや脅威ではないが、シャイングレイモンたちが前に出ている間に残りの1体が都へ肉薄する。
ピンチを救ったのは、イガモンたちを仲間に加えてもどってきたイクトの活躍であった。
おおぜいの味方を前に、大たちは必勝の誓いを新たにする。
だが、敗北したコウキたちは倉田によって再強化を受け、新たな力を手にしていた。
そして倉田の見つめる先で眠る地獄の使者は、ただひたすらに死せるデジモンたちの命を貪り続けている……。
★全体印象
30話です。とうとう30話代になってしまいました。あと20話前後かあ。
今回はなんといっても、OPについて書かないわけにはいきますまい。
詳細はあとに記すとして、思わず10回以上も見返してしまいました。かなりいい感じ。
内容的には前回が山場で次回からバイオデジモン対決篇みたいなので、ちょうど谷間にあたるお話です。
そういう意味で、全体の流れからいえばめずらしくインターミッションにあたるといっていいかもしれません。
とはいえ予告のアレ自体が聖なる都だったというビックリ感やトーマ関係の前フリ、イクトや湯島所長の帰還と、あいかわらず詰まってます。
逆に、この先のお話をスムースに進めるための準備期間ということもできるでしょう。ここからはまた急展開を意識すべきかも。
作画的には特筆するほどのヤバさはないんですが、ところどころ妙なカットは見受けられています。
とくに目立つのは宴会の場面で、カメモンが瞬時に戻っていたりトーマが瞬時に席でくつろいでいたり、むしろ珍しいほどの現象が多発。
新OPの作業でしわよせでも来たのでしょうか? 初見では思わず腹を抱えて笑ってしまいましたよ。
とはいえ、戦闘はかなり動いてましたから相殺されてますけれど。
ところで、タイトルがタイトルなので大だけ捕らえられてしまい、残されたメンバーが救出に奔走するお話かと思ってました。
26話といい、全員が同じ状況に陥った場合は大を前面に持ってくる方針らしいです。
★OP
今回より、シリーズ復帰を果たした和田光司さんの歌う「ヒラリ」へ差し替えとなりました。おかえりなさい。
シリアスでスピード感のある歌ですが、キーの変動はそれほどでもなく、歌い手への負担は比較的小さな仕上がりでした。
和田さんはしばらくの間病に臥せっていたと聞いたので、無理のない構成を選んだということなのでしょうか?
とりあえず置いといて、内容についての感想と考察にうつりましょう。
究極体づくしですね。ここまで究極体だらけのOP、ほかにあったでしょうか? 無いと思います。
これはとりもなおさず、おそらくは3クール目後半からにおける激闘を予感させるものです。まあ、考えてみればこのシリーズは
1クール目からとっくに究極体が敵役として出ていたのです。旧来はどんなに早くても3クール目からだったわけですから、
こういうオープニングになるのは半ば自然なことだったと言えなくはありますまい。
もうひとつの注目点は、2クール目から仕込んで今やすっかりメイン格へ出世したイクトの扱いでしょう。
これで名実ともに、レギュラーとして不動の地位を得たことになりますね。
意外だったのは、淑乃とのツーショット。すごく新鮮でした。ああ来るとは思わなかったなあ。
新鮮といえば、メインとして持ち上げられているのが4人というのもそうです。まあ隊長やおっちゃん、オペレーターさんもいますし、
厳密には3+1でひとりが異邦人というアバレンジャー初期の方式なんですが。
親父と番長とかプレートとかも思わせぶりですが、最大のサプライズはアレとかアレとかアレな人々。
まさか全員出すつもりなんでしょうか……だとしたら、冥府十神どころのさわぎではありません。
こんなに全力を出し尽くしてるってことは、来年はお休みして充電期間を取るつもりなんでしょうか?
そう勘ぐってしまいたくなるくらいの大盤振る舞いです。いいのかなあ。嬉しいけど。
というかこれを繰り返し見ていた時の私の心境はぶっちゃけた話
ど、 ど う し よ う、 こ れ ……
でした。
上で書いたようなちょっとした不安はあるんですがそれ以上に、ものすごくワクワクしている自分を見つけてもいるんですね。
こういう気持ち、これからも忘れずにいたいものです。
ときめくぜ。
★各キャラ&みどころ
・大
まあ、いつも通り。今回は思ったほど目立ってません。山口脚本にしてはトーマの方が印象に残ります。
たまにはこんなお話もあるってことでしょう。
と見せかけて、なにげにソーンウィップの上を走って渡るえらい離れ業を披露していました。
前回の5メートル級ジャンプを見たあとでは、感覚が麻痺してしまいがちです。
・アグモン→シャイングレイモン
いつも思うけど、あのくらいの縄だったら解けないもんなんでしょうか……足は自由なんだし。
まあ今回の場合、デジモンがデジモン用の縄で縛ってたのだからしょうがないと言い訳も立ちますが。
戦闘ではまったく危なげなし。ここまで来て、ギズモンごときに手こずってはいられないってところでしょう。
メルクリモンの立場がねえなあと思うこともありますが、不意打ちさえ食らってなきゃ彼がやられることはなかったと思いますし、
それにシャイングレイモンたちはギズモンやバイオデジモンらの脅威に対抗するために進化したとさえ言えてしまうのですから、
ある種の補正を持っていて当然です。演出の上でだけではなく、身体的にももうギズモンの技はきかないんじゃないでしょうか。
つまり、例のビームを食らっても致命傷にはならないって意味ですが。
・淑乃
めずらしく生身での立ち回りがありました。闘牛士よろしく、ケルベロモンに目隠しをしただけですが。
とはいえ、仮にも完全体を相手にあんな表情ができるとは、彼女もずいぶんと肝が据わったというか……いろいろあって慣れたというか。
DATS隊員だったころとはまた別の凄みが出てきてるということなのかな? 半分ヤケっぱちというような。
でも女の子が強いのってそこからなんだよなあ。
・ララモン→ロゼモン
強くなったといえば彼女もそうかもしれません。
成長期のときでさえアグモンぶら下げて飛んできたりしていたし。あれにはびっくりしました。
戦闘では初期補正もあって、ギズモンXTをまったく寄せ付けない実力を発揮。いやあ、ホントに強くなりましたよ。
サンフラウモンにしかなれなかった時分はあまりに頼りないものだから、フェアリモン路線をたどってしまうのかと心配していたものです。
このぶんなら、サクヤモン級には活躍できるでしょう。オープニングでわかっていたから、希望は持ってましたけどね。
今回はちゃんとソーンウィップとローゼスレイピアを使い分けていました。
応用がききやすい曲線の動きを描くのがソーンウィップ、敵を一気に貫く直線の動きがローゼスレイピアというあんばい。
鞭が敵に巻き付く直前、ハートマークを描いていたのがポイントです。アレで敵を一時的にマヒさせていたのかも。
・トーマ
思いだしたように大とけんか腰になるシーンがあったほか、伝説の男として慕われる父親をもつ大へ無意識に嫉妬する場面もありました。
そういえば、14話あたりでちょっとだけ勘ぐったものです。実は父親がすごい人だった大に、思うところはないのだろうかって。
どうやら、それなりにはあったようですね。ただ無論、それで大たちを裏切って倉田側につく展開は無いでしょうけど。
せいぜい、思うところあってちょっと別行動をとるくらいのもんでしょう。あるとすれば、ですが。
それよりも次回の可能性としては大への、仲間たちへの気持ちってものを再確認して、そのうえでガオモンとの絆も強調し、
蟠りを吹っ切ってさらに強くなるという展開のほうが予想としちゃ堅いでしょう。
ただ、台詞からみて今度は「父親」の影がちらついてくる可能性もあると思います。ひょっとしたら父親がじっさいに出てくるのかも。
でも……なんとなくですが、その場合は敵として出てくるように思います。
・ガオモン→ミラージュガオガモン
何かいつになく犬度がたかかった気がする今回。
たぶん、夜風に吹かれながらのマスターとの会話がそう思わせるのでしょう。
戦闘においてはなぜか初撃をはずしてましたが、その後は他2体と同じく一撃必殺。
…それともアレはトーマの心に僅かながら曇りがあるという暗喩だったんでしょうか?
突進技ゲイルクローは食らったら最後、ギズモンXTの装甲でさえ豆腐のように切り刻まれてしまうみたいですね。それでこそ究極体。
この形態になると声がかなり野太く変わるようです。
・イクト&ファルコモン
てっきり究極体になるための手掛かりをさがしにいったのかと思ったら、イガモン軍団を連れてきただけでした。
これには正直ちょっと拍子抜けしてしまいましたが、考えてみれば「戻ってきたらなれてました」という展開よりマシかも。
たぶん倉田との決戦で満を持して飛びだすでしょう。期待です。
さらによく考えてみたら、彼が姿を消したのはデジヴァイスが壊れる前だし「進化できるかもしれない」なんて一言もいってないので、
こっちが勝手に誤解しただけだという説もあります。だいたい、それだったらどんな形であれ、大たちも誘うでしょうし。
・湯島のおっちゃんとカメモン
実に1クールぶりの登場。時期でいうと夏からこっち、ぜんぜん出てなかったことになります(回想は除く)。
その間は別にメルクリモンに捕まっていたわけでもなんでもなく、まるっきり違うところにいました。
帰る手段のない彼らにとり、さしあたってできる最大のことが大門英の捜索だったってことなんでしょう。
このへん、捕まっているかもしれないという台詞や捕まってる描写などが一切なかったので、言われてみればどうとでも取れるんですね。
ついでに言うと彼らがいない間、大たちにその身柄を案ずる描写が初期段階にしかみられないのはたぶん単純に入れる場所がなかったからで、
それ以上でも以下でもなかったと思います。
あのあたりから今までは相当バタバタしてましたし。
そりゃあ、「お前ら絶対おっちゃんのこと忘れてるだろ?」と思うことはよくありましたけどね(^^;)
…というか私も最近は忘れてました。ごめん、おっちゃん。
カメモンは18話でとっくにしゃべってるんですが、大たちに認識されたのはこれが最初。
あの時はそれどころじゃなかったので、落ち着いて対面してみたら「…あれ? しゃべってる?」という感覚になったんでしょう。
・エルドラディモン
こりゃまたすごいのが出てきました。「はてしない物語」に出てくる大ガメ・モーラを思いだしたものです。
でもなんだかジャンボガメモンにかぶってません?
さすがにこれの擬人化は無理そうだなあ……。
・聖なる都の住人
バロモン以下ピッコロモン、パンプモン、ケルベロモン、ゴブリモンなど多種多様が暮らしているようです。
特に多いのがピッコロモンですが、アレでも完全体のはず。それがなんでアーマー体の下についてるのか、よく考えてみたら妙な話です。
とはいえバロモン自体も、映画を入れるとアニメへの登板は3度目になります。
いずれのケースでもリーダー格だったり、節目に出てくる預言者だったりするのは、ひとえにその名前と姿の神秘性によるものでしょうね。
今回は味方であるうえに出番も長めなので、いままで以上に良いポジションです。死にそうですが。
・大門英博士
しかしこの人、出てくるたんびに偉大さが増していくような……とうとう大地割っちゃいましたよ。
何処の北斗神拳正当伝承者だ?(^^;)
・イガモン軍団
これも味方になる率が高めなデジモンです。今回はめちゃめちゃ大量に出てきました。
集団で技を使えば、ギズモンの一体くらいは倒せるようです。話の流れ上のことではありますが、かなり凄い。
・ギズモンXT
シャイングレイモンらに手も足も出ないのはまあ仕方ないとして、今回は多数とはいえ、とうとうイガモン軍団に倒されるまでに弱体化しました。
もう完全にザコですね。コイツらのために、ずいぶんパワーバランスが狂った気がします。
いつのまにやら銃しか使わなくなっているし、もう戦力としてじゃなく、エネルギー回収に特化されているのかもしれません。
単独で動いているのも、実はそのせいなのでは?
・ バイオ3人衆
思った通り、倉田に泣きついて物理的なパワーアップを遂げてました。
正しく再改造というやつですが、なぜかサムライトルーパーの三魔将(#16前後)を思いだしてしまい、苦笑。
でも中身が変わったわけではなく、パワーだけ上がってよけい始末に負えなくなってしまったような気がします。
で、ナナミの進化形態は初めて見るデジモンなんですが…これで戦うのがトーマというのはけっこう新しいパターンです。
イワンの進化系はどうやらアレらしいんですが、コウキはまだ不明。でもシルエットからみて、ダークドラモンかもしれません。
ただの一例としてあのデジモンの影を出してくるとは思いにくい。
ということは、カオスモンの登場もあり得るし……ラスボスもそれ系だったりして?
・倉田
今回はどっちかというと研究者としての顔が多めでした。
いつのまにかエルドラディモンの情報を手に入れていたり、ギズモンXTを捨て駒にその位置を特定したりと、あいかわらずの狡賢さ。
報告を受けたときにちょっとだけ見せた「やはりな」って感じの笑みが証明しています。
で、どこからかベルフェモン・スリープモードを見つけてきて起こそうとしているのは確定ずみ。
果たして制御できるんでしょうか? それとも制御するつもりなんかなくて、開放したらすぐさま人間界へ脱出し、
ベルフェモンが再び眠りにつくまで暴れさせるつもりなんでしょうか? …それとも、まだ何か裏に考えがあるとか…?
いずれにしても、決戦は近いようです。彼にとっての決戦が。
・9人の戦鬼と人の言う
もしアレな方々が全員出るならば、クダモンが関係している可能性が出てきます。
力を封印し出自を隠して、パイプ役をしていたとか。その実、監視も兼ねていたとか……。
OPで隊長が背中向けてるのが、なんか気になるんです。
…なんだか「星矢・ゼウス篇」のシャカみたいですね(誰も知らないぞ、そんなネタ……) 。
★名(迷)セリフ
「キューセーシュって、なんだ?」(アグモン)
「番長よりも強いってことよ」(淑乃)
それはアレですか、世紀末で七つの傷持ちであたたたたたた終わったぁでお前はもう死んでいるな人のことですか。
淑乃さん端的すぎです。
「…嫉妬? この僕が…?
…そうか、僕は嫉妬してるのか…」(トーマ)
思い返してみれば、暖かい家庭のある大に当てつける場面も初期に存在していました。
そのときとはまた別の方角から、羨ましいという気持ちが湧いてきたのでしょうか。
どうも15話のことやこのあたりの言動から、トーマの親父さんがよい父親だったとは思えないんですよね。誤解かもしれませんけど。
そして直後に火急を告げに来ていながら次の瞬間くつろぎモードへ入り、私が爆笑。
★次回予告
また何やら濃い絵柄です。ナナミが怖い。
でもこのペースだと、次回で彼女は退場かも。死ぬわけじゃなさそうですが。