天才対決! トーマVSナナミ
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脚本:稲荷明比古 演出:土田豊 作画監督:竹田欣弘 |
★あらすじ
一気に絶大な戦力を得て、聖なる都はおおいにわき立っていた。
そんな中、倉田の居場所がわかったという報告が入る。大はこちらから打って出ようと宣言し、その言葉は彼が大門英の息子ということもあって
大多数の支持を受ける。トーマはひとり慎重論をとなえるが、彼にも場の勢いをとどめることはできなかった。
妥協案として大とイクトだけが行くことになり、トーマと淑乃は都の守りにつくこととなる。
果たして、敵の先遣隊があらわれた。これは無事撃退するが、トーマの懸念は別にあった。
エルドラディモンが腰を落ち着けているのは、大きな湖のど真ん中。しかし、近くにある滝をこわされてしまえば無防備になってしまう。
見回りにきたトーマとガオモンの前にあらわれたのは、倒したとばかり思っていたナナミだった。
戸惑うトーマへ誘いをかけるナナミ。自身と同じ天才だと知って、興味を抱いたのだ。
あくまで拒絶するトーマの目の前で、彼女は新たなる姿・バイオロトスモンへと進化を果たす。
その頭脳に究極体の力が加わった強さは絶大で、ミラージュガオガモンでさえも圧倒するほどのものだった。
戦慄するトーマだったが、土壇場で計算を捨て、体を張った戦法によりかろうじて勝利をおさめることに成功する。
しかし、結果的に滝は破壊されてしまった。
そして、ナナミの言葉はトーマの心に昏い影を落としていたのである……。
★全体印象
31話です。新OPを何度も見ていたので、すっかり目と耳に馴染んでしまいました。
今回はなんといってもトーマ…ということになりますか。
ここへきて、彼については不穏な噂が聞こえてきています。おかげで正直、戦々恐々の毎日を送っている私なのですが、
いずれにしても、これはその重要な前フリエピソードということになるのでしょう。
事と次第によっては、彼への評価を変動させなければなりますまい。あとに書く次善のケースであることを祈っています。
ほかのメンバーはハッキリいって出番がありません。
その代わりというわけではないのでしょうが、作画が暴走しまくっています。間違いなく、作監の趣味。言い切ってしまいましょう。
影バリバリの髪ベタベタなナナミは普段よりお色気400%増しで、それでいてホラーを感じさせる仕上がり。
生死はともかくこれで表舞台からは退場となる可能性がたかいのですが、インパクトは残しました。
…しかし…どうなるんでしょうね、ほんとうに。
OPに倉田軍団どころか魔王型の一体もいないところからすると、ロイヤルナイツが敵に回るケースが最有力なんですが、
そこにトーマがらみの波乱がどうかかわってくるのか。渾沌としておもしろくはなりましたが、複雑な気分です。
くわしくは、トーマの項で語ってみることにしましょう。
★各キャラ&みどころ
・大
まあ、今回もいつも通り。トーマが一人で空回りぎみでした。
油断しているとすぐにギャグを入れてくるので、場をなごませるはたらきも果たしているんですね。あらためて実感。
後半に居合わせていたら、また別の流れになったかもしれません。よけい拗れるケースも考えられますけど。
しかしながら、たいへんな弱点も発覚しました。
イクトと行動している場合、両方ともがボケなので一度ハメを外しはじめたら誰も止められないみたいなのです。
「よみがいない場面でのともと大阪」を想像してもらえればいいでしょう。
もしトーマがいれば、早いうちから絶対に「これはおかしい」とツッコミを入れるはず。淑乃もしかり。しかし今回は二人ともいないため、
まんまと繰り返しギャグのループにハメられてしまいました。
だからというんじゃありませんが、トーマは殴り倒してでも彼を思いとどまらせるべきだったのです。
それは無理としても、せめて同行を申し出るべきでした。
できなかったのは都の守りへの不安と、先にイクトが名乗りを上げてしまったから…でしょうか。
・アグモン→シャイングレイモン
戦闘場面はありましたが、進化バンクは無し。かなり珍しいケースです。
どれほどトーマへウェイトを置いたお話かわかりますね。
・ 淑乃
ちょっと引いたお姉さん的視線から、大とトーマの間柄を指摘していました。
なにげに、ここまで突っ込んだ事を言うのはめずらしい。それだけ気が置けなくなってきたってところでしょう。
ただし、出番はアバンパートでおしまい。次回にいろんな意味で期待がかかります。
・ララモン
同じく出番はOP前のみ…と油断させておいて、映画予告ではじけまくっています。
よーく聞いてると32話予告のセリフも問題発言。
・イクト
すっかり大のいい弟分といった風情になってますね。
しかし、それだけ思考的に同ベクトルってことなのでああした場合、非常にまずいことになります。
次回当たりでやっと「何かへんだ」と言いはじめる役ってところでしょうか。
2クール目がウソのように脇へ回ってますがこれも予想どおり。しばらくは彼が我慢する番でしょう。
・ファルコモン
こちらも、いつのまにか進化してた組。
強化されてるはずのギズモンXTが普通に甕布都神で倒されたりしてますが、もうここらへツッこむのはやめたほうがよさそうです。
・トーマ
もろもろのフィルター抜きで書いてみましょう。
彼、当初は尊大な俺様系といってもいいデビューを飾りましたが、大が規格外の人物だと一目置くようになってからそうした面は影をひそめ、
へたをすると地味といってもいいポジションに立ち続けていました。
第1クールに主役エピソードが多めだったので構成上のバランスはある程度取られていましたが、途中参加のイクトと比べても
どこに立っているのか明瞭でないところがあったのは事実かもしれません。
少なくとも、大の向こうを張るにはあともう一発パンチが足りない。そういう側面があったと言えなくはないでしょう。
その「パンチ」がよりによって噂に聞く陣営離脱だというのは、ちょっと笑えないんですが。
仲間と険悪になろうが悩みまくろうが一向にかまいませんが、変節はまずい。物語上は落ち着いても見てる方に禍根が残ります。
そもそも、彼のようなタイプが妙な自分探しをはじめたところで大抵はろくなことになりません。
悪くすると話数だけ消費して、なんにも得られずに戻ってくるハメにもなりかねない。似た例を知ってるので、正直すごく不安なんです。
とりわけ私的にNGなのは、倉田のところへ行ってしまうケースです。
メルクリモン殺害の現場に居合わせていたのはなんだったんだということになってしまうし、もしそんなことになったりしたら、
大や淑乃はともかくイクトが黙っていません。だいたいそれじゃあ、才能はあっても信念がないってことになっちゃう。
もしこの最悪のケースになったら、私は彼のことをトンマと認定呼称させてもらいます。お覚悟を。
…まあ、ナナミの言葉は倉田のところへ行く行かないとは別次元なので、それはまず無いでしょう。
あるとすれば、その後の展開にかかわる話だと思います。たぶん。イグドラシルか英博士関係かも。
でもわかんないからなあ……だからビクついてるんですけどね、私。
・ガオモン→ミラージュガオガモン
ナナミに蹴りを入れられてるシーンが異様に痛そう。予告でいちばん印象的だった場面もそこでした。
その後も終始押されっぱなしで、いまいち精彩を欠いているように見えます。これはトーマ自身の空回りを示唆しているのでしょうか。
前回も初撃をよけられたりしてますし。
でも彼自身はトーマにくらべ、ずっとわかりやすいところに立ってるんですが。
ガオモンはつねづね、DATS隊員であることへの矜持を口にしています。マスターであるところのトーマへの思慕もまたしかり。
つまり彼にとってはDATS隊員であることと、トーマのパートナーであることが誇りで、それがなかば全て。
DATSがもう無い以上、彼の最優先事項がトーマであることは確実です。どこまでいっても、ガオモンはトーマの味方でいるでしょう。
ヤマトにとってのガブモンがそうであったように。
だからこそ、トーマが弱くなると彼も弱くなる。そうとも言えるのですね。
デジモンが人間の想いに応えるものだとすれば、あの苦戦はトーマの戸惑いと迷いもかかわっていた。そう見ることができます。
もちろん、それだけナナミとバイオロトスモンが強かったとも言えますが。
・湯島のおっちゃん
結果的に大の肩を持つようなことを言って、トーマに衝撃をあたえていました。
とはいっても、すでに半分若い連中にまかせて見守ってるような立場なので、べつに大の味方をしたってわけじゃないんでしょうが。
表面上はたしかにそう見えますけど。
年配のことですから、ああいう御しがたい空気には何度となく会したことがあるのでしょう。
その場合、自分のような年長者がやるべきは頭から押さえつけて士気を損ねるやり方ではなく、できうるかぎり若人をフォローしてあげる事。
そういうふうに考えているのかもしれません。今や、苦言を呈したところで押さえられる立場にはいないですし。
なんだか、ゾイドジェネシス25話「進軍」を思い起こさせます。
・聖なる都のみなさん
イガモンが多いのは当然なんですが、それ以外だとピッコロモンとパンプモンの内訳がひじょうに大きいですね。
もともと都に住んでいた多数派なのか、それとも難民なのか。どっちにせよ、戦闘意欲ならまんまんです。
でもイガモンはあんな画力で隠密がつとまるんでしょうか……。
戦闘では長のバロモンも活躍してます。
あやしげな振り付けで繰り出すメテオダンスは、しかし威力充分。一撃でギズモンを葬り去るほどでした。
有象無象といってもいい彼らが力を合わせて戦う姿は、なかなか燃えるものがあります。
が、状況と次回のタイトルからみてエルドラディモン自体がやばそうですが。
あれだけの巨体です。ベルフェモンを起こすきっかけになってしまうかもしれません。
・ギズモン:AT&XT
回を追うごとにいよいよもってザコっぷりが加速してきています。
ただ、すでにビームや銃どころか自爆を攻撃手段にしているので、やはりもう戦力としては数えられていないのでしょう。
ひょっとしたら、調整のぐあいで戦闘力がピンキリなのかもしれないし。
それにしてもヤタガラモンはともかく、シュリモンたち成熟期に一発で撃ち落とされるというのは…底値ですね、ほんと。
・ナナミ
上で書いたとおり、怖いほど妖艶に描かれていました。実は美少女じゃなくて、美女なのかも。年齢不詳だそうだし。
一部のシーンでは絶対にスカートの中が見えてたと思われます。トーマとガオモンが固まってしまったのはそのせいか。
もちろん鉄壁といわれる通りけっして画面には映らないのですけど、だがそれがいい。
まあ、アホなコメントはこのくらいにして、そろそろ真面目に語りましょう。
遠慮抜きにハッキリ言うと、彼女はきわめてタチの悪い人物です。
才能はある。能力もある。にもかかわらず、実は何もしていない。凡人ではないというのなら何ができるのかと問われれば、
全てを思うがままにとか世界やら宇宙やらだとか、新世界の神だとか、壮大に見せかけて中身がない理想を語るばかり。
覚悟はあると言いつつ、なにを覚悟しているのか語らないようなやり方です。
天才は職業ではありません。
学校を自主退学して何をしているのかといえば、ヒマだからゲームに参加したときました。優雅なものです。
つまり平たい話が、彼女はその才能に祟られて、何者にもなれていない。見下した正義の味方にさえなれない。くだらぬと笑うがゆえに。
年齢と同様に、あり方でさえ不祥な人物……それがこの、得体のしれない女の正体だと思います。
そんな女にトーマが引きずられそうになったのは、かかえる僅かな蟠りに合致したから。
というか、彼女はトーマが辿りかねない行く末を暗示していたんでしょう。放っておいたらああなる、という。
最後でガックリいってましたが、死んだかどうかはまだわかりません。
まあ普通に考えて、生きていたところで扱いに困るだけなのでしばらく退場になるでしょうが。
・バイオロトスモン
ハイパーバイオ・エクストラ・エボリューションでナナミが進化した姿。はじめて見るデジモンです。
一見前の姿とはぜんぜん関係ないんですが、持っている杖が蛇の意匠でした。ここでイメージが繋がるわけですね。
どことなく「マジレンジャー」の冥府神ゴーゴンを思い出させます。
もっとも、この姿よりナナミ本人の顔の方がずっと怖かったのはなんですが……。あとバイオハイブリッド体ってなんですか。
必殺技はセブンスファンタジア。天使系みたいな技を使いますね。
まあ、ロトスといえば蓮華ですし、インド神話や仏教にも何度となく登場するモチーフ。蛇の杖もここからの発想でしょう。
さらに蓮の花といえば仏様の座すところなわけで……いかん、宗教じみてきた。
ああ、つまり宗教の勧誘だったのですね。
昔っから、なぜか頭のいい人がはまるように思えてならんのですわ、ああいうのって。
トーマ君、天才なら他人の言葉より自分の言葉を教典にしたほうがいいですよ?
・コウキ&イワン
32話で出張る後者が、どうやら先陣を切るようです。
コウキのほうは彼にしてはおとなしく、後方で待機。いつにも増して殺気立っていますね。血圧も年のわりには高そうだし。
でもこの展開だと、ふたりとももう長くはなさそうです。イワンなんて予告ですでにグロッキー状態だったし。
・ 倉田
ナナミの敗北にもとくに心を動かされた様子はありませんでした。よほど切り札に自信があるとみえます。
狡猾さが最大の武器であるこの男、どんな策を仕掛けてくるのでしょうか。
後がつかえているので、あんまり頑張ってもらっても困るんですが…。
★名(迷)セリフ
「待て、これは罠だ!!」(トーマ)
待て、あわてるな。これは孔明の罠だ。
思わず横山光輝ネタをやってしまいましたが気にせずに先へ進んでください。
「大がムチャを押し通すのは、トーマを信頼しているからだと思うけどな…」(淑乃)
出番の少ない淑乃からのエントリー。
こういうことを言えるのは、考えてみたら彼女だけです。だからこれは、彼女ならではの視点でしょう。
トーマにはいまいち伝わってなかったようですが…。
それにしても影の描き込みが濃ゆい。
「マスターを放せええっ!!」(ミラージュガオガモン)
ララァ! やつとのざれごとをやめろ! ……ではなくて。
私もつくづく、誰かのセリフを使って語るのが好きみたいですね。…やれやれ。
「また出た! しかも、さっきから同じ登場のしかただ!」(イクト)
人、それをバンクと呼ぶ。
まずい、完全に繰り返しギャグのフィールドに填められている!
「…計算なんてない。至近距離に迫って攻撃すれば、なんとかなると思っただけだ」(トーマ)
彼らしからぬセリフですが、これは大から学んだことだと思います。
あえて計算上あり得ない行動をとることによって敵の裏をかき、勝ちをもぎ取るというのは、いかにも無謀で泥臭い。
肩に乗ったのは確実に指示を届けるためであり、また、パートナーとの痛みの共有をも意味している行動でしょう。
そう、確かに彼らしくはありません。
ですが、人はもともと自分だけで生きているわけじゃありません。人と触れ合うかぎり影響も受けるし、それを咀嚼することによって
成長していくものなのです。どんなに才能があっても、一人だけでは生まれることさえできないではありませんか。
いまのトーマはまだ過渡期であって、状況さえ許せば焦る必要などないはずなのです。そうも言ってられないみたいですが。
そして、ナナミはそれさえも否定して倒れました。
取るに足りないと評していたデジモンの力がなければ、まともに向こうを張ることさえできないのに。
彼女の言葉は、トーマ以上に懐疑と矛盾に満ちていました。
「淑乃のそばにいていいのはわたしだけッ!!」(ララモン)
予告より。ちょっとライラモンっぽい発音です。
その声でそんなこと言われるといろいろとしゃれになりません。
★次回予告
イワンが暴走しています。お前、愛妻家って設定をどこにほうり投げてきた。
そしてこの作画……ひょっとして上野ケン氏が戻ってきた?
でもって、映画の予告もはじまりました。ララモンが凄いことになってるので気を取られがちですが、ヒロインもなかなか…。