最後の決戦! 聖、究極進化

 脚本:大和屋暁 演出:園田誠 作画監督:清山滋崇
★あらすじ
 人間界に放り出されたエルドラディモン。迎え撃つ形になった倉田軍団は、何も知らぬ人々の目には正義の味方のように写る。
 そして、倉田の恐るべき計画は次の段階へ移ろうとしていた。

 市街地に降り立った大たちは皆と合流しようとするが、コウキが立ちはだかる。イクトを先行させてのタイマン勝負がはじまった。
 コウキが進化した姿は、バイオダークドラモン。市民を盾に取ることも厭わないコウキの卑劣もあって、思わぬ苦戦を強いられてしまう。
 それでも諦めず何度でも立ち上がろうとする大の懐で、デジヴァイスバーストが輝いた。新たな技、ジオグレイソードである。
 パワーを集中させたこの剣ならば、周囲への影響を最小限に敵だけを倒せるのだ。かくして、戦いはシャイングレイモンの圧勝に終わる。

 だが、一歩遅すぎた。
 バロモンが命を落とし、敵の決戦兵器・ギズモジャベリンによりエルドラディモンも轟沈、巨体を跡形もなく散らしたのである。
 あまりにも悲惨な結末に、大は絶叫する……。

 生き残りをひとりでも多く救わねば。打ちひしがれる間もなく次の行動へ移ろうとするセイバーズだが、トーマ組がいない。
 訝しむ大の目に、なぜか戦列を離れるトーマの姿が……謎の行動の意図とは?
 そして、倉田の次なる企みとは……?



★全体印象
 33話です。
 もうすぐアナザーミッション、それに映画が待っている年末。ますます目が離せなくなりそうな一篇でした。

 しかしながら、セイバーズはまたしても王手をとられています。うーん、戦略レベルではあの眼鏡にやられっぱなしですね。
 というか、何年もかけて慎重に臆病に仕上げられた戦略のなかで、ただ足掻いていたにすぎないという印象をあらたに抱いた次第。
 手際があまりにも良すぎます。治安維持に忙殺されている間に、獅子身中の虫が機械仕掛けの毒針を突き立てていました。
 戦術レベルでいうならばジオグレイソードでのダークドラモン瞬殺と、快進撃ではあるんですが焼け石に水、太陽に黒点。
 最後のほうのインパクトが強かったせいで、コウキ戦はなんだか地味に見えてしまいました。

 で、次回はトーマ離反ですが……ぶっちゃけ、31話のころとは状況がちがいすぎます。
 なぜああいうことになるか、あとで詳しく考えてみましょう。

 作画は全体的にみてさすがに前回までとはいかないまでも、安定してはいるレベル。
 ちょっとテイストが違うのは原画にいる八島氏の影響かな。この人、いつ休んでるんでしょうか。

 脚本は大和屋氏。一時期ほどの登板率ではありませんが、このまま最後まで書いてくれそうです。
 山田健一氏は秋からのテコ入れの一環みたいですね。
 


★各キャラ&みどころ

・大
 2クール目からはホントに負け戦が多いんですけど、七転び八起きの心意気と早いストーリー展開で足を止めるまもなく走り続けてきました。
 父の救ったエルドラディモンを守ることはできませんでしたが、そこからの立ち直りが成長の証。
 しかもまだ伸びしろがあるわけで、年末にかけてはそうとうの見せ場が用意されているとみていいでしょう。

 そんな彼にとって、ちっぽけな自尊心のためだけに纏わりついてくるコウキは結局ただの障害物にすぎませんでした。
 なかば消化試合のように見えたのも、あるいは当然のことだったのかもしれません。
 大のライバルは、やっぱりトーマなのです。いろんな意味で。

 そーいえば、ヤタガラモンの足につかまれてたはずなのにいつのまにか背中にいました。あの勢いでいつ乗り移ったんでしょう。


・ アグモン→シャイングレイモン
 大の心意気にデジヴァイスバーストが応えたことによって、第2の術……じゃなかった、第2の技・ジオグレイソードを手に入れました。
 …いや、あまりにもガッシュだったものだからつい……。
 あ。そういえば、大和屋氏はガッシュのシリーズ構成もやっていたんでしたっけ。

 しかし、事あるごとに翼から炎を噴かしてるうえに剣ときては、ますますディスティニーガンダムのようですね。
 何かアロンダイトっぽい構図もあったような……西海道虎鉄でもいいけど。

 大を肩に乗せて飛ぶ姿は、そんなわけで正しくロボットアニメの後継者って感じでした。
 スーパーロボットと怪獣の融合。それもまた、デジモンの側面だと思います。
 ディスティニー? いや、あれはスーパーロボットでしょう?


・淑乃
 さすがに今回はあんまり目立ってませんね。ちょこちょこ喋ってはいるんですが。
 もう誰も死なせたくないと誓ったばかりなのに、ひどい結果になってしまったものです。


・ロゼモン
 進化しっぱなしでした。イワン戦の直後だというのに、タフだなあ。
 体が小さいにもかかわらず、ほかの2体にも劣らないくらい強さをアピールしています。


・トーマ
 あいかわらず精彩は欠いてましたが、エルドラディモンを守る目的には忠実なので、はた目におかしなところはあまりありません。
 この状態から次回のアレへ移行するのは、いかにも不自然という気がします。
 そこで、今のうちにひとつの仮説を立てることにしました。

 結論からいって、敵に回ること自体がフェイク。これです。

 大局的にみてみましょう。
 上にも書いたように、状況は数時間前までとまったく違います。その気になればとことんまで戦えるデジタルワールドと違い、人間界は
 特に今のセイバーズにとって不利なフィールド。コウキ戦でも示唆されたように、一般人を背に取られたら手が出せません。
 究極体のパワーがあだになってしまうかっこうです。そこへもってきて、守るべき対象の数も敵も多すぎる。

 しかも、拠点であり盾にもできるエルドラディモンはもういません。
 ハッキリいって、戦争であればもはや白旗をあげるか玉砕かしかないような状況にまで追い詰められてしまっています。

 だからトーマはあえてふたつの陣営の間に立ち、大を説得する立場にまわることを選んだんでしょう。
 倉田に協力するかわりに全面攻撃を待ってもらい、大を押さえることによって、これ以上の虐殺を手打ちにしてもらう。
 こういった取引をおこなうというわけです。

 が、倉田は皆さんご存知のとおり、100%疑ってかかるべき人物。
 それに戦争とは人間同士のルールであり、そんなものが人外に適用できるわけがないという理論を持ち出すことだってありえます。
 過去の顛末を一部始終知っているトーマが、それを見越していないともまた思えません。

 ここからが賭けになります。
 もしトーマがナナミとの戦いで、究極体の力を手に入れてもなお掴みきれないものを見出しているのだとしたら、
 一度距離を置き、大と本気でぶつかりあうことによって、その正体を知ろうとするのかもしれないのです。
 そこから、この絶望的状況をひっくり返す何かが生まれるかもしれない……と。って、これじゃまるっきりヤマトですな。

 はなはだ抽象的な話だし都合よく解釈しすぎだというのもわかっているんですが、私はトーマを信じたい。
 こういう風に考えるのも、いままで見てきたトーマという人物に好感を抱いているからこそで。
 むしろ入れ込めて気づかわせてくれるのですから、いい作品に当たったんだなと思うべきなんでしょう。

 ……ただ、倉田にはまだベルフェモンという切り札があるので状況は依然、不透明。
 年末までにはひとつの決着がつくのでしょうけど。


・ミラージュガオガモン→ガオモン
 最後だけ戻ってました。マスターの指示がないといまいち動きがにぶいのは、4話あたりからあんまり変わってません。
 またまたニュー・マシンガンズを見ているような心地になってしまいました。
 大と並び立ち、独自の判断で戦っているように見えるシャイングレイモンとはそこが違います。こちらは2代目マッスルブラザーズですね。

 あと前からミョーにララモン系を庇う率がたかいです。対象も強くなってるから、状況はだいぶ違いますが。


・イクト&ファルコモン
 特に見せ場もなく、空を旋回しながら驚き役やってるばかりでした。
 よく見ると、イクトの頬にマーキングが無いシーンまであります。けっこう長い場面なのに誰も気づかなかったのでしょうか?
 …映画でひっ迫しているのかなあ。

 ところで、レイヴモンの登場はいつになるのでしょうね?
 因縁深い倉田との戦いにからんでこないとは思えないから、ひょっとすると最後の決めてになるかもしれません。
 どんな形でもいいので、ぜひ本懐を遂げてほしいものです。


・小百合さんと知香
 意外に早い再登場です。もはや記憶消去されてたなんて誰もおぼえていません。
 そしてこれで、この二人がまだお話にからんでくる可能性も少し増えたことになります。


・湯島のおっちゃん&ガワッパモン
 よそ見してる間に敵の攻撃を許してしまうという、痛恨の場面がありました。
 この状況でも進化しないところをみると、いまのところ成熟期止まりなんでしょうか。そのわりには妙に強いけど。
 シャウジンモンやジャンボガメモンが出る機会はあるのかどうか…

 そういえば聞いた話だと、カメモンの進化ルートにはクレニアムモンがいるそうです。……まさかな。


・オペレーターズ
 指名手配中だそうです。野口夫妻はどっかに潜伏中かな。
 あいかわらずライダースーツがエッチいですね。


・聖なる都のみなさん
 健闘はしてるんですが敵が多すぎます。ドズル中将の言葉が胸に突き刺さる。兄貴、戦争は数だよ。
 そして、バロモンがやっぱり死んでしまいました。現れたデジタマが一拍置いて消滅するシーンは、いつ見てもエグいです。
 彼らはこのまま二度と転生もできないのでしょうか…死んだならそのままでいなきゃ不自然だよなと思う反面、あんまりだという気持ちも。


・ エルドラディモン
 上のバロモンやユキダルモン、メルクリモン以上にエグい死に方をしたのがこの物言わぬ巨漢。
 ギズモジャベリンに穿たれて悲痛な叫び声を上げる場面はシルエットとはいえ実に痛そうで、思わず顔をしかめてしまいました。
 シナリオ上死に役だろうなとは思ってましたけど、こんなにも悲惨な退場をするなどとは思いもせず。

 ごく最近「フューチャー・イズ・ワイルド」のビデオを見る機会にめぐまれましたが、その中に登場する史上最大の陸亀・トラトンと
 このエルドラディモンはよく似ています。あまりにも巨大すぎるために、ギズモンのD崩壊弾も単体ではほとんど意味をなさないのでしょう。
 それゆえあえて立ち向かってくる敵もおらず、また非常に緩やかな歩みのおかげで、小型のデジモンたちと共生関係を持てるようになったんですね。
 
 が、彼はまさにその巨体を利用されることになりました。
 無理矢理人間界に引っ張られてきたあげく見せ物にされ、示威と大義名分のために公開処刑される生け贄に選ばれてしまったのです。
 ただ体が大きかったというだけで。

 目的のためには同種同胞も殺せるのが人間ですから、人間でないものを殺して心が動かないとしても、不思議ではないのかもしれません。
 だけど……ここはあえて言います。それもまた人の業ならば。

 哀れすぎる。
 これじゃ、あまりにも哀れすぎるではありませんか。

 ……今はせめて、この温和な巨亀に祈りを捧げましょう。合掌。


・ギズモン→ギズモジャベリン
 すっかり雑魚化したと思いきや、とんでもない隠し玉を持っていた方々。というかいったい何体いるんですか。
 百や二百じゃぜったいにききませんよ。メルクリモンが人間を怨むわけだ。それだけの数が引っ捕まえられたってことですから。
 DATSがせっせと送還してる横でその数倍を狩っては溜め込んでたんですね。境界線も緩むってもんです。

 ギズモジャベリンには数百単位が融合していたようですが、あれはたぶん専用に調整され、温存されていた分なんでしょう。
 対エルドラディモン用専門に特化されたであろう、お家芸のD崩壊弾を一ヶ所にたばね、それをいわば劇薬のように使って標的を屠る…
 まさに巨大な毒槍、狡智の一擲です。いかにも倉田らしい、えげつないやり口といえるでしょう。

 しかもこれは、防衛兵器ではありません。毒をもって毒を制するとでもいうのか、標的と同質のものを使って殺すためだけに利用したものです。
 あとに得られるものは人類の平和であるようにみせかけて、実は何もありません。呼び込んだのは倉田なのですから。
 とんだ自作自演というやつです。

 ここまでやっておきながら、倉田は髪の毛一筋も傷ついていません。悪辣ここに極まれりですね。


・ コウキ→ダークドラモン
 そういえばこのチンピラも、傷をつけられるのが大嫌いでしたね。
 結局最後まで、与えられた力におぼれて一方的に敵をひねり潰す戦い方しかできない、三流の駄犬でした。

 ある意味でメルクリモンに負ける前、まだ成長したての大にさえ劣ります。これではいくら突っかかっても、ライバルになどなれません。
 バイオダークドラモンは体型もイメージもシャイングレイモンと対照的で、もろにライバルって感じなんですが……
 しかもすぐ後にトーマ離反があるので、よけい当て馬に見えてしまいます。

 とはいえ、負けたあとにセリフさえないのはいくらなんでもヒドイような(^^;)
 大にはちょっと安否を確認されただけで、あとは完全に忘れ去られたようにさえ見えてしまいます。ダメだこりゃ。

 ここまで言われて悔しいと思うのならば、それを撥条に立ち上がってくる気概を見せてもらわないと。せめてチンピラは卒業してください。
 セリフが無かったのを伏線だと思うのは考えすぎかな?

 それにしても、倉田はこの狂犬に歯止めがきかなくなったら市民にどう言い訳するつもりだったんでしょう。
 戦略上の役割を果たしてくれれば、後はどうでもよかったんでしょうか。罪を押し付けてもいいんだし。


・ 倉田
 上ではいろいろ書きましたが、悪役としてますます磨きをかけたといえましょう。
 彼が姿を見せる時は、かならず高い確率での勝算があるときだけです。臆病さはイコール慎重さと言い替えることもできますから。
 あの撤退の早さも、次善の策がすでに決まっているからこそだったんでしょう。

 つまり何のことはない、22話でDATS本部に現れた時点でもう、とっくに戦略の青写真ができあがっていたのですね。
 あとはただ、粛々と実地の行動を進めればよかった。日本政府がバックにいるということは、あのリポーターも工作員なんでしょう。
 我らのセイバーズがいかに頑張ろうと、究極体の力を手に入れようと、すべてプランの内側だった。
 そのためのバイオデジモン三人衆というわけです。イレギュラーはイクトくらいのものでしょう。

 そして逆に言えば、彼にとって計算外のことが起きるのはこれからということになります。
 どういう形で破局が訪れるのか、それはわかりませんけど……果たしてバーストモードか、ロイヤルナイツか。

 もっとも、まだ彼がどこまで「知っている」のかはまだ、視聴者の前にさえ示されてはいないんですが。



★名(迷)セリフ

「悪ィが、黙って見ているつもりはねェ!
 何度倒されようが、オレは何度でも立ち上がってやる…何度でもな!
 可能性がある限り、オレは絶対あきらめねぇぞ!! 必ずてめェをぶっ倒す!!」(大)


 負け戦は慣れている。そんな言葉を思い出しました。
 地に落ちてもそこから光を見いだす。つねに天から見下したがるコウキとの決定的な差が、ここにあります。
 あの立ち位置は大たちの方が不利に見えて、ジオグレイソードを掴み取れる逆転のポジションだったってわけですね。


「……ですがこの勝負……われわれの勝ちです」(倉田)

 じつに憎々しい。彩羽ネオのときにも思いましたが、なぜかデジモンシリーズって人間の悪役の方が遥かにヒール度がたかいんです。
 デジモンの悪役はみな、どこか憎めないところがあるのに。
 一種の近親憎悪ってヤツでしょうか。


「うわあああああああああーーっ!!」(大)


 いまにも泣きそうな絶叫。保志氏の出ているべつの作品を思い出しました。
 でも、彼は泣かなかった。それが男ってものだからです。彼の侠気も日々、磨きがかかってますね。
 ただし、この後さらなる追い討ちがあります。今まさに、最大の試練を迎えようとしているのかも。


「……何やってんだよトーマ…!? トーマぁあーッ!!」 (大)

 …語りはしないけど裏はない性格だし、ホントにトーマのことは信頼していたんでしょうね…無意識のうちに。
 いろいろ言いたいことはあるにしても、それはそれというやつで。

 それだけに、青天の霹靂ってところでしょう。このへん、今後の展開にかかわってくる可能性があります。



★次回予告
 ……さて、どーしたもんかな。