訣別の日 最強の敵・トーマ!

 脚本:横手美智子 演出:深澤敏則 作画監督:出口としお
★あらすじ
 エルドラディモン防衛戦は、大たちの完全な敗北に終わった。
 いまや孤立の一途をたどるセイバーズは、隊長が用意していた秘密基地で機をうかがうしかない状況に陥る。
 戻ってこないトーマに不安をおぼえながらも、信じて待ち続けるしかないのだった。

 一方、トーマは連れてこられた離島で父親、そして妹のリリーナと再会していた。さらにそこには、倉田の姿も。
 仲間のもとに戻ることを認めない父にトーマは反発する。家名のことしか考えていない父親のことを、彼は憎悪してさえいた。
 だが、倉田は虚弱な妹を治療する手段があると取引を持ちかける。自分と組めば、新しい世界を作っていくことさえできるというのだ。
 この悪魔の誘惑に、トーマが出した結論は……。

 はたして、聖なる都の生き残りを助けようと奔走していた大たちの前にトーマが姿をあらわした。
 彼の答えは……イエス。大への嫉妬心を利用されたトーマは、倉田のもとへ走っていたのである。かつてない衝撃を受ける大。
 戸惑いがあったのか、シャイングレイモンはミラージュガオガモンに倒され、大もまたトーマの拳を受けて大地に沈んでしまう。

 自分たちのやってきたことは無駄だったのか。身も心も倉田の軍門に降ったかのようなトーマに、大はこれまでにないほど激怒する。
 そのとき生まれた黒いデジソウルの中から、やはり黒く身を染めたシャイングレイモンの姿が…。
 倉田も予期していなかった新たな力は、再会せしバンチョーレオモンの言っていたバーストモードなのか? それとも……。



★全体印象
 34話です。
 主人公の激怒から、その化身のような暴走デジモンが姿をあらわす引きはテイマーズを思わせるもの。奇しくも話数までおんなじです。

 さて、とうとうこの日が来たわけですが…。
 なんかしっくり来ないなあ、というのが正直なところ。アレだったら本当、フェイクだったと言うほうが自然なくらいです。

 暴走バーストモードと主人公格の対決を出そうとして、無理矢理に捩じ込んだというのがだいぶ露骨に見えるように思いました。
 山口亮太氏のサイトでは、商機にあわせるために究極体の登場を早めたという証言があるし…元はもう少し違う流れだったんじゃないでしょうか?
 要はそれぐらい、トーマの心変わりが唐突で意味不明だったってことなんですが。大の激怒は状況を思えばわかるんですけど。

 単に対決だったらほかにも方法はあるでしょう。でも、暴走となるとセオリーは限られてくるのかなあとも思ったり。
 大って短気なようでいて、本気で怒らせるのは案外むずかしいみたいなんです。見てて気づきました。
 ああいった漢の信義を違えるような行為でなきゃ、あそこまでブチ切れさせることはできなかった……のかもしれません。

 しかし本気にしろそうじゃないにしろ、トーマが貧乏籤を引くのは避けられないわけで。
 本気だったらトンマ以外のなにものでもないし、フェイクだとしても結果的にヤバいものを引き当ててしまうわけですから。
 それでも後者のほうがまだマシってもんですけれど。

 …イクトのお話が落ち着いてこれからはトーマの時代だと期待してたんですが、こんな形になるとは思わなかったなぁ……。
 ……考えてみたらトーマって、第2クールからろくな目に遭っていない気がします。

 脚本は横手氏。トーマ初登場である3話と同じです。これも縁というものか。
 作画はというと出口氏オンリーなんですが、演出がよかったおかげか全然普通に見られました。戦闘シーンのテンポも良かったですね。



★各キャラ&みどころ

・大
 見返すと、全体通してややピリピリしているように感じます。
 筋の通ったことをしているはずなのに状況は悪くなるばかりですから、苛立つのも栓無いところでしょう。
 エルドラディモンを守るという大役も果たせなかったわけだし、成長しているとはいえこの状況はやはりつらい。

 そこへ持ってきてトーマの裏切りという追い討ちが、彼を精神的に追い詰めてしまったのでしょうか。
 次回はそのせいでえらいことになってしまいそうなんですが、彼ばかりを責めたくはないなぁ。
 たしかにバーストモードを制御できなかった彼には大きな責任がありますし、持ち上げられて舞い上がっていた面もあるとは思いますが、
 そもそも大を追い詰めたものが何なのか忘れてはならないと思うのです。つまり、トーマにも責任の一端があるということ。

 そしていよいよ、最大の試練が襲ってくるようです。
 しばらく倒れたままになってしまうのでしょうか? それとも……


・アグモン→シャイングレイモン
 前半はギャグを飛ばしてましたが、後半は飛びまくりの戦いまくり。遮蔽物が少ないのでグロリアスバーストも遠慮なく撃ってます。
 ギズモンのD崩壊弾を受ける場面もありましたが、ピッコロモンが即死したそれを食らっても持ちこたえていました。
 やはり耐性がついているのかもしれません。ノーダメージとはいかないようですが。

 終盤のバトルではミラージュガオガモン相手に不覚を取っていましたけれど、これはやはり戸惑いが手を鈍らせたのでしょう。
 相手はなにやら殺る気まんまんなので、そこが明暗を分けた形になったようです。

 で、映画にさきがけバーストモード披露と思いきやブラックバージョンでした。白目も黒目も吹っ飛んでて見るからにヤバそうです。
 両手のオーラが不定形なのは、力がいまだ安定していないからなのでしょうか?

 どうやら真のバーストモード発動は、映画を待たねばならないようですね。いよいよ今週末か。
 とりあえずは、日曜に見てくる予定です。


・淑乃
 前からけっこう図太かったけど、このところ輪をかけてる気がしますねえ。
 大からツッコミを受けるケースってかなり希少な気がいたします。でも、小百合さんと知香は大にとって巻き込みたくない方々ですから、
 ある意味当然か。

 後半は脇に徹してましたが、トーマへの感想を聞きたいところです。


・ララモン→ロゼモン
  ノルシュタイン家の紋章を知っているということは、トーマ父とも面識があるのでしょうか?
 でもガオモンでさえリリーナと初対面だったところからすると、ヘリのケースのように私有物を見ただけだったのかもしれません。
 ああ、ソレ以前に洋館で見たものを覚えていたともいえるか。

 戦闘ではめずらしくというべきか、手こずるシャイングレイモンを助けるシーンがみられました。
 でも基本的にはイクト組と同じく脇です。


・イクト
 トーマのことを気にかける場面あり。トーマとは接点が少ないので、貴重なシーンかもです。
 今回はそのくらいかな。

 …しかし、これでトーマがマジだったら彼は通算何回裏切られることになるんでしょう。優しさを忘れないでくれ。


・ファルコモン→ヤタガラモン
 今回特筆すべきポイントはありません。仲間になってからこっち、意外と地味なんですよね。
 思ったよりしゃべらないというか、イクト絡みでないと本領発揮できないのかな。


・オペレーターズ
 秘密基地でもやっぱりオペレート役。戦闘には参加していません。
 もともと非戦闘員だし、ギズモン相手じゃ荷が重いということかなあ。


・湯島のおっちゃん&カメモン
  …そういえば、見かけによらずバリバリの戦闘系なこのお二方はどこにいったんでしょう。
 なにか理由あって別行動してるんでしょうか?


・小百合ママと知香
 どんな状況でもあいかわらずな二人。いまやセイバーズの数少ない理解者です。
 流れからみて、大とトーマの間にひとつの楔をなすのは知香なのかもしれません。


・バンチョーレオモン
 そんな大事なことなんで先に教えとかなかったんだよアンタとツッコミを入れたいところですが、
 事態が彼でさえも予測しなかったほど急を要し、また大の成長自体が予想以上だったってことなんでしょうね。
 そーいえば誰もツッこんでませんでしたけど、フツーに人間界へ出てきてます。やはり彼にはなにか秘密があるのか。

 秘密といえば、小百合さんや知香と対面したときの意味深な笑顔が気になります。
 OPといい、大門博士とはどんな関係があるのでしょうか?

 ってかトーマ、この秘密を知らずにあっち行っちゃっていいの?


・ピッコロモン
 聖なる都の生き残り。しかしまたしても一歩遅く、ギズモンに分解されてしまいます。
 このデジモン、セイバーズでは死んでばっかりだなあ。


・トーマ
 …どうもまだ信じられません。信じたくないという気持ちのほうが強い。

 だってそうじゃないですか。
 何を願ってDATSに入ったんです? 倉田という男がどういう人物か、まさか忘れたわけではありますまい。
 信じてくれたイクトはどうするんです。隊長が託してくれた使命は? セイバーズがいなかったら本当にもう全滅するしかない、
 聖なる都のデジモンたちのことは? 何より、これが彼の望む平和な世界への道なのですか? 裏切りと保身と諦めの世界への道にしか見えません。
 それ、今のこの現世とどこが違うんです? 何も変わらないと誰もが知って生きる世界が、新しい世界だとでも?

 それともアレでしょうか。
 なるほど、賢い人間であれば……すでに大勢が決しつつあるこの状況で、矜持にこだわっても意味はないと思うでしょう。
 それならばせっかくの提案だし、受け入れて身の振り方を考えた方がメリットがある、と言えないことはありません。 

 私には理解できないし、認めたくもありませんが。

 倉田は人としての良心があるなら、どんな理由があろうとも絶対に組んではいけない相手です。
 奴のもとにいたのは初めからそんなものを持ち合わせていないか、イワンのように意図して良心をマヒさせている手合いだけでした。
 そこにいたほうが楽しめるから。メリットがあるから。仕方ないから。

 筋の通ったことをして頑張る人々が報われず、才気ある一部の人間や民族が恩恵をかっさらう。これは結果論としての世の流れです。
 ですが…いえ、だからこそ、少しでも正しい者、ほんとうに救わなければならない者に手を差し伸べることを忘れてはいけないのに……。

 力なきものはどんなに正当な主張をしていても潰される。そんな世界を意図して作ろうというのですか?
 優しさを忘れた人間などに、いったい何の価値があるというのです。早晩といわれている滅亡でも早める気ですか?
 未来まで殺すつもりなのですか。君が望んだのはほんとうにそんな世界か!? そんな力か!?


 ……私は悲しい。
 ……ウソだと言ってください。人の心がまだ残っているならば。


・ガオモン→ミラージュガオガモン
 君もです。マスターが決めたからといって唯々諾々と昨日までの同志に牙をむくなんて、一体どうしたんですか。
 それではまるでロボットと同じじゃないですか。いくら最近ロボっぽいからって。
 トーマを止められるのは、いちばん近くにいる君なのに。

 ……どうもこのへんがスムーズすぎるんで、フェイクを疑いたくなるんですが。
 というか、今のまんまだとまじで最低ですよあなた方?

 …これだから裏切りやらダーク化やらは鬼門だというのです。
 作戦だったというならまだしも、本気だったらいったいどのツラ下げて戻ってこれるというのか……勘弁してください。
 ジェットマン34話「裏切りの竜」みたいなどんでん返しをなんとか期待したいなあ……あっちはバレバレだったけど。

 でもリリーナの会話で赤面してる場面は良かったですね。いちいちマスターに許可求めてそうな目線とか。


・トーマ父
 あんまり物事を深く理解していない…というより、理解する必要もないとはじめから切り捨てているように見えます。
 逆に言えば単に無理解な大人というだけとも取れますが…トーマとの和解のときはくるのでしょうか。
 ってか、倉田の所業についてはどこまで承知しているんでしょう。

 …それにしても、仮にも長男であるはずのトーマを母もろとも追い出さねばならなかった理由はなんだったのでしょうか。
 やはり東洋人とのハーフというのがまずかったのでしょうか。だったらなんで子供つくったんだって話に。

 兄でもいたら話が違ってくるんですが……それだとまるっきりライディース・F・ブランシュタインだなあ。


・リリーナ
 なんだ、妹がいたんだ……というのが第一印象。
 まあそれを考えれば、トーマが知香を気にかけていたのも当たり前ですね。
 もうひとつの第一印象は、「反逆のルルーシュ」のナナリーですか。黒の王子と化した今のトーマにはある意味似付かわしい…失礼だな。

 それにしても脳天からすっぽ抜けるような声で脱力します。可愛いは可愛いんですが。


・ ギズモンXT
 雑魚化が叫ばれて久しい昨今先週で挽回をはたし、今回もけっこうがんばっていました。
 しかしギズモジャベリンならともかく、バラの状態ではやはりもうセイバーズの敵ではありません。それでもオトリにはなるようです。
 というかアレ、ピッコロモンを追い込んでセイバーズを誘い出すえげつない作戦にも見えたんですが。まさかトーマの発案じゃないでしょうね。

 そういえば、殺したピッコロモンのデータを吸収しようとはしてませんでした。もう用済みということか。


・倉田
 今回で別のスタンスが見えてきました。
 彼はようするに汚れた大人の代表格であって、セイバーズのような若者の前に立ちはだかる現実そのものでもあったんです。

 自分がはじめに信義を違え枠組みをこわしておきながら、力と権謀術数で異議を押さえ込み「これがルールです」と嘯く。
 相手はいつのまにかその中にいて、後から狡いぞと叫んでもどうすることもできない。
 これ、現実の世界でもよくあることだと思います。

 正しいか間違っているかを決めるのは、ルールを決める者。もう諦めて従いなさいと、むしろ諭すような言いかたが久々にムカつかせてくれます。
 DATSを影で裏切りデジタルワールドとの関係をめちゃくちゃにした上、ボコボコ穴あけて境界歪めておきながらよくも言えたものですね。
 でも彼は知っているのでしょう。正しい者が勝つのではなく、勝った者が正しいのだと。それは歴史が証明しているのだと。
 そしてこういう悪知恵のはたらく者こそのし上がるのが、たしかに現実というやつです。

 でも、それじゃダメなんですね。
 力なき正しい者が潰されるのではなく、間違っている者は力があろうとなかろうと自然に潰れる。これが理想なんです。
 そして、理想というのは追い求めることにこそ意味がある。DATSとは、そういう理念のもとに作られたのでしょう。
 時間はかかるかもしれませんが、ひとつひとつ実現していく。そしていつかは、02ラストのように。

 …どうもこの男、大門博士への個人的な嫉妬と私怨もあってDATS潰しを画策したとしか思えません。
 あとは大を仕留めれば、復讐は完了というわけですが……人間、絶頂のときこそ油断してはならないものです。ある意味、今がいちばん危ない。
 これ、現実にもあてはまることですよ。



★名(迷)セリフ

「あったり前だろ。あいつは、仲間を見捨てたりしねェよ」(大)

 こういうこと言ってくれてるのになあ…。
 それともこんなこと言う自体、実は信じ切れてなかったってことだと言いたいのでしょうか。


「バーストモードは絶対に使ってはならん力だ。…お前たちのためにもな」(バンチョーレオモン)


 いいか? 押すなよ? 絶対押すなよ?


「…僕は…倉田博士といっしょに、平和な世界を作る!」(トーマ)

 寝言は寝て言ってください。
 そりゃ大が画面効果つきで衝撃受けるってもんです。というか怒るよ、普通。


「いいか、よく聞け! 君には何もできない…! 何もだ!!」(トーマ)

 …はっきり言ったらどうなのです。
 何故お前が救世主なんて言われるんだ、僕のほうがずっと能力があるのに、って。
 新しい世界だなんだって言っても、結局はソレでしょう?

 だいたい、何も出来なかったのは君だって同じでしょう。これからは違うとでもいうのですか?

 分かってもらえないなら、そのせいで結果を出せなかったなら、なぜ殴り合いしてでも語り合おうとしなかったんです。
 腹を割って話しあおうともせずに有利な側にまわって、自分の頭だけで極端から極端へ走って……
 それとも、もう何をやっても無駄だから天才らしく利口に振る舞ったのですか?

 もしも本気だというなら、君なんかトンマで充分だ。軽蔑しますよ、心の底から。


「なんだ、アレは!?」(倉田)

 …そろそろイレギュラーが増えてきたようですね。

 バランスを取るなら、デジモン側にも人間の全排除をとなえる存在が出てきていい頃です。ゴツモンも一応そうでしたが。
 となると、やはりロイヤルナイツが「ええ加減にせえよオンドレ」って腰を上げてくるってところかなあ。



★次回予告
 映画予告に圧迫されてどんな内容になるのかさっぱりわかりませんが…暴走したのが人間界というのはやばい。実にやばい。
 そういえばこの後真のバーストモードを会得するのであれば、やはりデジタマ化はデジモンにとって死を意味しないのかも。
 もっとも、記憶が残るかどうかはケースによるのかもしれませんが…。