目覚めよアグモン ベルフェモンを倒せ!
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脚本:山田健一 演出:佐々木憲世 作画監督:竹田欣弘 |
★あらすじ
ベルフェモンと融合した倉田に敢然と立ち向かうトーマ、そしてミラージュガオガモン。
駆けつけた大はその姿を目にしたとき、すべてを理解した。かくて、音高い拳打の響きとともに大はトーマと和解を果たす。
しかし、パートナー不在のままな彼が戦闘に参加するのはやはり無理がありすぎる。
苦闘がつづく中、ひときわ激しく倉田を糾弾する者がいた。イクトだ。
デジモンと人間、質は違えど同じ知的生命。両方を見てきたイクトにとって、そこに優劣などはない。
それを理解せず、知ろうともせず、たった一人で虚しい力を誇示する倉田に、イクトはもはや憐れみすら感じていた。
仲間とともに勝つ。その想いが、ファルコモンを究極体へ導いてゆく。レイヴモンの誕生である。
レイヴモンの速さと鋭さ、そして必殺の一撃が倉田を追い込む。だが、激怒した敵は鎖を引きちぎってさらにパワーアップした。
すでに倉田の意志は呑み込まれ、破壊の化身と化した魔王ベルフェモンが大暴れをはじめる。手がつけられない強さだ。
この期に及んでも、見ているしかない大。アグモンとともに戦いたい……彼が心の底から強く願ったとき、デジタマが孵った。
しかも…記憶までそのままだ。大の純粋で真摯な想いと、デジヴァイスバーストが奇跡を起こしたのである。
DATSきってのケンカ勝負コンビ、ここに完全復活!
意気あがるふたりは決意もあらたに、ベルフェモンへ突進してゆく。はたして世界の運命は!?
★全体印象
37話です。2006年はこれで終わり。
開始5分そこいらであっさり和解した大とトーマに、まず思いっきりズッコケました。
いいのか、君ら。本当にそれでいいのか!?(^^;)
しかし、ここで引っ張らなかったおかげでイクトの出番と究極進化へ予想以上のスポットが当たったという利得も存在します。
正直、彼には悪いけど添え物レベルだろうと思っていたものですが、よい意味で裏切ってくれる奮闘ぶり。
それどころかいちばん小さな彼の頑張りが、大により強く純粋な願いを抱かせる引きがねになったといえましょう。男だぜイクト。
とはいえ、全編にわたって終始倉田→ベルフェモンが優勢なことに変わりはありません。
ほんとうの反撃は年明けに持ち越しです。これは待ちきれない正月になりそう。
作監はお馴染み、竹田欣弘氏。もうカンペキに趣味の入った作画です。影バリバリの睫毛ベタベタ、そして胸と腰。
もはやバーストモード、誰にも止められません。特にオペレーターズがえらいことになっていてむしろ笑ってしまう。
それでもデジアドの時ほど違和感を感じず、そうした意見も見かけないのは、キャラデザインの方向性に剥離が少ないからでしょう。
戦闘などの動きなどに派手さはあまりありませんが、テンポは良好です。
そのあたりは次回のスタッフがおそらく最強ですから、そっちを期待しましょう。
★各キャラ&みどころ
・大
彼にとって必要なのは、やっぱり隠れ家で指をくわえて待っていることではありませんでした。
戦いの場に赴き、その空気を感じ、皆の奮闘を目の当たりにしてはじめて、パートナーを目覚めさせることができたのでしょう。
トーマとの蟠りも解消しておかねばならなかったわけですし。
で、あっという間に終わったトーマとの和解ですが…アレかな。
納得のいかないことは山ほどあるけど、そんなものは全部コブシ一発でチャラってところでしょうか。
あれは34話のような敵意のこもった拳ではなく、そういった諸々をクリアするための儀式のようなものだった、と。
そうすることで、彼はあるがままの気持ちをもってアグモンに語りかけられるようになったのかもしれません。
しばらく迷走していたぶん、次回は存分に暴れてくれるでしょう。遠慮なく倉田をブチのめしてください。
・ コロモン→アグモン
一瞬で進化したものの、ちゃんと幼年期の姿で出てきました。厳密にいえばボタモンなんでしょうけど。
大はなんか誤解してましたが、進化すればちゃんとアグモンになるので「アグモンじゃない」というのは当たっていて正しくない。
もっとも、一度デジタマに戻ったデジモンがまた同じ進化をするという保証はないはずです。例外が起こりまくっているようですが。
この二人にとって、小百合ママの待つ家はやはりとてつもなく大きな存在なんでしょう。
戦いはこれからなのに先のことを話しはじめる彼らを見て、そんなことを思いました。
・淑乃&ロゼモン
トーマに関しての態度は保留していた淑乃でしたが、具体的ペナルティを与えるという形で赦しました。
あのあたりは基本設定にある「ちゃっかり者」が活きている部分です。
ロゼモンは堪える時期ですが究極体だけあって、タフです。次回にもまだまだ出番がありそう。
・トーマ
いろいろ納得いかんことはありますが、とりあえず疑ってすまんかった。
この場を借り、あらためて一言を刻んでおきます。
彼本来の計算としては、イクトの時のように大を倒したと見せかけて潜伏させ、時間を稼ぐつもりだったのでしょうが台無し。
それどころか大にはパートナーまで失いかけるハメに陥らせてしまったので、思うところあったでしょう。
結局、またしても彼は大という男を計算しそこなったことになります。というより、大を計算だけで御しようというのが間違いだった。
前もって大にくらいは意図を打ち明けておけば、また違う経緯になったかもしれないのです。
ナナミが言っていました。計算できないものなど無いと。仮にそうだとしても、それで終わらせてはいけないものがある。
男の信義というやつです。破ってしまったと気付いたからこそ、彼は大の拳を仁王立ちで受け止めたのかもしれません。
ところが、一度はあれほどに自分を潰そうと荒れ狂った拳へ、目の前の男は輝きを取り戻そうとしている。
頬に受けたとき、いや、大の目を見た時、トーマは確かに感じ取ったはずです。これは仲間としてのケジメの拳なのだと。
そのとき、彼の中にあった小さなこだわりや蟠りもまた打ち砕かれたのでしょう。
おたがい、とんだ馬鹿をやらかしたものです。そろそろ良い意味でのバカにもどらねばなりますまいね。
・ミラージュガオガモン
あ、また踏まれた……サーベルレオモンのときといい、なにかとヒドイ目に遭ってばっかりですこの人。
先陣を切ってベルフェモンに挑むものの、相手が強すぎて全然いいところを見せられません。レイヴモンのほうが頑張っています。
まあ、初登場効果のかかってるあちらと比べるのは酷というものですが。
トーマが具体的に作戦を指示しだすともはや負けフラグにしか見えないのは、どうにかならんもんでしょうか。
・イクト
ついに究極進化を会得しました。大たちから話を聞いていただろうとはいえ、自力での会得に見えます。
長年デジタルワールドで暮らした中から、天然自然に育まれてきたもの持っているからこそできたことなんでしょう。
むしろ、他よりも究極進化らしい演出だったんじゃないでしょうか? タイミングはたしかに悪いけれども。
もちろん結果としてはベルフェモンを活性化させるだけだったのですが、けっして無駄ではありません。
上にも書いたとおり、だれよりも小さくそして今や大の弟分でもある彼が体を張って年長顔負けの頑張りを見せることにより、
その心意気を受けた大がより強く、純粋な願いを発露させたのだと思います。それが一人ではないということですから。
君はかならず勝つでしょう。仲間とともに肩を支えあって。
・ヤタガラモン→ファルコモン→レイヴモン
メインでは唯一完全体だったこのコンビ。でもメゲたり怯んだりすることなどなく、勇敢に戦いを挑んでゆきました。
その姿はすでにりっぱな男のもの。立ち位置を手に入れた今となっては、むしろ誰より完成された戦士たちかもしれません。
かくして現れたレイヴモンは、誰もキズひとつつけられなかったベルフェモンの肉体にダメージを刻む強さを持っていました。
もはや実力的にはメルクリモンに並んだといっても過言じゃないかもしれません。イクトの若さを思うと驚異的です。
体は小さいけどその斬撃の鋭いことは、ミラージュガオガモンの爪さえも凌ぐものがありそうです。速さではメンバー随一でしょう。
しかも、まだ上があるというウワサです。
思えば、彼らの進化はつねに倉田と相対したときのものでした。
それだけの因縁があるのだから当たり前ですが、25話のときとはずいぶんと印象がちがいます。
ヤタガラモンへの進化では倉田への敵意と、イクトの生き様が定まったことによるあらたな第一歩を感じさせました。
しかし、今回は前ほどの激しい敵意は感じません。彼らの目はすでに、その先を見ています。ふたつの世界の未来を見ています。
目の前の悪魔はもう彼らにとって、ただの通過点になりかかっているのかもしれません。大変なのはこれからなのですから。
・オペレーターズ
戦闘ではものの役にも立ってませんが異様に存在感があります。おもに作画のせいで。
いつもより開いた襟から除く胸元にも異様に存在感があります。おもに作画のせいで。
…もう歯止めがきかなくなってますね竹田さん(^^;)
・知香と小百合ママ
なんだかんだでここ毎回、ちょこちょこ出番のある二人。
小百合ママは無論のこと知香まで影バリバリになってます。さすがに胸までは強調されてませんが。
そういえば02後半においても、竹田原画でだけ女の子たちにほんのり胸があったのを思い出しました。ポスターとか。
今現在、せっせと卵焼きが量産されているまっ最中。ここにも未来を見つめる人たちがいます。
・湯島のおっちゃん&ノルシュタイン家のみなさん
避難中。戦いの場からはだいぶ離れていますが、危機がせまるケースもありそうです。バースト進化はそのへんがカギになったり?
おっちゃんはいざという時の護衛役ってところでしょう。ある程度ならカバーしてくれそうです。
・倉田
半分わかってたことですが、やっぱりベルフェモンに呑み込まれてしまいました。根性が足りません。
何かの影に隠れ、誰かを利用しなければ何もできないくせに、人のためになることは何ひとつしようとせず、守るべきものもない。
間違いなく、デジモンシリーズ最低の悪役です。それがいちばんの持ち味となりました。
けれど、もうおしまいです。
いままで限りをつくした悪行、そのすべてに代償を支払ってもらいましょう。年明けが楽しみです。
ちなみにギズモンを作ったのはベルフェモンを見つける前ですから、操られていたという言い訳はききません。
その野望がベルフェモンと引き寄せあったのは確かでしょうが。
・ベルフェモン
ダメージを受けて怒りに我を失った倉田を覆いつくすように、主人格が姿をあらわしました。
倉田本人が気持ちをしっかり持っているうちはよかったのでしょうが、少しでもバランスを欠くとダメだったみたいです。
戦闘スタイルは単純。しかしそれだけに、破壊力は絶大です。
鈍重に見えてミラージュガオガモンのスピードにも反応してみせるので、すべてが高いレベルで纏まっているのがわかります。
口からも光弾を発射するようですが、技名は不明。なんだか大猿化したサイヤ人を思い出します。
…そういえば、何かガッシュ石板篇のデモルトにもイメージがだぶります。とちゅうで主従逆転するところとかも。
★名(迷)セリフ
「…兎屋の大福一週間分! それで許してあげるわ」(淑乃)
トーマと淑乃の間には、大とはまた違う信頼関係があります。
それを象徴してくれるようなセリフかもしれません。
…それより、この状況で行きつけのお店は大丈夫なんでしょうか。
「…ブレない。揺るがない。変わらない……。だからきみの拳は、心に響くんだな」(トーマ)
今思えば、34話で大に殴られたときすでに「間違えた」と気付いていたのでしょう。
今回殴られたあとどう出るかは、大の拳から何を感じ取れたかで決めるつもりだったともいえます。
そして、どん底から這い上がりすべてを知った後の大は、ふたたび真っ直ぐさを取り戻していた……より大きくなる可能性を秘めて。
そのとき、トーマはあらためて思ったのかもしれません。こいつだけは計算できないな、と。
「…これで仲直り??」(ロゼモン)
「はー…男ってバカね…」(淑乃)
またまた淑乃組からエントリー。セリフの上ではしっかりと目立っています。
このへんのくだりを見た時、いろんな意味でもうええわと思いました。
しかし、ロゼモンの胸へどうも目が行ってしまいます。
「人間いちばん、違う! デジモンいちばん、違う!
暖かさ教えてくれた、ユキダルモン……厳しさ教えてくれた、メルクリモン…競い合い教えてくれた、デジモンたち…
仲間のたいせつさ教えてくれた、マサルたち! みんな……仲間!!
おまえ…仲間いない…! おれ、勝つ! 仲間いるから!!」(イクト)
齢10歳にしてこの発言。生半可な大人では太刀打ちできません。ここまで啖呵切った以上は勝たせたかったなあ。
というか倉田博士、あなたは10歳に哀れまれる自分のアホさ加減をいっぺん顧みたほうがいいですよ?
どうせ言ってもむだでしょううけど。「害虫」と一体化してたり、平気でダブルスタンダードかます根性ですから。
「アグモン! オレはお前といっしょに戦いてぇ! 戦いたいんだ! お前といっしょに!!
お前もそうじゃねえのかよ!! アグモン!!!」(大)
言葉は前回と同じようなものですが、言い方がぜんぜん違います。もっと心の奥から搾り出すような、魂の叫びって風情。
このあたり、声優さんの面目躍如ってところでしょう。
直後のシーンでは、デジアドの映画を連想させたりしてくれます。友達のしるし。
「さあ、行こうぜアグモン!! 倉田を倒して、腹いっぱいメシを食うぞ!!」(大)
「うん! 小百合の卵焼きもつけてくれよ、兄貴!」(アグモン)
そうそう、こういうノリでした。思えばしばしの間、忘れていたノリかもしれません。
というかトーマとの和解シーンといい、セイバーズという作品はそういうノリでした。こっちが忘れていただけだったんです。
★次回予告
たぶん上野作監ですが、ほかにも有力スタッフが多数参加していそうな予感がします。
顔が出てくるってことは殴るんですね!? 眼鏡ブチ割るんですね!? 是非に。