バーストモード 究極を超える力 |
脚本:大和屋暁 演出:地岡公俊 作画監督:青井小夜 |
街の電力を吸い取り、時空震動爆弾も取り込んで次元を裂く能力まで手に入れたベルフェモン=倉田。
体勢を立て直してふたたび攻撃を仕掛けるセイバーズだったが、敵はあまりにも強大だった。
あきらめず向かっていこうとする大を守って、仲間たちが倒れてゆく。絶叫が響いた。貸してくれ。力を貸してくれ。
だが、シャイングレイモンは語る。大は悟る。力とは借りたり、与えたりするものではなく……合わせるもの!
ふたりの心がひとつとなり、究極体をも越える最大の力を発現させ今ここに、バーストモード降臨!
究極を凌駕したバーストモードの力は、圧倒的そのものだった。最強を誇ったベルフェモンさえ、業火の前の山羊に等しい。
そしてついに、願いをこめた大とシャイングレイモンの拳が決まる。
ふたつの世界をさんざん荒らしまわった、悪魔のような男の野望が潰える瞬間だ。
だが逃げようとした倉田が時空震動爆弾を炸裂させたために、かろうじて保っていた次元の壁が崩壊してしまった!
倉田は光の中に呑み込まれ、ホワイトアウトが晴れた後に広がっていた光景は…。
★全体印象
2007年一発目、38話です。
おおよそ1クール続いた対倉田編も、これでフィナーレ。
元凶といえる悪人が退場してしまったことになるので、39話以降どうなるのか完全には予想できなくなりました。
ロイヤルナイツは果たして敵か味方か…そして、魔王型はベルフェモンだけしか出ないのかどうなのか。
大詰めに向けて、これからも目が離せないところです。
それにしても大へいつもの調子が戻ってきたのに当てられたのか、他の皆さんまで熱いこと熱いこと。
さわやかな笑顔でガンガン締めにかかっており、前回までの雰囲気と違ってぜんぜん負ける気がしません。
つられて倉田までもが絶叫しまくりで、なにやらえらいことになりました。
映画にも負けない迫力で駆けるバーストモードはといえば、待たせただけのことはある圧倒的な強さ。
溜めに溜めて溜めぬいてきた視聴者の鬱憤を、セイバーズならではの拳の一撃でスッキリと打ち砕いてくれました。
この瞬間、きっと誰もが待ち望んでいたことでしょう。
大迫力の決戦を盛り上げてくれたのがキャラデザインの青井小夜さんをはじめとする、第一線級の作画陣。
さらに演出には「ベルゼブモンの拳」「バベルガ・グラビトン」の地岡公俊氏が帰って来ており、鉄板の組み合わせです。
「ガッシュ」の頃よりもさらに厚くなったスタッフ層を実感することができました。
さあ、そしていよいよ第4クールも目の前です。
最後の新展開を迎えるであろうセイバーズ、括目して見届けようではありませんか。
★CM
早くもデジモンストーリー新作、サンバースト&ムーンライトの広告がオンエアです。今回は気合はいってるなあ。
無線環境をやっと導入したことだし、今度も絶対買いますよ。
でもあの牧歌的で耳に残るCMソングが廃止されたのは残念。第2弾以降で復活するといいな。
★各キャラ&みどころ
・大
アグモンが戻ってきた嬉しさもあってか、すっかり素にもどって気力も150。
勢いに乗ってベルフェモン=倉田を拳だけで二度もぶっ飛ばしたり、いよいよもってガンダムファイターになってきました。
今回はパートナーと二人でだったけど、映画じゃ単独でアルゴモン究極体を殴り飛ばす超人になってましたっけ。
そしてもはや誰もツッこむ気配すらなし。慣れたんですね。
思えば倉田という悪役は、必殺技をビーと撃ってドッカーンと倒しただけでは足りない手合いでした。
やはりここはセイバーズらしく、握り締めた義憤の拳で盛大に殴り砕いてほしいと思っていた方は少なくなかったでしょう。
今回の決着は、まさにその願いをかなえてくれるものでした。あれは視聴者の願いでもあったのかもしれません。
かくして成長度マックスレベルのアバレマックスと化した彼。
この先たとえロイヤルナイツが現れても、相手にとって不足なしと渡り合うのでしょう。
・アグモン→シャイングレイモン→同バーストモード
しばらく休んでいたおかげか、はたまた暴走とはいえバーストモードに進化してたおかげか基本能力が軒並みアップの様子。
ドラゴンインパルスを使ったあと、パワーアップを果たしたVテイマーのゼロを思い起こさせます。
あれも究極体への前フリみたいな感じでした。
ようやく出てきた真・バーストモードはさすがに力のこもった活躍ぶり。
最大のポイントはやはりあの鉄壁の防御力でしょうか。ガード不能にみえたベルフェモンの次元破壊アタックも関係なし。
しかも状況によって瞬時に両手剣になったり両手が盾になったりするマルチぶりで、手がつけられない強さです。
接近戦に特化してるように見えますが、たぶんあの剣を手裏剣へ変えたりもできるんでしょうね。
さて、黒バーストモード(ルインモードというらしい…)は大が自身の激情だけで発動させてしまったものでした。
今回はというともちろんぜんぜん違っていて、ふたりで発揮することに拘っています。
最後もふたりでの拳だったし、セイバーズのポイントはこのあたりなんですね。
思い出してみればあっさり片付いたとはいえ、究極体になれたのもパートナーとの絆がカギでした。
そこからさらに研ぎ澄まして精神を通じ合わせることにより、バーストモードを掴み取ることができるのでしょう。
おたがいの心の声が聞こえていたようですし。
・淑乃
1クール目によく見られた表情がめだつような気がしました。
彼女も素というか、いつもの自分を思い出したのかもしれません。まあ、いちばんは予告にも出たむしろ不敵な笑みですけど。
他には咄嗟にイクトをかばう場面もあって、仲間としてのつながりが非常に強くなっていると実感させてくれたりします。
…というか彼女の本命は案外とイクトだったりして…
今はいろいろアレですが男としては将来性十分だし、両親は裕福そうだし、なにより素直だし…
あれ、大やトーマよりは可能性ありそうな気がしてきた。10年後が楽しみってもんです。いや勝手な想像ですが。
…これはOPのせいだな。
・ロゼモン
そんな淑乃が本命と思われる彼女もイクトには甘そうな予感が…もういいか。
サポートに徹してはいましたが倉田を状態異常に嵌めたり、存在感はありますね。振り向きヌードとか。
Fテンプテーションってあんな追加効果があったんだ…あ、ゲームでは確かにそーゆー技でしたっけ。
うわさでは彼女にもバーストモードがあるとのことなので、やはりここはロードナイトモンと対決してほしいです。
ギャグにしかならん気がしてしかたありませんが…。
・トーマ
あれこれ迷走しましたが、結局ひとりだけで何とかしようとしてもダメなんだなと気づいたみたいです。
ナナミの言葉はたしかに彼を惑わせましたがそれは別に、彼の信念そのものを揺るがせるものではなかったのでしょう。
迷ったのは、あくまで事にどう対処するかという点だけだったんです。まあ、ミスリードに引っ掛かった…というか、
引っ掛けるためにわざわざああいう描写をしたってことなのかなあ。
で、前回は相方だけに飛ばしていた指示を全員に出していました。何やら知性派熱血漢へ転身したようです。
イメージとしてはちょっと高嶺清麿に近くなったのか。あっちは大まで兼ねてましたが。
ただ、ああいう知略による連携バトルはケースにもよりますが、敵が強すぎるとあんまり決め手にはなりません。
私はこの傾向、「知恵をトンデモでひっくり返される現象」と呼んでいます。
ああいう出鱈目な相手には、それ以上に出鱈目なパワーをぶつけないとダメなんですよね、ほとんどの場合。
今回はそれがバーストモードだったというわけです。
それでも場当たり的にやってた前回までよりは遥かにマシにやれてるんで、無駄ってわけじゃないんですけど。
・ミラージュガオガモン
前回はあんまりいい所を見せられませんでしたが、今度はがんばっています。
いまいち命中率の低いダブルクレッセントミラージュも当たる当たる。
そーいえば迂闊に接近戦は挑まず、中距離戦に徹していたようですね。正しい戦術です。
最終的には大を庇ってベルフェモンの技と相撃ち。それでも根性で成長期には戻っていませんでした。
まあそれは他のふたりも同じですけど。
ロイヤルナイツと対決するならマント同士ということで、デュークモンが絵になりそうです。
もしくはシャイングレイモンと二人でオメガモンとか。ワクワクしてきました。
・イクト
前回のダメージは別にどうってことなかったみたいです。というより私自身がすっかり忘れてました。
さて大と仲間たちのおかげで、ついに宿願を果たしました。
本来なら彼自身がやる線もあったでしょうが(デジアドではヴァンデモンをエンジェウーモンが一度は倒しているし)、
倉田はもはや彼だけの仇敵ではないので、皆の勝利はすなわちイクトの勝利であり、本懐なのでしょう。
成し遂げたのが兄貴分でもある大ならばなおさらです。感慨のあまりに半分泣いていたカットがあり、印象的でした。
淑乃とは庇われたりそろって吹っ飛ばされたり、今回ミョーにツーショットが多かったですね。
・レイヴモン
神代知衣さんが頑張って男声出してるんですが、台詞のうえでもかなりワイルドなものが見受けられ、
大が評価したとおり男の中の男って感じに仕上がっています。
それにしてもあのサイズでミラージュガオガモンに負けないパワーを出せるというのがすごい。
やはりデジモンは大きさでは量れないようです。
ロイヤルナイツではスピード自慢ということで、アルフォースブイドラモンとの対決が嵌りそうですね。
もっとも、アルフォースブイドラモンが敵役やってる場面が思いつかんのですが…。
ロイヤルナイツといっても主義主張が割れていて、味方にまわるものもいるんじゃないでしょーか。
・オペレーターズ
態勢を立て直したとたん、前回までがウソのよーに奮闘しはじめました。
後方支援は後方支援なりに、攻撃を決めるべきポイントを絞ればちゃんと効果はあるってことでしょう。
気のもちようというのも、パートナーに影響しているはずです。熱いハートでクールに戦え。
そんな奮戦も半ばむなし、今日も今日とて仲良く吹っ飛ばされていますが、皆さん頑丈だなあ。
・チェスモンズ
火力を収束させてピンポイント雷撃。思っていたよりもずいぶん粘ってくれました。
が、やはり完全体の悲しさ。強化ベルフェモンの攻撃で成長期にもどってしまい、中途リタイアしてます。
彼らが究極体になることはあるんでしょうか? 2体がかりなら、デュナスかマグナあたりなら勝負になりそうな気はしますが…。
・知香と小百合ママ
闇の中、ひたすら勝利を信じて待っているだけの描写でした。
なぜかアップになったのは知香だけですが。
・湯島のおっちゃん&ノルシュタイン家のみなさん
前回につづき避難中。次元裂断ビームがちょっと見えてびびったりしてましたが見守り組です。
再登場してからはすっかり裏方に回った感のあるおっちゃんですが、なにしろ隊長がまだ戻ってきていません。
そのあたりで、まだまだ出番がありそうな気がします。
・倉田=ベルフェモン
憎悪がベルフェモンの意志すらも凌駕したのか、また倉田が出てきました。少しは頑張るようです。
とはいえ、中にこもりっぱなしでは殴りがいがないのも確かなので出てきてくれてよかったかも。
それにしても、つくづく「スクライド」の無常矜持だなあこの人は。
しかし、彼の力はしょせん借り物。同じく、退場していったバイオデジモン三人衆の力も、与えられたものでしかなく。
バーストモードの発現とふたり揃っての拳打はですから、最強と信じた肉体を打ち砕くと同時に、そうした倉田の思想をも
こなごなに砕いたという、いわば完全否定の拳だったというわけですね。
完全にイッちゃった表情と言動なのは、ベルフェモンの影響でしょう。
大門博士へのゆがんだコンプレックスが完全にだだ漏れです。欲望というか感情のくびきがなくなったようですね。
序盤の悪性デジモンを見ていても、そういう影響を人間に与えるのはたしかみたいですし。
その最期は、逃げつづけた末の自滅というかたちでした。落としどころとしては妥当かなあ。
どこへ行ってしまったのでしょう。あの光に焼かれたのか、それとも永遠に時空のはざまを彷徨うことになったのか…。
往生際がとことん悪いヤツですし、はざまの魔物と結託してまた出てきたりして(何処のエクスデスだ)。
それにしても状態異常が効くなんて意外でした。もしかしてチェーンソーが効いたりします?
★名(迷)セリフ
「僕たちはチームだ…! 個人では不可能なことも、全員の力で何度も乗り越えてきた!」(トーマ)
笑顔で語られても何か唐突という気がせんでもないですが、これをトーマが言うあたりが重要なんでしょうね。
彼も大も、ここ最近はとりわけ個人プレーが多かったわけですし。
「そうだ…拳だって握れる!」(ミラージュガオガモン)
ガオモンはもともと拳士スタイルだから別に違和感はないんですが、どうも大たちの影響という気がしてしまう。
その後の「わかっているだろ?」も然り。
「安心なさい…
彼らはチーム。DATS最強のチームじゃ。大丈夫…! きっと大丈夫…!」(湯島のおじさま)
おっちゃんも熱いぜ。
「…あなたたちさえいなければ… あなたたちさえいなければ…!
私は楽に世界のトップに立てたはずなのにィ〜!!」(倉田)
もうしゃべるな。話が噛みあわねえ。
ところでこの人、昔にもなんかやらかそうとしたんでしょうか? それとも単に博士に負けっぱなしだったから?
「そうだな…僕らのすべきことは、何も変わらない!」(トーマ)
理屈を弄っても結局はそういうこと。複雑にみえて実は単純な事象は意外に多いものだと思います。
トーマも大の本質をつかんでいた自分の感覚を信じきれてれば、事をもうちょっと簡単にはこべたのでしょう。
ナナミはそこを揺らがせてしまっていたのですね。
「水臭いぞ…! この程度、己れ達に任せな!」(レイヴモン)
イクト絡み以外で見せることの少なかった、熱いセリフです。直後のイクトも熱い。
この手の熱さも、ポイント決めうちだと効果が大きいです。
「血筋…かしらね」(ロゼモン)
血筋。なんのことだろう? と考えるより先に、つまり淑乃のベストフレンドであり、種族を越えた血のように濃い絆のことを
指しているのだろうなと、ぽんと思えました。10年だからなあ。
「…ああ、そうだったな…力は借りたり、与えたりするもんじゃない…。
力は…合わせるもんだ! そうだな! シャイングレイモン!!」(大)
これがつまり、セイバーズにおけるパートナーシップのあり方であり…そのための「いっしょに戦いたい」だったわけですね。
ここへたどり着くために端的な例としてバイオデジモン、そして融合ベルフェモンの存在があり、それを否定し倒すことで
テーマのひとつを完遂させる。第3クールの目的のひとつはそこにあったのですね。
二人そろっての魂の拳打がさらに強調してくれます。
とはいえベルフェモンなどと同じ融合であっても、テイマーズのそれはまさに「力を合わせる」形。否定の対象ではないでしょう。
フロンティアも最終的にはそうなりましたし。
「よくぞ究めたり大門大! そして、シャイングレイモンよ!!
ふたりの気持ちを一つにし、最強のデジソウルを激しく燃焼させ…究極体をも上回る、最大の力を発揮させる!
それこそが……真のバーストモードだ!!!」(バンチョーレオモン)
予告や戦闘に手出ししなかった事から推測して、彼にはほかに重要な役目があり…その前に、大たちの成長を促したかった。
そういうことなのでしょうか?
このセリフを聞いたときの友人の「ああ、つまりシュバルツなんだね?」が印象に残っています。
「く、来るな…!」(倉田@ベルフェモン)
実にわかりやすいヘタレゼリフ。状況的に、24話の回想とダブるものが大いにあります。
結局、彼は他人が怖かったのですね。怖いから、攻撃や利用というかたちでしか接することができなかった。
因果応報。だからといって、同情はしないし出来ませんが。往生際が悪すぎるし、最後まで他人を巻き込んでいるので。
★次回予告
いろいろと第4クールの前フリになりそうな予感がします。
あとバンチョーがものすごく死にそうでガタガタ震えていたりするんですがどうなるんでしょう。
またか。また死ぬのかレオモン族!?