拳でたしかめろ! 父さんの想い

 脚本:山田健一 演出:畑野森生 作画監督:八島義孝
★あらすじ
 大たちが目を覚ましたのは、人間界だった。そこで皆は、生きていた薩摩隊長と再会する。
 傷ついたスレイプモンが退化した後にあらわれたのは、クダモンの姿だった。彼はイグドラシルの使者だったのだ。
 だが、長年人間界で暮らす間にイグドラシルとは別の結論を持つようになったために、大たちを庇う側についたのである。

 しかし、大の受けたショックは依然として大きいままだった。父は本当に変わってしまったのか……
 思い出すのはあの日の夕暮れ、父がデジタルワールドへ出発した日。
 父はもし自分が戻らなくても、大が家族を守ってくれると信じて託し、旅立っていったにちがいない。
 知香や小百合との語らいのなかで、大はもう一度イグドラシルに、父に会って殴り合ってでも真意を問いただす決意を固めてゆく。

 そんな中、人間界にデュークモンが現れた。真紅の騎士はあまりにも強く、歯が立たない。遅れて大が参戦するも焼け石に水だ。
 トドメを刺されそうになったとき、再度割って入ったのは手負いのスレイプモン…クダモンだった。
 デュークモンを押さえつけ、彼を道連れにして消えてゆく。大きな代償を払い、セイバーズはかろうじて生き残るのだった。

 大は父に会うため、再度デジタルワールドへ出発することとなる。
 仲間たちはロイヤルナイツの襲撃に備え、人間界に留まることになったのだが…

 
 
★全体印象
 41話です。
 ラストへ向け、カウントダウンが始まりました。楽しみやら寂しいやら。

 端的に言うなら、大が決意を固め直すエピソード。
 いつになくじっくりと描いてますが、父親がらみの話は第一クールから仕込まれてきた総決算ですからね。
 それに前回がかなり派手だったので、穏やかなシーンが多めな今回はちょっとした息抜きというやつです。

 バトルパートはというと、またもボコボコにされてます。とはいえ、皆負け戦にはもう慣れてるので退きません。
 それにまあ、見てるほうとしても相手が相手なのでやむを得ないところではあったりします。
 デュークモンは主役を張ってた往年より強いんじゃないか? なんて描写もちらほらあったりしますし。
 その彼が破壊活動してるのを見るのは忍びないものがありますけれど…。

 で、ここへきて別行動ときましたか。しかも、大以外は人間界へ残留と。
 次回予告などからみて、ロイヤルナイツとの対決を軸に各人最後の単発エピソードという形になりそうです。
 そこへバーストモード登場も絡むとなれば、これは盛り上がりそうですね。

 作監は八島氏。しかも一人原画です。36話で登板したばっかりなのに大丈夫なんでしょうかこの方。
 脚本は山田氏ですが、なぜかこの方が担当する回では誰かが特攻かける率がたかいような…。
 
 
 
★CM
 DSサンバースト&ムーンライトのCMが新調されていました。
 動画がテレビ初公開?となったほか、CM全体の雰囲気も前のにだいぶ近くなってます。

 シンボルイメージやもろもろの情報から、やっぱりあの二体はオリンポス系に進化していくんでしょうか。
 
 
 
★各キャラ&みどころ
 
・大
 思い出とまるっきり合致しない父の姿に嘆きと戸惑いをおぼえ、何度目かの立ち往生。
 いままでで最大級の試練にもかかわらず立ち上がれたのは家族のため、家族を愛していたはずの父のため。
 それだけ成長してきたということでもあるのでしょう。
 「息子なら、きちんとボールを受け止めてやれ」という誰だったかの言葉を思い出します。

 後半ではとうとうあのデュークモンに拳を入れてましたが、注意は引いたらしいものの赤い騎士は微動だにせず。
 今の兄貴に殴られてケロリとしているとは…と言いたいところですが、もともと大は振り幅の大きいタイプ。
 ノリにノッてる時は相手が誰だろうと殴り倒しますから、マイナスじゃなくなっただけで本調子じゃなかったんでしょう。

 いや、前回のアレを見ちゃうとね……(^_^;)
 
 
・アグモン→シャイングレイモン→シャイングレイモンB
 兄貴の卵焼きを死守(?)していたり、ロイヤルナイツの襲撃を知らせようとけんめいに走ったり、舎弟らしさを発揮。
 昔はああいう風に寄らば噛みつくぞ、って具合で誰にもなつかなかったのでしょう。

 バトルでは勝てないまでも善戦は見せており、ロイヤルセイバー1発だった前回よりは勝負になっています。
 しかしまあ、力を出し惜しみできる相手じゃないのではやいとこバーストになっておくべきだったのは確か。
 大の気力がたりないと駄目なんでしょうけど。

 この調子だとオメガモンにはもっと苦戦しそうだなあ……あっさり勝つわけにもいかん相手だからしかたないですが。
 
 
・その他のメインメンバー
 ふだんから目立ってる大が回想シーン込みで出ずっぱりな上、隊長とスレイプモンも前に出てきていたので
 今回は全面的にワリを食っています。一部に至ってはやられシーンさえ描いてもらえません。

 クレニアムモンにあれだけ苦戦したのだから、さらに強いかもしれないデュークモンに勝てる道理はないんですが…
 ここで3クール目の苦闘が生きてきます。彼らはある時期からつねに苦戦つづき、負け戦つづきでした。
 そして今もまだほんとうの勝利をつかんだ、とはいえない状態です。倉田の悪行はまだ始末し終わっていません。
 どんな逆境にもくじけず何度でも立ち上がる姿こそ、セイバーズ魂でしょう。

 個別に上げるならば卵焼き食べたそうにしつつアグモンにびびりまくるララモンとか、クダモンの素性に仰天して
 素っ頓狂な声をあげてしまう白川さんとか、まっさきに大を送り出す決意をしたイクトあたりが挙げられます。
 特にイクトの場面は漢をみましたね。これも兄貴分の影響でしょうか。

 あとは肩を寄せ合ってクークー寝てるガオモンとファルコモンが可愛らしい。
 そういえば、最近の数話からこっちひさしぶりの休息ってことになりますね。
 
  
・知香と小百合ママ
 思ったより早い再登場…というか、あっという間に戻ってきたうえ前回も出てたので離れてた気がしません。
 さすがに大の関係者、隊長やおっちゃんよりも出番の途切れるケースが少ないですね、今考えると。
 ところで彼女たちが記憶消されてたことがあるって何人が覚えてるんでしょう。

 小百合さんの心境はいかなるものがありましょうか。
 大人の女性、母親の代表たる彼女なので、表にはまったく出していませんがやはり相当複雑な気分だったと思います。
 一度など、実はこの人はデジモンを憎んでいるのではないかと考えたことがありますし。
 それでも、夫が生きていると確認できただけで嬉しかったろうと思います。あとは、家族の心ひとつということですか。

 娘の代表である知香はむしろ、誰よりもショックを受けたように見えました。
 顔も写真でしか覚えていないような父親なのに……と思うのは早計で、母親や兄貴に山と父親の話を聞かされ、
 早く再会して話をしてみたいと思っていたでしょう。憧憬の像は大よりもより純粋なものだったにちがいありません。

 …憧れたまぶたの父が別人みたいになってたって聞かされちゃ、そりゃお盆のひとつも落っことすか。
 あの場面で「あらら、もったいない」と思った私のほうが場違いというものです。
 
 
・薩摩隊長
 コウキの言葉なんぞ最初から信じてませんでしたが、やっぱりピンピンしてました。
 バイオ組戦ではたぶん思いがけず遠くへ飛ばされただけで、それで死んだと勘違いされたのでしょう。
 クダモンのほうは負傷してましたがこれはファイナル・エリシオンをまともに食らったからですし。

 しかし出てきたと思ったら何かだいぶ影が薄くなったような…
 思い返してみると第3クールは本当にいろんなことがあったし、でも隊長抜きでなんとかなってしまったので、
 それで相対的に隊長の存在感が小さく見えるようになったのかもしれません。
 パートナーもあっという間に姿を消してしまったので、今後はバックアップに専念なのでしょうか。

 …それにしても、あんだけの大騒ぎに合流できなかったとはよほど遠くに飛ばされたか、タイミングが悪かったか。
 クダモンがすでに裏切り者と認知されているので、次元の壁が崩壊する少し前にイグドラシルと出会い、
 その意志にそむいて大たちを助けに行こうとするも、エルドラディモン浮上には間に合わずに機をうかがっていた…
 と、いったところでしょうか?

 一回くらいは彼とクダモンのお話を見てみたかったところですが…この状況では厳しいかなあ。
 出会いとかプライベートとか全然わからないままだし。
 でも、よく考えてみたらトーマでさえガオモンとの出会いを描かれてないし、そこまで重要な扱いをする方針じゃないのかも。
 相方との出会いを強いて描く必要があったのは大と淑乃だけだった、と言えなくもありませんし。
 
 
・クダモン→スレイプモン
 やはりというか、立場的に「星矢ゼウス篇」のシャカでした(だから誰もわからないって)。
 オペレーターズでさえ知らなかったところをみると、大門博士と隊長、そしてクダモンの間だけの秘密だったとか?
 その時点でもう、博士の身には何か起こってたかもしれませんが。

 さて、あくまでも監視が任務だったとすればこれまでの行動も納得はいきます。
 あのやたらえらそうな態度も、元ロイヤルナイツだとすればなんら不自然なものではありますまい。

 要は過剰な介入をせぬよう、イグドラシルに厳命されていたのでしょう。だからメルクリモンのこともある程度知っていたし、
 その件に大たちを当たらせたのも自分が動くといろいろ面倒なことになるから、となりますね。
 むしろだからこそ、最初ッからあんたらが出てけばこんなことにならなかったという話にもなるんですが。

 でも大の加入をきっかけとしてDATS隊員の実力が上がっていったので、結果としてはよかったんじゃないでしょうか。
 クダモンたちだけが頑張って事件を解決していったところで、イグドラシルの決断が別のものになっていた保障はありません。
 そんなとき、部下を育ててないと苦労することになりますからね。
 
 ただ、27話で大たちのフォローに回ってやれなかったのは彼らにとっても誤算だったことでしょう。
 バイオ三人衆と渡り合うどころか、いざとなれば三人まとめて片をつけられそうな彼らがいれば話がぜんぜん違ってたはず。
 物語としてはつまんなくなりそうなので、要するにそういうことなんですが。
 
 
・再生ゴツモン
 ……あれ? そういえばこの人、どこへ行ったんでしょう。
 
 
・デュークモン
 何事もないかのように降りてきて、破壊活動をしてました。
 しかし破壊の規模はいかにも地道なもので、ロイヤルナイツだけで人間界をどうにかするつもりだとはどうも思えません。
 むしろスレイプモンの安否を確かめるため、そして障害をいぶり出し排除することのほうが目的でしょう。

 しかしながら、いざ戦えばやはりメチャメチャ強い。絶対ベルフェモンより強いですこの方。
 三人もいらない。オメガモンとこのデュークモンふたりだけでも行けば、いかに魔王とはいえ敵ではなかったはず。
 なぜこんな最悪の事態になる前に手を打たなかったのでしょう、イグドラシルは。

 シャイングレイモンとの戦いも終始優勢に進めていました。その他の方々は槍さえ使わずにノシています。
 ジオグレイソードを出せば的確にはじき、ゼロ距離必殺技にも涼しい顔。ここまで強いと憎たらしささえおぼえますね。
 バーストモードを出していたところで、40話の結果をみると今は厳しそうです。

 オメガモンが個体としてのロイヤルナイツ一号ならば、彼はロイヤルナイツの名をはじめて背負ったデジモンですから、
 いわば顔役と言ってもいい立場。このセイバーズでも、おそらくメンバー内最強の一角を担っているのでしょう。
 このうえ万が一クリムゾンモードなんて出されたらどうすればいいのか。

 その彼にあそこまで言わしめるスレイプモンもまた、並び立つ実力者だったのでしょうね。
 がっぷり組み合っての会話はまるで黄金聖闘士どうしのよう。スレイプモンが万全だったら千日戦争になっていたのでは?
 
 
・大門英
 今回はイグドラシルじゃなく、ほぼこちらでの出演。
 変わったどころかどう見ても同一人物に見えません。体だけ同じで中身だけ入れ替わったかのようです。
 そこで気になるのがやっぱりバンチョーなんですが…巷でささやかれているように、博士の心はあっちにあるんでしょうか?
 そのものというか、魂を間借りしているというか…

 そうか、博士の魂を預かっているのかも。博士にもパートナーはいたか、いなくても向こうで作ったかもしれないので、
 イグドラシルがなんらかの理由で博士を依代にしようとし、精神を抜き取ったときにそれを奪って脱出したのが相方、
 すなわちバンチョーなのかもしれません。仮説の域を出ませんが。

 ただし、今に至っても「博士が操られていない」というたしかな証拠は無いんですよね。
 なかなか勘繰らせてくれます。
 
 
 
★名(迷)セリフ

「大。あなたと英さんの間に何があったのか、私にはわからない。
 けれど、あなたの会った英さんがどんな姿をしていたとしても、私は英さんを信じてる。
 だって、私たちは家族ですもの」(大門小百合)

 この方は昔からこうだったんでしょう。あの大門博士とどんな経緯で夫婦になったのか、すごく気になります。
 出逢いはささいなキッカケだったかもしれないけど、初めから決まっていたようにお似合いのふたりだったと思います。
 この人以外に博士の奥方はつとまりますまい。そういう設定だからという話は置いといて。

 それだけに、倉田が身分不相応にも想いを寄せていたにちがいないなんて変な想像をしてしまうんですが。
 さすがにそっちの方にはいきませんでしたが。どこの昼ドラだって話になってしまうし。
 
 
「我々は、敗北など恐れはしない!」(レイヴモン)
「ただ、大切な人を守りたいだけよ!!」(ロゼモン)

 それこそがセイバーズ魂。鼻で笑い飛ばすデュークモンが悪役にしか見えなくてちょっと寂しい心持ちです。
 とはいえ真正面から来ているうえに一応、形どおりながら警告はしているので騎士らしくはあるんですが。
 倉田がああいうヤツだったので、そういった部分がよけいに目を引きます。
 
 
「イグドラシルの言う通り、人間は愚かで傲慢な生き物なのかもしれない……
 だが…人間は己のあやまちを正すことができる。われわれと同じく、進化することができるのだ!
 私は……人間の可能性を信じる!」(スレイプモン)

 1話から出ているクダモン、第1クールのさまざまなエピソード、そして映画における大のセリフにつながる言葉です。
 人間の味方をするデジモンがひとりでもいる限り、人間すべてが悪いということにはなりません。
 本来、人間にもデジモンにも善と悪の区別はないはずなのです。そこから外れたものを外道とは呼びますが。

 なんだかんだいって、そのあたりはきちんと描いてるんですよね。
 
 
「薩摩よ、大よ…私はお前たち人間に、ふたつの世界の未来を託す…!」(スレイプモン)

 その未来、大門博士も求めていたはずの未来を摘ませぬため、スレイプモンもまた礎となりました。
 なぜか「闘将ダイモス」の敵役・バルバス将軍が主人公に向けた言葉「バーム十億の民、きさまに賭けた!!」を思い出したもの。
 イメージは全然違いますが。

 とはいえ演出はあっさり目だったし、明確にデジタマ化した描写も無いので再登場の可能性はあります。
 デュークモンを説得して味方として連れてくる線のほか、捕まって敵として出てくる展開も考えられますね。
 
 
「…わかった。いけ、マサル!
 おれ、メルクリモンと話してわかった。おたがいのこと…。だから、マサルも父親と話してこい!」(イクト)

 やはり、齢十歳にしてもう立派な男になっているようです。
 そしてやはり、彼にとってはメルクリモンが育ての父親なのですね。偉大なる獅子神はもういないけれど、
 彼の心の中にはいつまでも生きつづけている。そういうことなのでしょう。
 
 
 
★次回予告
 シャウジンモンがやられて出てましたね。進化できたんだ…。

 さて、「家族」というキーワードや隊長の言葉に思わせぶりな顔をしてたトーマ。いよいよ出番です。
 バーストモードも出るし、ひさびさの快勝が期待されますね。言っちゃあなんだけどロードナイトモンなら勝てそうだ。
 そうなるとロゼモンとの対決は無しですが…。

 それにしても星球分銅とは。超究前とずいぶんイメージが違いますね。